MtGの世界ではエラッタはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(MtGの版元 通称ウィザーズ)の手によりオラクル(適正な全カードの最新の文面を含む英語文献 英語なのはそもそもがアメリカ発のため)の更新という形で行われる。
大体は新エキスパンションが出た後、新カードの挙動に合わせて古いカードの近似した挙動部分のオラクルを改訂する場合が多い。
「~は破壊されない→破壊不能」みたいに一見変わってないように見えても、内部的には挙動が変わってる場合もあり、それはそれで戦術を見直す事があったりするが。
MtGでのエラッタは主に
- ① 明らかにルールと整合性が取れてない
- ② ミスプリント
- ③ 翻訳ミス
- ④ クリーチャータイプなどサブタイプの変更・統合又は廃止
- ⑤ ルール改定につき印刷した当時の挙動と異なる挙動になった
- ⑥ カードパワーの調整(パワーレベル・エラッタ/Power-Level Errataとも)
あたりに大別される。
①と②については、これがエラッタ本来の趣旨なので理解しやすいだろう。
③は、MtGは多言語間で遊ばれているカードゲームであり、それらの間に整合性を持たせるためにも必要である。
日本語版の誤訳については、「私は軽い」(《闇の天使セレニア》)辺りが有名どころか。
あと「英語名は違うが、日本語だと前に印刷したカードと同じ名前の別のカード」を印刷してしまい、片方を修正した事がある。
最近頻繁に「a」とか「each」を翻訳の時に抜かして、プレリリーストーナメント直前にエラッタが出ることが多い。
大丈夫か日本支社。
④は⑤とも関わっており、現在のルールでは廃止されたサブタイプを修正するための物である。
「壁」「レジェンド」「インタラプト」といった単語にピンと来る人はかなりの古参ではなかろうか?(これらはいずれも廃止されたルール用語)
「商人の巻物」とか「オオアゴザウルス」は②なのでこっちじゃない。
またクリーチャー・タイプもかなり大規模に改変が行われており、特に部族をテーマとしたローウィン・ブロックの発売前に行われた大変更が代表的。
これにより殆どの人間クリーチャーに職業タイプが与えられて ニートがいなくなり、 イシュトヴァーンおじさんや お上品なおば様もいなくなってしまった。残念。
「人間」というクリーチャータイプにいまだに馴染めない古参は筆者だけではない(と思う)。
逆にクリーチャー・タイプ「無し」にされたクリーチャーが居るのだが、このエラッタは正直拍手を送りたい。
④に近いものとして既存能力のキーワード化がある。例えば「到達」「威迫」「生成」あたりがこれ。
概ね分かりやすくするため、長い文章を簡潔にするため、検索しやすくするためのキーワード化であり挙動そのものは変更されないが、キーワードを他カードから参照されたりするなどで影響が出ることもある。
「破壊不能」なんかはキーワード化したことで多少弱体化したりもした。
ちなみに文章削減がどれほどかというと、英語だと「put XXX token onto the battlefield」だったものが「生成/create」の導入で「create XXX token」になった。
なお日本語では「トークンを戦場に出す」が「トークンを生成する」になっただけなのであまり変わらなかった。
少し例外的なパターンだが能力語が追加されることもある。
例えば「上陸」が落葉樹(たまに使うメカニズム)化したことで「上陸を持ってないが上陸と同じ挙動をするカード」に上陸が追加されたことがある。
能力語は(銀枠でもない限り)他カードから参照されないので追加されても挙動に一切変化はない。
⑤について、これが一番の問題点である。
特にこれが多く発生したのは基本セットの第5版から第6版への以降に伴うスタックルールの導入期なのであるが、この時期はテンペスト・ブロックそしてウルザ・ブロックの超強力カードの連発により【 MoMa】や【 メグリムジャー】といったMtG史上類例ない凶悪コンボデッキが跳梁跋扈した 冬の時代でもあった。
結果スタンダードでも 禁止カードが連発される事態が発生、ゲームバランスは崩壊の危機に直面していた。
そんな状況下でルール変更により禁止カードがさらに増えたなら訴訟騒ぎにも発展しかねない。そうしたことから行われたのが⑥のパワーレベル・エラッタである。
…が、エラッタには禁止カードとは別の問題もある。カードゲームにおいて、印刷されたカードと実際の挙動が別物というのは宜しくない現象である(一応、公式大会は「オラクルを参照する」で済むが野良試合ではそうもいかない)。
それに「エラッタするのはどうせ禁止カードの枚数減らしのためでしょ?」と白い眼で見られるし、バランス上問題が無くなったからといって「禁止カード解除」で対応する(モダンやレガシーでもよく行われている)こともできない。
そうした事情から、現在のウィザーズは「最後に実際にカードとして印刷されたテキストに近づける」「カードパワー調整のためでしかないエラッタは外す。」という方針に変更している。
(ただし、そのせいで禁止カードが増えた例もある。後述する《 Time Vault》や《閃光》など)
この方針により《冬の宝珠》や《土牢》は改悪される羽目になってしまったのだが、ウィザーズ社的には「最後に印刷されたテキストに合わせる」という点さえ準拠していれば良いらしく、再録のドサクサに紛れて挙動を微修正することで方針変更以前の効果を復活させている(いずれも詳細は後述する)。
直接にはエラッタでは無いが、意図した挙動をしないとしてリメイクを受けたカードが刷られる事もある。
代表例は《忘却の輪》→《払拭の光》。
挙動的には両方共「このカードが出ている間、土地以外のカードを追放。このカードが戦場から離れると追放されたカードが戻ってくる」なのだが、前者のみこの能力が別個の能力となっているため、《忘却の輪》を出して即《解呪》で破壊する。
すると何が起こるか?
《忘却の輪》が設置される
↓
「土地以外のカードを追放する」という能力がスタックに乗る
↓
この能力の誘発に対応して《解呪》で《忘却の輪》を破壊する
↓
《忘却の輪》が戦場を離れた事により「このカードによって追放されたカードを戻す」能力がスタックに乗る
↓
逆順(先入れ後出し)で処理されるので、先に追放されたカードを戻す能力が解決される(戻すカードが無いので無視される)
↓
土地以外のカードが追放される
↓
永久に追放したものが戻ってこない
という謎挙動となってしまう。
そのためリメイク後の《払拭の光》では、このテクニックが使えないように、追放と戻す能力がひと続きの物(≒これが戦場を離れるまでそれを追放する)になっている。
代表的なカード
"Time Vault"すなわち『時の櫃』を意味するカード名通り本来は「自分のターンを貯蔵し(=飛ばし)、のちにターンを得る」効果を意図してデザインされた。
……筈なのだが、タップのみでターンを得られるという緩すぎる条件のせいで、実際は様々な無限ターンコンボで悪用されてきた。
そのたびにウィザーズはエラッタで封じてきたのだが、バグデッキが出来たり無限ダメージが出来たりとイタチごっこの様相を呈することに。
総計四回のエラッタを経て流石にウィザーズも嫌気が差した(?)のか元のテキストに戻してしまい、お手軽無限ターンが解禁。
代替として晴れてレガシーで禁止、ヴィンテージで制限と相成った。
悪用方法の詳細は当該項目を参照のこと。
初出はアラビアンナイト(ちなみに「ルフ鳥」とは、「シンドバッドの冒険」に出てくる像をも運ぶ巨大な鳥である)。
戦場から墓地に置かれたときにトークンが出る初めてのカードだが、当時のテキストでは戦場以外から墓地に送られたときにも誘発していた。
そのため後攻でわざと手札を一枚も使わずに8枚にしてクリンナップ・ステップで捨ててトークンを出すプレイングが成り立った。
黒い人がハンデス撃ったら逆にトークンで攻撃されましたとか悪夢である、悪夢を使う方なのに。
また同ブロックには《 Bazaar of Baghdad》という最高の相棒も存在したが、当時は余り注目されていなかった様子。
そのため誘発条件が「{ 戦場から墓地に置かれたとき(現在のオラクルでは「死亡した時」)」に改訂され、これがMtG史上(多分TCG史上でも)初のエラッタとなった。
今風に考えるなら「マッドネス:0マナ」どころか「あらゆる領域から墓地に置かれた時」と書いてあるような物であり、そりゃどう考えても強すぎである。
- 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》・《水蓮の谷間/Lotus Vale》
伝説の《 Black Lotus》の調整版。元が元であるだけに、前者は手持ちの手札全てを捨てる、後者はアンタップ状態の土地二枚を生贄に捧げると、強烈なデメリットが付与されている。
……が、先述のスタックルール導入に伴い「コスト未払いのパーマネントは起動型能力を使えない」というルールが廃止されたことで、
前者は○○唱えますの宣言をしてからマナを出して手札を捨てる、後者は墓地に行く前にマナを出せたため《Black Lotus》と同等の凶悪なマナ加速と化した。
これは流石に問題があったためエラッタが出され、《ライオンの瞳のダイアモンド》はインスタントが唱えられるときのみ起動可能。《水蓮の谷間》はコストを支払わないと戦場に出ること無く墓地行き。となり、簡単には使えなくなった。
ただ《ライオンの瞳のダイアモンド》は「ドローカードを先に唱えて、その解決前にスタックで起動すると、手札を捨ててからドローになるので、実質フリースペルになる」とか、追放ではないので2マナで墓地から手札に戻せる《オーリオックの廃品回収者》との2枚で無限マナコンボ等の悪用手段があり、ヴィンテージでは制限カードに指定されている。
先述したカードパワー調整エラッタの解除でもこれらのカードは意図的に外されたことが公式で明言されている。
1マナ12/12・トランプルという「コスト・パフォーマンス?何それ美味しいの?」なアーティファクト・クリーチャー。
当然ノーデメリットなわけも無く「戦場に出た時パワーの合計が12以上になるようにクリーチャーを生け贄に捧げるor自身を生け贄に捧げる」のだが、日本を代表するコンボ職人が「一瞬でも戦場に出るんだ、戦場に出る時パワー分のダメージを与える《伏魔殿》を事前に出しとけば1マナ12点 火力に早変わりする」というコンボデッキ「パンデモノート」を開発、一躍有名になった。
このコンボも《水蓮の谷間》同様、生贄能力を戦場に出すに際して行うことでキチンと生け贄に捧げないと戦場に出ず直接墓地行きとなるエラッタにより封じられていた。
このエラッタ中にも《Illusionary Mask》とのコンボ【ドレッドマスク】」で暴れていた実績もあり、無事元に戻されることに。
オラクルが戻ったお陰で生贄能力を《もみ消し》で打ち消し、実質(1)(青)で出す【スタイフルノート】なんてのも可能に。
オリジナルデザインは、いわば「クリーチャーへ擬似的に『瞬速』を与える」というもの。
………が、実際には「たった2マナで、どんなクリーチャーでもインスタント・タイミングで戦場に出し、またそれを即座に墓地送りにできるカード」として悪用されることが多い。特に《アカデミーの学長》とのコンボが凶悪でありエラッタを受けたが、その解除で元に戻されることに。
しかしその頃にはさらに相性の良い《変幻の大男》も登場しており、1キルを上回る後手自分のターンが来る前に勝利という謎の物体を生み出す【ハルクフラッシュ】はレガシーを席巻。一瞬でレガシーで禁止指定、その後ヴィンテージでもサーチ手段の《商人の巻物》も巻き込んで規制され、文字通り「閃光」の如く一瞬で活躍を終えた。
ライブラリーを食べるとパワーとタフネスが成長するアーティファクト・クリーチャー。しかし一定以上にデカくなると自壊してしまうため、単純には使いづらい。
が、スタックルールの導入により「自壊させる能力を誘発・スタックさせる→それを無視してパワーが20以上になるまでライブラリーをモグモグ→自壊する能力を解決する前に《投げ飛ばし》」することにより、致死量の《Phyrexian Devourer》を投げつけることが可能に。
ウルザズ・レガシーで一枚のアーティファクトを餌に任意のアーティファクトをサーチする《修繕》が登場していたことも追い風であり、最速2ターンKillさえ可能だった。やっぱ修繕はダメダメだな!
この日本を代表するコンボ職人(さっきの【パンデモノート】製作者と同じ人)が開発したコンボデッキ(《Phyrexian Devourer》のイラストから【おにぎりシュート】と呼ばれる))は、世界大会での日本勢大躍進に大きく貢献する!…と思われたのだが。
当の大会の前日に《Phyrexian Devourer》に「パワーが一定以上になると自壊する能力が、毎回のライブラリーを食べる能力起動で誘発する」緊急エラッタが出され、このデッキは幻となって消えてしまうのである。
その後このエラッタも元に戻されたが、《修繕》に規制のかかった現状では活躍は望むべくもなく…。
- 《巨大鯨/Great Whale》他フリースペルクリーチャー一同
フリースペルとはウルザ・ブロックで登場したシステムであり、いずれも「その呪文の解決時(クリーチャーならば戦場に出た時)、マナ・コストと同等の土地をアンタップ」する形をとる。
……だが、コスト削減カードや複数マナを生み出す土地と組み合わせればフリー(無料)どころかマナ加速にさえなってしまう。
特にクリーチャーについては「例えば4マナのリアニメイトカードで6マナのフリースペルクリーチャーを蘇生すれば2マナ分浮きマナが出る」と、これらを介さずにもマナを生み出すことが可能だった。
どういうわけかこの直前のテンペスト・ブロックが《繰り返す悪夢》や《死体のダンス》といった何度も利用できる蘇生カードが異様に豊富だったこともあり、各所で無限マナコンボを生み出すことに。
スタンダードで禁止カードになった《時のらせん》と併せて、フリースペルってのはそもそもダメだと印象付けるのに十分な役割を果たした。
その後これらのクリーチャーには「手札からプレイされた場合」という一文が書き加えられたが、こちらものちに元に戻された。
「待ち伏せ」を意味するカード名通り、本来は1ターン限りのブロッカーを用意するカードであり、攻撃に使うには別途速攻付与手段(《ヤヴィマヤの火》など)が必要。
…だったのだが、第6版にともなうルール変更により、対戦相手の終了ステップに唱えることでトークンを次の自分のターンまで生存させ、そのまま攻撃に移れるテクニックが可能になってしまった。
1ターン限りとはいえ3マナ6点ものダメージ効率は、「歩く火力」として名高い《ボール・ライトニング》に匹敵する。そのため、このテクニックを特に【 ホワイト・ライトニング】とも呼ぶ(白には《栄光の頌歌》等全体強化手段が豊富なため、実際の破壊力は本家を上回る)。
このギミック(を組み込んだ 白ウィニー)は当時のアメリカ選手権をも制したが、のちに「戦闘フェイズ中にしか唱えられない」というエラッタが出た。
その後「実存」というルールが生まれ、これを使う文章に変更されて、速攻付与がなければ攻撃出来なくなったため唱えるタイミングは限定されなくなった。
現在では基本ルール変更によって実存も消滅し、文章も「ターン終了時」から「クリンナップ・ステップの開始時」に変更されて、確実にそのターンにトークンが消え去るようになった。
この変更以外は原文の形に戻っている。
- 《玉虫色のドレイク/Iridescent Drake》
本来の意図は、壊れやすくてアドバンテージを失いやすいオーラ(当時はエンチャント(クリーチャー)表記)を墓地から拾えるようにとデザインされたカード。
だが、つけたクリーチャーが墓地に送られた時に戻ってくる《支配魔法》の調整版《誘拐》と組み合わせることで「生贄に捧げる」能力を延々と使いまわすことができる。
そこでエンドカードに《狂気の祭壇》を採用した無限ライブラリー破壊コンボデッキ・【玉虫アルター】が生み出された…が、《玉虫色のドレイク》初出のウルザズ・デスティニー登場から僅か一ヶ月でエラッタ(こちらも「手札からプレイされた場合」の一文が書き加えられた)が出され、このデッキも幻のデッキとなった。
のちにこれも元に戻されている。
「ポータル三国志」に収録されたカード。墓地に送られたときに手札に戻ってくる。
原文では「戦場から」墓地に送られたときという制約がなく、異常に凶悪だった。ターンに1回の制限さえないため、かの《ゴブリンの太守スクイー》さえ霞むほどの超ぶっ壊れカードである。
ポータルセット内に限っても手札破壊や打ち消された時でさえ復活してくるため、かなり厄介。
その後ポータル系もエターナルで使用可能になったが、その頃までエラッタが為されていなかったら……と思うと、想像するだに恐ろしい。例えば《野生の雑種犬》や《 サイカトグ》でアッサリ無限P/Tになる。
まーポータルはウィザーズにすら「あれはMtGじゃなくてポータルっていうよく似たゲーム」とまで言われてたので、エターナル解禁まで労力を割いてエラッタする必要を感じてなかったのかもしれない。
- 《吠えたける鉱山/Howling Mine》等、黎明期のアーティファクトの一部
作動する条件に「アンタップ状態である場合」の一文が入っているが、これはかつてのルールが「タップ状態のアーティファクトの常在型能力は機能を停止する」というシステムだったため。
現在常在型能力を持つアーティファクトのそれはタップされようが関係なく働くが、旧ルールのシナジーを活かせると判断されたカードに関しては、このルールを再現するために追加された。
代表とした《吠えたける鉱山》もアルファ版から第5版までのカードにはこの1文が入っていない。
この中で特徴的なのは《冬の宝珠》。このルールにのっとりエラッタでアンタップの一文が追加されたが、第6版以降収録を逃したのが原因で、
「最後に印刷したテキストに可能な限り合わせる」というWotCのエラッタ修正方針に巻き込まれる形で一時的に消滅していた。
しかし久しぶりに印刷されたエターナルマスターズにて再エラッタ。《吠えたける鉱山》同様タップでオフにする事が可能になり「相手のターンエンド時に何らかの形でタップすると、自分の土地は全てアンタップするが、相手の土地は1枚しかアンタップしない」というハーフロックコンボが復活することに。
日本語版の印刷カード名は《ファルケンラスの貴族》
が、1個前のエキスパンション「イニストラード」で既にその名前のクリーチャーを出してしまっている。
前にも同じカード名にしてしまうというのはあったが、あまりにも早すぎる再登場に「日本支社なにやってんだ」の声が飛び交った。
さらに新作発売時期にカードの内容を解説する「日本語ガイドブック」ではカード名にエラッタが出てますと警告しながら《ファルケンラスの貴主》とさらにミスする始末。
そのグダグダっぷりから日本では貴族Bという渾名が付けられるなど、ネタにされまくることに。
そしてネタにされまくったせいでこのカードがとんでもないパワーカードであり、後にデッキタイプとして名を残す事になるとは誰も思わなかった。
余談だがギルド門侵犯ではまた名前被りが発生したが、なんと古い方のカードの名前が書き換えられた。
まあこちらは11年前のカードだし、元のカードがあんまりにも弱すぎて誰も使わなかったせいで忘れてられてても仕方ないけど。というか忘れられてたからかぶったんだけど。
モダンホライゾン2でもまたまた名前かぶりが発生し、今度も古い方の名前が書き替えられた。当事者クリーチャーの呪文面の方とはいえスタンダードで現役だったんですけど。
3度目のイニストラード次元のブロックである『イニストラード:真夜中の狩り/真紅の契り』でも《税血の徴収者》が前後編でそれぞれ別に登場しており、もはやお約束と化している。
上記貴種の誤植から3年と8ヶ月後、《破滅を導くもの》というカードが刷られた。なぜか2種類。
もちろん絵違い2種類などではなく間違って同じ名前を2種類のクリーチャーに付けてしまったのだ。
しかし今度はよりにもよって同じエキスパンション内のカードである。今回のエルドラージは「~もの」という名前が多いのは確かだがそれにしたってひどい。
すぐに公式アナウンスで片方を《破滅の伝導者》にするというアナウンスが行われたが、プレイヤーからは「翻訳班は同じエキスパンションでカード名被りがないかどうか確認してないのか」等と言われるはめに。
近年のエラッタの中で最も大規模に影響を及ぼしたエラッタ。
ドミナリア発売時に「プレイヤーへのダメージはプレインズウォーカーに移し替えることができる」というルールが廃止されたため、それまでに印刷されたプレイヤーを対象にとる火力の多くがプレインズウォーカーを対象に取れるように変更された。
なお、ダメージ量が対象プレイヤーによって変動するカードはこのエラッタの対象外。
《激情の薬瓶砕き》は対象がランダム(=プレイヤーを対象に取らない)にも関わらずエラッタ対象になっているが、これは二人対戦だと実質対象が一人しかおらず対象指定火力と大して挙動が変わらないからだと推測される。
複雑な挙動がこの時代まで残っていたのは、エラッタの枚数があまりにも多すぎる事が原因と思われる。対象を取る部分の変更だけでも1000枚オーバー、これに加えトランプルに書いてある注釈文まで含めると……。
が、これでも時のらせん期に提案されたインスタント関連の改訂よりは遥かに小規模であるし、ゆえに断行できたのだから、MtGのカードプールがいかに膨大かを窺い知れる。
この際、プレイヤー・プレインズウォーカー・クリーチャーのすべてを対象に取れるカードは英語版などでは「any target」と纏めて表記されるようになっている。なお日本語版テキストはより長くなった
そのため、後に新しく「ダメージを与える」という概念を用いるカード「バトル」が登場した際にはほとんどエラッタする必要がなかったという副次効果が生まれた。日本語版カードは逆に大規模エラッタで「一つを対象とする」と表記されるようになりようやくスッキリした。
- 《パララクスの波/Parallax Wave》、《パララクスの潮流/Parallax Tide》、《パララクスのきずな/Parallax Nexus》のパララクス・エンチャント
自身から消散カウンターを取り除くことで、一時的に何かを追放することが可能なエンチャント3種。
本来はこれが残ってる間、一時的に除外するカードというコンセプトで作られたが、冒頭部の《忘却の輪》同様の手段で永久追放する事が可能になっている。
コンセプトから逸脱しまくってるのを重く見たウィザーズは「自身が戦場に出ている場合」の1文を入れて、この手段を封じていたが、他のパワーレベル・エラッタ開放とともにこのテクニックも解禁された。
ちなみにパララクスの波の場合、エンチャントをクリーチャー化する《オパール色の輝き》とのコンボがあったためもう少しエラッタが加えられていた。《オパール色の輝き》があると《パララクスの波》自身もエンチャント故にクリーチャー化するので
「《パララクスの波》の能力を起動し、追放するクリーチャーを対象に取る→最後の消散カウンターを取り除く際、自身を追放対象にする→自身の追放を解決、《パララクスの波》が戦場を離れたのでそれにより追放されたカード(つまり自分自身)が戻ってくる(もちろんカウンターは元に戻っている)→順序追放するの能力を解決、ただし戻すの方は解決済みなので機能しない」となり、対象に取れるクリーチャーなら全て追放することができる。また「能力を起動、解決する→自分自身を追放する→戦場を離れたので全てのカードが戻ってくる」という順番にすれば何度も戦場を出し入れすることもできるため、ETB(旧称はCIP)能力などを使い放題である。このため「戦場に戻すカードは自身以外のカードのみ」というエラッタがなされていたが、これも解除されたためこのテクニックも解禁された。
3/3飛行をあげる代わりに相手のクリーチャー1体を貰うというコンセプトのクリーチャー。
ただし元のテキストの場合「この能力をスタックに乗せてる間に対象を除去ると、対象不適正なので《金粉のドレイク》を差し上げるの方が無視され、自分で使える」という悪用手段が発覚。
後に1マナ3/2飛行(但し条件付き)とか頭悪いのが出てくるが、2マナ3/3飛行は明らかにオーバースペック、ぶっちゃけ5マナ相当。
一度目のエラッタでこれが出来ないようにされたが、今度は《もみ消し》での踏み倒しですら出来ないテキストになってしまったため、再エラッタで交換するか墓地に行くかという2択を確定させられるようになった。
ちなみに「この能力は、その対象が不正になったとしても解決される」(対象不適正による立ち消えが行われない)という特殊ルールが適用されるのは現時点でこいつのみ。
前代未聞となるキーワード能力のエラッタ。
そのため厳密にはルールの変更である。
最初の能力は「 デッキ構築に制限をかける代わりに1回限りゲームの外部からこれを持つクリーチャーを唱えて良い」という能力だったが、実質的にハンデスされない初期手札も同然なので弱いはずもなく、ほぼ全環境で採用される異常なオーバーパワーメカニズムになった。
当初こそ個々のカードが規制されたが、そんなことしても根本的な問題は解決しないため、抜本的に能力そのものが見直された。
現在の能力はソーサリー・タイミングで(3)を支払うことでゲーム外部(サイドデッキ)からこれを持つクリーチャーを手札に加えるという能力に変えられている。
上述の《忘却の輪》の先祖みたいなカードで、クリーチャーを牢屋に閉じ込めておくというフレーバーのカード。
最初は「クリーチャー1体を対象とする。それは《Oubiliate》が戦場にある間、カウンターとオーラを付けたままゲームの外部にあるかのように扱い、《Oubiliate》が戦場を離れた時それはタップ状態で戻る」というようなテキストで、その後フェイジングが登場したことで「クリーチャーをフェイズ・アウトさせ、《Oubiliate》が戦場を離れるまでそれはフェイズ・インできず、《Oubiliate》が戦場を離れたときタップ状態でフェイズ・インする」とオラクル変更された。
しかしその後なぜかフレイバー的趣きを残したままフェイジングを用いない形に変更した結果、「カウンターの数を記録してオーラとともに追放し、《Oubiliate》が戦場から離れたとき記録していたカウンターを載せオーラごとクリーチャーをタップ状態で戻す」というオラクルになったが、案の定処理がめんどくさい上にテキストが滅茶苦茶長くなってしまった。
最終的にフェイジングが部分的に復活しつつあることも踏まえ、「ダブルマスターズ」再録時に再びフェイジングを使用するテキストに戻された。一部の挙動が変更されることになったが、処理は非常に楽になっている。
MTGアリーナオリジナルのカード。どちらも永久に=領域を移動しても持続するマイナス修整という、DCGならではの能力を持つ。
……のだが、自身が戦場を離れた時にパワー1以下のクリーチャーを墓地から戦場に戻す《夕暮れヒバリ》と組み合わせると、タフネスが0以下になったヒバリが死亡した直後にパワーとタフネスが下がった自身を蘇生させ続けるという無限コンボが成立してしまう。《血の芸術家》などの死亡時や戦場に出た時に誘発する能力と組み合わせることで勝利に直結するため、2021年10月14日付で修整の対象が相手がコントロールする生物のみにエラッタされ、コンボは成立困難になった。
同日の告知では他にも3種のオリジナルカードにパワーレベル・エラッタを行うと宣言されており、デジタルの独自性を感じさせる。
- 《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》
タフネスをパワーに変換する能力の元祖であり、 白黒緑の組み合わせを「ドランカラー」と呼ばせたほどに環境を定義したパワーカード。
だが、名前をよくみるとわかるが「塔」(つちへん)を「搭」(てへん)と 誤植されてしまっている。
搭乗もとい登場してから15年後に出た「ダブルマスターズ2022」でやっと《包囲の 塔、ドラン》と正しい名前にエラッタされた。
番外編
伝説の土地。なんと上記の全てのエラッタを亡き者にしてしまえるオドロキのカード!!
…そんなカードが公式大会で利用できるはずはなく、このカードは銀枠、アンヒンジドのカードである。カード名(「開発部の秘密の部屋」の意)から分かる通り、開発側のお遊びといった感じ。
最初に述べたウィザーズのエラッタ方針の転換により、最近はパワーレベル・エラッタそのものをしなくなり、エラッタされたカードも徐々に元に戻されつつあるので、このカードの名前が挙がることも少なくなってきたのは寂しいところ。
それでも置物になる《オオアゴザウルス》(日本語版、タイプ欄がオオアゴザウルスになっているためクリーチャーですら無くなる)とか、1ターン目にエムラ様降臨が可能な《擬態の仮面》(日本語版、「クリーチャーを1体対象にする」が抜けているため、ライブラリーから何でもクリーチャーを引っ張れる)とか、《破滅のロッド》(フランス語版、なぜか1ダメージが3ダメージに)がめちゃくちゃ痛いなど、結構ネタに出来ることも多い。
またイクサラン期にプレインズウォーカーの扱いについてPWの唯一性ルールがレジェンドルールに統合されたお陰で、神ジェイスを素で4体並べる事も可能となった。
《不動のアジャニ》を3体以上並べて全員で-2能力を使うと逆に忠誠度が増えるというネタも。
こちらはカードに書いてある指定した数字を1つ増減させるエラッタを作る銀枠カード。しかししょせん数字が1つ変わった程度で及ぼされる影響はたかが知れているし、英語版で数字が書いていないものには効果がない。正直言って地味。
MTGアリーナで行われたイベント。当時のヒストリックの 禁止カードの大部分にパワーレベルエラッタを施したものを使用したヒストリック構築イベント。
まだ強いけどぶっ壊れではないくらいの性能になった《 王冠泥棒、オーコ》《 死者の原野》、見るも無残に弱体化し使いようがない《荒野の再生》《運命のきずな》、なぜか強化された部分もある《時を解す者、テフェリー》など、弱体の度合いは結構ばらつきがあった。
MTGアリーナ専用フォーマットで、パワーレベルエラッタが解禁されており、スタンダードで使えるレア以上のカードのうち強力すぎるカードの弱化とあまり使われないカードの強化が行われている。
アルケミー専用カードがさらに強すぎる為、前者はともかく後者は結局使われていない。
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