M9 ガーンズバック

登録日:2009/08/26(水) 01:21:34
更新日:2025/03/13 Thu 18:23:39
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フルメタル・パニック!』および『フルメタル・パニック!アナザー』に登場する架空の人型兵器、アーム・スレイブの一種。




【機体説明】

米軍で開発中の最新鋭第三世代型AS。
だが極秘組織〈ミスリル〉では、すでに実用化、実戦投入されている。
また、長編九巻から〈デルタ・フォース〉も極秘裏に運用開始した。

本機の大きな特徴は、低温核融合炉〈パラジウム・リアクター〉による完全無音駆動である。
従来のASはガスタービンエンジン等を動力源としていたため、エンジン音が大きく隠密行動が取れなかった
(第二世代でもM6A3などの新型は限定的だが無音駆動が可能)。
だが、M9はほぼ全くの無音であり、足音も立てずに行動する事も可能である。

また、出力の上昇と最新のマッスル・パッケージ搭載に伴い、
従来の機体がマッスル・パッケージのパワー不足を補うために装備していた
複雑な油圧式の駆動系を全撤廃したため整備性は向上し、軽量化にも成功した。
ただし油圧システムを積んでおらず、腰も人間同様複雑に屈曲する為、規格外の荷重には弱いという弱点が存在する。
よって、大量の重い物を一気にどかしたい場合(そんな状況でASを使うことなど滅多に無いが)なら第二世代機の方が適任。

高出力と最新のマッスル・パッケージ、軽量ボディによって生まれる圧倒的な運動性は「これ以上性能が上がっても使いこなせる人間はいない」とされるほど。

また油圧系を撤廃したことで機体内部に空間的余裕ができ、様々な電子兵装が追加可能になった。
脇の下には内蔵式の兵装ラックまで備えている。

もう一つの特徴として対話型のAIを積んでいる事が挙げられる。
従来のASでは、機体の動作設定はもちろん、破損した場合の処置等諸々を全てオペレーターがこなさなければならなかった。
しかし、M9ではこの作業を高度なAIが自動で行う事で、よりオペレーターが戦闘に集中しやすいようになっている。

コックピットは対ABC兵器対策として完全密閉式。
防水対策もとられており、水中でも活動出来るがあくまで水中でも何とか使えるというレベルである。


【詳細スペック】

全高:8.4m
基本重量:9.5t
最大跳躍高:45m
最高自走速度:280km/h
最大作戦行動時間:150時間
動力源:パラジウム・リアクター/ロス&ハンブルトン APR2500a
固定武装:AM11 12.7mmチェーンガン×2、XM18ワイヤーガン×2、テイザー×2


《基本携帯火器》

◆エリコン・コントラヴェス GEC-B40mmライフル
◆ボフォース ASG96-b57mm滑腔砲
◆OTOメララ“ボクサー”57mm散弾砲
◆ヒューズ VGM-A2(M)“ヴァーサイルⅡ”多目的ミサイル
◆レイセオン/ジェネラルエレクトリック K1“ジャベリン”超高速ミサイル
◆ロイヤルオードナンス M110対戦車ダガー
ジオトロン・エレクトロニクス GRAW-2単分子カッター


《電子兵装》

◆ECS

Electromagnetic Camouflage Systemの略。
様々なレーダー、センサーからの隠蔽が可能な最新の電磁迷彩システム。
ミスリルのM9には加えて〈不可視モード〉というシステムが備わっている。
これは光学的に見えなくなる状態、いわゆる“透明化”であり、レーダーはもちろん肉眼でも発見は出来ない。
普通の人間は機体が完全に透明化する事など考えもしないため圧倒的優位性を持っている。
街中に潜伏していても誰にも気付かれる事はない。
ちなみに、ECS不可視モードの使用中は外界が紫色に見える。

ただしオゾン臭が発生するため、嗅覚の鋭いやある程度の知識がある者には違和感から気付かれやすい。
加えて紫外線は隠蔽出来ないため、紫外線が見える鳥にも注意が必要である。

また、レーザー・スクリーンに水分が触れるとスパークが発生してしまうため、雨中、水中での使用も不可能。
更に使う為にはレンズを露出させなければならない為砂が舞い散る砂漠では安易に使えず、
使用中は大量の電力を消費するので戦闘機動がとれない(できなくはないが、一時的なエネルギー切れになってしまう)等弱点も多い。

◆ECCS

対ECSセンサー。
ECSの偽装を見破る事が出来るが、アクティブセンサーなので使用すると位置が特定されてしまう。

◆妖精の眼

ストーリー中盤より導入された新装置。
ラムダ・ドライバが発生させる不可視の力場をサーモグラフィーのように可視化出来る。

◆ITCC-5統合戦術通信管制システム

指揮官機用のデータリンク装置。
味方の機体との管制、命令を瞬時に行える他、このシステムに準拠した制御システムを搭載している兵器(ASには限らない)を遠隔操作出来る。


《AI》

M9に搭載されている対話型制御システム。
個別に名前を付ける事ができ、声も変更可能。基本設定は全機同じ男性の声だが、アニメでは違いを出すためか声優が別々。

◆フライデー

マオのM9に搭載されているAI。
マオの趣味で命令を受けた時《ご褒美は?》と聞いてくる。
返答は「キャンディーよ」
CV.福山潤

◆ユーカリ

クルツのM9搭載AI。
クルツの趣味でサンプリングされた日本のアイドルの声で喋る。クルツは卑猥な事を言わせたりして遊んでいるらしい。
CV.田村ゆかり
AI名の由来は恐らく声優からだろう。

◆ドラゴンフライ

クルーゾーのM9〈ファルケ〉搭載AI。
あまり喋る機会が無く、『IV』で初めて声が付いた。
名前の元ネタはクルーゾーの好きなアニメ映画の登場人物から。ちなみに声優も同じ。
CV.山口勝平

アル

アーバレスト〉搭載AI。
他のAIとは違い、人間のように振る舞う特別な存在。
M9のAIではないが、設定上での声はM9のAI標準の物である。
一応変えることも出来るらしいが宗介にその辺へのこだわりが無いのでデフォルトのまま(かつアルが拒否している)。
CV.室園丈裕


《増設装備》

M9が場合によって装着する装備。〈アーバレスト〉や〈ファルケ〉も使用可能。

◆緊急展開ブースター

作戦目的地が内陸部であり、迅速にM9を送り出したい場合に使用されるブースター。
大きな二枚の翼を備えており、〈トゥアハー・デ・ダナン〉のカタパルトから射出される。
片道用であり、目的地まで飛んだあと翼とブースターを破棄してパラシュートで降下する。帰りは輸送ヘリなどによる支援が必要になる。
因みに値段は結構お高いらしく、正規軍でもそんなに多用はしないとか。

◆水中用オプション

酸素タンクとバラスト、高出力ウォーター・ジェットで構成される水中移動用の装備。
非常時には水中翼を展開して水上を高速で滑走する事もできる。



【M9系列一覧】

現在判明しているのは4種類。

◆C系列

試作機は〈アーバレスト〉に改修された。
アーバレストが『シリアルC-002号機』なので最低でも二機作られたと思われる。

◆D系列

ドイツのドルトムント工事にて試作機〈ファルケ〉が二機作られた。*1
本来はラムダ・ドライバ搭載機の予定だったが、バニ・モラウタの自殺によって頓挫した。
形式番号でM9Dと書かれる事もあるが、2024年に賀東本人が「そんな設定ない」と否定している。
後にドイツで生産された「ヴォルフ」という第3世代ASがこの工場で制作されているが、D系列の設計者が一部関わっているのでちょっとした姉妹機になるとか。

◆E系列

ミスリルで正式採用されたタイプ。劇中に登場する灰色のM9である。
頭部はヘルメットを着けた戦闘機パイロットのようなデザインをしており、隊長機にはブレード状レーダーが増設されている。
試作機であるXM9からデザインはほぼ変わっておらず、作中ではXM9の名でプラモデルが複数のメーカーから発売されている模様。
11年後の機体と比較してもチート級の性能を維持している。
今まで「A系列」とされていた機体も、2024年に実はE系列ということが賀東から明かされている。
M9Aとか表記されてたA部分は「Advanced」のAだとか。
A系列はイギリスで生産される予定のモデルだったが工場のラインが立ち上がる前にキャンセルされている。
どうしてあんなにデブったのかは不明だが、ファンの間では「オリジナルのM9ではピーキー過ぎてミスリルSRT並の腕がないと操縦できない、そのため機動性をマイルドにするために重装甲にした」とか考察されている。

◆ファルケ

〈ウルズ1〉ベルファンガン・クルーゾーが使用する黒いM9。
D系列の試作機で、本編後も含めて計3機が製作された。
スペックはE系列と大差ないが、元々〈ラムダ・ドライバ〉を搭載する予定だったため、容量に余裕がある。
また、四肢がE系列よりもマッシブになっており、頭部はアーバレストに近いツインアイのセンサーを使用している、どちらかといえば格闘戦向けの機体。
単分子カッターは他のM9と違い、爪の形をした切断力のある〈クリムゾンエッジ〉を使う。
作中ではクルーゾーの武術を忠実に実行し、ミスリルのM9の中でもトップクラスの強さを見せた。

Twitterにて漫画版『フルメタル・パニック!Σ』の作者の上田宏氏が
「レーバテインはM9よりファルケとシルエットの共通部分があるなーと描いてて気付いた。太腿とか尻とか。開発中のファルケのラインの余剰パーツを流用したのかなーという設定を考えてみた。」
とつぶやき、海老川氏兼武氏が
「じゃあそれで…というのは冗談ですが、腿のパーツ構成などはファルケから拾ってます。(アーバレストとファルケを足すところからスタートしてます)もう1機あったファルケタイプのパーツを流用したのかも~というのも面白いかもしれませんねw」
と語ったところ、賀東招二氏がそれらに対し
「それ採用!」
と反応したため、行方知れずだったもう一つのD系列の設定は正式なものとなった様子。

また、本編では登場しなかった3機目のファルケはメタリックガーディアンRPGリプレイ『黒鋼のワンダリング・ジャーニー』にて登場。
残されていたファルケの予備パーツから建造され、最後のM9と称されている。
このファルケはクルーゾー共々異世界へと転移し、数奇な運命を辿る事になる。


◆ファルケ改

『黒鋼のワンダリング・ジャーニー』第1話にて下半身が大破したファルケを現地の技術で修復・改造した機体
……と言えば聞こえは良いが、うまく噛み合うパーツがなかったため、四本足のケンタウロス型になった

四本足のケンタウロス型になった

大事な事なのでもう二回言いました。
反重力ユニットが組み込まれているので空も飛べるぞ!
……当然だがクルーゾーは絶句した。

マスタースレイブ方式で動かせるのか、という疑問は四足恐竜型マシンザウルス(ゾイドとかメカザウルス的なメカ)のデータを流用したことで解決した。してしまった。
また、武装として88mm荷電粒子砲<ロングバスターライフル>を装備し、史上初のビーム兵器搭載ASとなった。これがASかどうかはさておいて

なお、空を飛ぶのは前述の通りだが、その際にパカラッパカラッと音が鳴る


◆ダミー・ARX-8(仮)

レナードの目を欺くために囮に使われた機体。
正式な呼称は不明。計画がバニ・モラウタの死亡で中止された本来のARX-8だとか。

レーバテインと違いD系列のパーツは流用されておらず、E系列のパーツで組み立てているため、
見た目はほとんどE系列のM9で微妙に細部が違う(イラストなし)。本物の〈ARX-8 レーバテイン〉の代わりに奪取され、処分された。

アニメ4期ではアーバレストカラーのM9にレーバテインのトサカを付けたデザイン、
漫画「フルメタル・パニック!Σ」ではアーバレストとレーバテインの中間のようなデザインで、
第3次スパロボZ天獄篇ではマップ上ではアーバレストと同じとなっており、ゲイツに破壊されている。

ゲーム『戦うフー・デアーズ・ウィンズ』では本機が参戦。
見た目はアーバレストカラーのレーバテインで、名称はレーバテインの没ネームから拝借した「ARG-8 アーケバス」。
Twitterでも明言しているが、名前とアルの感想は賀東招二氏のブログからの拝借である。


【フルメタル・パニック!アナザー】

米軍に正式採用されたM9が複数バリエーション登場する。
ベースとなるのはA系列だが、大半は後述のバリエーション機に改修されている。
量産性を重視しているため、性能はミスリルのM9に比べると控えめになっている。
それでも『アナザー』の時代ではトップクラスの性能ではあるのだが。

ミスリル仕様(E系列)との主な変更点は、
  • 防御性能重視のため機動性が落ちた(マッスル・パッケージを防弾性優先のものに変更)
  • AIが簡易式になり、ミスリル仕様のように喋ってはくれない
  • 主機(パラジウム・リアクター)が変更され、出力よりも稼働時間を重視している
  • 不可視型ECS(いわゆる光学迷彩)の廃止
  • 頭部チェーンガンが廃止された
  • ついでに頭部デザインが簡素化された。ガンダムシリーズのジムに近い外見に
などなど

A型やA1型などの評判は作中世界・現実世界を問わず微妙。

劇中ではマオに「あんなブサイクでノロマなデブは本物のM9じゃない」と言われてしまい、クララにも「デブ9」と呼ばれてしまう。

フルメタル・パニック!原作者の賀東氏やデザイナーの海老川氏には「がっかりM9」と呼ばれ、ファンには「コレジャナイン」等と言われている。

ただあくまでも直接デザイン面が酷評されているわけでもなく、
「泥臭さ&武骨さを兼ね備えたダサカッコイイ感じで、軍用機としての自然なかっこよさを出していて良い」
という意見も存在する。

とはいえこれをM9と呼ばれると『違う』ということになるわけである。
ガンダムシリーズでいえばジムがガンダムを名乗っていて、これはこれでかっこいいけどガンダムとしては……という評価がなされているようなものである。

下記の通り様々なバリエーションが存在しており、ベース機は便宜上「オリジナル・ガーンズ」と呼ばれているが、
本物のオリジナル・ガーンズを知っている人間は決してこの呼び名は使わない。


◆M9A1『アーマード』

防御力を重視するため、更に追加装甲を足したバリエーション。
マクロスシリーズのVFにあるアーマードパックのように任意に追加装甲をパージできるわけではなく、部品換装による改造。
本当にブサイクでノロマなデブになってしまったが、賀東氏曰く「経験が浅く交戦規定の縛りもある正規兵が使うならこれくらいゴツい方が扱いやすい」との事。


◆M9A1 E1『アーセナル』

頭部にレーダードームがついたり、ARX-8 レーバテインのものに近い榴弾砲(デモリッション・ガン)が使えたり*2
無人型のASを最大24機遠隔操作できるなど、前線で戦うASというよりは管制機・火力支援機として特化させたもの。

ただし価格がM9Aと比べても2倍以上する上に、
想定される敵機はRk-92 サベージ等の第二世代のため、オーバースペックとみなされて調達数は少ないらしい。


◆M9A2『エンハンスド』

防御力重視だったM9A1のコンセプトから第三世代ASの「敵に撃たせない・照準させない」戦い方に立ち返ったもの。
それでも性能はミスリルのE系列よりはちょっと劣っているとされる。

また、ASの特徴であるセミ・マスタースレイブ方式とは別に、テイマーシステムと呼ばれるレバー操作式の操縦系統が搭載されている。
要するに一般的なロボットアクションゲームのような操作が可能。

これにより操縦経験が浅いオペレーターでも搭乗が可能になった。
もちろん熟練者は従来のセミ・マスタースレイブ方式を使えば良く、劇中では実際そのように扱われている。

アーマードやアーセナルと違い体型はスリムだが、野球帽を被ったような頭は賛否両論


◆M9A2SOP『シグマ・エリート』

M9A2を更に特殊部隊向けに改修したもの。
アナザーの時代において、ついに総合性能でミスリル仕様のM9と互角の性能に達したとされている。
そしてさらに、M9というハードへの運用が熟れてきているため、兵器としてのポテンシャルはミスリルのM9を超えている。
文字通り熟練者向けのASであり、テイマーシステムは廃止されている。

またミスリル仕様と同じく不可視型ECS(光学迷彩)を搭載しており、
頭部も新規設計されてミスリルのものを思わせるヒロイックなデザインになっている。

ファンからは「帰ってきたカッコいいM9」などと言われている。



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最終更新:2025年03月13日 18:23

*1 予備パーツはあったので後に3機目も作られた。

*2 但しこちらはASの関節機構をヒントにした補助脚を使用して撃つタイプであり、ラムダ・ドライバによる衝撃吸収はできないので、射撃には一定の制限がある