登録日:2026/04/28 Tue 02:51:00
更新日:2026/05/06 Wed 00:47:20
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タイム・ウォー(ドクター・フー)
【本記事を読む上での前提知識】
まず、ドクター・フーというドラマについて。
前述の通り日本での知名度は低いが、
本国イギリスにおいては初放送の1963年から、(途中で休止期間を挟みつつも)現在に至るまで長々と続いてきた長寿番組であり、イギリスでは「たとえ熱狂的ファンでなくても大半の人は名前や存在を知っている」というような立ち位置の作品である模様。
ポリスボックスの外観をしたタイムマシン兼宇宙船「ターディス」で時空を旅をする異星人(タイムロード)ドクターと地球人の相棒が、行く先々で起こる騒動を解決していく、というのが主なストーリーの流れ。
さらにこの番組の特徴として、主人公ドクターは肉体が寿命を迎える、あるいは致命傷を負うなどすると、12回まで『再生』により、それまでの記憶を引き継いだまま全く新しい外見に生まれ変わる。(メタ的には演者の交代)
再生後の外見や性格は老若男女千差万別で、以前とは雰囲気がガラリと変わることもあるが、それでも作品そのものの流れは変わらない。
これが、このドラマが長期にわたって継続している所以でもある。
時には特番として過去のドクター達が再登場し、現行のドクターと協力、事件解決に奔走する、という長期シリーズならではの演出もある。
ちなみに、「過去の自分と出会うことでタイムパラドックスやら物語の整合性やらはどうなるのか」という疑問もあるだろうが、タイムロードの特性として、
「過去の自分らと集合した場合、もっとも新しい自分のみがその出来事を記憶する」
「過去の自分らは、その場を離れて正しい時間の流れに戻った際にその出来事を忘れる」という防御策があるため、ストーリーや設定の整合性を心配する必要はない。
1963年に初代ドクターから始まり、長期に渡って放送し続けていたが、やがて視聴率の低迷により1989年の7代目ドクターの時期にドラマは一度終了する。
1996年、8代目ドクターを主人公とした、シリーズ再開を視野に入れたテレビ映画版が放映された。
結局はシリーズ再開はなされず、8代目ドクターは一代限りで降板となった。
以上までの作品群はシリーズ全体の中でも『旧シリーズ(クラシックシリーズ)』と呼称されている。
日本では1989〜90年まで、NHK-BS2にて、旧シリーズのうち4代目ドクターの時期の中から38話が選別され、日本語吹替つきで放映されている。
そして2005年、長い休止期間を経て一新された製作陣により、9代目ドクターから始まる『
新シリーズ』の放映が開始される。
日本では、NHK教育やBS2等で2006~07年にシーズン1〜2までのみが日本語吹替つきで放映された。
この放送によってドクター・フーという作品を知った方は数多いと思われる。
筆者もそう
ちなみに、NHK版の日本語吹替の翻訳は
あのコマンドーでお馴染みの平田勝茂氏。
時折ヤバそうなネタがブチ込まれた氏の翻訳センスが光る。一部の固有名詞や10代目ドクターの口癖が正確に訳されていないのが玉に瑕か。
何故か内部が18世紀のパリに繋がっている西暦5001年の宇宙船内を見て、
ドクター「『時空間ハイパーリンク』だ」
ローズ「何それ?」
ドクター「知らない、今作った。『
どこだってドア』じゃマズいだろ?」
ドクターの配慮を無視して『どこだってドア』をその後も普通に発言するローズも図太い
イギリス本国ではその後2008年にシーズン4をもって物語の一旦の区切りを迎え、2009年はシーズン5に向けての準備期間(シーズン4.5とも)として4本の特番エピソードを放映。その最後のエピソードに10代目ドクターが再生し、11代目ドクターが先行登場する。
2010年からは11代目ドクターを主人公とした物語が再びシーズン形式でスタートし、現在までつづいていく。
日本では、NHKよりシーズン1〜2の吹替付きのDVD-BOXが販売されたが、現在はほぼ絶版のような状態。持っている人は大事にしよう。
シーズン5以降の11代目ドクターの時期のストーリーを『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』
12代目の時期を『ドクター・フー ネクスト・ジェネレーション』
13代目の時期を『ドクター・フー リボーン』
というタイトルでKADOKAWAより吹き替え付きのDVD-BOXが販売されている。
他にも様々な配信サイト等で、NHK版では放映されなかったシーズン3〜4のエピソードを含めた物が配信されていたりもするが、こちらは残念ながら吹替版は無く、日本語字幕のみ。
長くなってしまったが、本記事で記述するタイム・ウォーとは、新シリーズ開始時に新たに作られた設定であり、
ドクターの心に消えない傷を植え付け、人格にも多大な影響を与えた、旧シリーズと新シリーズの間の時期に起きた大戦争である。
【概要】
タイム・ウォーを戦ったのは主人公ドクターの種族であるタイムロードと、
旧シリーズから長らく登場し続けたメインヴィランで、宇宙最大の脅威とまで言われたダーレク族。
この両種族の全面戦争がタイム・ウォーである。
タイムロードとはまとめると、
「現行宇宙初期の時代に時間旅行技術や現行の物理法則を定め、その後の時空の流れを管理・監視する存在」
といったところ。
母星は惑星ガリフレイ。
全能に等しい知識量、科学技術を持ち、素でクッソ長い寿命を持ち再生もするためほぼ不老不死というチートであるが、それ故に社会構造は官僚的で腐敗しており、(タイムロード全てがそうと言うわけではないものの)一部の特権階級のエリートが全てを牛耳る閉鎖的な構造となっている。
また、時空間のすべてを監視しながらも、それらに対してこちらから干渉しないという「不干渉主義」のスタンスを徹底している。
ドクターはタイムロードでありながら、これらの体制を嫌っているという異端中の異端児であり、旧シリーズにてドクターがスクラップ同然で放置されていたターディスを盗み出して旅に出始めたのもこれが理由。
タイムロード側の上層部もドクターを種族の鼻つまみ者として忌み嫌っており、旧シリーズにおいては、「不干渉主義」によりタイムロードがやりたくない汚れ仕事をドクターに押し付けたり、どさくさに紛れて敵ごと始末しようとするなど、完全に体のいい使い捨ての道具として扱っている。
そして、タイム・ウォー開戦のきっかけとなった出来事の一つが、「ドクターに押し付けた汚れ仕事」のうちの一つ
「将来的に全宇宙の脅威となるダーレク族の誕生を阻止しろ」であった。
このエピソードは日本でも放映された旧シリーズの「ダレク族の誕生」で描かれた。
当時の4代目ドクターは
「いくら凶悪な種族であれ、身勝手な理由で存在を否定してしまっていいのか。自分にその権利があるのか」
「ダーレクが今後善性に芽生える可能性を否定してしまっていいのか」
と躊躇してしまい、結果的にダーレクの発展・進化を約1000年分遅らせるに留まってしまった。
些細な出来事ではあるが、これがタイムロード側から仕掛けたダーレクへの最初の一撃として認知され、「自分たちダーレクを歴史から消そうとした=タイムロードからの宣戦布告」としてダーレク側に正当性が生まれ、因縁をつけられる事態に至った。
その他にも旧シリーズ中に
「ダーレク側がタイムロード側の最高評議会に暗殺者を送り込もうとする」
「ダーレクが古代タイムロードの遺物である兵器を強奪するも、7代目ドクターがいろいろ頑張った結果、ダーレクの母星である惑星スカロが破壊される」
などの小競り合いを経て、タイムロードとダーレクの衝突が避けられない事態となっていく。
開戦
まず両陣営が着手したのは『歴史を書き換え、互いの誕生を阻止する』歴史修正合戦。
早い話がターミネーター
両陣営がひっきりなしにタイムトラベルを繰り返し、歴史を書き換える泥沼の戦いが繰り広げられた。
管理者権限で好き放題するタイムロードも大概だが、それに
独力で食らいついてくるダーレクの執念深さも相当である。
この戦いでタイムパラドックスが頻発し、死んだはずの兵士を別の時間から引っ張り込んで無理矢理復活させたり、歴史修正に巻き込まれて「なかったこと」になってしまった出来事や他の種族が続出し、タイムラインが大いに傷つけられる事態となった。
まさに、
死者だけがいたずらに増えていく泥沼の地獄絵図である。
戦争の激化
やがてタイム・ウォーは局所的な戦闘から宇宙規模にまで拡大し、戦火に巻き込まれる犠牲者の数も増大していった。
自分たちではどうにもならなくなったガリフレイ最高評議会は、
タイムロード創成期の英雄であるラシロンを復活させ、最高指導者に据えるという選択をとった。
最高評議会が存在するガリフレイ第1都市キャピトルの地下にはオメガ武器庫という、宇宙のバランスを崩しかねない古代ガリフレイ人の兵器が封印された場所があったが、ラシロンの命令によって1つを除いた全てがダーレクに対して使用された。
ここまでされても攻勢が衰えないダーレクも大概だが。
また、戦争の過程でタイムラインがぐちゃぐちゃに荒らされた結果、次第にまともなタイムトラベルが行えなくなっていったばかりか、時空のバグが形になったような名状しがたきナニカが大量発生し、両陣営やその他に多大な被害をもたらした。
このナニカはドラマ内でもいくつか存在が言及されたが、放映当時の段階では「とりあえず何か恐ろしい存在がいた」というインパクト重視で、詳細な設定は特に決められていなかった。
後年、製作陣のインタビューやムック本などで設定が肉付けされていっている。
要は、「目先の脅威に対応するために管理者権限でいろいろ弄くり回した結果、ワケのわからんバグが大量発生して制御不能になっちゃいました」という状況。
この頃のドクターは、歯止めもモラルも失っていく両陣営から距離を置いており、戦火に巻き込まれる第三者たちをターディスで助けて回っていたが、犠牲者の惨状を目の当たりにしたことで遂に参戦を決意する。
ガリフレイ陥落
タイムロードの母星ガリフレイは、時間の位相をずらすことで通常宇宙から隔離された場所に隠匿されており、物理的な干渉やテレポートによる到達を防いでいた。
だが物量でゴリ押ししてくるダーレクによって遂に発見され、瞬く間に惑星がダーレク艦隊に全包囲されてしまう。
それでもガリフレイには量子フォースフィールドが張られ、最も安全と称されていた第2都市アルカディア上空には多層的に配置された400もの空中塹壕が存在していたが、ダーレクはそのことごとくを物量による超絶脳筋パワープレイで突破。
鉄壁を謳ったアルカディアは陥落し、残すはガリフレイの第1都市キャピトルのみとなった絶望的な状況下。
衛星軌道上からは無数のダーレク艦隊による絶え間ない砲撃。
地上ではアルカディアに上陸したダーレクたちによる兵士、民間人を問わない虐殺が繰り広げられる。
最高評議会は勝てもしない戦場へ兵士を送り、徹底抗戦を呼びかける始末。
自分に意見した者を即座に殺害する程に完全に狂気に陥ったラシロンは、ここである作戦を始動する。
一方、戦場でアルカディア陥落を目の当たりにしたドクターもまた、タイム・ウォーによる全宇宙の崩壊を防ぐため、苦渋の決断を下す。
タイム・ウォーの終結
ドクターはタイムロードとダーレク双方へのメッセージとして、『終止符を(NO MORE)』という文字をアルカディアの建物の壁に刻むと、ターディスでキャピトル地下のオメガ武器庫に侵入し、唯一残されていた最終兵器モメントを盗み出す。
前線を指揮していた最高司令本部の将軍ですら詳細を知らないが、銀河を破壊するほどの威力があるという。
ドクターはこれを起動し、今や歯止めの効かなくなったタイムロードとダーレク双方を滅ぼし、タイム・ウォーを強制的に終結させた。
タイム・ウォーとは、言うなれば
『エリートを気取った時空の管理者が、下等種族と見下した相手にちょっかいをかけた結果、脳筋戦法で一転攻勢されわからされた』
というもの。「藪をつついて蛇を出す」とはこの事である。
そして、『驕り高ぶったタイムロードの尻拭いのためにドクターは「故郷と同胞と仇敵をまとめて大量虐殺した」という重い十字架を背負ったまま、ただ一人生きていく』事となった。
また、歴史改変とタイムパラドックスが頻発した結果、タイム・ウォーが発生している時間軸そのものが通常の時間の流れから徐々に乖離、袋小路に閉じ込められていき、タイム・ウォー内外へのタイムトラベルによる相互干渉が不可能となっていった。
そして最後にドクターがモメントを起動させた=タイムラインがぐちゃぐちゃになっていたタイム・ウォーに「終わり」を作り出したことで、「タイム・ウォーという事象全体が他の時間軸から完全に閉じられた」タイム・ロックがかけられた状態となった。
ドクターがタイム・ウォーに干渉しようとしない理由の一つがこれであるが、
他にも無数のダーレク艦隊やら戦争中に発生した名状しがたきナニカたちが通常宇宙に解き放たれてしまう、という危険性も孕んでおり、タイム・ロックを越えてまで干渉しようとする事自体が危険という側面を持つ。
また、曲がりなりにも「時空の管理者」であったタイムロードの消失は大きく、
新シリーズにおけるドクターの旅には「宇宙最後のタイムロードとして時空のゆがみを正す」という目的も含まれているほか、
タイムロードの管理の下かつては行き来が可能だったというパラレルワールドへも、余程の不確定要素が無い限りは到達することが出来なくなっている。
【関連人物】
ドクター
主人公であるガリフレイ人でありタイムロード。そしてタイム・ウォーを「終わらせた」張本人。
よく勘違いされるが、主人公の名前は「ドクター・フー」ではなくただの『ドクター』である。
これは、英語圏においては医者や博士などの役職の人は「Dr.〇〇(名前)」のように名乗るのが一般的であるが、今作主人公の場合は
「やあ、僕はドクター(Hello, I am the Doctor)」
と自己紹介するので、相手側は
「いや、ドクターなのはわかるけどその先を言えよ…」という意味で、
「ドクター、誰?(Doctor Who ?)」
と聞き返すのがお約束となっている。
本名は別にあるが、理由として「本名は地球の言語で表現できないから」「自分の生き方に対する決意として『宇宙を救い、癒すために生きる』ことを表明してドクターと名乗っている」など、様々な説がある。
基本的に暴力や武力による解決はせず、言葉や知恵による解決で、常に可能な限り多くの命を救う道を選ぶ方針は旧シリーズから変わらない。
また、ペンライトのような形状の万能ツール「ソニック・スクリュードライバー」を所持しており、基本的にこれを駆使して事件の解決に臨む。
だか、タイム・ウォーを経験して以降のドクターは、「基本的には平和的解決を望むが、野放しにすれば脅威になると判断すれば実力行使による殲滅も辞さない」方針に変化しており、特にダーレクに対しては代替わりしても消えない憎しみを心の奥に常に抱いている。
◇
8代目ドクター
演 - ポール・マクガン
旧シリーズ休止期間中に放映されたテレビ映画にて初登場したドクター。
囚人惑星でいつも菓子食ってる奴ではない
7代目ドクターを乗せたターディスが地球に不時着し、降りた先で
ギャングの抗争に巻き込まれて撃たれた挙句、間違った医療措置によって死亡。
霊安室の中で再生しつつ復活するというホラー映画顔負けな登場を果たした。
出番はこのテレビ映画のみなのだが…
50周年記念スペシャルの前日譚となるミニエピソード『ドクター前夜』に約20年ぶりの登場を果たした。
時系列はタイム・ウォーの真っ最中。
そのため、かつては長髪の英国貴族のような風貌だったが、戦争の影響(あと演者の加齢)から短髪で荒んだ風貌になっている。
大量虐殺に関わりたくないドクター自身は両陣営に肩入れすることを拒み、戦闘には参加せず戦火に巻き込まれた人々を一人でも多く救うためにターディスで駆けていた。
このエピソード内でドクターは、戦火に巻き込まれ、墜落する宇宙船の女性乗組員キャスを救おうとしたが、ドクターの正体をタイムロードと知ったキャスは豹変。
「今やタイムロードもダーレクも変わりない」「あなたに助けられるくらいなら死んだほうがマシ」
キャスに拒絶され、宇宙船は2人を乗せたまま惑星カーンに墜落する。
惑星カーンは旧シリーズにて登場した、古代ガリフレイ人から枝分かれしたとされる、女性のみの教団「カーンの姉妹」が住まう星。
ドクターは高僧オヒラに起こされる。ドクターは墜落で死亡していたが、オヒラの手によって4分間の期限付きで生き返ったのだ。
オヒラは「今のままでは宇宙が危ない」とドクターに戦争への参加を訴えるが、ドクターはそれでも拒み続ける。
「ドクターならば患者を診なさい」と、オヒラは厳しく言い放ち、その場にキャスの亡骸を運び込む。
自分が救えなかった患者。自分自身の不干渉がもたらした結末。罪悪感に苛まれるドクターに対し、オヒラは複数の霊薬を提示する。
霊薬には、ドクターの再生を手助けする効能があり、種類によってどのような外見になるかを選ぶことができる、と。
タイム・ウォーを終わらせる覚悟を決めたドクターは「戦士」になる事を選ぶ。
キャスへの詫び、そして「『ドクター』はもう必要ない」という自虐の言葉とともに、霊薬を飲み干したドクターの再生が始まる。
キャスの弾薬帯を形見分けとして胴に身に着け、「ドクターの名を捨てたドクター」ウォー・ドクターとして生まれ変わるのだった。
このミニエピソードは吹替版が制作されていないが、50周年記念スペシャルのDVD内に日本語字幕付きで特典として収録されている。
◇
ウォー・ドクター
演 - ジョン・ハート/声 - 祐仙勇
ドクター・フー50周年記念スペシャルにて登場。
ノストロモ号の乗組員でもないし、
魔法界の杖職人でもない
タイム・ウォーに参戦したドクター。
黒いジャケットに肩がけに弾薬帯を巻いた老人の姿をしている。
年齢は800歳代。
所持しているソニック・スクリュードライバーは赤く発光する。
タイム・ウォーを終わらせるため、
タイムロード禁断の最終兵器「モメント」を盗んで起動させ、タイムロードとダーレク双方を消滅させることで戦争を終結させたとされる。
「戦争と大量虐殺に加担した」というドクターにあらざる行為を以降のドクターからは徹底的に忌み嫌われており、存在そのものを忘れようとされている。
ドクターの再生回数にカウントされているにも関わらず、代が繰り上がっていないのは、存在自体がドクターの黒歴史であるのと、本人が「自分はドクターではない」と自認しているため。
◇
9代目ドクター
演 - クリストファー・エクルストン/声 -
山路和弘
新シリーズ始動後初のドクター。年齢は900歳。
黒いレザージャケットを羽織った坊主頭の男性。
エーテルを狙うダークエルフの長ではない
口癖は
「ファンタスティック!」
銀色かつ青く発光するソニック・スクリュードライバーを所持しており、これは10代目ドクターにもそのまま引き継がれた。
普段は陽気で明るいキャラで、吹替版では山路氏の怪演でオカマ口調になったりすることもあるほどだが、それでもタイム・ウォー終結後ということもあり、ふとした瞬間に故郷と同胞を失った喪失感を吐露することもある。
また、作中に登場するエイリアンにはタイム・ウォーに巻き込まれた被害者もおり、ドクターは自分の行動の結果を直視する事となった。
精神性も初期の頃は尖っており、悪事を働く存在に対しては一切の容赦なく制裁を与えており、その際のドライな対応を見たローズがドン引きする程。
タイム・ウォーの生き残りのダーレクに遭遇した際には、怒りもあらわに殺しにかかるなどかなり荒んでいた。
この時のエピソードでの出来事や、その後のローズとの旅を経て次第に心境が変化していき、徐々に『ドクター』としての在り方を取り戻していく。
そんなシーズン1の最後に明かされた真実は、タイム・ウォーをただ一人生き延びたドクターにとっては残酷なものだった…
演者のクリストファー・エクルストンは、製作陣との意見の相違等もあり、シーズン1をもって降板。その後の再演も辞退しており、映像作品での9代目ドクターの再登場は主に映像の流用によるライブラリ出演となる。
近年ではオーディオドラマ版にて9代目ドクターを再演するなど、製作陣ともそれなりに関係修復している模様。
◇
10代目ドクター
演 - デヴィッド・テナント/声 -
関俊彦
シーズン1の最終回にて再生したドクター。
歴代ドクターでダントツの人気を誇る。デスイーターに堕ちたボンボンの息子や、
スーパーパワーをストーカー行為に悪用する変態男ではない
年齢は9代目から引き続き900歳だが、シーズン内で年を重ねていき、11代目に変わる前は906歳となっている。
口癖は
「アロンズィ!」。フランス語で「さあ行くぞ!」を意味する言葉だが、実はNHK放映時には毎回違った言葉に翻訳されているため、吹替版でそのまま言ったのは50周年記念スペシャルが初。
本人は言葉の響きが好きで使っているとの事だが、
「将来アロンゾという名前の人と出会った際に『アロンズィ!アロンゾ!(行くぞアロンゾ!)』というダジャレが言いたい」という
本人以外には理解不能な変な野望があると語っている。
茶色いトレンチコートがトレードマーク。シーズンによって茶色や青のスーツを着用しながらも、足にはコンバースのスニーカーという変な組み合わせ。
黒縁メガネをかけることもあるが、本人曰くこれはカッコつけの為との事。
陽気で人懐っこい性格で、やたらといろんな女性にモテるが、それでもタイム・ウォーで負ったトラウマや喪失感は健在。
特に10代目ドクターは「仲間との離別」が数多く顕著に描かれており、長大な寿命を持つタイムロードである自分と人並みの寿命しかないコンパニオンたちとの距離、行く先々で救えなかった人々との別れなどを経験していく。
人当たりのいい一面の裏に敵に対する「情け容赦のない裁定者」としての一面も変わらず持ち合わせており、シーズン2と3の繋ぎとなるエピソード『逃げた花嫁』にて、
後にシーズン4のコンパニオンとなるドナ(演-キャサリン・テイト/声-雨蘭咲木子)は敵であったラクノスの女王を無表情に制裁するドクターの姿に恐怖心を抱いている。
このドナの不安は2009年の特番の時期に的中しており、離別への恐怖からコンパニオン不在のまま長い旅を続けた結果、「自分は時間のルールすら超越できる」という『勝利したタイムロード(Time Lord Victorious)』という思想に囚われかけ、救おうとした人を結局は救えずに終わってしまうという悲劇を引き起こした。
シーズン2〜4、そしてシーズン5までの準備期間として2009年に放映された5本の特番を通して、ダーレクの脅威とも違う、タイムロードの傲慢さにも直面していく。
演者は幼少期に観たドクター・フーがきっかけで役者を志しただけでなく、現在の家族構成もドクター・フーがらみとなっている。
◇
11代目ドクター
演 - マット・スミス/声 - 川島得愛
2009年のクリスマススペシャル特番にて、10代目ドクターから再生する形で登場。
スカイネットが搭載されたターミネーターではない
演者は当時、ドクター役では最年少の26歳。
シーズン5開始後は906歳だが、最初のコンパニオンである
エイミー(演-カレン・ギラン/声-植竹香菜)離脱後、クララが合流するまでの空白期間中に年を重ねた結果、シーズン7の頃には1200歳代となっている。
10代目ドクター再生までの経緯が感動的で涙を誘うものだったこともあり、11代目に再生直後は雰囲気が急変。
クスリキメてんじゃないかってほどハイテンションでワケのわからんことを宣いながら、再生の余波で爆発炎上するターディスと共に地球に墜落するという衝撃的な登場を果たす。あの感動を返せ
そのため、シーズン5第一話はいきなりターディスの墜落から始まる。
当初は10代目ドクターと同じソニック・スクリュードライバーを使用していたが、機能不全の末に破損。
その後ターディス内で修理新調され、緑色に発光し大型化&先端の爪状部品が開閉するギミックを備えたものに生まれ変わった。
口癖は「ジェロニモ!」1940年代にアメリカ軍の空挺兵が降下の際に叫ぶ掛け声が元ネタ。高いところから飛び降りる際や、危険な場所へ赴く際によく叫ぶ。
年若い外見とは裏腹に、老人のように老成した内面を併せ持つという複雑な精神性を持つ。
普段は子供のように飄々としているが、それはタイム・ウォーやそれまでの辛い記憶に蓋をして、思い出さないように振る舞っているという側面が大きい。
このように罪悪感やトラウマから目を逸らし続ける己を「忘れる男」と称し、自嘲している。
また、タイムロードの再生回数の限界は12回だが、8代目からウォー・ドクターへの再生で1回、
シーズン4にて10代目ドクターがダーレクに撃たれた際に行った「とある事情でターディス内に置かれていたドクターの右手」に再生エネルギーを移すことで「肉体だけを治癒しつつ、外見は変わらずに再生キャンセル」という変則的な再生も1回とカウントされている。
つまり、このままでは11代目ドクターが最後のドクターということになり、己の死期とも向き合う事となった。
自分の死期が迫る中、50周年記念スペシャルにて、ずっと逃げ続けていたタイム・ウォーに改めて向き合うことになり…?
コンパニオン
ドクターと共に旅をする仲間の総称。大抵は現代の地球人であるが、たまに宇宙人や未来人、果てはロボットである時もある。
異星人であるドクターとは違う、我々視聴者の分身ともいえる立場であり、解説者のドクターが様々な知識や蘊蓄をコンパニオンに説明することで、間接的に視聴者側にも世界観や設定を伝える役割を担っている。
また、時にはドクターを制止したり、迷うドクターを勇気づけたりすることもある。特にタイム・ウォー以後は、傷ついたドクターの精神性に影響を与えるなど、単なる同行者ではなくドクターの旅に欠かせない存在となっている。
本記事ではタイム・ウォーに関わる人物のみを記載する。
◇
ローズ・タイラー
演 - ビリー・パイパー/声 -
坂本真綾
新シリーズシーズン1より登場。
ロンドンの公営住宅で母親
ジャッキー(演-カミーユ・コデュリ/声-磯辺万沙子)と2人暮らしで、幼なじみの
ミッキー(演-ノエル・クラーク/声-佐藤せつじ)と交際している、ロンドンのデパートに勤務する19歳の少女。
退屈な日常に飽き飽きしていたところ、
ある日突然勤務先のマネキンが動き出して襲われたところを、「ドクター」と名乗る謎の変人に助けられた挙句、
勤務先のデパートを爆弾で跡形も無く消し炭にされ番組開始数十分で無職になるという、中々に刺激的な出来事を立て続けに味わうこととなった。
その後なんやかんやでドクターと共に事件を解決。そのまま旅に誘われ、同行することに。
ローズとの旅は戦争で荒んでいたドクターの心の癒しとなった。
ドクターとの旅には危険も伴うため、当初は何度か家に帰されようとした事もあったが、やがてはお互いに無くてはならない存在となっていく。
タイム・ウォーからただ一人生き残ったダーレクと対面した際も、彼女の取った行動がダーレクにも変化を与え、最終的にドクターとダーレク双方を「変える」事に成功している。
シーズン1の最終回にて、遂に死を覚悟したドクターによって強制的に現代に送り返されるが、諦めない彼女は母ジャッキーと彼氏のミッキーの助けを受けてドクターを助けに向かい、そしてドクターにも出来なかったタイム・ウォーの後始末を成し遂げることになる。
シーズン2も引き続きドクターと旅を続けていたが、シーズン2最終回にてドクターとの「永遠の別れ」を経験する事に…
新シリーズの一旦の集大成ともいえるシーズン4最終回にも再登場したが、事件解決とともに今度こそドクターと別れる事となった。
そのため、今後のシリーズにローズ本人が再登場する可能性は低いが、50周年記念スペシャルでは意外な形で…?
◇キャプテン・ジャック・ハークネス
演 - ジョン・バロウマン/声 - 竹若拓磨(『ドクター・フー』『秘密情報部トーチウッド』)、加瀬康之(『秘密情報部トーチウッド』シーズン4)
シーズン1の第二次世界大戦中のロンドンでドクターとローズが出会った、51世紀のボーシェイン半島出身の未来人。
元はタイムエージェントだったが、タイムエージェントの上司に2年分の記憶を奪われており、それを取り返すためにタイムトラベラー相手に詐欺を繰り返していた。
「ジャック・ハークネス」という名も本名ではなく、大戦中のアメリカ軍人の名をそのまま騙ったもの。
初対面のエピソードではドクター相手に詐欺を働こうとしたが、その彼の行動のせいでロンドン中にガスマスク姿のゾンビが溢れかえる騒動が起きてしまい、責任を感じてドクター達と協働。最終的に彼の宇宙船も失ってしまったので、何やかんやでターディスに乗り込み、晴れてコンパニオンの一員に。
タイムトラベルに縁があるためか、タイム・ウォーやダーレクについては断片的ではあるものの知っており、「ある日突然ダーレクの艦隊が時空間に消えた」と話している。
シーズン1最終回にて死亡してしまうが、ある出来事により不死身となって蘇る。
不死身という常識や自然の摂理に反した存在となったジャックに、ドクターは潜在的な恐怖を抱いており、蘇生後のジャックを置き去りにしたまま立ち去ってしまう。
その後のジャックは不死身の能力をフル活用して独自に活動を続け、イギリスの対エイリアン機関「トーチウッド」のメンバーになる。
シーズン3や4にて時折ドクターらと再会、合流することもある。
彼を主人公とし、ドクター・フーと時系列を共有するスピンオフドラマ「秘密情報部トーチウッド」が制作されている。
また、50周年記念スペシャルにおいては、彼が手首に装着していた「ヴォルテックス操作機(簡易型タイムマシン)」がキーアイテムとして登場した。
◇
クララ・オズワルド
演 - ジェナ・コールマン/声 - 原島梢
シーズン7にて、11代目ドクターのコンパニオンとなった女性。
別世界ではバッキーのデート相手だった
中学校で国語教師をしている。
ターディスで旅に同行するのは従来と同じだが、常にターディス内で暮らしているわけではなく、時折家に帰って普通の日常生活も送っている描写がある。
タイム・ウォーに直接的な関わりは無いが、50周年記念スペシャルにて、苦悩するドクターたちの決断に影響を与えることに…
EXTERMINATE! EXTERMINATE!
声 - ニコラス・ブリッグズ(新シリーズ)/吹替 - 屋良有作(旧シリーズ)、清水明彦(新シリーズシーズン2まで)、中島ヨシキ(新シリーズシーズン5以降)
シリーズを通して登場し続けている、ドクター・フーのヴィランの代表格と言っても過言ではない種族。
外見は『お寺の釣り鐘に細長いカメラアイを付け、左手に光線銃、右手にトイレのスッポンをつけたようなもの』という、あんまり強そうに見えないもの。
電子的に歪んだ甲高い声で喋る。
ダーレクの行動原理はただひとつ、シンプルなもの。
『ダーレク以外の全生物の抹殺』
これだけである。過程や方法なぞ、どうでもよいのだァー!
通常個体のスペックをまとめると
- ダーレクの光線銃は即死攻撃。相手は問答無用で死ぬ。
- あらゆる攻撃をほぼ無効化するフォースフィールド完備。直接触れた普通の人間は瞬時に燃え尽きる。
- 重力下、無重力下を問わずあらゆる場所で活動でき、飛行も可能。
- 1兆通りのパスワードを1秒で解ける情報処理能力。
重ね重ね言うが、これが通常個体のスペックであり、こんなのが何百、何万という物量で襲ってくる。
旧シリーズでは手作り感満載な質感だったり、飛べないので階段が天敵だったり、近接攻撃でカメラアイを叩き折られたり、崖から突き落とされて爆発してたりしてたのは内緒だ!
元は惑星スカロにて、何世紀にも渡るサール族とカレド族の戦争の最中、カレド族の科学者であるダヴロス博士が生み出した生体兵器である。
先述したお寺の釣り鐘のような外観は戦闘能力を備えた移動装置に過ぎず、
内部には戦争の過程でDNAが汚染されたカレド族の突然変異生物―脳と単眼と無数の触手を持った不定形のタコのような生命体が乗っている。
誕生したダーレクは憎悪以外の感情を抹消されているだけでなく、先述の行動原理をプログラミングされており、
誕生直後に「ダーレクではない」創造主のダヴロス博士を抹殺、宇宙最大の脅威へと発展していった。
演者の関係で、旧シリーズの吹替版ではやたらと威厳のある声質だったが、新シリーズ以降は原語版と同じく甲高い声の演技となっている。
◇通称”メタルトロン”
新シリーズにて初登場したダーレク。
タイム・ウォーの最中に時空間にただ一人弾き出され、2012年の地球に落下していた。
エイリアンがらみの品を蒐集していた大富豪ヴァン=スタテンに買い取られ、アメリカのユタ州地下のエイリアン博物館に収容されていた。メタルトロンというセンスの無い通称は彼による命名。
この時点ではダーレクただ一人の生き残りであり、同じくタイムロード最後の生き残りであるドクターとの対比となっている。
光線銃や各装置が機能不全を起こしており、緩やかに死を待つだけの状態であったが、境遇を哀れんだローズに触れられたために活性化、活動を開始する。
先述の通り、普通の人間がフォースフィールドに触れれば即死するが、タイムトラベラーの場合、時空移動の際に身体に付着する様々な粒子等のおかげで、触れた箇所が火傷する程度で済む。そして、これらの粒子はダーレクのエネルギー源でもあるため、ローズは図らずもダーレクを再起動させてしまう事となった。
この回のダーレクの活動で、新シリーズから観始めた視聴者に対しても、ダーレクという存在の恐ろしさとチートぶりを強烈に見せつける事となった。
◇皇帝
ダーレクの最高指導者である存在。
長いシリーズの中で設定や立ち位置のバラつきは存在するが、ダーレクという種族を統制する最上位個体である事は共通している。
旧シリーズ初期においては、創造主ダヴロスの抹殺後、ダーレク内で選出された特別な個体が皇帝となり、惑星スカロの要塞に固定され、全ダーレクを統制する中央サーバーのような役割となった。
このように、皇帝自身は施設そのものに固定されているような状態のため、現場の指揮は「最高(スプリーム)ダーレク」と呼ばれる上級個体に代行させる。
後に、実は生きていたダヴロス博士がより自分に忠実なダーレクを新造。自ら「皇帝」を名乗り、旧来のダーレク達と内戦を繰り広げるという展開もあった。
タイム・ウォーにおいては、皇帝とダヴロス博士両名が参戦しており、タイムロード相手に呉越同舟の関係を結んでいた模様。(立場はやっぱりダヴロスの方が下)
ドクターのモメント起動により、皇帝もまた他のダーレク共々滅亡していた。
声 - ニコラス・ブリッグズ/吹替 - 宝亀克寿
シーズン1の最終回にて、夥しい数のダーレクを従えて登場。
皇帝は、モメント起動前に時空の裂け目に逃げ込むことでタイム・ウォーから逃げ延びており、歴史の影で暗躍していたのだ。
通常のダーレクの数十倍程の巨大な移動装置に乗り、胴体外装部分が三方向に展開した状態で宇宙船内に固定され、胴体中央のガラスシリンダー内に生身の本体が入っているという姿。
タイム・ウォーを生き延び、独自にダーレクを再生させたためか野心が肥大化しており、自分を「神」と自称している。
西暦200,100年の地球。
ここでは無作為に選ばれた地球人に、生き残りをかけたデスゲームへの参加が強制されていたが、これを陰で操っていたのが皇帝であった。
デスゲームの敗者は原子分解ビームが照射され殺害される、というのが当初の情報だったが、
実はこのビームは転送装置であり、ゲームの敗者はダーレクらの下へ転送され、そこで新たなダーレクを生み出すための素材として加工されるという運命が待っていた。
こうして長い時間をかけて軍団を再構築した皇帝は、今度こそドクターを抹殺するために軍団を送り込む。
ドクターも皇帝の前で表面上は気丈に振る舞っていたが、周囲の目が無い所では
同胞を巻き添えにしてまで執った自分の行動が全くの無意味だったことに絶望していた。
ドクターはターディスでローズを強制的に現代に送り帰すと、あり合わせの材料で範囲内の全生命体を抹殺する「デルタウェーブ」発生装置の開発に着手する。
それは、自分だけでなく当時代の人類や共に残ったキャプテン・ジャックを含めた全生命体を巻き添えにする事を意味していた。
民間人たちやキャプテン・ジャックが、時間稼ぎのために文字通り捨て石となって死亡する中、遂にデルタウェーブを完成させるドクター。レバーに手をかけるドクターに対し、皇帝は問いかける。
タイム・ウォー当時やシーズン1初期のドクターであれば、迷わずレバーを押していたかもしれない。
だが、ドクターはローズとの旅の中で変化し『ドクター』としての在り方を取り戻していた。
遂にレバーから手を離してしまったドクターを皇帝は嘲笑する。
人類はお前のその弱さによって滅びる事になる、と。
ダーレク達に囲まれ、全てを諦めたドクターはただ最期を受け入れようとした。
しかし、そこへターディスが戻ってくる。
現れたのは、ドクターを助けたい一心でターディスの「心」とコンタクトし、ターディスの意思そのものの依代となったローズの姿だった。
ターディス由来のヴォルテックスエネルギーを操るローズは、手をかざすだけでダーレクの光線を受け止めるだけでなく、夥しい数のダーレク達を原子レベルまで分解させてしまった。
そう宣言するローズは、無数のダーレク艦隊すらもまとめて塵に変えてしまった。
それが皇帝の最期の言葉だった。
最後まで現実逃避を続けたまま、司令船ごと分解されていくのだった。
◇スカロの集団
皇帝の死を以ってダーレクは滅亡したと思われていた中、新シリーズシーズン2最終回前編の最後の最後にて、衝撃的な登場を果たした4体のダーレク。
個を持たないダーレクでありながら個体認識名を持つことを許されており、通常のダーレクとは違う存在であることが強調されている。
リーダー格のセク、テイ、ジャスト、カーンの4体で構成されており、
他のメンバーは通常個体と同じ金色だが、セクのみは黒い。
シーズン2のメインヴィランはサイバーマンとなっており、全世界がサイバーマンの侵略を受けている真っ最中にまさかのダーレク登場。
当時観ていた視聴者が「あ、地球終わったわ…」と度肝を抜かれたこと間違いなし。
ドクターによれば「影の支配者」
序列は皇帝よりも上であり、役割は「考える事、敵の思考や戦略を読む事」である。
「地味じゃね?」と思うかもしれないが、ダーレクの価値観に照らし合わせれば話は違ってくる。
ダーレクの思想は『ダーレクこそが唯一至上であり、それ以外の存在には価値がなく、抹殺されるべきもの』である。
個を捨て、単一の目的・思想の下に結びついたダーレクには、自分たち以外の敵が、何を考えているかなどを気にする必要はない。タイム・ウォーと同じく、物量による脳筋パワープレイでゴリ押すだけである。
もっとわかりやすく言えば、「ダーレクという種族は、『他者の立場になって物を考える』事が致命的に出来ない」のである。
スカロの集団は、この点を解消するために皇帝によって生み出された存在であり、「通常のダーレクの指揮系統から独立した、ダーレクの思想に反するような事でも自由に考え、実行する事が許された存在」といえる。
シーズン3でのダーレク・セクの台詞・行動から、「ダーレクという種を復活させる」という目的のために、本来のダーレクならば禁忌とされる実験に手を染めている事からも、それが伺える。
ぶっちゃけ、本当に柔軟なのはセクだけじゃね?とは言ってはいけない
彼らは皇帝の命により『ボイドシップ』と呼ばれる球体型の移動装置に入り、「無数の時間軸やパラレルワールドの境目・境界線の役割を果たす『ボイド(無の空間)』」に潜航する事でタイム・ウォーを生き延びていた。
シーズン2の最終回終盤、メンバー全員が緊急時空移動によって逃亡し全滅を逃れる。
続くシーズン3にて再登場。西暦1930年―世界恐慌真っ只中のマンハッタンにて、ダーレク再興を目指した実験を行っていたが、タイム・ウォーに収束しない話のため省略するがなんやかんやあった末にセク、ジャスト、テイが死亡。
唯一の生き残りとなったカーンはドクターと対面するや否や、またも緊急時空移動によって逃走した。
◇ダヴロス博士
演 - ジュリアン・ブリーチ(新シリーズ)/声 - 加藤精三(旧シリーズ)、東和良(新シリーズシーズン9)
惑星スカロの原住種族であるカレド族の科学者。
戦争に巻き込まれて重傷を負ったため身体がサイボーグ化されており、下半身はダーレクと同型の移動装置に、頭部は閉じられた両目の代わりに、額にダーレクのカメラアイが埋め込まれている。
右腕は機械化されているが、左腕は失われたままとなっている。左手でチ◯ポジ直してるように見えなくもない
音声もダーレクのように機械的に歪んでおり、ハイテンションになった際の声音は特にダーレクの物に酷似している。
スカロには地球人に酷似した外見のサール族とカレド族という2種族が存在しており、数世紀に渡って戦争を行なっていた。
戦争の中で使用された中性子爆弾や化学兵器等でカレド族の遺伝子は修復不能なほどに汚染されており、奇形の突然変異生物が誕生するようになってしまっていた。
ダヴロスは「カレド族存続のため、宇宙最強の種に作り変える」という目的の下にこの生物に手を加え、誕生したのがダーレクであった。
ダヴロスとダーレクの関係性は非常に歪であり、
ダヴロスから見たダーレクは「自らの最高傑作であり子供達」である一方、
ダーレクから見たダヴロスは「ただ利用価値のあるだけの道具であり、最終的には抹殺する対象」でしかない。
「親の心子知らず」とはまさにこの事である。
タイム・ウォーにはダヴロス博士も参戦していたが、開戦1年目にエリュシオンの門にて、『悪夢の子』に司令船ごと飲み込まれ、戦死していたことが新シリーズのシーズン4で明らかになった。
シーズン1〜4までの主要人物が大集合するシーズン4最終回前編にて、物語の黒幕として登場する。
地球を含む27の惑星が突如消失し、巨大な時空の裂け目が存在する不安定領域『メドゥーサ・カスケード』に集められる。
そして、突如として現れた無数のダーレク達に蹂躙されるのだった。
消えた地球を追ってこの領域に辿り着いたドクターは、かつての仲間たちの手によって地球から発せられた信号を受信。場所を割り出そうとしたターディスの回線に割り込む形で、遂にモニター越しにダヴロス博士が姿を現す。
お前の乗った戦艦がエリュシオンの門で、悪夢の子の顎に飲み込まれるのを見た!
かつてのタイム・ウォーの戦場で、目前で死んだはずのダヴロスの登場に驚きを隠せないドクター。
たしかに、ダヴロスはあの時死ぬ運命だった。しかし、予想外の助けが入ったのだ。
シーズン3で逃亡し、その時点で宇宙に残る唯一のダーレクとなったスカロの集団のダーレク・カーン。
カーンは種族再興の最終手段として、創造主であるダヴロス博士を救出することを選んだのだった。
しかし、タイム・ウォーはタイムロックで封鎖されている。本来であれば干渉することができない。だがカーンは緊急時空移動を用いてそれを力技で無理矢理突破したのだ。タイムロック壁抜けRTA
ダヴロス博士の救出には成功したが、その代償は大きかった。カーンの移動装置は破損し、中身が剥き出しに。その状態で時空の渦を直視してしまったのだ。
膨大な情報が脳に流れ込んだことでカーンは発狂、ヘラヘラと時空の渦から得た未来の情報を喋り続けるだけの存在へと成り果ててしまった。
代償はそれだけではなかった。ダヴロスは服の留め具を外し、その下の身体をドクターに見せる。
服の下は僅かな皮膚と、剥き出しになった肋骨、心臓しかなかった。
ダヴロスは新たにダーレクを生み出すために、自らの肉体を切り刻み、それを材料に細胞を培養、長い歳月をかけてダーレクをかつての規模にまで復活させたのだ。
本拠地である天体サイズの要塞「クルーシブル」、その最下層に位置する保管庫(Vault)にダヴロスとカーンは居た。ダヴロスの献身によって再建されたダーレクだったが、全権は赤いボディの「最高(スプリーム)ダーレク」が握っており、創造主のダヴロスや発狂したカーンは知識を提供するだけの道具としてしか扱われていなかった。
ドクターやこれまでのコンパニオンたちが一堂に集められる中、ダヴロスは今回の『究極の勝利』の立役者となる兵器「リアリティ・ボム」について語る。
リアリティ・ボムは「Z-ニュートリノ」と呼ばれる物を放出する兵器である。
この宇宙に存在する万物―固体・液体・気体は全て、細かく突き詰めれば原子で構成されている。
そしてその原子は、結合剤となる電子で繋がっている。
Z-ニュートリノは、この電子的結合を破壊する効果を持つ。そうなれば、結合が解けた原子はすべてバラバラになる。
つまりそれは、現実世界に存在するありとあらゆるものが原子に分解され、消滅することを意味する。
さらに、実行場所にメドゥーサ・カスケードを選んだのにも理由がある。
各地から盗んだ27の惑星をメドゥーサ・カスケード外縁に特殊な配置で整列させる。
これにより各惑星の配置から生まれる重力やエネルギーを利用し、Z-ニュートリノが宇宙の全域までに伝播するように威力を増幅させる。
さらにメドゥーサ・カスケードは巨大な時空の裂け目が存在する場所であり、ここを通して、全ての平行世界、別次元、ボイドをも射程に含める。
後に残るのは爆心地である要塞「クルーシブル」だけ。
まさしくダーレク以外のすべてをこの世から消し去る「現実破壊爆弾」これがダヴロスが描いた『究極の勝利』であった。
ドクターとコンパニオン達が捕らえられたこの状況下で、シーズン4の物語は最終局面を迎える。
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タイム・ウォーに関係ない余談 |
ダーレクの創造主というおいしいポジションで、長いシリーズ中で悪役として何度も再登場するダヴロス博士だが、毎回完全に死んだと思われても仕方がない…どころか明らかに死んでる状況からでも復活することに定評がある。
初登場の話からして、
「自分が創造したダーレクによって抹殺されてしまう」→後の話で『実はあの時仮死状態でした!』
で再登場しているので尚更である。
新シリーズシーズン4の「ダーレク・カーンによる救出」という理由付けがされているのはまだいい方で、旧シリーズにおいては特に理由が語られずに復活していることがほとんどのため、ファンの間でも「ダヴロスはそういう(気づいたら生き返ってる)奴」とネタにされているフシがある。
また、公式側からもそういう扱いなのか、新シリーズシーズン4のダヴロスの最期は
「自分に救いの手を差し伸べる10代目ドクターの申し出を跳ね除け、怨嗟の声を上げながら瓦礫と炎の中に消えていく」という、壮大かつドラマチックなものなのだが、
そこからかなり経った新シリーズシーズン9の時期に特に理由もなく復活し、惑星スカロにて12代目ドクターと対面している。
「別の時間軸のダヴロス博士なんじゃ?」と思うかもしれないが、演者がシーズン4と一緒であることやその話の中で「ダーレク・カーンの予言」に触れているので、間違いなくシーズン4の事件を経たダヴロス博士である。
もはや公式からも「ダヴロスはそういう奴」とネタにされているような…
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タイムロード
上記のタイム・ウォーの流れの中で解説した通りの「時空を管理する存在」。
厳密には種族名ではなく、惑星ガリフレイに住まうガリフレイ人の中でも、第1都市キャピトルに存在するアカデミーで学び、資格を得たガリフレイ人最上級のエリート層のことを指す。
ガリフレイ人は8歳になると時空の渦(タイムヴォルテックス)を覗き込むという通過儀礼があり、時空の渦から天啓を得る・恐ろしさに逃げ出す・脳を焼かれ発狂するという3通りの結果から、発狂しなかった者だけがアカデミーに迎え入れられる。
幼少期のドクターは、凄まじい恐怖に襲われ逃げ出しながらも「果てしない旅」を見出し宇宙を愛する対象として見た。
後述するマスターは、「ドラムの音」を聞き、宇宙を支配する対象として見た。
アカデミーに入れなかった、もしくは資格を持たないガリフレイ人は都市の外に広がる砂漠と荒野にて、自給自足の慎ましい生活を送る。
そのためタイムロードになれるのは都市に住まう血筋や家柄の良い上位階級、その中の一部だけであり、脱落者や荒野に住まう人々にはその資格すら与えられない。
このシステムが、タイムロードのエリート意識、選民思想を増長させ硬直化させた遠因となっている。
タイム・ウォーの中で、ガリフレイの第1都市キャピトル、第2都市アルカディア以外の都市は早々に破壊されており、生き残った民間人は両都市に避難していた。
やがて絶対的な防衛力を誇るアルカディアが陥落したことにより、最後まで持ちこたえた都市はキャピトルのみとなった。
行政の中心である最高評議会、軍事の中枢である最高司令本部は共に第1都市キャピトルのシタデル(要塞)に存在し、その地下にデータ化されたあらゆるタイムロードの叡智の保管庫である情報空間マトリックスと、古代の兵器を収めたオメガ武器庫が存在する。
◇マスター
旧シリーズから登場する、ドクターと敵対するタイムロード。
アカデミー時代は親友であったが、やがては「宇宙を支配する」という野望からマスターを名乗り、ドクターと幾度も対決することとなった。野望成就のため、時には動くマネキン「オウトン」やダーレクといった他のヴィランと協力することもあった。
ドクターと同様再生するため、旧シリーズでは初代から4代目までが登場した。
タイム・ウォー勃発に伴い、マスターはタイムロードの手により復活させられ、戦争に参加していた。
だが、戦争が「歴史の塗り替え合戦となった泥沼の地獄絵図」へと変わっていった段階で、そもそもタイムロード上層部への忠義を欠片も持ち合わせていないマスターは、まだタイムトラベルが可能な段階で逃亡。
新シリーズシーズン3でドクターも使用した装置「カメレオン・アーチ」を用いて、記憶を封じて人間になることで、その後の捜索からも逃れていた。
新シリーズに再登場するにあたり、(後付けではあるが)マスターが何故狂気に走るのかの理由が明らかとなった。
また、発狂しつつもなぜタイムロードになれたかに関しては、「表面上は普通であったうえ、由緒ある血筋や家柄だった」ためとされている。
◇5代目マスター(ウォー・マスター)/ヤナ教授
演 - デレク・ジャコビ
タイム・ウォーから離脱したマスターは、西暦100兆年―現行宇宙終了間際の時代の惑星マルカサイロに流れ着いていた。
僅かに生き残った人類は、この星から脱出し、安住の地と信じられている伝説の地ユートピアへ旅立つ為、日々あり合わせの資材から宇宙船を建造していた。
記憶を封じたマスターは、人間の老教授ヤナとして、この人々を助けていた。
シーズン3最終回前編、偶然にこの時代に辿り着いたドクターとコンパニオンのマーサ(あと勝手についてきたキャプテン・ジャック)をヤナ教授は本物の医者と勘違いして快く迎え入れるが、
ドクターたちの会話やターディスを目にしたことで、徐々に自分の記憶に違和感を覚えていく。
彼は、常に頭の中で「トトトトン…トトトトン…」という感じの4拍子のドラムの音が鳴っているという症状を抱えていたのだが、ドクターたちと出会ったことでこの症状が酷くなっていった。
そしてヤナ教授は、まるでこのドラムの音に突き動かされるように、マーサから「ドクターと同じデザインの物」と指摘されて気になった自分の懐中時計を開け、そこに封じられていたマスターとしての記憶、能力を取り戻してしまう。
完全に記憶を取り戻したマスターは、それまで助手として付き従っていたチャン・ゾーを銃で撃ち、ドクターのターディスを強奪しようとする。
まだ息のあったチャン・ゾーの反撃で自らも致命傷を負うが、どうにかターディスに入ったマスターはそこで『再生』し…
◇6代目マスター
演 - ジョン・シム
ターディス内で『再生』を果たし、生まれ変わったマスター。
外見も10代目ドクターとほぼ同年代くらいまで若返っている。この状態でも、自分の頭の中で鳴り響く「ドラムの音」が消えず、これをドクターは「8歳の頃に時空の渦を覗いた際に精神を病んだから」と判断していた。
ドクターに自分の復活をアピールしつつ、ターディスを奪ったマスターは現代のイギリスに到達、何と英国首相ハロルド・サクソンとしてイギリスを通して地球を支配することに成功する。
シーズン3内でチラホラと出ていた「ハロルド・サクソン」の名前が、最終回にて「実は英国首相となったマスター」であることが明かされた瞬間である。
一度はマスターに敗北したドクター達だったが、その後の1年にも及ぶマーサの頑張りで遂に形勢逆転、マスターが地球を支配していた1年間も「なかったこと」になった。
ドクターはマスターを殺さずに捕らえようとするが、「ハロルド・サクソンの妻」でありつつも本心では彼を嫌悪していたルーシーがマスターを銃で撃ってしまう。
ドクターは涙ながらに『再生』を促すが、マスターは勝ち誇った笑みでそれを拒む。
ドクターに敗北感を味わわせられさえすれば、マスターは己の命などどうでも良かった。もう好きだろ
その言葉を最後にマスターは事切れた。
ドクターはただ、かつての親友であり残された唯一の同胞の亡骸を抱きしめながら慟哭することしかできなかった。
遺体はドクターの手によって荼毘に付された。
しかしその後、何者かが焼け跡からマスターが身に着けていた指輪を持ち去っており、まだ戦いが終っていない事を示唆しつつ、シーズン3は幕を閉じる。
◇復活したマスター
演 - ジョン・シム
そして時は流れ、2009年。シーズン4.5とも言うべき10代目ドクター最後のエピソードにて、信奉者たちの手によって復活。
だが、不完全な復活であったために白髪になり、生命エネルギーは常にダダ漏れ。エネルギーが切れてくると身体が透過し、骨と内臓が透けて見える状態となる。
常に異常な飢餓感に襲われ、多くの食糧や浮浪者を喰らう事で命を繋ぐという狂気に冒されていた。
また、生体エネルギーを変換して電撃を放つ能力も手に入れたが、これは使いすぎると自分自身の存在も保てなくなるため、諸刃の剣となっている。
さらに、生前悩まされていたドラムの音が、消えるどころかむしろ激しくなっており、それがマスターの狂気を加速させていた。
困惑するドクターに対し、マスターは精神リンクで無理矢理そのドラムの音を聞かせる。ここで初めて、ドクターは「ドラムの音」が狂ったマスターの妄想などではなく、現実世界で実際に鳴っている音であることを認識し、愕然とする。
マスターは、とあるエイリアンの医療装置を手に入れていた大富豪に取り入り、ドラムの音に追い立てられるままこの装置を「不死の門」と名付けた装置に改造。地球上の人間にマスターのDNAを上書きする「全人類マスター化計画」を実行。モブに至るまで全てがジョン・シムの兼役。女物の服をそのまんま着てるマスターとか超シュール
このような行動に出たのは、単に地球を支配したかっただけでなく、ドラムの音の信号を地球の総人口分で強化することで、音の出所を探るためでもあった。
そして「ドラムの音」が惑星規模で一斉に鳴り響いた結果、それに応えるようにマスターの足元に「何か」が落ちてくる。
それはダイヤモンド。
それも、惑星ガリフレイでしか採取出来ないダイヤモンド「ホワイトポイント・スター」だった。
これを拾い上げたマスターは、この「ドラムの音」はタイムロードからの呼び声なのではないか?と考えるようになり…
ガリフレイ第1都市の情報空間マトリックス内に彼の記憶や人格がデータとして記録されており、タイム・ウォーの中でより強い指導者を欲したタイムロードたちの手で肉体を得て復活、最高指導者(Lord President)に祀り上げられた。
やがてタイム・ウォーの戦況の悪化と共にラシロンは、
「かつて自分が築き上げたタイムロード社会の消失」
「下等種族ごときにタイムロードが敗北する=全能であるはずの自分をもってしても勝てない」
という焦燥感、タイムロードのエリート意識と選民思想の悪い所が極限まで煮詰まった結果、
「最終制裁(ファイナル・サンクション)」という狂気の計画を打ち立てる。
この時、「ドクターがオメガ武器庫からモメントを盗み出した」事を報告し、自分に意見した女性評議員を即座に殺害、「我々は死なない!」と他の評議員を恫喝しており、既に敗北を前にして狂気に囚われた独裁者と化している。
その後、最高評議会では「ファイナル・サンクション」の実行が
ほぼ満場一致で可決。
反対したのはたった2名であり、ラシロンは2人に
「古の嘆きの天使のように顔を手で覆う罰」を与え、自分の背後に侍らせている。
予言から、ドクターとマスターのみはタイム・ウォーを生き延びることを知ったラシロンはある行動に出る。
タイム・ウォー内外へはタイム・ロックにより時間を超えた移動は出来ない。だが、タイムロードの管理者権限である「歴史の改変」を、極めて小さい局所的な範囲で行う事は辛うじて可能だった。
ラシロンは、8歳の頃の通過儀礼で時空の渦を覗き込んだ瞬間のマスターに干渉し、彼の頭の中に「ドラムの音」を植え付けた。
日常的に頭の中で鳴り響く「ドラムの音」によってマスターは徐々に精神を病んでいき、やがては宇宙支配の狂気に走るようになっていった。
4拍子のドラムの音の正体は「2つの心臓を持つタイムロードの鼓動」であり、マスターとラシロンがリンクしている事の表れでもあった。
このリンク自体は極めて小さい微弱な物であるが故に、タイム・ロックという『時間の檻』の隙間を抜けることが可能であった。
そして、そうとは知らないマスターが「不死の門」を用いて信号を増幅したため、機は熟したと判断したラシロンがホワイトポイント・スターを増幅したリンクに乗せてマスターの下へ送り込んだのだ。
マスターはラシロンの思惑に乗せられるまま、「不死の門」にホワイトポイント・スターを組み込み、信号をさらに増幅させる。これによりタイム・ロックに抜け穴が空き、タイム・ウォー戦下の惑星ガリフレイが地球近郊に姿を現し始める。
そしてマスターとドクター、今回のドクターの協力者のウィルフレッドらの前に、遂に取り巻きと共にラシロンが降臨する。
『ファイナル・サンクション』とは何か。それは時空の渦(タイム・ヴォルテックス)を破壊し、全宇宙、全時空の全てを巻き添えに消滅させ、タイムロードは肉体から解放された精神体に昇華することで永遠に生き続けるというもの。
まさしく「ゲームの対戦に負けそうになったことに怒り、ゲームの筐体自体を破壊して全てを無かったことにする」かの如き壮絶な心中計画であった。
科学技術の極致といえる「リアリティ・ボム」でダーレク以外の全てを抹殺しようとしたダヴロス博士
時間概念の破壊といえる「ファイナル・サンクション」でタイムロード以外の全てを消失させようとするラシロン
もはや、戦争の中で変貌したタイムロードはダーレクと同等の脅威へと成り果てていた。
そしてドクターはマスターに語る。だからこそ、自分はタイムロードをダーレク諸共滅ぼす選択を取ったのだと。
マスターは意に介さず、「タイムロードを滅亡から救った」自分も迎え入れるように要求。だがラシロンはそれをにべもなく跳ね除け「お前は私が作り出した病人にすぎん」と切り捨てる。マスターもここで、「ドラムの音」の真実をようやく知る。
自分の苦しみの全てはこの瞬間のため。
惑星ガリフレイをタイム・ロックから脱出させるための命綱としての役割でしかない、ただの使い捨ての道具であったと。
ドクターはウィルフレッドから貰った拳銃を手に、マスターとラシロンの間に立ち塞がる。
信号の発信源であるラシロンか、その受信機であるマスター。どちらかを殺せばリンクは断たれ、ガリフレイはタイム・ウォーに戻る。
お前の敵をよく選ぶのだな、ドクター。我々は多勢だがマスターは一人だ。
ラシロンは、二者択一を迫られるドクターに揺さぶりをかける。
その瞬間、ラシロンの後ろに侍らされていた「顔を覆う罰」を受けていた罪人の1人が、顔から手を下ろした。
ドクターは預り知らない事だが、今回のストーリー中、協力者であるウィルフレッドの前に、時折謎の女の幻影が現れては導きを与えていた。
たった今ラシロンの後ろで手を下ろした罪人はまさにこの謎の女その人だった。
女は涙を流していた。
そして、息を吞んで見つめるドクターとウィルフレッドの前で、視線の動きだけで何かを伝えようとしていた。
そしてドクターは遂にマスターに銃口を向け―
…そこをどけ(Get off the my way)
一瞬の間を置いてドクターの狙いを察したマスターが飛び退き、ドクターはその背後にあったホワイトポイント・スターを撃ち抜いた。
リンクは断たれた!タイム・ウォーに戻るんだ、ラシロン!!
ドクターの言葉通り、地球の近郊に顕現しつつあったガリフレイが、衝撃と共に急速に元の時代へと引き戻されていく。
怒り狂ったラシロンは、左手のガントレットをドクターに向け、エネルギーを充填させる。ドクターはそれを甘んじて受ける覚悟だった。ラシロン背後の謎の女も再び顔を覆った。
…そこをどけ(Get off the my way)
ドクターの背後からマスターが現れる。
ドクターが飛び退いた瞬間、マスターが放った電撃がラシロンを直撃した。
マスターが電撃をさらに強める。
それは、ラシロンの計画のためだけに、人生の全てを台無しにされ、苦しめられてきたマスター最大限の復讐だった。
不安定になったマスターの身体が透け、骨が剥き出しになりながらもさらに右手から電撃を放つ
これまで自分が味わってきた4拍子のドラムに準えた、4連続の電撃をラシロンに浴びせながら、マスターはラシロンらと共に、ガリフレイ最期の日へと戻っていった。
◇将軍
演 - ケン・ボーンズ
50周年記念スペシャルにて登場。
タイム・ウォー戦下において、軍事面の担当であるガリフレイ最高司令本部の責任者。
行政面の担当であるラシロンの最高評議会とは別の組織であり、将軍自身は最高評議会を快く思っていない。ある意味ではタイムロードの良心ともいえる人物。
また作中では「最高評議会の作戦とやらは失敗した」という台詞があり、今作の時系列が「ファイナル・サンクション失敗後」であることが明言されている。
ドクターに関しては当初は邪険に扱っていたが、やがてはタイム・ウォーとガリフレイの行く末を委ねる決断をすることに…
タイム・ウォーに巻き込まれた種族
ネスティーン(ネスティーン意識体)
旧シリーズから登場している敵キャラクターで、新シリーズシーズン1にてシリーズ再始動の記念すべき最初の敵として抜擢された。
自身の目的のために地球人を滅ぼそうとしており、やっていることは侵略行為なのだが、そもそも地球にやってきた理由がタイム・ウォーによって故郷を失ったためであった。
ゲルス
新シリーズシーズン1に登場。
ガス状の幽霊のような生命体。
元々は肉体があったのだが、タイム・ウォーに巻き込まれた結果、現在の姿になってしまった。
ザイゴン
全身に吸盤を備えた赤い類人猿のような姿のエイリアン。
わかりやすく表現するなら手足が人間っぽくなったピグモン
旧シリーズの頃から登場している種族のひとつで、非常に精巧な擬態能力を持つ。外見だけでなく、記憶までもコピーして演じることが出来るが、記憶を引き出し続けるには擬態対象を生かしておかなければならないため、
なんか気持ち悪い有機物で何処かに拘束する必要がある。
全員が危険な存在というわけでなく、地球人に擬態したまま暮らそうとしている穏健派も存在しており、たまに現れる過激派が地球侵略やら何かをやらかそうとして問題を引き起こしている。
50周年記念スペシャルにて、彼らもタイム・ウォーで故郷を失ったことが明かされるほか、物語を通してザイゴンの地球侵略とタイム・ウォーの決着が並行して描かれる。
『ドクターの日』
ドクター・フー50周年記念として、2013年11月23日にイギリスで2D/3Dで配信および劇場公開された。
タイム・ウォーを戦ったウォー・ドクターに焦点を当てつつ、当時シーズン7が終了間際で降板が近くなっていた11代目ドクター、絶大な人気を誇った先代の10代目ドクターが一挙に集結するというお祭り企画となっている。
日本では、2DのみのDVDが吹替付きでリリースされており、今作「ドクターの日(The Day of the Doctor)」と、次エピソードのクリスマス特番「ドクターの時(The Time of the Doctor)」が一本に収録されている。
吹替では、10代目ドクターとインターフェイス(ローズ)役にNHK放映版と同じ関俊彦、坂本真綾両名が起用されており、当時観ていたファンには嬉しい配慮となっている。
また、映像特典として8代目ドクターが主人公の前日譚エピソード「ドクター前夜」、
劇場で流れた「ソンターランによる上映マナー講座」が収録されている。
映像特典は吹替がなく、日本語字幕のみ。
このエピソードにて、タイム・ウォーに一つの決着が着くことになる。
登場人物
2013年
◇11代目ドクター
演 - マット・スミス/声 - 川島得愛
アゴ男現ドクター。
クララと一緒にメソポタミア文明に出かけようとしていたところ、突然UNITからの緊急招集により、ターディスごとヘリコプターで英国国立美術館(ナショナル・ギャラリー)までダイレクト輸送されるという羽目に。
ナショナル・ギャラリー地下には、一般公開されていない美術品の数々が収められているのだが、そこにはある絵が飾られていた。
平面の絵の中に、まるで3D空間が広がっているような、不思議な絵画。
題名は『終止符を(NO MORE)』別名は『ガリフレイ陥落(Gallifrey falls)』。
タイムロードの技術である凍結キューブというガジェットを使い、ガリフレイ陥落の日の一瞬の時間そのものを絵の中に封じたものであるという。
その絵を見るドクターは言う。
「この中にあの日の自分がいる」
◇クララ・オズワルド
演 - ジェナ・コールマン/声 - 原島梢
ドクターと出かけるために、オートバイに乗ってターディスの中まで乗り付けるというワイルド過ぎる登場をする。オートバイ女子良いよね
異なるドクター達の登場には戸惑うが、特に悩めるウォー・ドクターには、自分が今まで隣で見てきたドクター像を伝えて寄り添おうとする。
◇ケイト・レスブリッジ=スチュワート
演 - ジェマ・レッドグレイブ/声 - 森千晃
UNITの科学部長。
旧シリーズにて、かつてのドクターのコンパニオンであったレスブリッジ・スチュワート准将の娘。
発見されたエリザベス1世の遺言から、ドクターをナショナル・ギャラリーに呼び出す。
何やかんやでドクターが不在となる中、ちょうど同じタイミングで発生したザイゴンの地球侵略作戦に対応しなければならなくなり、彼女は苦渋の決断を下そうとする。
1562年
◇10代目ドクター
演 - デヴィッド・テナント/声 - 関俊彦
ズックを履いた男先代ドクター。
1562年のイギリスにて、なんとエリザベス1世と馬でデートしていた。相変わらずのタラシっぷり
おまけに原っぱでピクニックついでにエリザベス1世に求婚した。
実は、10代目ドクターはこの時代に地球に潜入していたザイゴンを追っており、いきなりの求婚も「本物のエリザベス1世なら軽はずみに結婚を受けるはずがない」と考えての事。
ちなみに、エリザベス1世は本物でザイゴンは乗っていた馬の方だった
自作した「ザイゴン発見機」も精度が壊滅的なうえにぶっ壊れて使い物にならない。
おまけにザイゴンが化けた偽物と本物のエリザベス1世が同時に現れる始末。
窮地に陥るドクターの背後で突如時空のトンネルが開き、そこからやってきた未来と過去の自分と対面することに。
◇エリザベス1世
演 - ジョアンナ・ペイジ/ -
16世紀後半のイングランドを統治し、イギリスに黄金期をもたらしたとされる実在の人物。
生涯誰とも結婚しなかったために「処女王」と呼ばれている。…史実では。
今作では10代目ドクターにゾッコンであり、事あるごとに濃厚なディープキスを見舞う。
しかし、ただのビッ…恋愛脳な女子というわけでなく、いざとなれば自ら戦うこともあれば、ザイゴンが気づかないレベルの演技力を披露するなどの女傑っぷりを見せる。
しまいには10代目ドクターとガチで結婚した。
ちなみにシーズン3にて、1599年のロンドンで登場した晩年のエリザベス1世は10代目ドクターを「私の宿敵」と呼んで即処刑を命じるほどに憎んでいる。
その原因は十中八九今作の出来事のせいである。
タイム・ウォー最後の日
◇ウォー・ドクター
演 - ジョン・ハート/声 - 祐仙勇
おじいちゃんタイム・ウォー当時のドクター。
第2都市アルカディア陥落で現状に絶望し、オメガ武器庫からモメントを持ち出した彼は、かつて幼少期を過ごした都市の外の荒野にあるあばら家で起動させようとしていた。
戦争を終わらせるためには、ダーレクだけでなく醜く変貌してしまったタイムロードも滅ぼさなければならない…戦争に関係のない民間人や子供も一緒に。
未だ決断ができない彼の前に、突如謎の女が現れる。
◇インターフェイス
演 - ビリー・パイパー/声 - 坂本真綾
モメントを起動しようとしたウォー・ドクターの前に現れた、ローズ・タイラーと同じ外見を持つ謎の女。この姿はウォー・ドクターにしか見えず、傍目にはウォー・ドクターが独り言を言っているようにしか見えない。
その正体は、モメント自身が持つ「自我」がドクターのタイムラインの中から選んだ姿で現れたもの。
モメントは破壊と引き換えに使用者に代償を求めるという。インターフェイスが代償として求めたのは「仇敵と同胞を手にかけたという罪悪感と共に、ただ一人で生き続ける」事。それがお前の代償であり罰だと。
そしてインターフェイスは、タイム・ロックに穴を空けて時空のトンネルを開き、
「未来の自分をその目で見てくればいい」と促した。
三人のドクター
時空のトンネルを抜け、11代目、10代目、ウォー・ドクターの3人が1562年のイングランドに集う。
すったもんだの末、当時の兵士たちに「女王陛下を誑かした罪」でロンドン塔の地下に閉じ込められてしまう。
監獄の扉は木製なのだが、ドクターの持つソニック・スクリュードライバーは、「ハイテク機器ならば簡単に操作できる一方、木材のようなアナクロな物は操作できず、破壊するならば数百年分の計算が必要」という弱点がある。
ウォー・ドクターはやたらと自分に対してよそよそしい、一見年若い「未来の自分たち」を見てもまだ実感が沸かない。傍らに寄り添うインターフェイスに促され、ウォー・ドクターは質問をする。「あの日、ガリフレイには何人の子供がいたのか」と。
一瞬の沈黙の末、11代目は「見当もつかないね」と答える。その他人事のような態度に、ウォー・ドクターも「数えもしなかったのか?」とつい声を荒げてしまう。
代わりに口を開いたのは10代目だった。
「24億7000万人だ」「数えてるじゃないか!」
そして、ウォー・ドクターをよそに10代目は今度は11代目に食ってかかる。
「あれだけの事をどうして忘れられる!?」
言い争いを始めてしまう2人を見て、ウォー・ドクターはますます自分がよく分からなくなる。だが、インターフェイスは「どれもあなたよ」と言う。
自分の所業に苦しみ、犠牲者の数を数えながら過去を悔い、やがては自分が前に進むためにそれら全てを忘れようとする。それが、モメントを起動してしまった後の自分が辿る末路。
「外見が変わっても、中身は変わらない」
インターフェイスのその言葉に、ウォー・ドクターは監獄から出る方法を思いつく。
まず、齢800歳代のウォー・ドクターが自分のソニック・スクリュードライバーで監獄の扉をスキャン、扉の破壊に必要な計算式をプログラムする。
それを見た齢904歳の10代目ドクターは自分のドライバーを確認すると、既に約100年分の計算が進んでいる。
そして、齢1200歳代の11代目ドクターが自分のドライバーを確認すると...
「...完了した」
ソニック・スクリュードライバーは、各代のドクターによって外見は異なる。だが、内部のソフトウェアは同一のものを使い続けている。
まさに持ち主のドクター同様に、「外見は変わっても、中身は変わらない」からこそ成しえた結果であった。
ちなみに鍵はそもそもかかっていなかった
ウォー・ドクターの決意
2013年のイギリスでは、ザイゴンらによる地球侵略が行われようとしていたが、
ドクターたちの鮮やかな解決により、人類とザイゴンを交渉のテーブルに就かせた、平和的な話し合いが成されようとしていた。
それを少し離れた場所で紅茶を飲みながら見守るウォー・ドクターとクララ。
クララは言う。「あなたはとても若い目をしてる」
クララの知るドクターは、常に自分の決断を後悔し、苦悩し続けてきた。彼の目は、常にあの日の後悔で満ち溢れていたと。
クララの話と、自分が戦争の果てに捨ててしまった『ドクター』としての在り方を体現する2人のドクターを見て、遂に悟った。
自分がタイム・ウォーを終わらせたせいで、彼らは長く苦しむ事になった。
だが、それを経験したこそ、彼らは同じ過ちを繰り返さぬよう『ドクター』で在り続けようと努力するのだと。
ならば、そのためにも自分は務めを果たさなければならない。
「...もう充分だ」
ウォー・ドクターが、自分を見守り続けるインターフェイスに声をかける。
クララにはその姿が見えないが、再び振り返った時にはウォー・ドクターは姿を消していた。
ウォー・ドクターは、再びガリフレイ最期の日のあばら家に戻っていた。
目の前には起動準備に入ったモメントが。
どこか悲しげな表情でインターフェイスが覚悟を問うが、既に覚悟を決めたウォー・ドクターは構わずボタンに手をのせる。
次の瞬間、あばら家に2台のターディスがタイムトラベルしてくる。
本来であれば、タイム・ウォーにはタイム・ロックがかけられているはずだが、今回はインターフェイスが手引きしていた。
降りてくる2人のドクターとクララに対し、ウォー・ドクターは帰るように言う。
「自分がなれなかったドクターになれ」と。
だが、2人はボタンを押そうとするウォー・ドクターの手の上に自分たちの手を重ねる。
『彼ら』はずっと、「彼」を忘れようとしていた。
だが、「彼」の覚悟があったからこそ、『彼ら』は『ドクター』としてここにいる。
今回は3人でボタンを押そう。
憎しみや恐怖からではなく。ドクターが救えなかった多くの命の名のもとに。
ドクター達の決断を見ていたクララが、涙ながらに彼らを制止する。
彼女が泣いたのは、『ドクター』がすべてを諦め、自分自身の魂を殺そうとしている。それが悲しかったのだ。
彼らも『ドクター』の誓いを思い出す。
『慈悲の心と勇気を持つ。決して諦めない、引き下がらない』それがドクターという名にかけた誓いだった。
「...ずっと、この事を考えていた気がする」
11代目ドクターの頭に、「ある考え」が去来する。まるで、数百年もずっとその事を考え続けていたかのように。
意味がわからないという風だったウォー・ドクターも、次いで10代目ドクターの脳裏にも同じ考えが浮かび、狂喜する。
それを見ていたクララとインターフェイスの表情にも笑顔が浮かぶ。
これまでとは違う、新しい考えが浮かんだのだ。
それはこれまでどのドクターも行ってこなかった、タイム・ウォーの歴史を改変することを意味していた。
タイム・ウォー最後の日。
ダーレク艦隊の砲撃に晒されるガリフレイ最高司令本部にウォー・ドクターからのメッセージが届く。
だがその内容は、かつての歴史とは異なっていた。
「GALLIFREY STANDS(ガリフレイは生き続ける)」
将軍らが困惑する中、最高司令本部内に場違いなほど明るい声が響き渡る。
ねえ、聞こえる?ガリフレイ最高司令本部、こちらドクターだ、どうぞ。
異なる姿の3人のドクターらがコンソールに現れ、将軍は「こんな悪夢は想像もできなかった」と口にする。ドクターが日頃どう思われているかがよくわかる
10代目と11代目がウォー・ドクターを置き去りにしてコントを繰り広げつつ、将軍にこれから取る作戦を伝える。
僕達は星の周りを等間隔で飛行する。…今の言い方超オトナ…!
ドクターたちは、凍結キューブの原理を応用し、ターディスを用いてガリフレイそのものの時間を凍結させる。星だけでなく、現在生き残っているガリフレイ人もろとも、である。
そして凍結させたガリフレイをポケット宇宙に封印し、この宇宙から存在そのものを隔離することで消滅したように見せかけるという。
困惑する将軍に対し、ドクターたちはもう一つの結末も提示する。
それは、これまでの歴史通りのモメントの起動。だが「そんな光景は二度と見たくない」と11代目ドクターは言う。
封印か滅亡か。
仮に封印されたとしても、それはガリフレイの人々は時間ごと凍結させられたまま、いつ解放されるかもわからない状態で別の宇宙を彷徨い続ける事を意味する。
「凍った時の中で、我々に何が残る?」と将軍は不安を隠せない。
『希望』が残されているじゃないか!今の君達に必要なのは、『希望』しか無いだろ!
かつてのタイム・ウォーには、あとは敗北と死を待つだけという『絶望』しか無かった。
モメントの起動は、そんな『絶望』の時間を長引かせないように済ませたウォー・ドクターによる「介錯」でもあった。
だが今は違う。ガリフレイと人々が生き残り、存続することが出来る可能性という『希望』があるとドクターは説く。
将軍は心を動かされながらも、未だ不安を捨てきれない。これだけの作戦を実行するには何百年もの計算がかかる。
でも大丈夫!とっくの昔に始めてるからな
ダーレク艦隊による砲撃が未だ続けられる中、宇宙の彼方よりさらに複数のポリスボックスが続々と飛来してくる。
通信コンソールに新たな姿が表示される。それも1つだけではなかった。
初代ドクター 演-ウィリアム・ハートネル
2代目ドクター 演-パトリック・トラウトン
3代目ドクター 演-ジョン・パートウィー
4代目ドクター 演-トム・ベイカー
5代目ドクター 演-ピーター・デイヴィソン
6代目ドクター 演-コリン・ベイカー
7代目ドクター 演-シルベスター・マッコイ
8代目ドクター 演-ポール・マクガン
9代目ドクター 演-クリストファー・エクルストン
歴代ドクター達が一堂に会するという、50周年を迎える長寿番組ならではの光景。なお、既に鬼籍に入られている演者もいるため、コンソールの姿は当時の映像からの流用となっており、初代ドクターの音声もジョン・ギローによって吹き替えられている。
ロンドン塔の地下で行った、ソニック・スクリュードライバーの計算のように、ドクターもまた「外見が変わっても、中身が同じ」
今回の作戦のために、初代ドクターから計算を初め、歴代ドクター達が代替わりしながら計算を続けたことで、作戦に必要な準備は既に整っていた。
目の前の光景に圧倒される将軍。
だが、側近がさらに報告する。
「全部で13人です!!」
12代目ドクター 演-ピーター・カパルディ
何と、演者が既に決定されていた次のドクターの先行登場である。
今作の登場はターディスを操作する手元と目元のアップのみであり、本格的な登場は次のクリスマス特番以降となる。日本語吹替は内田直哉が担当。
最高司令本部を襲う衝撃が一層激しくなる。
異変を察知したダーレクたちが、攻勢の手を強めたのだ。
もう時間の猶予はない。将軍は遂に覚悟を決めた。
賽は投げられた。
「...では諸君、始めようか」
ドクター達が一斉に、ターディスのレバーに手をかける。
高速回転する13のポリスボックスが結集し、ガリフレイが光に包まれ…
次の瞬間、宙域一帯が大爆発を起こす。
ガリフレイを全包囲していたダーレク艦隊が、攻撃対象が突然姿を消したために対面同士の味方の砲撃によってまとめて吹き飛ばされ、自滅したのだ。
表面上の出来事だけは、かつての歴史同様にタイムロードとダーレク双方が宇宙から姿を消した事になる。
かくして、タイム・ウォーは終わった。
全てが終わった後のナショナル・ギャラリーの地下。
3台のターディスと「ガリフレイ陥落」の絵の前でドクター達とクララが紅茶を飲みながら語らっていた。
作戦が無事に成功したのか、実際のところはわからない。
この時代を離れれば、11代目以外のドクターの記憶からは今回の出来事は消える。
ウォー・ドクターは、新シリーズ初期のように、同胞たちを手にかけたという罪悪感を抱いたまま生きていくことになる。だがそれでも、今この瞬間のウォー・ドクターの表情は晴れやかだった。
皆に感謝の言葉を述べると、「どれが自分の(ターディス)だ?」という小ボケをかましつつこの時代から旅立っていく。
そして、ターディスを操作するウォー・ドクターの身体が光を放ち、『再生』をしはじめた。戦争とともに「戦士」の役目も終わったのだ。
「…務めは果たした」
9代目ドクターへと再生していく中、ウォー・ドクターはふと呟く。
「次は耳が小さいといいが」残念でした
10代目ドクターもまた立ち去ろうとするが、どうせ記憶が消えるのなら教えて欲しいと尋ねる。自分は何処で死ぬのか、と。
11代目ドクターは迷った末に
「惑星トレンザロアで、戦いの末に死ぬ」と嘘をつく。
10代目ドクターは心底嫌そうだったが、それでも「未来の僕が君で安心したよ」と笑い、自分のターディスの扉を開ける。
「トレンザロアか、別の星にしろよ。僕は…行きたくないんだ」
クララは11代目ドクターの様子から、しばらく1人になりたいのだと察する。
「ここの学芸員が話をしたがっていた」と頼まれていた伝言を伝え、一足先にターディスの中に入っていった。
一人残ったドクターは、目の前の「ガリフレイ陥落」の絵を改めて見つめ直す。
「引退したら、ここの学芸員にでもなろうかな」
「なれるかもしれないよ?」
いつの間にか、傍らに杖をついた見知らぬ老人が立っていた。
だがドクターはその顔に見覚えがあった。
学芸員のお爺さん
演 - トム・ベイカー/声 - 小田柿悠太
ナショナル・ギャラリーの学芸員だと名乗る白髪の老人。
演者はかつて、旧シリーズで最も高い人気を誇った4代目ドクターを演じていた、2013年当時のトム・ベイカーその人。
その言動から、現役を引退し11代目の言葉通りに、ナショナル・ギャラリーの学芸員になった未来のドクターとも察せられる。
学芸員はドクターに、目の前の絵の題名を知っているかと尋ねる。
「『終止符を(NO MORE)』と、『ガリフレイ陥落(Gallifrey falls)』…?」
答えるドクターに対し、学芸員は「みんな勘違いしている」と言う。正しくは、
『ガリフレイ陥落に終止符を(Gallifrey falls, No more)』
その名を聞いたドクターは確信する。
ガリフレイは陥落しなかった。自分たちの作戦は成功していたのだ。
今後の旅の方針が決まった。何処かに封じられた故郷を見つけに行くのだ。
何処にあるのか聞こうとするが、それは内緒だという。
学芸員は本当に未来のドクターか、それとも過去のドクターなのか?
「誰も知るはずがない…知っていても、話(鼻)さんさ。(Who knows? No…WHO knows(nose)?)」
最後の締めが親父ギャグで、心なしか反応に困っているように見える11代目ドクターを残し、学芸員は立ち去っていった。
自分の過ちによって故郷を滅ぼした「虐殺者」として始まった新シリーズ。
10年近い年月を経て、ドクターは「救済者」としての名を取り戻した。
ガリフレイがどこにあるのか、それはまだ分からない。
これまでの歴代ドクターたちが勢揃いする場所で、11代目ドクターもその列に加わり、宙に浮かぶガリフレイを見上げる。
今のドクターには、故郷という目的地がある。
タイム・ウォーは、真の意味で幕を閉じた。
それは、孤独なタイムロードが「孤独ではない」自分を見つけるまでの、壮大な旅の記録でもあった。
追記・修正はザイゴンとディープキスした人がお願いします。
- なるほど13人揃ったら勝ちってこういうことなのね(MTG脳 -- 名無しさん (2026-04-28 20:48:57)
最終更新:2026年05月06日 00:47