太陽の塔

登録日:2025/05/18 Sun 01:44:38
更新日:2025/05/19 Mon 13:31:14NEW!
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「太陽の塔」とは1970年日本万国博覧会(以下、EXPO'70)のテーマ「人類の進歩と調和」をテーマとしたパビリオン「テーマ館」の1つとして作成されたべらぼうな建造物かつ芸術作品である。
「あらゆる生命のエネルギー」を具現化したその姿はさながら翼を広げたようにも見える。

ご存じの通り現在も大阪・吹田市の万博記念公園にあり、北摂地域のランドマークとして現在も親しまれている。
また2025年には文化審議会によって重要文化財にするよう文部科学相に答申がなされている。

概要

「テーマ館」のプロデューサーに就任した芸術家・岡本太郎がデザインを担当し、当時の建築の最新技術を結集して作られた。
「進歩」と対をなす概念である「根源」をもとに過去、現在、未来を超えて躍動する生命の力を表している。
因みに岡本氏自身はテーマの「人類の進歩と調和」に反発していたようで、塔を屋根をぶち抜くか否かで「相手となれ合う調和は卑しい!」と主張、屋根を設計した建築家の丹下健三と揉めたとか。
ほかにもテーマ館を構成する建築物・作品として「母の塔」「青春の塔」と大屋根と同時に作られ、当時は太陽の塔が大屋根を貫通していたがこれらはEXPO'70終了後に解体されてしまい現存しない(大屋根の一部は万博記念公園の「お祭り広場」に保存されている)。

太陽の塔には4つの顔があることが知られている。

■黄金の顔(頂上部)■
金ピカの顔で避雷針の役割も兼ねた飾りもある。「未来」を象徴しておりオリジナルは銅板を組み合わせて作成されたが1992年に経年劣化でステンレス製の2代目に交換された。オリジナルの顔は「EXPO'70パビリオン別館」で展示されているので興味があったら見てみよう。
EXPO'70当時は夜になると目の部分が光っていたが終了後は消灯されたままだった。
2010年にEXPO'70 40周年記念としてLEDを設置して日没から23時まで再び光るようになった。

EXPO'70期間中に目玉部分に男が侵入、目玉部分に立てこもった事件が起きたことでも有名(通称:目玉男事件)。当時の岡本画伯曰く「イカす」とのこと。


■太陽の顔(正面部)■
「現在」を象徴している。直径12m。


■黒い顔(背面部)■
「過去」を象徴している。
ちなみに陶板の技術を活用して作られた。


■地底の太陽(テーマ館「いのり」ブース)■
「太陽の塔には『第4の顔』があった」という都市伝説を耳にしたことがあるWiki籠り諸氏も多いであろう。

結論を言うと、これは紛れもない事実である。当時の写真もがっつり残ってるし。


ではなぜ都市伝説化してしまったのかというと単純に…

EXPO'70終了後に行方不明になり、2025年現在もオリジナルは消息不明のままのためである。

もともと、テーマ館の「いのり」のコーナーに「太古」をイメージして世界89か国の仮面や宗教道具などと一緒に展示されていたもののEXPO'70終了後の撤収作業の間のゴタゴタでどこに行ったのかすらわからない状態となっており*1、今までに「夢洲に埋め立てられた」「布施畑環境センターで処分された」など多くの説が飛び交っている。ちなみに夢洲は2025年大阪・関西万博の開催地でもある。


地下展示

※EXPO'70当時の文献を参考にしています。現存しません。
■いのち■
原子などを現した光が目まぐるしく飛び交う「混沌の道」を抜けた先にあるエリア。
様々な原子やDNA2重らせん構造を模したオブジェのほか、「生命のうた」という31面スクリーンで様々な細胞や微生物の映像を投影していた。

■ひと■
旧石器時代の洞窟をイメージ。文明以前の狩猟採集時代の人間ドラマを再現。

■こころ■
「ちえ」「いのり」「であい」の3セクションに分かれていた。
それぞれ「世界中の生活用品」「世界中の仮面や神像」「様々な表情の仮面」が展示され、地底の太陽は「いのり」のところに置かれていた。


生命の樹

生物進化を図示する「系統樹」をモチーフにした作品で、生命を支えるエネルギ、未来に向かって伸びてゆく生命の力強さを表している。
ウミユリやオウムガイ、三葉虫から恐竜、類人猿、クロマニョン人など、遠い昔の原生生物から人類までの代表的な生物の模型を進化系統に沿って取り付け、模型は292体あり一部は電子制御装置により動いていた。
下の部分からは「地底の唄」が、上の部分からは「天上の唄」が響いて幻想的な雰囲気を醸し出している。

一番上まで行くとテーマ館空中セクションへの連絡エスカレーターがある。


テーマ館

※EXPO'70当時の文献を参考にしています。現存しません。
「人類の進歩と調和」をテーマの精神を具現化したエリア。矢印のような現在、過去、進化、未来を体感できる動線で観覧していた。


■地上セクション「調和の世界」■
母の塔、青春の塔と並び「世界を支える無名の人々」と題して世界中から集めた500人の一般人の写真が展示されていた。

■地下セクション「根源の世界」■
前述

■太陽の塔「生命の樹」■

■空中セクション「進歩の世界」■
「世界」「生活」「宇宙」「人間」の4つに分けて「住宅カプセル」「棺カプセル」など「カプセル」をテーマにした展示を設置。



これらの展示物は当然、EXPO'70終了とともに撤去されていったが、太陽の塔は住民の保存請願などの努力もあって現在に至るまで保存されてきた。

しかし「生命の樹」などをはじめとする内部は封印状態となってしまっていた…。


追記・修正は爆発だ!

































時は流れ2018年…
















蘇った内部展示

以前にも不定期で内部が予約制で公開されてはいたのだが、2016年より耐震・内部補強工事などが実施されたのと同時に「生命の樹」も復元が行われてかつての輝きを取り戻して2018年3月から一般公開が始まった。
48年もの間幻であった内部空間がついに開かれたのだった。

復元後は以下のように観覧できる。

■「地底の太陽」ゾーン■
行方不明になっていたうえ、設計図も現存していない「地底の太陽」をフィギュアメーカーの海洋堂の協力のもと写真や資料を基にして忠実に復元が行われた。
EXPO'70当時の「いのり」のコーナーを再現し地底の太陽には残り3つのテーマのプロジェクションマッピングを投影、当時の雰囲気を感じられる仕掛けがある。

通路には岡本氏の太陽の塔のデザイン変遷のラフスケッチも展示。
現在のデザインになるまでの過程が興味深い。

■「生命の樹」ゾーン■
耐震性の関係から、模型の数は183体に減ってしまったものの、説明は当時のものを使用し、当時の音源も使用するなど当時の雰囲気が忠実に再現されている。
一部は軽い素材で作り直したりすることで全体の軽量化も行われている。
なお「ゴリラ」の模型は金属部分がむき出しというなかなか痛々しい姿だが、「長い年月放置されていた」ということを視覚的に表すためあえてそのままの状態にされている。
EXPO'70当時はエスカレーターを使用して上に登っていたが軽量化や耐震基準の関係から階段に変更された。
このおかげで時間を気にせずじっくり回れるようになったほか、エレベーターも再整備され一般利用可能(要予約)となった。

また腕の部分はエスカレーターなどが保存されており当時の雰囲気を感じられる。当然動いていないが


余談

若い太陽の塔

日本モンキーパークにはこの太陽の塔の前に制作された「若い太陽の塔」がある。
EXPO'70プレイベントの一環で制作され、こちらも一度は非公開になっていた過去がある。
そう、芸術の巨人・タローマンの顔である!

20世紀少年』とのタイアップ

同作にもこの太陽の塔、もとい「ともだちの塔」が登場するため、実写映画3部作の第2作『20世紀少年 第2章 最後の希望』公開に合わせて2009年1月19日限定で「ともだちの塔」仕様に装飾されていた。

フィクションにおける太陽の塔

  • 特撮『TAROMAN』最終話では最強の奇獣のモチーフとなる。
  • 森見登美彦 のデビュー作『太陽の塔』では作品のシンボル的な役割を果たす。
  • 漫画『究極超人あ~る』終盤にて、成原博士が春風高校に建造した屋上要塞のモチーフとなる。
  • OVA『Compiler』では「大阪の破壊神」としてクライマックスを飾る。
  • びじゅチューン!』では、24曲目「保健室に太陽の塔」のモチーフとなる。


追記・修正は半世紀近く使わなかったPCからお願いします。


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最終更新:2025年05月19日 13:31

*1 1970年代後半まで兵庫県の施設で保管されていたことは確実視されている。