フルメタル・パニック!

登録日:2009/06/03(水) 15:53:17
更新日:2025/05/24 Sat 01:58:55
所要時間:約 12 分で読めます






『フルメタル・パニック!』は、富士見ファンタジア文庫のライトノベル
作者:賀東招二
イラスト:四季童子


概要

SFミリタリーロボットアクションと普通(?)の高校生活を描く人気作で『このライトノベルがすごい!』にて1位になった事もある。
多数登場する現実の兵器やリアルな設定の人型兵器〈アーム・スレイブ〉など、富士見ファンタジアという割にはファンタジー要素はほとんどない。
作者曰く、それで周りの作品がファンタジー寄りなのを受けて出したのが「搭乗者のイメージを現実にする」装置として登場する《ラムダ・ドライバ》とのこと。

1998年9月に刊行が始まり、2010年8月に一度完結した。
それから10数年後、壮年期を描いた続編が描かれている。

作品

長編

ストーリーの本筋。
敵組織との戦闘やストーリーの謎など、シリアスな話を描くミリタリーもの。リアルな戦闘描写が見所。
サブタイトルは原則『戦うボーイ・ミーツ・ガール』のように日本語の動詞一つの後に英単語三つが付属する。
作者やファンの間では『戦うB(ボーイ・)M(ミーツ・)G(ガール)』のように英単語が略されることも。
全12巻、完結済。
+ 長編一覧
◆第一巻 戦うボーイ・ミーツ・ガール
◆第二巻 疾るワン・ナイト・スタンド
◆第三巻 揺れるイントゥ・ザ・ブルー
◆第四巻 終わるデイ・バイ・デイ(上)
◆第五巻 終わるデイ・バイ・デイ(下)
◆第六巻 踊るベリー・メリー・クリスマス
◆第七巻 つづくオン・マイ・オウン
◆第八巻 燃えるワン・マン・フォース
◆第九巻 つどうメイク・マイ・デイ
◆第十巻 せまるニック・オブ・タイム
◆第十一巻 ずっと、スタンド・バイ・ミー(上)
◆第十二巻 ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)

短編

日常の小話。高校やその近辺などで起こった事件を綴る短編ギャグ集。マスコットはボン太くん
ギャグなので爆弾程度では人は死なない。勘違いされることもあるが、スピンオフやパラレルではなく、これで長編と同じ世界である。
ただ作者自身も述べている通り高校での出来事を描ける期間とエピソードの数の関係が若干怪しいのだが、少なくとも一部は『アナザー』や『Family』での描写からちゃんと正史扱いなのが明言されている。
一巻ならサブタイトルに「一匹狼」二巻なら「二死満塁」というように巻数に応じた数字の入ったタイトルが付けられ、最後に「」が付く。
既刊9巻。
+ 短編一覧
◆放っておけない一匹狼?
◆本気になれない二死満塁?
◆自慢になれない三冠王?
◆同情できない四面楚歌?
◆どうにもならない五里霧中?
◆あてにならない六法全書?
◆安心できない七つ道具?
◆悩んでられない八方塞がり?
◆マジで危ない九死に一生?

番外編

普段スポットの当たらない秘密組織〈ミスリル〉の兵士たちの裏話や、主要キャラの背景にかかわる前日譚が載っているほか、一部かなり作者の趣味に走った内容がある。サブタイトルは収録された話の一つ。
『サイドアームズ』と題されている。これは主武装とは別に持つ副兵装のことで、作者曰く本編を主武装に見立ててこの名前を付けたらしい。
既刊2巻。
◆音程は哀しく、射程は遠く
◆極北からの声

アナザー

長編完結後、後述の『Family』より前の時代を舞台に、新たな主人公や仲間たちと年を重ねた既存キャラが紡ぐ物語。
著者は大黒尚人で、原作者賀東招二は監修を担当。イラストは変わらず四季童子。
『Family』内で本作の要素が言及されており、きっちり正史である。
短編集含め全13巻で、完結済。

Family

長編完結から約20年後、夫婦になった主人公とヒロイン、そしてその子供たちの「普通じゃない」日常を描く。


あらすじ

世界大戦の発生を防ぐために動く極秘傭兵組織〈ミスリル〉に所属する少年兵、相良宗介軍曹に新たな任務が下された。

『ある理由から、何らかの機関に拉致される危険性がある女子高生「千鳥かなめ」を、本人に気付かれないように護衛せよ』

護衛任務のため、対象と同年代だった相良宗介は、千鳥かなめの通う「陣代高校」に転入する事になる。
しかし、彼は幼い頃から戦場暮らしで兵士として非常に優秀な反面、平和な日本社会に関する常識が完全に欠如していた……。


主な登場人物

相良宗介
CV.関智一
本作の主人公。
ミスリルに所属する少年兵で階級は軍曹。凄腕でありSRT(特別対応班)に所属、ウルズ7のコールサインを持つ。
いつもむっつり顔で表情の変化に乏しい。真面目で愚直な性格だが、日本の(というか平和な社会の)常識を持たないため勘違いや深読みを連発。
東京ではトラブルばかり引き起こす。

千鳥かなめ
CV.ゆきのさつき*1
本作のヒロイン。
ミスリルの護衛任務の対象になった女子高生。元気で快活だが頑固で意地っ張りな性格。あと仕草が親父臭い。
『護衛なので宗介が傍にいる→勘違いでトラブルを起こす→巻き込まれる』というケースが多々あり、犬(宗介)の世話をする飼い主状態。
当初は宗介の事を「危ない軍事オタク」と見ていたが、ある事件で強く信頼するようになる。
主武装はハリセン。

テレサ・テスタロッサ
CV.ゆかな
本作のヒロイン2。
アッシュブロンドの髪の美少女だが、ミスリル西太平洋戦隊〈トゥアハー・デ・ダナン〉の戦隊長である。階級は大佐。コールサインはアンスズ。
穏やかな性格だがベテラン兵士も顔負けの指揮官。ただプライベートでは年頃の女の子で運動音痴。
愛称は「テッサ」で、読者や作中の“あるオッサン達”からは「テッサたん」と呼ばれる。

◆常盤恭子
CV.木村郁絵
かなめの親友でツインテールメガネっ娘。空気の読める娘。

◆風間信二
CV.能登麻美子
写真部に所属する爽やか変態野郎。軍事オタクであり、宗介と意気投合している。

◆小野寺孝太郎
CV.岡田貴之
通称「オノD」。大柄な身体で彼女に飢えているため色んな女子に告白した事がある。宗介、信二を含めて「3バカトリオ」とされる。
余計な事をする。

クルツ・ウェーバー
CV.三木眞一郎
ミスリルに所属する宗介の同僚で階級は軍曹。コールサインはウルズ6。
顔はモデル並だが口を開けば下ネタばかり出てくる残念なイケメン。
女大好きなナンパ野郎だが腕は確かで、特に狙撃に関しては世界でも指折りの実力を持つ。

◆メリッサ・マオ
CV.根谷美智子
宗介、クルツと同じくミスリル所属の曹長。コールサインはウルズ2で宗介、クルツとチームを組みチームリーダーを務める。
猫を思わせるしなやかなスタイルの中国系美人。だがキツイ性格で、元海兵隊出身なのでF語も使う。姉御肌でクルツからは「姐さん」と呼ばれる。
テッサとはプライベートでは親友関係。

アンドレイ・セルゲーイビッチ・カリーニン
CV.大塚明夫
ミスリルの作戦指揮をとるロシア人の少佐。宗介の親代わりでもある。
非常に優秀だが同時に冷徹でもあり、必要があれば部下も切り捨てるが、同時に可能な限り救う手だても講じる。
彼の作る亡き妻の味を再現したボルシチは凄まじい味。

ガウルン
CV.田中正彦
宗介と因縁があるテロリスト。航空機爆破など残虐な行為も平然と行う残忍な男。人間のクズと言って差し支えないが、作中屈指の凄腕である。
生命力はゴキブリ並。

作中の言語事情

本作に限った話ではないが、日本語で書かれている物語でも作中設定上使われている言語は違うということは珍しくもない。
作品によって扱いは異なるが、だいたいは「洋画の日本語吹き替え版のように、作中では明確に別言語使用」、「主人公にとっては何らかの形で翻訳されており、使用言語自体は日本語ではない」、「(何故か)主人公の日本語が通じる」のような場合が多いだろうか。

そのような事情がある作品の中でも割とユニークな点として、本作では日本語が使われているシーンと外国語(英語)のシーンが入り混じっている。外国語の場面の描写自体は、本作の場合上記の分類でいうところの「吹き替え版」パターン。
学校では当然日本語だし、〈ミスリル〉内でのやり取りは基本的に英語。日本語が話せる人どうしの場合はどっちとも取れる場合もある。

そんな事情がよくわかるのが、作中で何度か登場する「肯定だ(アファーマティブ)」というセリフ。
原作では、そういうルビをわざわざ振っていることからも分かる通り英語で発言しており、これが基本。それとは別に、あるシーンでは日本語でそう言っている描写がある。
アニメの場合は、本作の描写が上述の通り「日本語吹き替え版」的なので、日本語版では当然日本語で「肯定だ」となっている。

一方で作中の登場人物に目を向けた場合、長編では英語が基本なので話せるのが普通なのだが、個々人が日本語を話せるかどうかは結構異なる。
話せる人については、〈ミスリル〉所属者の場合、西太平洋戦隊ということでその区域の言語を扱える人員が多いという理由付けもある。
具体的に誰が話せるのか・話せないのかは以下の通り。
話せる方はわかりやすいのだが、話せない方は明言されているマデューカスのような例外を除いてわかりづらい。

+ 登場人物の日本語能力
  • 相良宗介
普通に話せはするのだが、語彙は兵隊のような硬さ。
言語それ自体のあれこれを除いても、日本暮らしが幼少期と長編開始後のみと短いために常識に疎いという事情もある。

  • メリッサ・マオ
本人は中国系アメリカ人だが話せる。日本語・英語以外だとルーツゆえに中国語も話せる。
わかりやすく日本語を使っているシーンは、テッサの留学絡みが一例だろうか。

  • クルツ・ウェーバー
ドイツ人で、話せる。幼少期当時親が日本在住の新聞記者で、中学までは日本在住。通っていたのもドイツ人学校ではなく地元の小中学校。
程度については宗介曰く、「俺よりもはるかに堪能」。日本の常識や環境に対する態度も宗介以上。
宗介の相棒であり、作中で二人だけで話している場面も多いのだが、言語は日本語と英語のどちらかが自然なシーン・そうでないと不自然なシーンがある一方、どちらとも取れる場面も見受けられる。

  • テレサ・テスタロッサ
アメリカ人で、話せる。彼女の幼少期に父のカールがマデューカスに宛てた手紙によると、カールの異動で沖縄住みになるので猛勉強を始めたと述べられている。
同じく幼少期時点で、カールによるとイタリア語・ドイツ語・ラテン語・フランス語も読めるし、ロシア語に挑戦中とのこと。
作中で使っている例としては、陣代高校へ短期留学していた場面などがある。

イギリス人で、話せない。母国語(英語)以外の能力は、敵の言語という理由で勉強したロシア語の読み書きくらい。
テッサの留学時には彼女の父親役をしており学校にも行っている。このとき使っていたのももちろん英語であり、周りが普通に日本語を話すのと区別するため、文章上でも英語が使われている。
彼に限らず、〈トゥアハー・デ・ダナン〉乗組員の多くは話せない。発令所要員については、艦長のテッサ以外だとほとんどがわからない模様。

  • カリーニン
ロシア人で、話せる。スペツナズ時代にGRUで学んでおり、日本のソ連大使館での勤務経験もある。日本語以外にも複数の言語を学んだとも述べている。
発音もいいのだが、KGBのエージェントによると「語彙は硬く、まるで肩肘をはった兵隊のようだったらしい」とのこと。
つまりは本編初期の宗介に近いのだが、経緯としては逆で宗介の硬さがむしろカリーニン由来。

  • クルーゾー
アフリカ系カナダ人で、趣味が日本のアニメ。
長編最終巻で「中断していた日本語の勉強を再開」したいと地の文で述べており、長編の半ばでも『踊るベリー・メリー・クリスマス』の描写から見るにある程度の能力はある模様。

  • レイス
北朝鮮出身の情報部所属で、話せる。ソ連であれこれ学んでいたことから、ロシア語も使えるものと思われる。
作中で明確に使っている描写は『OMO』終盤にある。

  • ガウルン
長編第1巻で使っている。そもそも本人曰く(というか本人以外からの情報が無いが)日本人。

テッサの双子の兄で、話せる。上記の「テッサの幼少期」はまだ二人が離れる前であり、カールも「彼ら」と述べているので言語事情はテッサと同様。
使っているシーンについては、明言こそされていないが『OMO』終盤のある場面では日本語でないと不自然な描写がある。

  • クラマ
詳細な出自や国籍等は不明だが東洋人であり、話せる。
『OMO』終盤、常盤相手に話しているシーンがある。

AIであり、普段のやり取りは英語だが、日本語は普通に使える。
作中では宗介が苦労していた俳句の宿題を(検索の力もあり)簡単に解説までしている。
時代を考えると、技術の異常な進歩が作品の根幹レベルで起きているとはいえ、とんでもない自然言語処理能力である。


用語・世界観

アーム・スレイブ
作中に登場する人型兵器で、略してASと呼ばれることも多い。世界中に普及しており、様々な機体が存在する。
物凄く細かい設定がされており、ともすれば実現できるかも知れないと言われている。

《ミスリル》
世界大戦の発生を防ぐべく創設された“破邪の銀”の名を持つ極秘傭兵組織。世界の十年先を行く装備を持ち、凄腕の兵士を揃えている。
紛争地域の“火消し”を行なっている。

《アマルガム》
ミスリルでさえ全貌が掴めない謎の組織。アマルガムとは水銀合金を意味する。

《ウィスパード》
世界の謎を解く鍵。
存在しない未知の技術〈ブラックテクノロジー〉をもたらす者。

ソ連が崩壊しておらず」、それにより「冷戦が終わっておらず」、さらには「中国が南北に分裂している」、「埼玉県大宮市がさいたま市に統廃合されずそのまま」など、
世界観が現実と微妙に違う。作者いわく「疑似現代もの」。
とある事情で機械関連の技術が進歩しており、特に軍事関連で著しい。長編ではオカルトチックなSF技術が主力となる。
一方で現実と同じようなところも多く、時代が時代だけに携帯電話の存在がアヤシカったりもする。


アニメ

◆フルメタル・パニック!
2002年1月~6月放送。長編1~3巻をメインに短編を交えつつ一部オリジナルエピソード。制作はGONZO
2017年11月から2018年1月にかけては第4作『IV』放送に向けて本作の監督総指揮のもと2010年代における最新技術でブラッシュアップ作業を施したディレクターズカット三部作が一部劇場公開。
HDリマスタリング等の編集のほか、TV版ではカットされていた原作の描写が新規作画で描かれている作品もある。

フルメタル・パニック? ふもっふ
2003年8月~11月放送。短編ギャグオンリー。制作は京都アニメーション。

フルメタル・パニック! The Second Raid
2005年7月~10月放送。長編4・5巻にアニメオリジナルエピソードを加えたアニメ化。制作は京都アニメーション

一作目と『ふもっふ』は、どちらも放送時期に作中と似たような事件が実際に発生してしまったため、放送延期や一部放送なしなどの事態が発生した。
英語吹き替え版も存在しており、戦闘シーンは(本来は英語で喋っている場合がほとんどのこともあって)結構臨場感がある。

◆『フルメタル・パニック! Invisible Victory』
2018年4月~6月放送。長編7~9巻のアニメ化。制作はXEBEC。
当初は2017年秋に放送予定だったが、諸々の事情で延期された。
また制作会社のトラブルもあり第11話・第12話は放送枠の都合で7月になった。

その他作品

ドラマCD

◆テレサ・テスタロッサの艦長日記
ありえない授業
◆ありえないブリーフィング

TRPG関連





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最終更新:2025年05月24日 01:58

*1 シリーズ開始当初は「雪野五月」表記。