野沢雅子

登録日:2019/02/17 Sun 19:43:11
更新日:2025/04/17 Thu 20:36:30
所要時間:約 10 分で読めっぞ





野沢雅子は日本声優・女優・ナレーターである。
「野沢」は旧姓で、現在の本名は「塚田雅子」。夫は俳優・声優の故・塚田正昭(2014年(平成26年)1月27日没)。愛称は「マコさん」。


□プロフィール

生年月日:1936年(昭和11年)10月25日
出身地:東京都荒川区日暮里(旧・東京府東京市荒川区)
身長:157cm
血液型:O型
事務所:青二プロダクション


□来歴

声優業創生期から声優として活躍しているベテラン声優で、大手声優事務所の青二プロダクション創設メンバーの1人でもある。
一時期から髪にパーマをかけて赤っぽく染め、眼鏡をかけているというかなりハイカラな格好で有名。
80歳を過ぎても現役バリバリでピンピンしており、声優界のレジェンドというか化け物である。
その化け物さは自身より年下(と言っても大半は老齢の域に入りつつある古豪ばかり)からも「自分よりずっと元気で体力もある」「化け物」と称されるくらい。

父親は画家の野沢蓼洲。
3歳の時に子役として映画デビュー。
小学3年生の頃に群馬県に疎開するが、中学生の時に劇団に入り、東京で女優の仕事をするようになる。

高校卒業後は女優業に専念するため上京。劇団東芸の研究生として入団する。この時に後に共演する大塚周夫や田の中勇などとも出会う。
その頃は劇団の経営が苦しかったため、劇団を支えるために、またある少年の出会いもきっかけになり、当時創生されたばかりであった声優の仕事をするようになる。
それからほどなくして青二プロダクションの創設に携わる事となる。
初の主演作は『ゲゲゲの鬼太郎』(鬼太郎役)。

1979年(昭和54年)の青二分裂騒動の時には、ぷろだくしょんバオバブの創設に携わった後で81プロデュースに移籍。
2006年(平成18年)に個人事務所「オフィス野沢」を設立するが、2012年(平成24年)に事務所を畳み青二プロダクションに復帰した。
ただし自身が主宰している劇団ムーンライトは現在でも継続している。


□特色

あまり知られていないが、日本で初めて少年役をこなした女性である。
昔は少年役は子役が担当するのが当たり前だったが、洋画の吹き替えは黎明期だと生放送が一般的だった。
しかし生放送では拘束時間、放送時間帯などの制約から子役を使うことが出来なかった。
そこで番組プロデューサーの提案で「女性が子供の役をやるのはどうだろう?」という話になり、野沢雅子が選ばれたという。
これをきっかけに声優業界で少年役に女性を配置することが定着した。

こういった経緯から少年役を演じる事が多く、『銀河鉄道999』の星野鉄郎や『ど根性ガエル』のひろし、『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎等、人気アニメの少年役を多くこなしている。
野沢雅子が演じたキャラクターで最も有名といっても過言ではないのが『ドラゴンボール』の孫悟空であり、1986年(昭和61年)に悟空の役で出演して以降、悟空が作中で成長しても今日までずっと変わらずに演じ続けている。
作中では悟空以外にも、孫悟飯孫悟天バーダック等を演じており、劇場版やゲーム作品等も含むと何と10人以上ものキャラクターを演じている。
ちなみに悟空・悟飯・悟天は、育った環境が違うという事で、声の抑揚や高低差等をつけてそれぞれ演じ分けているとのことで、その演じ分けの巧みさに舌を巻く視聴者は多い。
かつてはほぼ一発撮りで三役を演じていた。『地球まるごと超決戦』では悟空と同じ顔を持つターレスも演じ、脚本家が少し意地悪をして悟空・悟飯・ターレスの会話シーンを増やしたが、野沢は難なく演じたという伝説がある。
が、ある時に後輩(恐らく同じ証言をしている田中真弓)から「マコさんがそれ(複数役の一発撮り)をやると声優は誰でも出来ると思われて『マコさん、迷惑だよ!』困るからやめて欲しい*1」と懇願され、
現在は複数登場する場合、主に悟空を録った後にそれ以外のキャラクターを追録するようになったらしい。

少年役以外だと外画ではキャリアウーマンを演じる機会がとても多かった。マドンナと言って差し支えない美人女優を吹き替えていたこともある。
ただ時間を経るにつれて中年女性や老婆の役を演じる機会が多くなった。特に老齢の役は『ONE PIECE』のDr.くれはや『ふたりはプリキュア』の雪城さなえ等が有名。

数は少ないが、少女役も幾つか担当している。
インタビューでは「いつかお姫様の役をしてみたい」と度々発言している。
ちなみに劇場版『それいけ!アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌』で闇の女王、ブラックノーズ役を務めたことがある。


□人物

声優界における生き字引であり、後輩達からは非常に慕われている。
時に厳しい態度を取ることもあるが、基本的には怖い先輩の叱責に気圧され落ち込む後輩や新人を励ましていたという。
ある時、新人がアフレコブースにおける席の座り順を知らず(主役を中心に大体不文律で決まっている)、主役級の声優が座る席に座ってしまったことがあり、
それを見た大御所声優が「そこ俺の席」と不機嫌そうに言ったことで新人がすっかり縮み上がったのを見て、大御所相手に「その席買ったの?」と冗談めかして場を収めつつ、
新人には席順があることを教えるなど、とにかく現場の空気が悪くならないように動いていたという。
他にも三ツ矢雄二などはコンバトラーVにおいて、富田耕生の鞭と野沢雅子の飴に挟まれていたとか。

若手からもレジェンド級の声優でありながら気配りを忘れない人格から、野沢のことを尊敬する声は多く、同業で悪く言う声はほとんどない。
そのため同業者からは「マコ(さん)」と呼ばれて親しまれている。
仕事についてはしっかり取り組んでおり、長いキャリアの中で遅刻したのは一度だけ。
しかもそれは収録直前に自宅が隣家からの延焼で 全焼した ためで、寝巻きのまま慌てて避難して何もかも焼けた状態で
それでも収録があったので服と電車賃だけ借りてスタジオに来たそうな。

鬼太郎などで共演した田の中勇とは先の通り劇団東芸からの仲。お互いに自分よりも女性らしい・男性らしいと思っていたため、
野沢は田の中のことを「タノ子さん」、逆に田の中は野沢のことを「雅男」と呼んでいたという。
同じ劇団東芸時代の大先輩である大塚周夫とは役者仲間としても多く共演しており、鬼太郎の時は忌憚のない意見を受けて役作りをしていたという。
旧知の仲であることもあって、かつて大塚明夫のおしめを変えたことがあるらしい

ただ優しいだけではなく、声優のギャランティの問題については諸先輩とともに声を上げて抗議しており、
DVD化の際のギャラを求めた裁判を仲間達を連ねる代表として名を上げ、勝訴している。

□化け物伝説

  • 「私真夜中に起こされてもかめはめ波撃てるわよ」
田中真弓曰く「朝早い仕事だとしんどくて思うように声が出ない」という話になった時、野沢はそれが「理解できない」としたうえで、
上の発言をと平然と言ったそうで、「他もそうだと思われるから迷惑だから(言うの)やめて…!」と、先の一発撮りの件の同様抗議したことがあるらしい。

  • バトルシーンでへばらない
大分歳を重ねた後もそのパワフルさは健在で、『』のブロリー映画で殴り合いのバトルシーンを演じた後、
ブロリーを演じた島田敏が張り切りすぎてロビーで脳震盪のようになってへばっていたが、
その時に野沢雅子が心配してかやってきて「敏ー!大丈夫かー!」と背中を擦りながら声をかけてくれたことがあった。
恐れ多いと思いつつ、野沢があまりにも堪えている様子がなかったためか、島田が「野沢さんはこういうシーンを演じて疲れたりしないんですか?」と聞くと「ううん、全然」と言ってのけたらしい。
島田「やっぱこの人レジェンドだわ!」

  • 旅行先の険しい道でも一人スイスイと歩く
これもそれなりに歳を重ねた後の話で、佐藤正治らがドラゴンボールのチームで河津七滝に遊びにいった時、
他のメンバーが高齢でそこまでの道のりに向かうまでしんどそうにしていたのに対し、
野沢雅子だけは何の気なしにすいすいと歩いていってしまったという。
佐藤「この人化け物だわ……」

□余談

前述した星野鉄郎・鬼太郎・孫悟空はどれも原作者が選んだ役である。
長らく大事な役をあげろと言われても選べないとしていた野沢だが、この3役はとっても思い入れのある役、自分の語るうえで欠かせない役だという。

第3作の鬼太郎のキャスト変更をねずみ男だった大塚周夫と共に当初はがっかりしたが、その後『ドラゴンボール』で孫悟空役に決定した際、当時は、同じ局系列で2作品の主役はできないという不文律があり、この件がなければ孫悟空を演じることができなかったため、「今思うと凄くツイていた」と振り返っている。

ちなみに第6期では目玉おやじ役で参加しているが、長年の癖もあってつい鬼太郎のセリフを読んでしまうことが何回かあるとか。
うっかり後輩の役に干渉するというベテランらしからぬ(むしろベテラン故?)ミスには本人も「ホント申し訳ないの」「情けなくなっちゃう」と告げていた。

『銀河鉄道999』のメーテル役だった池田昌子とは、プライベートでもつい「メーテル」「鉄郎」と呼び合っているらしい。
なお、『銀河鉄道999』で「メーテル」と叫んでマイクを破壊したことがあるそう。

『ドラゴンボール』の悟空の印象的な台詞「オッス!オラ悟空」は、実は野沢雅子のアドリブによるもの。
それが後にアニメ本編に逆輸入され、劇場版「神と神」で披露していた。

「伯母に悟空の声をやっている人がいる」と姪が友達に言った際、姪から「どうしても友達を信用させるために協力してほしい」と相談を受ける。
そこで野沢さんは姪の友達1人ひとりに電話をかけ、「オッス!オラ悟空」と言って回った。
しかし、野沢にアニメキャラの台詞を頼むのは親戚内で禁止になっていたため、頼み事をした姪は後で両親にこっぴどく叱られたという。

ある年の2月、難病を抱える少年の父親から「息子はドラゴンボールが大好きで、夏の映画を楽しみにしているがそれまで生きられない、せめてサインを頂けませんか」という手紙が届き、野沢さんは「ぜってぇに来いよ、オラが劇場で待ってっからな、約束だぞ!」と激励のメッセージを吹き込んだテープを送った。
その結果,2月いっぱい生きられないと言われていた少年は8月まで命をつないで無事映画を見ることができ、父親から「息子が奇跡を起こして映画を見られました、本当にありがとうございました」と感謝の手紙が届いた。
手紙によれば、少年は寝たきりのためベッドで劇場へ行ったが、「椅子に座って見たい」と懇願したため椅子を持ってきたところ、動けないはずの少年は椅子に座ったまま映画を鑑賞し、その翌日に映画のパンフレットを抱きながら亡くなったとのこと。
同封されていた医師からの手紙には「自分たちがどれほど手を尽くしても助けられない患者さんだった、どうして8月まで生きられたのかわからない、アニメの持つ力って本当に何なんでしょう」と書かれていたという。

バンダイナムコの『ドラゴンボール』関連のゲームにも多数出演しているため、
「ひとつのビデオゲームのキャラクターを最も長い期間演じた声優」「ビデオゲームの声優として活動した最も長い期間」の2項目でギネス世界記録に認定されている。

TBSの「うたばん」にて大山のぶ代日髙のり子と共に出演し、悟空とドラえもんが喧嘩してそれを南ちゃんが止めるというコントを演じたことがある。
あまり知られていないが、そのドラえもんの声を富田耕生から引き継いで担当していたこともある。
ただ、本人も当時のことは覚えておらず、カラー作品だったのをモノクロと勘違いしている。
なお、現在ドラえもんの声を担当している水田わさびも憧れの先輩に彼女の名前を挙げており、中学の卒業文集に「憧れの人 野沢雅子さん」と書いたらしい。
ドラえもんは堀絢子とともに、歴代テレビシリーズ3作(日テレ版・大山版・わさドラ版)すべてにゲストキャラとして出演したことがある数少ない声優の一人である。

フジテレビのバラエティ番組『さまぁ~ずの神ギ問』で「声優の野沢雅子を急に驚かしたら不意に出る声は、悟空、悟飯、悟天?」という神ギ問の検証が行なわれた事がある。
野沢に優しくてかわいいドッキリをいくつか仕掛けて検証したところ、6回中3回が悟空、2回が悟飯、1回が悟天という結果となった。
なお、その際に行われたインタビューにて、2020年開催の東京オリンピックで、悟空のかめはめ波で聖火をつけてみたいと語っていた。

最近ではお笑いコンビの「アイデンティティ」の田島直弥氏にモノマネをされている。
「オッス!オラ野沢雅子」「てめぇぶっ○すぞぉ!」*2

更に2023年(令和5年)にはねんどろいどの発売が決定。
86歳女性声優をグッズ化するという前代未聞の展開だが、あながち需要が全くないとは断言できないところが凄い。実際田島氏が喉を壊した際に買ってたし。


□主な出演作

◆テレビアニメ


◆劇場アニメ


◆ゲーム



◆人形劇


◆特撮


◆CM

  • ブルブルくん(ブルーベリーアイ)
  • ナレーション(アートネイチャー(『ドラゴンボール』フリーザ役の中尾隆聖と共演))
  • ライトツナ缶、ナレーション(いなば食品)





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最終更新:2025年04月17日 20:36

*1 実際同じ証言をしている田中は抗議するまでクリリンとヤジロベーを一発撮りでやらされていたという。

*2 なお、後者に関しては野沢雅子本人は実は言ってない台詞である。ちなみに「うっせえ、ぶっ殺すぞ」の方はエピソードオブバーダックにてバーダックが「うっせえ、さっさと行かねえとぶっ殺すぞ!」と発言しているため、一応言っているセリフとなる。