仮面ライダーV3対デストロン怪人

登録日:2024/10/25 Fri 00:11:22
更新日:2025/03/03 Mon 19:13:44
所要時間:約 10 分で読めます




ついにきた全面戦争(ぜんめんせんそう)のとき
ゆけ!(たたか)え!3(にん)仮面(かめん)ライダー

劇場用カラー新作

仮面ライダーV3
デストロン怪人



7月18日(水)大公開

御期待下さい








『仮面ライダーV3対デストロン怪人』とは
7月18日に公開された特撮テレビドラマ「仮面ライダーV3」の劇場用新作。
1973年夏の東映まんが祭り形式で上映された作品。
同時上映は「マジンガーZ対デビルマン」や、キカイダー01、ロボット刑事のブローアップ版*1など。

エンディングテーマは殆どここでしか劇中使用されなかった激レア挿入歌「V3のマーチ」
ただしクレジットはテレビシリーズのエンディングテーマ「少年仮面ライダー隊の歌」と誤記されている。


+ 目次




【概要】


テレビシリーズの20話(6月30日放映)、21話(7月7日放映)の前後編と並行されて行われた通称「四国編」の一編。

当時、変身ヒーローの王者として隆盛を極めていた番組に関係各所が全力タイアップ。
金閣寺っぽい場所こと「錦晴殿」をバックに変身ポーズを取る風見志郎、ハリケーンに乗って高知城の階段を駆け下りるV3など、ロケ地の愛媛は松山市と高知を中心に四国の名所を淀みなく紹介していく当時の風景を知る映像資料としても価値ある作品。

…そして、そんな場所でもいつもの危険アクションをかましている事でも有名である。火薬がものすごい。


更に、これらタイアップ以上の目玉として用意されたのが、海の向こうに消えた前作主人公・ダブルライダーの帰還。
V3がハリケーンに乗って大ジャンプするいつものオープニング映像…と見せかけて両脇から新サイクロンに乗ったダブルライダーが登場する冒頭数秒の映像がチビッ子を狂喜乱舞させた。

そのため、脚本時点でのタイトルは「V3対ダブルライダー」と、前作との共演を強調した題名だった。*2
対といっても対立するわけではなく、前作サイドとタッグを組むという後のスーパー戦隊VSシリーズのような趣である。

【あらすじ】


原子物理学者・沖田徹夫は、四国山脈の奥地で、幻の超放射能元素・サタンニウムを発見した。
それは、ウラニウムの数百倍の放射能を持つ特殊鉱石である。

悪用を恐れた沖田博士は採取したサンプルを捨てようとするが、デストロンに捕まり東京へと向かう途上だったフェリー「さんふらわ」で姿を消す。

一方、東京の少年ライダー隊本部。
沖田博士失踪はニュースとなり、風見志郎と立花藤兵衛の知るところとなる。
海上保安庁から連絡を受け、博士の痕跡が見つかった勝浦沖へと向かう。

急行した現場付近の無人島はデストロンの島としてアジトに改造されており、デストロンは強奪したサンプルで人体実験を行い威力を確信。沖田博士にサタンニウム鉱山の在処を吐かせようしていた。
それを救うべく風見志郎はアジトへと潜入する。

やがて舞台は四国へと移り、沖田博士の遺したサタンニウム鉱山の地図をめぐって争奪戦が展開されていく。
四国を陸の孤島と化し、鉱山を占有しようとする「四国占領作戦」に敢然と立ち向かうV3。
しかし新怪人・タイホウバッファローの熾烈な砲撃を前にピンチを迎えてしまう。
そんな時、海外からあの男達が駆けつけようとしていた。

脚本である伊上勝の十八番「お宝争奪戦」をベースに、32分という尺の中で四国名所めぐりとド派手なアクション、3人ライダーとの共闘がビッシリと詰め込まれた名作中編。


+ テレビシリーズの四国編あらすじ

デストロン中南米支部より四国に空輸されたSS装置。
SSとはスーパー・スリープを指し、周辺一帯の人間を全て眠らせる音波を照射する恐るべき兵器である。
デストロンはこれを使い四国を眠りによって支配する「四国占領作戦」を企てていた。

デストロンの科学者として装置の組み立てを命じられた深沢博士は、悪の企てへの加担を拒否。
装置を破壊し、設計図を持ち出して命からがら脱走に成功する。
奥道後ロープウェイの山頂で倒れた深沢博士は、少年ライダー隊・松山支部の隊員、健一少年とその姉に保護され、計画の全貌が明らかになった。

通信ペンダントによって四国→広島→大阪と、瞬く間に駆け巡るライダー隊のネットワーク。
やがて情報は東京支部の風見志郎と立花藤兵衛の知るところとなり、一行は一路四国へ。
いまここに、SS装置の設計図と深沢博士の身柄をめぐってライダー隊とデストロンの組織戦が幕を開けた。

強力な新怪人・ギロチンザウルスとドクバリグモの猛攻。
深沢博士との接触のためにホテル奥道後を訪れるのを見越したかのように、ホテルロビーに風見志郎宛に郵送された謎のメダル。

窮地に陥るV3に、メダルから響く声。
声の主は、カメバズーカと共に行方不明になった筈のダブルライダーだった。
ダブルライダーは、海の向こうオーストラリアからメダルの通信で指示を出し、V3を導いていく。

「四国占領作戦」「お宝争奪戦」と大まかなフォーマットは劇場版と共通。
V3はこのエピソードで初めてダブルライダーが健在である事を確信する。
全国をあっというまに跨ぐ少年ライダー隊の恐るべき組織力も見所。

なお、ダブルライダーのメダルはダブルタイフーンの右側にセットする事でV3がパワーアップするといういかにも販促アイテム的な登場だったが、これ以降その存在に触れられる事はなかった。






【登場人物】



「さぁて、今度はこっちからいくぞ!」

主人公。サタンニウム鉱山の地図を巡って四国でデストロンと激闘を繰り広げる。
ご存知の危険アクションは地方ロケで更に気合いが入り、二度の絨毯爆撃にも挫けず立ち向かう不死身の男。

  • 珠純子
われらがメインヒロイン。
エンディングのさんふらわ船内のプールでは、瑞々しいビキニスタイルの水着を劇場スクリーンにお見せし、全国のチビっ子達を狂わせた。

  • 珠シゲル
純子さんの弟。
東京のライダー隊員を代表して四国まで同行。

  • 立花藤兵衛
僕らのおやっさん。
滝ポジがいないので前半の無人島アジトでの攻防では志郎の相棒を務める。
後半はライダー隊会長として一行と四国へ向かい、鉱山地図を巡る争いでV3をサポート。

【ゲストキャラ:沖田三兄弟】


  • 沖田徹夫
原子物理学者。
四国で幻の鉱物サタンニウムの鉱山地帯を発見したことからデストロンに狙われる。
無人島アジトに捕らわれ、志郎と藤兵衛の決死の救出劇も虚しくタイホウバッファローの砲撃で死亡。
しかし死の間際、サタンニウム鉱山の地図の存在を明かした。
地図を巡っての争いが四国で展開されていく。

なお、危険極まりないサタンニウムとその鉱山がなぜ四国山脈にあるのか具体的な説明はない。
沖田博士は"偶然"発見したと語るのみである。


演ずる二瓶秀雄は数々の劇団を渡り歩いた俳優。
四国編テレビ版のキーマンである深沢博士も演じるという遊び心なキャスティングがされている。
後にスカイライダーの劇場版で再び博士役を演じた。
更に声優業も経験し、超電磁マシーン ボルテスVにおける影の主役、剛博士を担当することになる。

  • 沖田ひろ子
博士の妹。
サタンニウム鉱山の地図を託された。
普段はOKD(おくどうこダンシングチーム)の踊り子で、初登場シーンではホテル奥道後で「恋のメキシカン・ロック」をゴーゴーしていた。

タイアップのためとはいえ、鉱山の設計図をかなり凄い所に隠している。

  • 沖田まさお
高知のライダー隊員の少年。なので兄や姉とはえらく歳が離れている。お約束
兄弟の両親は何かしらの理由で不在であり、普段は高知の叔父のもとで暮らしている。

兄の死を伝えたくないひろ子は、急用でこれないと言葉を濁した。

【デストロン】

サタンニウムを巡って四国で暗躍。

実際に四国ロケに帯同したのは下記の3怪人のみ。
本来はタイホウバッファローに加えてドクバリグモ・ギロチンザウルスも劇場版専用怪人の予定だったが、テレビシリーズ制作の毎日放送の要望と取り決めで後ろ2人はテレビ版に先行登場。いわば「四国編専用怪人」とでもいうべき立場に落ち着いた。


  • ドクトルG
「怪人軍団よ!仮面ラーイダを倒せ!」

デストロン大幹部。
クライマックスでのタイホウバッファローへの命令は、悪の組織のブラックが濃縮された非情の通達。

ちなみに基本はアジトに詰めての指揮(セット)、ラストの怪人軍団(青梅市内の丘陵地帯)での登場のため、演ずる千波丈太郎は一度も四国の土を踏んでいなかったりする…おいたわしや。
来島どっくでV3と対峙するシーンも実は別撮りで、千波さんは近所の人気のない高所で撮影し、誰もいない地面に向かって悪の口上を叫び続けている。

  • タイホウバッファロー
「俺の名はタイホウバッファロー!風見志郎、四国にはいかさんぞ!」

劇場版専用の新怪人。
両肩に巨大な大砲を搭載した猛牛で、恐るべき威力と連射性能を誇る強敵。
V3を2度に渡り敗走させている。

クライマックスではドクトルGの命令に一度は意見具申したことから、自軍の味方にはある程度の良識を持ち合わせている。

+ 怪人軍団とともに、最後の決戦に臨むが…
高所で陣取り砲撃の機会を窺っていたが、3人ライダーの手により次々と怪人軍団が倒されていき、ドクトルGより攻撃命令を受ける。
乱戦で敵味方が密集している事を理由に「いま砲撃したら味方もやられてしまいます!」と一度は反対するも
「構わん撃て!味方がやられても仮面ラーイダを倒せばいいのだ!」と返され、上位下達には逆らえず砲撃を敢行。

結果は怪人軍団だけ全滅して3人ライダーは無事だったとさ。

責任を取るべく最後の手段として相打ち狙いの自爆特攻を仕掛けるも、3方向を囲まれての3人同時ライダージャンプ→ライダーダブルキック→V3キックの鬼畜トリプルコンボをマトモに喰らってしまい敗北。「ちきしょお…」と無念の声を上げながら爆発した。

どう考えてもドクトルGの人命軽視命令が悪いのだが、責任を感じて単身突撃するなど生真面目な性格であった。



実は、この時すでにデストロンで頭角を現していた天才科学者、結城丈二に改造されたという裏設定がある。
テレビマガジンでは手術の様子を描いた特写が撮影され、同企画の結城の日記によれば7月7日に手術完了。
デストロンの理想を信じていた結城は、遠距離からの砲撃と頑丈な肉体で安全にダム建設を行うための人員だと説明を受けていた。

  • ギロチンザウルス
四国で鉱山の地図を奪うべく暗躍。中盤でV3と対峙し、V3反転キックにより敗北。

テレビ版との関係は不明だが、特に自己紹介もせずに志郎が「おのれギロチンザウルス!」と既に交戦経験があるような台詞を飛ばしているため、再生個体だと思われる。

序盤やラストの爆破シーンのインパクトに隠れがちだが、奥道後の紅橋(みかえり橋)の上からゆうに何十メートルもある下の川まで落下して橋より高い盛大な水柱を打ち上げる死亡シーンはかなりの大迫力。土砂とか色んなものもぶち撒けている。

  • ドクバリグモ
ギロチンザウルスとコンビを組む。
中盤での戦闘ではギロチンザウルスにその場を任せて離脱し、まんまと地図を手に入れた。
最終決戦まで生き残り、再生怪人軍団とともに戦う。

  • 黒ずくめの男
名もなきデストロンの工作員。サングラスに黒スーツのいかにもな格好。

冒頭のさんふらわ船上では沖田博士を捕え、中盤の鉱山地図をめぐる錦晴殿での攻防でも再び顔を出す。
直接の変身シーンこそ物陰に隠れているが、前後の繋がりからドクバリグモの人間体だと思われる。

+ このモブにしては精悍な顔立ちと声、どこかで…?
実は、演ずるのは大野剣友会の中村文弥。
後のヨロイ元帥の演者である。

元帥との関係性は不明。(この時点では構想すらないので当たり前だが)
額面通りドクバリグモの人間体と解釈するなら、本作ラストの戦闘で死亡している事になる。



【再生怪人軍団】



お約束の高所で1人ずつ自己紹介をしながら登場。ピッケルシャークの声が裏返っている
おもにテレビシリーズの9話〜18話の怪人で構成されている。
このうち、ジシャクイノシシとピッケルシャークは序盤の無人島アジトの攻防でひと足先に顔見せ。

3人ライダーの晴れ舞台だが、因縁浅からぬハサミジャガーやカメバズーカは残念ながら未選出だった。


【ダブルライダー】

「デストロンの野望を潰すために、オーストラリアからやってきたんだ!」
「俺たち仮面ライダー3人の力で、貴様たちを叩き潰してやる!」

四国占領作戦とV3のピンチを受けて電撃帰国。
サプライズの隠し玉ではなく、劇場版の目玉として積極的に宣伝されている。

テレビ版の四国編では同じくオーストラリアより通信で助言を飛ばすという形での登場だったが、本作では日本に上陸しV3と共闘。「3人の仮面ライダーが揃って戦う日まで」の約束はついに果たされた。
変身後のみの登場だが、きちんと藤岡弘、佐々木剛のオリジナルキャスト出演であり、キャストクレジットもされている。

本作では従来の2人揃って同じ色のマスクから、2号だけ濃い緑色のマスクになっており1号と区別されている。
これはテレビ版の四国編でも同様。

【その後の3人ライダー】

四国占領を阻止したダブルライダーは、海外のデストロンと戦うべく再びオーストラリアへと帰っていく。
しかし志郎は「また日本へくるでしょう」と確信していた。

その後、1号にオーストラリアを任せ、2号はアメリカへ。
新たな刺客キバ一族に苦戦するV3のもとに再びダブルライダーが現れた。

通信機での助言のみ(四国編テレビ版)
共闘はしたが変身後のみの出演(四国編劇場版)を経て
ついに素顔の本郷猛と一文字隼人として帰ってきたのである。

…この時は何故か四国編とは逆に1号の方が深緑のマスクになっていたりもしたが。


ダブルライダーの後継者として始まった『仮面ライダーV3』は先輩との再会を経て、ヒーロー番組として一つの頂点を迎えた。
その後、いわゆる夏枯れ*3対策として、従来の正統派スタイルから様々な番組強化策が実行されていく。

移り気な子供の興味を惹くため、月刊悪の組織とでもいうべき結託部族の登場。
短いスパンで違う部族へと切り替わり、原始的でオカルティックな雰囲気を強調。
風見志郎の孤独な境遇と戦いへの決意を改めて掘り下げるツバサ軍団との戦い。
最後の大幹部ヨロイ元帥の登場に伴って深まっていくデストロンの恐ろしさと、若者を虜にしてしまうカルト教団的な危うさ。

そして最後の切り札として導入されたのが、前作のダブルライダーの成功に触発された、V3のパートナーの登場である。

1号と2号を勇姿を受け継ぐ所から始まったV3。そして3を紡ぎ、次なる第4の男の誕生のドラマ。
デストロンとの戦いは佳境を迎え、新たなダブルライダーの物語がこれから始まっていくのである。


つづく

【余談】

  • 初めて四国を舞台に活躍したライダー作品。安全都市宣言の黒い後輩は主に香川で撮影されており、愛媛、高知の本作とは差別化されている。

  • とにかく凄まじい火薬爆破量と危険アクションで知られており、様々な武勇伝的エピソードがネット上で流れてくるが、近年ではその信憑性が疑問視されているので、本項では記載を見送る。逆に言えばそれくらいの尾鰭がつくくらい凄い作品ということでもある。

  • テレビシリーズ四国編との時系列や関係性は不明。ギロチンザウルスへの台詞や、テレビの方でV3が初めてダブルライダーの生存を知り劇場版で共闘という流れなので、テレビ→劇場版の放映日(上映日)順の方が妥当ではある。
    • ただし、両作ともに往路と復路が別個に描かれているので、もし繋がっていると仮定した場合、短いスパンで東京→四国間を2往復した事になる。以上から互いにパラレルと解釈する資料もある。

  • 昭和2期の時代、スカイライダー放映直前の特番「不滅の仮面ライダースペシャル」において本作がまるごとテレビ放送された。他の先輩ライダーは2分程度の紹介に収められている中でトリに回されてのノーカット放送なあたりに、当時のV3人気が窺える。
    • ただし劇場スクリーンの作品を強引にブラウン管テレビの4:3サイズで放送している逆ブローアップ版とでもいうべき状態で、スタッフロールの一部が平然と画面外に消えていたりする。





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最終更新:2025年03月03日 19:13

*1 テレビシリーズの作品を映画サイズに画角調整して上映する作品。なので劇場用新作ではない

*2 一説には同時上映の「マジンガーZ対デビルマン」を意識したとも言われている。この対は「つい」であり、対決ではなく協力しあう2大巨頭という意味合いが込められている。

*3 夏休みシーズンと日没が遅くなる事で放送時間になっても子供達が外で遊びまわっており、視聴率が落ちやすくなる現象のこと