岬ユリ子/電波人間タックル

登録日:2025/04/05 Sat 19:00:00
更新日:2025/05/07 Wed 12:09:54
所要時間:約 22 分で読めます




「ブラックサタンと戦う、自由と平和の戦士!」

「私は電波人間タックル!」

岬ユリ子とは、1975年4月5日より放送されたテレビ番組仮面ライダーストロンガーの登場人物である。
電波人間タックルに姿を変えてブラックサタンと戦うストロンガーのパートナー。
初の女性仮面ライダー…になりそうでならなかった、しかして歴史のパイオニア的存在として半世紀経ってもなお人々の胸に残る女性戦士、変身ヒロインなのだ。

演:岡田京子(本名:半田京子)


+ 目次

【岬ユリ子】


「女だって、無理じゃないわよ!」

ブラックサタンに囚われ、悪魔山の奇械人改造室で電波人間に改造されるが、脳改造の寸前でストロンガーに救出され、共に悪と戦う事を誓う。
ストロンガー=城茂と共に日本各地をバイクで放浪しては行く先々でブラックサタンの悪を挫く、たった2人の旅人である。時代劇の素浪人、あるいは又旅の渡り鳥スタイル。
実は改造以前の一切の記憶を喪失しているという激重な設定があり、微かに覚えているのは「守」という兄の存在のみ。
ゆえに卵からかえったヒナのように茂に無垢な信頼を寄せるのだが、劇中ではあまり強調して描写されない。チビッ子が困惑するかもしれないので

「自由と平和の戦士」「性は岬、名はユリ子」など、茂の台詞を真似る癖がある。


ブラックサタンの怪事件には基本的に茂とコンビを組んで事にあたる。
2人のこそばゆくなる軽妙なやり取りはストロンガー序盤の魅力のひとつ。
返事の時は大体「オッケー」
茂が強敵を引き受ける間にユリ子を人質救助に行かせるのは黄金パターンであり、「ユリ子、子供達を頼むぞ」みたいな台詞はもはや時候の挨拶や慣用句に等しい。

「ユリ子、一応ガードしてくれ」
「オッケー、危なくなったら呼んでね」
「へっ、ご冗談をぉ、よく言うよお前も」

16歳という若い身空で改造されてしまった悲劇の少女だが、噯にも出さず気丈に振る舞う。
勝ち気なお転婆で、茂とは何かと張り合う事が多く負けん気が強い。ついつい反抗的な態度を取りがちで茂も素直じゃない性格なので痴話喧嘩も割とよくするが、なんだかんだ助けてくれる。

「負けるもんか、あんな奴に!」
「まったく世話の焼けるお嬢さんだ」

ただし背伸びしたいお年頃で、本人としては「レディ」と呼んでほしいらしい。かわいい。
でも未成年なので祝杯を挙げるシーンでは茂とおやっさんのビールに対して1人だけちゃんとジュースらしきものを飲んでいる。

「レディに向かって"貴様"は無いでしょ?」

一応この姿でも戦闘員程度なら倒せるのだが、どこかの相棒枠の先輩のように血気盛んで、功を焦って単独で奇械人にやられては逆さ吊りにされたり麻酔銃を撃たれたり目隠しされたりやけに胸を強調する縛り方で緊縛されたりぐへへな目に遭うのが様式美と化している。
地べたに磔にされたユリ子の全身に無数のガマガエルが這い回るシーンで何かに目覚めてしまった紳士な視聴者も多いのではないだろうか。多いに違いない。


年若いお嬢さんなので無理からぬ事なのだが茂に比べると捜査パートでも察しが悪く、「待ってよー!」と置いてけぼりにされるのが定番となっている。
ただし、なんかんだ安定した滝ポジがいる事実は大きく、解毒剤の調達など戦闘と別のタスクが同時発生すると大体任されてキッチリこなす。茂もユリ子をアテにしてわざと敵に捕まる作戦を取ったりもした。


子供にはとても優しく、お姉ちゃんとしてゲストの子供を保護するパターンが多め。
伊豆タイアップの都合で何の説明もなく始まるオリエンテーリングに付き合ってあげたりする。



初期は黒のライダースを着込むなどアダルトな色香を放っていたが、夏場になるにつれ年相応の可愛らしい服装が増えた。パツンパツンのシャツとムチムチの太ももが大変に眩しい。
設定では変装の達人らしく、気がつくとそこかしこに潜り込んでブラックサタンの動向を探っている。
潜入捜査として保母さんや婦警のコスプレをしてくれたり視聴者に非常に優しいヒロイン。

当初は茂と2人でバディヒーロー然としていたが途中で立花のおやっさんが出るようになってからはコメディリリーフ同士でそっちに合流する事が多く、「おじさーん」とちょっと甘えた感じで呼ぶ。おやっさんジープの助手席はユリ子の指定席である。
茂が放浪しがちで単独行動ばかりするのでコンビのシーンが目立ち、2人でシート広げてピクニックしたりフェリーとかロープウェイに乗ったりたまに絵面が怪しく見えるのは気のせいです。多分。

茂との関係については、相棒のような、兄妹のような、あるいはそれ以上の…かどうかはハッキリしない。
これについてはユリ子というキャラクターの重要なファクターでもあるので後述する。

【過去】


生い立ちや過去は劇中では兄の存在以外は謎に包まれているが、初代仮面ライダーからZXまでの10人ライダーの作品を企画した平山亨プロデューサーの小説「私の愛したキャラクターたち」では、フランスのニースで生まれた16歳で*1、貿易商の父を持つ中々のお嬢様。登山家の母の影響で徳本峠の登山中に兄ともどもブラックサタンに拉致されたとされている。



【電波人間タックル】

「エイッ、ヤー、とぉーっ!」
「電波人間タックル!」

岬ユリ子が変身する、てんとう虫の電波人間。ストロンガーと共にブラックサタンと戦った。
名乗り口上がちょっと舌っ足らずで「電波人間タック!」とルが消えてしまうのが鉄板ネタ。

初期の奇械人や大幹部、ストロンガーは「改造電気人間」「改造火の玉人間」「改造液体人間」といった通り名がつくので、それに合わせれば「改造電波人間」になる。
名前の通り電波をエネルギーとし、体内の電波発生装置でストロンガーの電気のように変身や戦闘に用いて戦う。
頭部のアンテナはあらゆる電波を受信し、怪電波などを察知すればそれは事件の兆しである。

変身の際は電波をイメージしたようなカラフルな蚊取り線香渦巻きのカットインが入るのが特徴。
当初は物陰に隠れたりクルッと回るだけで済ませていたが、5話あたりから上記の台詞と共に一定の変身ポーズを取るようになった。

初期は名乗りの際に「ブラックサタンと戦う自由と平和の戦士!」と口上を述べている。
ポーズを取った後にカメラがグルッと1周するが、たまに自分で足を動かして1周するシュールな演出が挟まれたりも。



ナナホシテントウの改造人間だが、手術途中で脱走したため完全な強化改造が済んでおらず、その戦闘能力は戦闘員なら訳ないがストロンガーや奇械人には及ばない。
電波投げを武器に果敢に立ち向かうが、なんだかんだカセットアームで強豪怪人に一泡吹かせるライダーマンとは異なりこの辺りの非力さは徹底され、各回ラストのストロンガーvs奇械人の決戦ではいつの間にかフェードアウトしたり別の場所で戦闘員を受け持っている場合が殆ど。

設定上はユリ子も改造人間のご多忙に漏れずスポーツ万能で特に合気道に秀でており、このバイタリティの高さが改造素体として選ばれた要因だと推察されている。
更に企画書の段階では「空手技を駆使する」と書いてあり、本編で「エイっ!」とシャウトするのもその名残だと思われるが、殺陣についてはお察しください。
ただし劇中の映像をよく見るとこれらの設定は微妙に反映されてるようで、殺陣でもチョップと投げ技を多用する傾向にある。*2

実は1話では番組の顔であるストロンガーより先にタックルの姿を見せている。

【誕生背景】

有名な話ではあるが、当時すでに大人気作品としての名声を欲しいままにしていた仮面ライダーシリーズにおいて「私たちも仮面ライダーごっこがしたい!」といういたいけな少女たちの声に平山Pが応えて提案し誕生したキャラクターである。
更に西部劇や又旅もののロードムービー形式を考えていたストロンガーにとって「バディドラマ」の方が話を作りやすいという事情も追い風となった。
後見人で師匠であるおやっさんではなく滝和也のような相棒で、そして女児層の希求に応えるための女性ヒーローというのが出発点である。
そのため専用バイクを乗りこなす変身ヒロインというストロンガーのパートナーに相応しい設定が与えられ、従来のライダーガールズとは一線を画した存在として誕生した。

主に毎日放送のせいで色々あって仮面ライダーの称号は授からず、それに満たない"電波人間”となっている。(このあたりも話す事が多いので後述)
またストロンガーの存在感が薄れてしまうという懸念もあったので徹底してライダー未満を意識されていた、幻の日本人プロ1号的な存在。
そのためライダーマンと同じく不完全制の象徴として口元が露出したハーフマスクとなった。

ここらあたりのファンメイドの言葉遊びや定義づけは曖昧ではあるが、具体的に言うなら
シリーズ史上初の女性変身ヒーロー、みたいな感じとなる。

しかしその存在はシリーズの裾野を広げ新風を起こし、女性戦士という分野を開拓したパイオニアであることに疑う余地はない。
正式に称号をつけ「仮面ライダータックル」とする案もかなりギリギリまで検討されていた事もあり、事実上の女性ライダー1号的存在として今もなお多くのファンに愛されている。


なので「後発のこの作品ではこう言ってたから仮面ライダーじゃない/ある」
といった後の世から見た区分分けは言ってしまえば些末事に等しい。
大切なのはキャラクターがどんな思いを込められて誕生したのか。
そしてどのように輝き、人々の胸に残ったかなのだから。


【必殺技・装備】


「今度こそライダーストロンガーより先に、このタックルが片付けてやる!」

前述の立ち位置の名残から、必殺技や専用バイクなどライダーのパートナーに相応しいお膳立ては揃えられている。
なかなか活躍できないのが惜しいところ。

【単独での必殺技】


・【電波投げ】
タックルのほぼ唯一の技。
圧縮した電波エネルギーを指を振って打ち出して敵を吹っ飛ばし、あるいは転倒させる。これが本当の転倒虫
電波エネルギーを衝撃派に変換し放射して投げ飛ばすので電波投げというらしい。空気投げとは多分関係ない。
使用の際は渦巻きのようなエフェクトが回転する。

一度に複数の相手を巻き込む事ができ、主に戦闘員散らしで活躍していた。
汎用性に飛んでおり、先に1人を投げ飛ばし、後からもう1人を飛ばして空中衝突させるというエゲツない使い方もできる。
因みに転んだ相手にもう一度使うと逆回しのように立ち上がり(ブブンガー回)以下無限ループ。後のハートQ磁力パワーの演出に近い。
初期は決めた後に茂の軽口を意識してか「失礼っ!」と言ったりしている。ごめんあそばせ。

ただし残念ながらタックルが改造途中な事もあって奇械人には通用せず、クラゲ奇械人やメカゴリラを不意打ちで転ばせたくらいの活躍しかできていない。
パワーアップした大幹部タイタンに至ってはノーガードで微動だにしないという残酷な力量差が徹底されている。

関連資料には"通常技"という表記が散見され、つまり改造度合いに関係なく元から奇械人を打倒しえる必殺技でないという扱いになっている。
そんな技を不完全改造の出力不足という悪条件の中で駆使しているのだ。

それでも戦いによる成長なのかサメ奇械人には会心の一撃を叩き込んで吹っ飛ばしており、ストロンガーをアシストしている。

技のアイディアはまたしても名伯楽・平山Pによるもの。
当時16のJKの岡田京子にハイレベルな殺陣は望めず、中の人対応が難しいタックルのために"触れずに投げる"技として制定された。
カッコよく指を振るポーズを決めれば後は大野剣友会の皆さんがトンボを切って倒れるだけで電波投げが成立するというロジックである。

・【ウルトラサイクロン】
文字通りの必殺技。
両手チョップを両の首筋に叩きつけ、大量の電波エネルギーを振動波として敵に直に流し込み、内側から体組織を破壊する。
奇械人の格上である改造魔人すら倒す破壊力を秘めているが
しかしその共振作用は未完成の改造人間であるタックル自身の体にも跳ね返り…

色んな意味でタックルを象徴する技であり、上の電波投げと合わせて大体再現される。
なお、茂もウルトラサイクロンという技の存在は知っていた模様(「何故ウルトラサイクロンを使ったんだ!」と慟哭するシーンがある)。

【ストロンガーとの協力技】

・全エネルギー集中(仮)
「一か八かやってみるんだ。どうだタックル?」
「…やるわ!」

ストロンガーとタックルが拳に全エネルギーを集中させ、手を握ったままダブルパンチする。
おおむね石破ラブラブ電パンチという認識で間違っていない。
自爆するかもしれない危険な賭けだったが何とか成功させ、灯台のアジトをブチ破って脱出した。

エネルギー放出の表現としてストロンガーはベルトの発光演出が入ったが残念ながらタックルには専用バンクがないので2本の蝋燭か燃料棒のような何かが接触して燃え上がるようなカットが挿入された。*3

・電波投げ→電キック
「ストロンガー!今よ!」
「よし、行くぞ!」

電波投げで吹っ飛ばしてから電キックで追撃するコンビネーション。
サメ奇械人を撃破した。
タックルは電波投げの前に見事な脳天チョップを叩き込んでおり、上記のエネルギー集中も同じ回(21話)の登場で、かなり珍しくタックルが戦闘面でストロンガーを的確にサポートしている話である。

【テントロー】

タックル専用マシン。実は女性ライダーが雨後の筍のように増えた昨今でもあんまりない女性戦士の専用マシンである。
最高時速は250キロと法定速度や安全面をガン無視すれば実際のバイクでもギリギリ出るか出ないかくらいの速度で、ライダーマシンにありがちな武装や探索用の計器類も存在しない。
しかし触角アンテナから大気中の電波エネルギーを吸収して走るので走行距離無制限の究極のエコカーである。
詳しくはカブトローブギの2番を聞いてください。
なぜか近年の書籍は時速200キロに下方修正したがる癖がある。

いわゆる偽装バイクの概念はなく、変身の前後を問わずユリ子は普段から乗り回す。
これは茂のカブトローも同様で、赤と黄色のバイクの2人旅は作品の風物詩である。

どういう経緯で覚えたのか不明だがバイクの腕にも覚えがあるようで、8話ではモトクロスの大会にノリノリで参加して優勝を狙っていた。
スーパーマシンにありがちな凄いGがかかるとかで常人には乗れない的なのは無いようで、劇中ではおやっさんにパクられた事がある。(おやっさんを常人と定義していいものかという問題はあるが…)

具体的な製作者などは不明。
ブラックサタン科学陣の誰かによって制作され、脱出時に失敬していった説が有力視されている。

【劇中での活躍】

ストロンガーと共にブラックサタンと戦い、作戦の分担やサポートをこなす。
しかし力量差からおやっさんと一緒に捕まって人質になるなど足を引っ張ってしまう場面も多く、実は内心ではその事を気にしていた。
それでも戦闘員は安定して撃破していたが、やがてブラックサタンが壊滅すると新たな敵・デルザー軍団が出現。
その一番槍である鋼鉄参謀配下の戦闘員にすら電波投げが通じなくなってしまう*4
絶望的な状況下でも荒ワシ師団長配下の戦闘員には善戦し最後までストロンガーの力になろうと奮戦したが、第30話のサブタイトルは

さようならタックル
最後の活躍!!

という衝撃的なものだった。

【美しい世界へ】




感動的な別れの言葉すら言えない呆気ない幕切れは、今もなお視聴者のトラウマとして刻まれている。


【茂との関係、仮面ライダーの名前】



【他媒体作品での活躍】


【ゲーム作品】

正式な仮面ライダーじゃないという点が災いしてか、意外とストロンガーだけという事が多い。
この辺もV3がいると大体セットになってくるライダーマンとは対照的である。


特撮冒険活劇 スーパーヒーロー烈伝

とあるミッションで本編通りドクターケイトに単身挑んで毒に蝕まれるが、親切な事に解毒剤のビンを用意しており生存。
ある意味スパロボ補正
クリア後には本編での離別を意識したような意味深な会話が入る。

【ライダージェネレーションシリーズ】

基本的にストロンガーしか登場しない。
1作目ではアイテムに超電子ダイナモがあるのにチャージアップになれず、何故かスカイライダー版の方を再現した通常形態での電ドリルキックという謎の超必殺技だったが…
「行くぞユリ子!」
「オッケー茂!」

2作目ではようやくチャージアップになれたストロンガーの超必殺技の隠し演出として登場。
一定条件を満たすとタックルが助太刀に駆けつけ、本編では実現しなかったチャージアップの超電子ドリルキックと電波投げの夢の共演を見せてくれる胸熱演出が登場した。*5

ストロンガーにとっては大切な存在で、ボスとの会話パートでは死者の思いを冒涜するような敵が出ると彼女を思い浮かべて闘志を燃やす。

【漫画作品】

【決死戦7人ライダー】

7人ライダーと大首領の最後の決戦まで生存し、8人目の戦士として共に戦う。
ラジオ電波や人工衛星の映像をキャッチする電波人間ぶりを発揮。
世界各地の無線連絡などもつぶさに傍受し、一行に世界の状況を伝える諜報役として活躍する。

【テレビマガジン版】

基本的に本編と同様だが、天道虫だからお日様が大好きと青空ではしゃぎ、大口開けてサンドイッチを頬張るなど無邪気でコミカル。
本編でもどの程度の立ち位置にするか定まっていなかった初期では単独でトラフグンを倒したりしているが、次第にお馴染みのタックル(戦闘員散らしと人質)になっていった。
超電子ストロンガーへの再改造後もまだ生きていたが、本編では終ぞやらなかったデルザー軍団3人がかりというガチ攻勢の前に時間切れに陥ったストロンガーを救うためにウルトラサイクロンを発動する流れになっている。
ユリ子の姿の時からマフラーを巻いており、死後は茂が形見として受け継いだ。

「諦めないで茂…あなたは、正義の戦士ストロンガーでしょう」
「最後の最後まで希望を捨てちゃだめ」
「私は、いつも茂といっしょよ」

「そうだ!俺はユリ子の形見のこのマフラーに誓ったんだ」
「どんな時でも諦めないと!」


【リメイク・別世界のタックル】


正式な仮面ライダー扱いではないが象徴的なキャラクターなので意外とお鉢が回ってくる。
マスクからロン毛が流れるユリ"コ"になったり、令和の世ではダークで黒いユリ子おねえさんになったりバリエーション豊かだが、大抵はCG技術の進歩した電波投げを出だしで披露し最後はウルトラサイクロンで道連れを狙うのが様式美である。

ネット版のスピンオフでは(リメイク版のタックルの姿で)ストロンガーと所帯を持ったり、タックルを仮面ライダーとして認めさせるために遺影を持って陳情したり上で説明したのが可笑しくなるくらいコメディの題材として擦り倒されたりするが、これもその歴史の特異点的なキャラクターの成せる技なのかもしれない。
一方、史上初の女性戦士という立ち位置を買われてか(さらっと一枚絵が流されるのみであるが)「チーム・ウーマン」という女性ヒーローチームのリーダーをやっていたりもする。


シリアス方面で異彩を放つのはSIC小説の『MASKED RIDER DECADE EDITION -ストロンガーの世界-』で、本家では厳密には両者が必ずしも連動しているわけではないが、逆説的にタックルが死ななければストロンガーは超電子の力(チャージアップ)にならず、デルザー軍団に勝てないというコラテラルダメージ的解釈がなされた。
その事実を認識した並行世界の城茂はある決断をする事になる。




東島丹三郎は仮面ライダーになりたい

別世界…というか、幼少期にストロンガーを見てコスプレするほどタックル好きになった女教師が登場するというとんでもない設定のメタフィクションである。でも本当に怪人はいたりする世界観

父が気遣って敢えて見せなかった30話(タックル死亡回)のビデオを偶然見つけてしまい、激しいショックを受け何日も泣き続けた後に「自分が意思を受け継ぐからタックルは死んでない!」という重すぎる愛を注ぐ女性である。
怪事件に備えて常日頃からタックルの衣装を一式持ち歩いており、厳しい鍛錬によって習得した格闘技で戦う。
確かに女児でも仮面ライダーごっこがしたいという夢から生まれたキャラクターなのだが…なんともはや。

直に持ち上げてブン投げるワンハンドスラムや首が折れんばかりの勢いで叩きつけるフロントスープレックスなどの投げ技全般を纏めて"電波投げぇ!"と叫びながら使う癖がある。
愛はひしひしと感じるのに、ボディコン衣装で露出が激しく殺意がありすぎて何かが絶妙におかしいタックルさん。


【余談】


  • 繰り返した通り女児層がライダーガールズ以上の強いキャラクターを求めた事を受け平山Pが発案、石ノ森章太郎がデザインという流れで誕生したが、その経緯は複雑である。
    • 当時苦戦が続いていたシリーズの打開策として最初に東映から発案されたのは恒常的な「5人の仮面ライダー」によるチーム物だったが、基本は一騎当千だったライダーシリーズで個々のアイデンティティが薄れる事を懸念した毎日放送が拒否し、この次に発案されたのが男女ペアのヒーロー、女児層の獲得を狙った女性ヒーローの相棒であった。

  • 紆余曲折して登場は決まったが「仮面ライダー」の称号を与えるか否かはギリギリまで難航し、「仮面ライダータックル」と書きながら最終的に「仮面ライダー」の部分が消されたラフ画などで知られている。最終的に「変身ヒロイン」という存在に懸念を示した毎日放送側の要望により上のアイデンティティ論法と同じ理由で「仮面ライダー未満の"電波人間"」となり、主役を食わないように簡易的なデザインにデチューンされた。
    • 纏めていくと「強い女性ヒーロー」「5人のヒーローチーム」というNET系列の番組で大人気になった要素を蹴ってまんまと競り負けた毎日放送サイドに驚くほど見る目が無かったという事にもなるのだが、ライダーシリーズにおいて安定していた一騎当千のスタイルを求める事は悪い選択肢ではないし、だからこそ圧倒的に強いストロンガーという存在が光り輝いたのもまた一面の事実である。

  • ライダーマンの口元を覆うように登場したXライダーという図式からもわかる通り、当時のライダーシリーズではハーフマスクを不完全性の象徴としていた。ゆえにタックルがそうなったのも未完成の電波人間になってからで、石ノ森章太郎の当初のデザインでは下半分もビッチリ覆われた仮面だった。
    • ただしそのデザインは氏のドクロへのフェチズムを爆発させた無骨メカニックな物で、「女の子やぞ」という至極最もな意見によって流れる事になる。
      • 番組が4クールまで続いた場合の平山Pの企画メモにはストロンガーと藤兵衛による再改造蘇生という案もあったが、そこには「変身機能を失ったロボット的性格になる」というゾッとする一文が添えられており、恐らくユリ子の演者は復帰しない+上のサイボーグ髑髏仮面になった可能性が高い。


  • 演ずる岡田氏は1974年の「安藤組外伝 人斬り舎弟」でデビューしたばかりの女優で、そこで当時の東映社長の岡田茂の目に止まった事で同じ岡田の苗字を芸名に戴き、「ちゃんとした女優にしろ」と平山Pに預けられた。お手本のような「やれ」「はい…」である。
    • 当時は若干16歳(都立日比谷高校定時制1年)のお嬢さんで、当然ながら大野剣友会の過酷アクションをこなすのは土台無理である。しかしタックルは外見上本人が演じなければ違和感が拭えず、変身の前後を問わず果敢にアクションに挑戦した。よほど危ない場面の場合は大野剣友会の清田真紀や栗原良二が中に入ったが、大半のシーンは本人が演じている。
      • トランポリンなども積極的に挑戦して入浴時に痛むほど生傷を作り、オートバイや空手の練習に勤しみ、高校は夜間に通うというユリ子もかくやのガッツあるお転婆だったが、やはり短期間で怪物アクション番組の仮面ライダーに新人女優がついていくというのは酷な話で中々ものにならず、最終的に「劇的な相打ちで花道を作る」という平山Pの判断で退場することになる。

  • タックルを切っ掛けに「志穂美悦子に匹敵するようなアクション女優に育てる」目論見が東映や岡田社長にはあったが、当人はそこまで芸能界に頓着がなく、ストロンガー終了から間もなくアッサリ引退。79年に同作でメイクを担当していた小山英夫と結婚し、調布市内に居を置き夫婦で割烹居酒屋を経営する。うら若き美人女将の姿は商店街の羨望の的だった。
    • しかし幸せは長く続かず、1986年に27歳の若さで死去。かねてより抱えていた持病の喘息の悪化が原因とされている。既に内臓はボロボロで、それでも最期の最期まで懸命に生きた一生だった。
      • 不謹慎とは知りつつも、その美人薄命を地で行く儚い生き様に、岬ユリ子を重ねてしまうファンは後を絶たない。そして夫婦の間に生まれた娘は、母親似の美しい女性に成長したという。




「ユリ子、俺に考えがある。Wiki籠り達をここに引き付けておいてくれ!」

「オッケー、任しといて!」


※追記・編集はどこか遠い美しい所でお願いします

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最終更新:2025年05月07日 12:09

*1 当時のユリ子役の岡田京子と同じ年齢

*2 もちろん剛直なストロンガーとの差別化で女性的なスマートなアクションという意味合いもある物と思われる

*3 実はこのカットすらも5話のストロンガーの戦闘シーンの流用

*4 バク転で受け身を取られ、ノーダメージで反撃されてしまっており、明らかにタックルの方が劣勢であった。

*5 そして何故か3作目のライダーレボリュージョンではこのタックルの演出が削除された。許すな