SEVEN-BRIDGE

登録日:2024/06/09(日) 22:26:18
更新日:2024/11/05 Tue 00:03:23
所要時間:約 9 分で読めます




『SEVEN-BRIDGE』とは、2005年に発売されたライアーソフトの発売した18禁ゲーム第13弾である。
ジャンル名は「鉄道旅行アドベンチャー」
原画は『腐り姫』『CANON BALL~ねこねこマシン猛レース!~』の中村哲也。
シナリオは星空めてお(メイン)、茗荷屋甚六(木村航)、森崎文士亭。

概要

前作『ANGEL BULLET』同様、現実世界とは異なる歴史を辿った世界が舞台となるオカルトエロゲ。
20世紀初頭を舞台に、魔導蒸気機関車「プレステ・ジョアン」に乗り、滅亡したヨーロッパを目指す鉄道旅行ADVとなっている。
作品世界は非常に作り込まれており、韻を踏んだ旅情の詩が合間合間に挿入され、旅の気分を盛り上げてくれる。
当時のご時世ネタや地理ネタが息つく間もなく出されてくるので、プレイ中にはウィキペディアやGoogleEarthでも同時に開いておくといいかもしれない。

発売時には劇中に登場する「黒い切符」のレプリカが予約キャンペーンの特典として配布された。

何分20年近く前の作品の為、ソフトの新品入手は難しいかもしれないが、
現在はDL版が発売されており、3000円弱で購入できるのでそちらの購入を強くお勧めする。

あらすじ

魔法が歪に成長を遂げた20世紀初頭。
かつてヨーロッパと呼ばれていた大陸は、オスマン帝国率いるイスラム教圏のゴーレム軍団との「聖戦」、
そして数世紀を経て復活した黒死病(ペスト)の蔓延により終焉を迎えていた。
ヨーロッパ全土には原始の森林が繁茂し、人々は生まれ育った地を捨て、南北アメリカやアジアに逃れていた。
生まれながらにして人の心を読む力を持っていた男、クゥ・クランもその一人。
中国大陸を統べる大清帝国へと流れ着いたクゥは、育ててくれた娼婦を亡くし、酒色に溺れ、黒社会の狗にまで落ちぶれていた。

そんなクゥの下に、「黒い切符」を持つ少女・エマが現れる。
黒い切符を持つ者は、ヨーロッパへと続く希望の列車「プレステ・ジョアン」に乗る権利を得ることが出来、
七つの試練を乗り越えた最果ての地で、全能なる母神ダヌに願いを聞き届けてもらう事が許されるという。

生きる希望を失っていたクゥは、死に場所を求めて切符を手にする。
果たして行く先に待ち受けているのは生か死か、運命のマスコンが握られる…。

世界観

本作の具体的な作中年代は明かされていないが、
  • 既に北里柴三郎によりペスト菌が発見されている(史実では1894年)
  • 終盤で明治天皇が崩御したという話が出ている(史実では明治帝は1852年生-1912年没)
  • フランツ・カフカ(史実では1883年生まれ)やシャルル・ド・ゴール(史実では1890年生まれ)が青年の姿で登場している
  • オスマン皇帝アブドゥル・ハミト2世が現役(史実では1842年生-1918年没)
といった事から考えても、1910年代であることは間違いないと思われる。

「あらすじ」の項目で記した通り、本作では10数年前(19世紀末?)に「聖戦」と称されるヨーロッパ連合とイスラム教圏との戦いが勃発した。
この「聖戦」で(史実では落日を迎えていたが本作ではユーラシア最強国家の)オスマン帝国に敗北したヨーロッパの国々は、黒死病を受けて完全に壊滅。
人々は世界各地に散り散りになりながらも望郷の念を抱き続けることとなる。
なお南北アメリカ大陸はフツーに機能しているようで、劇中の台詞でアメリカ合衆国はオスマンに次ぐ2番手の大国として語られている。

ゴーレムの存在からもわかる通り本作には魔法の概念が存在し、地水火風の四大元素がゴーレムの生成に関わっており、
それ以外でも中華の風水やチョグルたちの持つブルハンの魔法の矢など、様々な異能の力が登場する。

用語解説

・プレステ・ジョアン
本作のメインとなる魔導機関車。始点は北京。
元は「聖戦」に使用されたキリスト教徒側の戦闘用ゴーレムで、鋳造され直して機関車となっている。その為、機関車でありながら自意識を有している。
後方に接続された蒸気機関車で前方に向かって押し出すことにより炉に火が入り、以降は蒸気機関の僅かな熱と蒸気を元に走り続けることが可能。
車輪の下に魔導レールを精製することで、通常ならまず不可能な急勾配や荒れ地を後続することも出来、
元々戦闘用ゴーレムなだけあって非常に頑丈なため、バリケードくらいなら体当たりで破壊して進むことも可能。
運転席は通称『燔祭堂<エンジン>』とも呼ばれ、クゥはマスコンを握ることでプレステ・ジョアン自身の意志を読み取ることが出来る。

蒸気機関車後方には一等客室・食堂車・サルーン(バー)・二等客室・貨物室等、様々な客車が連結されている。
ナンシーが乗り込んでからは更にお風呂やエステサロンまで内蔵した私物車が連結された。

名前の由来はキリスト教に伝わる伝説の王様、プレスター・ジョンから。

・黒い切符
プレステ・ジョアンに乗り込み、夢を叶えるための資格と呼べる切符。
運命に選ばれた者の手には、たとえ捨てたとしても舞い戻ってくる。

・『橋』
プレステ・ジョアンが最後の地まで辿り着くために必要な試練。
全部で7つあるとされ、その場にプレステ・ジョアンが辿り着くまでは存在しないかの如く息を潜めている。
本作における選択肢…分岐点が存在し、プレイヤーは只管死んで覚えることになる。

+ 以下ネタバレ
実は本作が死にゲーなのは七つの試練のうちの2つ目までである。
第3章は中盤でグラナダらムジャーヒディーンが襲い掛かってくるため分岐点は存在するものの、第3の橋はカイが既にクリア済みの為あっけなく素通りできてしまう。
しかも、これ以降は音声が急にパートボイスになり(エンディングのみフルボイス)、第7の試練まで全てがテキストで処理されるだけとなる。
特に第6の橋などマウスを連打していれば冗談抜きに2分くらいで終わってしまう。

本作の不満点としてこの明らかに突貫工事で作ったであろう仕様を挙げるプレイヤーは多く、
現在まで続く「星空めておは凄いものを作るが完成するかわからない」という定評の原因の一つとなっている。
だが決してこのゲーム自体は未完成品を出してきた訳ではなく、故に惜しい良作という扱いとなっている。

・エコー
プレステ・ジョアン内部に時折発生する幻影。いわゆる心霊現象の一種とされる。
実はプレステ・ジョアンの真の動力源である。

・母神ダヌ
ヨーロッパを覆いつくした「世界樹」の麓で待つとされる全能の神。
このダヌに会う事こそがプレステ・ジョアンの旅の最終目的である。
要するに超すごい神龍みたいなもの。

元ネタはケルト神話に登場する女神。


登場人物

・クゥ・クラン
本作の主人公。ドイツ出身
幼い頃から他人の心を読む能力を有していたため、絶えず思念に苦しめられ続け、酒色に溺れヤクザの狗となっていた青年。
本人の談によれば暗殺などの後ろ暗い汚れ仕事すらやらされていた。
ジェーンたちに捕まっていた所をエマに拾われ、黒の切符を手にして祖国へ戻ることとなる。
序盤はとにかく酒に溺れたDQNでどうしようもない落伍者であったが、エマの純粋な心に触れ、徐々に人間としての優しさを取り戻していく。
読心能力がある為様々な国の言語を会得するのが人より上手く、通訳としても有能。(性格悪いから嘘つくけど)

クゥの能力は劇中でも重要な役を担っており、テキストが表示されずボイスだけで思念が表現されることがある。
まあ後半に行くにつれてそう言った描写が減っていくが

名前の元ネタはケルト神話の英雄「クー・フーリン」の表記の一つ。

・エマ(CV:青山ゆかり)
本作のヒロイン。白い髪に金の瞳、やや太い眉毛の少女。常に手足を長い手袋とソックスで覆い隠しており、裸になっても外さない。
クゥをプレステ・ジョアンに導いた張本人であり、祖父モーガンからクゥの見張りを言いつけられている。
非情に無口で、クゥの能力を持ってもその心を読むことが出来ない。普段は帳面に筆談して意思疎通を行っている。
クゥと同じ客室で時間を過ごしていくにつれ、やがて心を押し込めていた理由が明かされていく。

・モーガン
エマの祖父。変な髪型の老紳士で、飛行するなど様々な術を使う魔法使い。
キリスト教系武装組織赤枝騎士団の団長であり、ヨーロッパ復興の要としてクゥに黒の切符を渡す。
実はループ前の世界で「橋の試練」に挑戦し続けていた、いわば本来の主人公となるべきだった人物である。

・スカサハ(CV:一色ヒカル
モーガンに随従する妖艶な魔女。ベーグルのような髪型。
「全知の魔女」の異名を持ち、彼女があずかり知らぬことはこの世に無いとされる。
何らかの方法で不老になっているらしく、モーガンがまだ青年の頃から同じ姿をしている。

名前の元ネタはケルト神話に登場する女神で、クー・フーリンの魔術の師。

・カイ
赤枝騎士団に所属する軽薄な男。つねに飄々としており掴みどころが無い。
一晩で1000㎞を走破するなど、異常な能力を有する。

・ジェーン・ドゥ(CV:みる)
北京黒社会の鉄砲玉で、元ストリートチルドレン時代からのクゥの腐れ縁の女性。貧乳。
身体を裏社会の技術でいじくりまわされており、オートバイを背負って走るほどの身体能力を有するが、反動として薬物中毒になっており、薬切れになると暴れる。
その能力故にクゥのことを信頼しておらず、ボコボコにすることもあるが、危機には協力することもある。ツンデレ

・渡会丹生(CV:青山ゆかり)
通称おにう。大坂毎●新聞の女記者で、眼鏡をかけ首からカメラという大昔の映画に出てくる日本人そのものの姿をしている。
明るい性格だが、鉄道オタクであり思い込みが激しい所がある。本作のコメディリリーフ的存在。
ナンシーにレズレイプされる。

・グリエル(CV:小夜月鷹)
フランス出身の「十字軍」を称する少女騎士。戦鎚を武器に使う。
非常に気丈であり、師匠であるテルツォの煮え切らない態度に苛立ちを覚えている。
常に右目を閉じている。

・グラナダ(CV:一色ヒカル)
オスマン帝国の新鋭騎士団イェニチェリに所属する少女。拳銃の使い手。
普段からあっけらかんとした性格であるが、異教徒に対しては冷酷な一面を見せる。
皇帝の命を受け、白きゴーレム列車ムジャーヒディーンを駆りプレステ・ジョアンを襲撃する。
常に左目を閉じている。
劇中では裸踊りしながら逆レ●プしてくるシーンがあり、本作がイスラム過激派に知られないか心配である

・テルツォ
グリエルの師匠である神父。辛気臭い面持ちをしており、普段から哀し気な雰囲気を漂わせる。
その正体は「串刺し公」ヴラド・ツェペシュその人であり、常に暗い面持ちなのは過去に戦争で異教徒を大虐殺したことから。ムジャーヒディーンからプレステ・ジョアンを守り絶命する。

・ナンシー(CV.かわしまりの)
第3章、アルマティ(カザフスタン)で乗車する眼鏡をかけた巨乳美女。
インドのマハラジャ(藩主)の娘*1であり超大金持ちのお嬢様だが、性欲異常者であり女性だろうが関係なく毒牙にかける変態。
エロのテコ入れ要因と思われてもおかしくないほどエロに貢献するエロリスト。なんならエンディングでもメインキャラの中で唯一回想シーンが無かった。

・アンベートガル
ナンシーの従者の眼鏡をかけた青年。常にムッツリしており、ナンシーの異常性欲に呆れている。

・ルイス
ナンシー、アンベートガルと共に乗車したロンドン出身の少年。デコッパチ。短気で気が強く、人に心を許せずにいる。
その正体はビクトリア女王の曾孫、つまりイギリス再興の要となる超重要人物。
ちなみに、元ネタは実在の人物である。

・シャルル・ド・ゴール
5章から登場する、フランス出身の怪力のコミックレスラー。
美少年アントワヌと行動を共にしており、イスタンブールでオスマン帝国に囚われていたプレステ・ジョアンの乗員救助に協力する。
いうまでもなく実在の人物である。

・けーこ
ライアーソフトお約束の伝説の女。
本作ではプレステ・ジョアンの車長であり、要するに一番プレステ・ジョアンでエラい人。

・スラーヴァ(CV:野月まひる)
プレステ・ジョアン機関助士。通称「のっぽのスラーヴァ」。大柄で巨乳、温厚でやや気が弱い所がある。
スラヴ系ユダヤ人であることから、ゴーレムには詳しい。
Hシーンでの暴走やジョエルの「昼なのに満月だからか」発言、銃創がすぐに治る体質など、色々伏線は張られていたのだが、結局何一つ回収できずに完結した。
ある意味では本作で一番損をした人かもしれない。

・ジョエル(CV:理多)
プレステ・ジョアンのパーサー(客室乗務員長)。台湾出身(日系ハーフ)で女装趣味の男の娘…なのだが、立ち絵の関係で女装が分かりづらい。
非常に生意気な性格だが、風水を用いる事で特殊な霊術を発動することが出来る。
年上であるスラーヴァと肉体関係にあり常に一枚上手であるが、スラーヴァがしょっちゅう暴走するのでHでは勝てたためしがない。

・ステラ
サルーン車に置かれている自動人形<オルゴーレ>。
在りし日には歌を奏で、ゴーレムを操っていたとされるが、今では見る影もなく朽ち果てている。
スラーヴァ同様に後半での掘り下げが明らかに足りておらず、取って付けたかのような伏線回収の犠牲になっている感が否めない。

・チョグル(CV:かわしまりの)
第2章ゲストキャラ。内陸アジアの遊牧民族ブルハンの女族長で、爆発する矢を放つ。
プレステ・ジョアンを侵入者として襲撃するが、第2の橋を攻略するために一時的に協力し、クゥの活躍で過去を乗り越えることに成功する。






追記・修正はノーヒントで1度もプレステ・ジョアンを土に返さなかった人にお願いします。

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最終更新:2024年11月05日 00:03

*1 出身はロンドン。