ソード・ワールドSFC

登録日:2024/05/19 (日) 14:01:54
更新日:2024/07/15 Mon 21:32:16
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ソード・ワールドSFC』とは、グループSNE制作・T&Eソフト発売*1スーパーファミコン用コンピュータRPGである。
TRPGソード・ワールドRPG』を原作とする。
そのため用語などは当該項目も参照のこと。


ソード・ワールドSFC

ソード・ワールドSFCは93年8月発売、『ソード・ワールドPC』(PC-98)の移植作。 2024年現在は双方に加え、後述のSFC2を含めた三作ともプロジェクトEGGで配信されている。

基本的には原作TRPGを忠実に再現したゲームシステムとなっているのが特徴。
大きな違いとしては、スクエアマップでの戦闘*2であることや、後述する魔晶石の価格が1/10という超バブリー仕様なこと。*3
その他、知識判定が発生しない・能力値増加アイテムの店売り・施設の一部に技能による入場制限あり……といったところ。
それならついでに魔剣の一本くらいは買わせて欲しかったものだが
また、ここで言う「原作」は文庫版の方である。完全版は93年当時まだ存在しない。
戦闘での経験値はかなり少なくミッションクリアで獲得する比重が高いあたりもTRPGらしい。

プレイヤーキャラクターは人間・エルフ・ドワーフ・グラスランナー・ハーフエルフ(人間育ち/エルフ育ち)の基本種族から選択可能。
能力値や生まれは一瞬でロールが終わるので、納得できるまで振りなおすことが容易。
その後、オラン周辺を巡って仲間を集め、5人パーティを作ったところで本格的な冒険が始まる。

シナリオ

冒険者向けの万屋『奇跡の店』の店主が所有する謎の神像は、手に持つはずの武器が欠けている。
その武器を北の山中のドワーフが持っているという話があり、また彼らはゴブリンの襲撃で困窮しているという。
店主の依頼で冒険者はゴブリン退治に出発する。まさかこんな依頼が世界の存亡に関わるとは夢にも思わず――

オラン周辺を舞台にさまざまでバラバラな依頼をこなしていく"表"ルートと邪神の教団を追うSFC独自の"裏"ルートが存在するが、最後は一本に収束し、神像の正体や邪神『ミルリーフ』と対面することになる。

全シナリオをこなすには3回はプレイする必要があるが、全体としてのボリュームは少な目でレベルキャップも5*4と低い。
またPCではシナリオ総数は50あったが、SFCでは20に減っている。(双方に言えることだが、一つはおまけダンジョンでのハック&スラッシュ)

キャラクタの種族などで若干会話が変わる仕様もあるので、さまざまな組み合わせで周回を重ねるのも面白い。

キャラクター

  • プレイヤーキャラクター
文庫版のルール通りのキャラクター作成をするが、能力値のダイスは一括処理。プリーストの宗派は五大神に限定される。*5

  • バート
ファイター。小説版(後述)の主人公だが、ゲーム上では任意加入。

  • リザン
ソーサラー。バートの義弟。ゲームでは普通の仲間だが、小説版ではバートへの劣等感から暴走してしまい……

  • シラルム
エルフのシャーマン。バートの仲間。飄々としたところはあるが、温和な人当たりの良い青年。

  • プラム
グラスランナー。パラサ以前に公式で登場したキャラではあるが、あまりに女の子女の子した性格なせいか、後世への影響はとくになかった。
シラルムに懐いており、まるで恋人のよう……って、シラルムも『手足の長い金髪の異性』に該当する。

  • ツーレ
NPC。エレミアの北にある『悪意の砂漠』の住人たる遊牧民で、例の神像の関係者。
族長の座を巡っての争いから、PCたちと共闘することになる。

  • ラテリア
ツーレの妹。街道で暗殺者に襲われるところに出くわすというイカニモな初対面をする。

  • ソグラン
騒動の黒幕。海と屍の邪神『ミルリーフ』を奉じるダークプリースト。
小説では色々あってラスボスにはなれず、ゲームでもラスボス感のまるでないLv5ゾンビという悲惨な扱い。
+ その衝撃的な弱さ
命中回避が落ちている上にダークプリースト技能喪失。ゾンビだからということなのだろうが、これではお話にならない。
単純な殴り合いをさせるにしても、Lv5モンスターとLv5ファイターでは釣り合わない。ボスは(ファイターの)+2程度が良いとされている。
アンデッド化するにしてもワイト(通常武器無効+精神攻撃持ち)とかゴースト(死体に宿った亡霊。ダークプリースト技能を残せる)とか手はあっただろうに。

いずれにせよ、SFCではなぜか術者中心ではなく指定位置投下式になっているホーリーライト連打で取り巻きごと蒸発するわけだが。
アンデッド系の暗黒神であることがとことんマイナスになってしまっている。

アイテム

  • 神像
『奇跡の店』の主人が持つ、多腕の神をかたどった像。本来は全ての手に武器を持っていたようなのだが、いくつかが欠けた状態になっている。
いずれ完成させてみたい、ということで主人は冒険者を頼ってくるのだが……実はツーレの部族の所有物であり、とんでもないことを起こせる祭器であった。

  • 魔晶石
魔法を行使する際の精神力を肩代わりする消費アイテム。元々文庫版ではマジックアイテムの中では飛びぬけて安価だったのに、そこから先述の通り1/10に値下げされている。
しかも本来は不可能な1つの魔法で複数の魔晶石を合算して使用できる。(そのため、奇跡の店で売っている『30点分の魔晶石』に大したありがたみがない)
結果として、バブリーズですら行わないであろう大盤振る舞いな魔法拡大が可能となる。不眠能力がなければ遺失魔法でイチコロ

他メディア展開

小説版『死せる神の島』が存在するが、かなりの鬱展開。ゾンビぞろぞろに加えて、当時のSNE定番的なアレ
先述した以外の加入可能なキャラクターもチョイ役で登場しているので、プレイヤーはニヤリとさせられる。
また前日譚や、リザン主役の後日談が執筆されている……が、作者のSNE離脱により早期に打ち切り状態。

コミック版『漆黒のカース』は小説のコミカライズ、と見せかけて独自展開し大団円となる。

TRPG用のシナリオ集『異界への門』『シナリオ100本集』もある。
前者はSFC独自ルート再現のキャンペーンシナリオ。
後者は『PC』のシナリオをTRPG用に書き起こした代物。紙面の都合かあらすじだけのシナリオ*6もあったりと、むらもあるが圧巻。


ソード・ワールドSFC2 いにしえの巨人伝説

94年7月に発売された『~SFC』の続編にして、移植ではない新規作。
レベルキャップが10*7に引き上げられ、舞台/目的も大陸横断とスケールアップ。
スケールアップしすぎて、終盤お大尽アタックが当然という状態になるのは致し方なし。神話に片足突っ込んだレベル15に対抗するにはこうするしか
さらにダイスロールも可能になって臨場感アップ(TRPG的な意味で)。BGMがほぼ総替えなのは良し悪し。

シナリオ

オラン王国の騎士アーヴェルは貴族殺害事件の捜査に携わったが、無実の容疑者の逃亡を助け裏工作を台無しにしたことで騎士位を剥奪されてしまう。
復権の条件として下命されたのは『パルマーの秘宝』の探索。アーヴェルは秘宝があるという大陸の西の果てへ向けて旅立つ。
しかし、長旅とはいえ充分に整備された街道。それほどの困難は待ち受けていないはずだったのだが――

大陸南部を東西に貫く『自由人の街道』が舞台となるため、A→B→Cという流れで寄り道となるBを飛ばすというものが多く、Bの代わりになる分岐シナリオが存在する例は少ない。クリア報酬以外にエンディングへの影響もあるので、縛りプレイでもない限りは出来るだけ受けるのが常道。
縛るべきはまずライトニングバインド*8とスタンクラウド*9だがな!
シナリオ総数は27と増量されたが、二周でコンプリート可能になっている。

終盤は西部諸国に入り、リプレイから第一部のキャラクタがゲスト参戦というファンサービスも。
地味なところから、Waltzファンにもおすすめできる作品でもある。後顧の憂いを君の手で断て

キャラクター

シナリオを回避しなければ経験点は10レベル分をあっさりと超えてしまうので、サブ技能や能力値を盛っていくのも良い。

  • プレイヤーキャラクター
初期に経験点が多めなこととレベルキャップが10に増えたことと顔グラフィック以外はほぼ変わらない。

  • アーヴェル・セレダイン
ファイター。義に篤い若き騎士。実質的主人公であり、死亡判定に必ず成功し戦闘終了で復活する。彼の人脈が活きる展開もあったりする。
また、第一シナリオが先述の殺人事件の裏側であるために、彼の枠を開けた四人パーティで開始することになる。その分、第一シナリオでの寄り道がアツい

  • サレム
ソーサラー/プリースト(ラーダ)。アーヴェルの親友。小説版では追放された彼に付き合い旅に出る。

  • マティアラ
ハーフエルフのシーフ/シャーマン。小説ではアーヴェルと同行するが、ゲームではサレムともども任意加入。

  • パーミア
目的地である街道最西端・パルマーの村出身のシャーマン。中盤で、帰郷する彼女を合流させるために仲間を一人外す必要がある
その後いろいろあって結局離脱するので、出入りの激しいパーティになってしまう。最終的にゲスト枠で復帰することが割と重要になってくる

  • ゲセナ
ロマールから南、ドゥーデント半島に住んでいた女性。声だけがしわがれた老婆のようになってしまっている。
ロマールの侵攻によって赤子を始めとする周囲の諸々を失い、外の世界への復讐を誓った……のだが、その矛先はパルマーの村に向かって行く。

  • 地を割く剣
ドゥーデント半島に住んでいた巨人族のひとり。名の通り、身の丈にあった巨大な剣を持つ。
侵攻するロマール相手に奮戦するも及ばず、捕虜となり剣闘士用のモンスターとして囚われている。
穏健派であることに加えて恩義もあることから、間接的・消極的ながらもアーヴェルたちの協力者となる。

  • 墜とされし巨人
ドゥーデント半島の巨人族、および人間たちの総元締め。
神に等しい力を持っていたとされ、その力を恐れた神によって巨人族へと墜とされたのだという。今でも再起を図っているというが……
もちろんラスボス。データ的にはLv15のサイクロプス(ソーサラーLv10)と、貫禄も戦力も十二分である。それだけでは終わらないのがまた恐ろしい。

アイテム

  • 傭兵
レイド名物。戦闘中に使用するとメテオストライク並みのダメージ(もちろん物理)を叩き出す使い捨てアイテム。
本来はレイド付近にたむろする巨人の軍団に対抗するために使い切るものなのだが、その後も持ち歩けてしまうし終盤でバレンの補給まで入る。

  • レイガルブレード
古代王国時代の魔術師・レイガルによって作られた『巨人殺し』の魔剣。世界有数レベルで強力な業物であり、それゆえか偽物やトラップで念入りに封じられている。入手するための解法がTRPGでは不可能だったりするが、気にしてはいけない*10
それすら(割と良い魔剣なのに)偽物ってんだから手が込んでいる。本物はどこにあるかというと……?

他メディア展開

長編小説『自由人の嘆き』および前日譚・後日譚の短編が存在する。
さすがにゲームの展開どおりとは行かず、アーヴェルも7レベルどまり。そしてラスボスにしわよせが*11

TBS系でラジオ番組『ソード・ワールド うるわしの我が家亭』も放送された。
パーソナリティは堀秀行氏と宍戸留美氏。そして裏テーマ曲は宍戸氏の『地球の危機』。聴取者も一度聴いて癖になったのか、アンコールが多数届いたそうな。
堀氏は同番組内のラジオドラマ『空に消えた耳飾り』『いにしえの巨人伝説』でアーヴェル役を担当。
毎週ドラマ開始前に「アーヴェル・セレダイン、参る!」と鬨の声を上げるのがお約束だった。そして聴取者は『セメダイン』と聞き間違えた
また塩沢兼人氏(サレム役)や、グループSNE代表の安田均氏がゲスト出演した回もあった。*12


余談

  • 『PC』の開発には三年かかったそうだが、PC~SFC2の間は二年経過していない。凄いペースだ。

  • 先述した通り、能力値を伸ばすアイテム(ドラクエでいう『種』に相当)を魔術師ギルド・盗賊ギルド・一部神殿で買えてしまう。
    各施設に入るためにマーファ以外のプリーストやシーフを揃える手間がある上に、収入も限られるのでバランス崩壊というほどでもない。1は。

  • リプレイ第三部では他の冒険者の手を借りられない理由の一つにPC/SFC1の事件が挙げられていた。
    またSFC二作の発売はバブリーズの連載期間内である(ゆえに高人気ながらもSFC2には登場できず)。

  • 本作を参考(の一つ)にT&Eソフトが制作したのが、かの『Blaze & Blade ~Eternal Quest~』(PS)である。
    アイテムの欠けたパーツを集める展開や、キャラクタの特性による台詞の変化などに影響がうかがえる。

  • SFC1のほうはTVCMも打たれたのだが、棺(か墓穴?)から立ち上がる志茂田景樹氏に立ち向かうアイドルデュオ・Winkというもの。
    Winkのお二方はバートとリザンをイメージしたのだろうが、志茂田氏はソグランなのかミルリーフなのか。

  • 奇跡の店は本来ロマールに存在していた*13のだが、オランに移転している。
    友人に招かれた際に出向くにはこちらの方が都合がよいとか。

  • 『2』はコンフィグをネタにしたシナリオ展開も特徴。
    ゆっくり歩かないと危ないから『コンフィグで歩行速度を落とす』なんて具合に。

  • 『2』はデバッグモードも一部で語り草になっている。
    余りにも簡単な手順で起動できるため、Any%レギュレーションのスピードランは第一シナリオの早解きと同義だったりする。

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最終更新:2024年07月15日 21:32

*1 元々の開発はクリスタルソフトだが、『PC』製作途中でT&Eソフトに吸収されている

*2 原作でも最末期には存在したのだが当然別物

*3 これでどのくらいバランスが崩れるかと言えば、TRPGでこの環境下ならば3Lvでもドラゴン(10Lv)退治がワンチャン通る。

*4 初期のルールにおける限界値。国内著名人レベル。

*5 マイナー宗派がほとんどなく、それらに特殊神聖魔法のない時代だった

*6 後の世で言うところのシナリオフックというやつである

*7 ルール上の限界値。大陸全土に名が轟く超有名人

*8 行動を阻止/妨害しながらダメージを与える。本来なら存在するサイズ制限が無いので完全に決まればドラゴンでも確殺

*9 広範囲気絶魔法。本作では同じ効果になるデスクラウドより習得レベルが低く、加えて本来は遺失魔法

*10 古代語魔法『アポート』で取り寄せるのだが、本来は所有物を短時間取り寄せるだけなので二重に不可能なのである。

*11 7レベルかつバブリーズ戦術は存在しない環境でボスが15レベルでは勝負にならず、ものすごい展開になってしまった

*12 完全に余談なのだが、その際の安田氏によればSNEとはsyntax errorに由来するそうな。

*13 グループSNEの作『アイテム・コレクション』が初出。この時点では金貨の流通具合やスライムの存在など『D&D』の風味が強い