トゥアハー・デ・ダナン(フルメタル・パニック!)

登録日:2009/12/23(水) 02:55:52
更新日:2025/06/17 Tue 02:46:23
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「トゥアハー・デ・ダナン」とは、ライトノベル作品『フルメタル・パニック!』に登場する架空の潜水艦、および同艦を母艦とする戦隊の名称。
この項目では、潜水艦の方について記述する。


【スペック】

TDD-1[トゥアハー・デ・ダナン]

艦種:強襲揚陸潜水艦
全長:218m
全幅:44m(潜舵除く)
排水量:水上/30,800t、水中/44,000t
主機:PS方式パラジウム炉3基/電気駆動/二軸・210,000hp
最大速力:通常推進のみ使用時30kt、通常推進・EMFC使用時40kt、超電導推進・EMFC使用時65kt+
兵装:533mm魚雷発射管×6、多目的垂直ミサイル発射管×2
主な使用兵器:Mk48Mod6ADCAP魚雷、ADSLMM自走機雷、〈アド・ハープーン〉対艦ミサイル、〈トマホーク〉巡航ミサイル

その他:固定翼機・ヘリコプター・人型兵器アーム・スレイブ(AS)の搭載・運用能力有り

設計者 テレサ・テスタロッサ、バニ・モラウタ

艦長 テレサ・テスタロッサ大佐
副長 リチャード・マデューカス中佐


【概要】

極秘傭兵組織〈ミスリル〉の西太平洋戦隊に所属する〈強襲揚陸潜水艦〉であり、同戦隊の母艦。
艦と戦隊が事実上一体のものであることから、戦隊名も同名の「トゥアハー・デ・ダナン」となっている。
普段は「ダナン」あるいは「デ・ダナン」と呼称され、フルネームはあまり使われない。

一応型式番号として「デ・ダナン級一番艦」を意味する「TDD-1」というものが与えられているが、ダナンクラスは本艦だけであり、二番艦以降は計画レベルでも存在しない。
名前の由来はケルト神話の〈Tuatha Dé Danann〉であり、「女神ダーナの一族」を意味する。


【性能】

本艦は強襲揚陸艦と潜水艦の機能を併せ持つ船であり、その性能はそれぞれの機能に分けて説明できる。

まずは潜水艦としての能力だが、作中で『世界最強の潜水艦』と明言されており、実際そう称するのに何ら恥じないスペックを有する。
潜水艦の命そのものである静粛性は、なんと米海軍の潜水艦のすぐ近くにいても容易には探知されないほどで、しかもその状態で他の潜水艦の最高速レベルの速力で移動することができる。
速力を優先した場合はさすがにうるさくはなるが、最高65ノット以上、時速換算でなんと約120km/hのスピードを発揮できる。
これは現実の海軍艦艇の2倍やそれ以上にもなる速さであり、このスピードをもってすれば通常の魚雷ならば回避以前に振り切ることも可能。

続いて強襲揚陸艦としての要素についてだが、こちらもなかなかのもの。
潜水艦という船にその要素を詰め込む以上スペースは限られるのだが、巨体ゆえにかなりの搭載能力を有する。
複数の戦闘ヘリや輸送ヘリ、VTOL攻撃機、アーム・スレイブを搭載可能。格納庫自体も広く、船内で整備もできる。

ちなみに、艦の前半分には搭載戦力、武器弾薬、魚雷などが集まり、後ろ半分には発令所や居住区、動力室が集められている。つまり前が兵器機能であり後ろが船の機能である。
万が一の場合は前と後ろが隔壁によって完全に分けられる。

その圧倒的な性能ゆえミスリル内では演習相手がおらず、演習や整備後の試運転時の能力テストは米海軍の潜水艦にちょっかいを出す形で行われる。
一方的に弄ばれる立場の米海軍としては様々な意味で嫌であり、英海軍出身のマデューカスも「こんなことされたら自分ならひどくプライドが傷つく(要約)」と言っている。
そんな米海軍は、突如すぐ傍に現れたかと思えば夢だったかのように居なくなるダナンを幽霊潜水艦として〈おもちゃ箱(トイ・ボックス)〉のコードネームで呼んでいる。


【「強襲揚陸潜水艦」という艦種とコンセプト】

この艦種自体がフィクションなので、まずは実在する「揚陸艦」というのがなんぞやというところから。
揚陸艦とは、兵員や装備を載せてそれらを上陸させるための船である。
その上陸能力や航空機運用能力を強化したのが強襲揚陸艦であり、こちらも実在する。
その強襲揚陸艦と潜水艦が合わさったのが本艦であり、その定義(あるいは役割)は「兵員や装備・航空機を載せ、水面下で密かに進み、戦場にそれらを送り込む」というものである。

現実にこのような船があるのかというと、近しいものなら存在はする。
戦略的意味は多少違うが、コンセプト自体は第二次大戦時に日本海軍の保有していた伊400型潜水空母に近い。
現代の現実世界で実現不可能という訳ではないだろうが、実際にやってみようとすると問題だらけ(後述)であり、それをフィクションによる架空の技術でクリアしたのがダナンである。

非常に特殊な艦種ゆえに、創作の中でも著名なものはこの〈ダナン〉くらいである。
試しに強襲揚陸潜水艦でイメージ検索してみるといい。かなりの数でダナンがヒットする(普通にググると強襲揚陸艦がヒットする)。
ちなみに某有名架空戦記には8万トンの巨大潜水空母もあったり、某大艦巨砲主義万歳ゲームでは一個艦隊を正面から全滅させる化け物潜水艦もあったりする。


【建造までの経緯】

【プロジェクト985】

ダナンの登場より前、ソ連海軍で秘密裏に建造中だった巨大潜水艦で、担うはずだった役割としてはダナンとほぼ同じ。
完成前に予算の関係で開発が中止になり北極海に破棄された。
この船が実現しようとしていたとんでもない目論見を聞かされたマデューカスは、自身がその直前までソ連と敵対する英海軍所属だったのもあり当然ながらドン引きした。

こんな船がダナンと何のかかわりが…となるところだが、これが実はダナンの船体のベース。
捨てられたというのは嘘で、実際はソ連内部の協力者により〈ミスリル〉へと渡ったのである。

【コンセプト実現への課題】

この未完成艦を入手した〈ミスリル〉はこのころ英海軍内で左遷されていたマデューカスをスカウトし、この船を当初の狙い通り強襲部隊の母艦として実現しようとしていたが、そうしようとするには作ること自体はできても実用面では問題だらけだった。

実現できるか問われたマデューカスがすぐさま指摘しただけでも、「巨体なので速力が出ない」、「巨体を動かす推進システムと動力源がひどい騒音を出す」、「なので敵の探知から逃れられない」、「搭載ユニット発進のために浮上すると隙だらけ」、「構造上潜れる深さも限られる」(いずれも要約)とまったくの正論で散々ないわれよう。「入念に警戒された敵の領海に侵入することができない」とバッサリ。

これら以外にも、「水上艦と比べて搭載できる戦力が少ない」、「速力だけでなく機動性にも難あり」、「深く潜らないと海上・空中から丸見え」等々、現実では到底使い物にならない。

そこでダナンを世界最強の潜水艦たらしめているものとして登場するのが、以下のフィクション的技術の数々。
上記の弱点、要するに「遅くて、うるさくて、コンセプトを実現しようとする瞬間こそが致命的な隙を生む」という問題を解決すべく、以下のように様々な技術が用いられている。

【数々の最新技術】

【可変ピッチ・スクリュー】
形状記憶合金製で水流に合わせて形が変化するスクリュー。これによって水の抵抗を減らし、ひいては静粛性と速度向上につながっている。
潜舵も同様に変形し、静粛性と速度を高めている。
これに限らずほとんどフィクションの産物なので、何が実現されるかはともかく原理を気にするのはナンセンス。

【EMFC】
電磁流体制御装置。通称『スマートスキン(賢い肌)』。
フレミングの法則で艦表面を流れる水流をコントロールする機能。これで周囲の水流を滑らかにする事で航行音は軽減し、速力は向上している。
また一切推力を使わなくてもこの機能だけで航行出来る。ただし、全く音がしない代わりに酷く遅い(約5ノット)。

【超電導推進】
電気的に海水を取り込み後方から吹き出して推力を得る機能。EMFCと併用する事で従来の潜水艦とは比べ物にならない静粛性と速度を実現する。…実はこの技術、三次元では実際に使用されている。
クルーザーに試験搭載され、高い機動性、運動性、操作性が認められた。

【ダーナ】
M9と同じ対話型人工知能(AI)。ただしM9の物とは規模が違う。名称は艦名由来でもある女神〈ダーナ〉から。
これによってダナンは強さだけではなく賢さまで持っており、艦の制御の他、様々な場所にハッキングをかけたりも出来る。
やろうと思えば艦長とダーナだけで艦をコントロールする事も可能ではあるが、その場合は超電導推進やEMFCが使えないため本領発揮は出来ない。

ただし、艦内の機密区画〈聖母礼拝堂(レディ・チャペル)〉でウィスパードがTAROSという装置を使えば艦と一体になって一人だけで全能力を発揮出来る。
ただし、飲まず食わず且つ無睡眠でやる破目になるので、これだけで作戦を成立させようとするのは非現実的。
やはり全力を出すにはベテランの腕が必要なのである。

【パラジウムリアクター】
M9にも搭載されている低温核融合炉。ダナンには大型の物が三基搭載されている。
高い静粛性と出力を持つが、通常の原子力潜水艦とは違い燃料切れがある。
理論上は満タンにすれば艦そのものは八ヶ月間ほど潜行し続けられるが、これは隊員のストレスや食料を度外視した値である。

【ECS】
電磁迷彩システム。搭載している航空機やASを発進させる際に海面まで浮上することが必須であり、そのときに無防備になる船体を隠す。
これにより、浮上それ自体による隙はあっても、隙を晒している瞬間を周りから見えないようにすることができる。


その他、重さ約10tのASをわずか二秒で500km/hまで加速させる70mのカタパルト、各種電子兵装も備えている。
艦そのものの要素ではないが、戦隊の主力であるASには、高度な運用のためにオプションパーツがいくつか存在しており、
ASを水中発進・推進させるための水中行動ユニットや艦のカタパルトと合わせてASを約40㎞先まで飛ばせるブースターによって、搭載戦力運用のために陸地に接近するリスクを軽減している。

これらの技術により、ダナンは馬鹿げた大きさと重量ながら圧倒的な静粛性と速度、ステルス性を持っている。
問題が解決された結果、この艦はマデューカスが考えた通り「戦力を突如出現させ、すぐ影を消せる能力(意訳)」を有するバケモノと化したのである。
普通の潜水艦では……というか潜水艦以外の何者でも捕捉はまず不可能で(捨て身なら可能だろうが対応前に沈められると思われる)、その気になれば誰にも気付かれないまま世界中のあらゆる場所にミサイルを撃ち込める。
つまりやり方次第では世界を滅ぼせる。

なにこれこわい。


【作中での活躍】

以下ネタバレだらけなので注意。
ここでは原作準拠。アニメ版は第三期「フルメタル・パニック! TSR」の第1話が見所。
登場しない巻や影が薄い巻は割愛。

『戦うボーイ・ミーツ・ガール』

初登場。ハイジャックを受けての救出作戦のため本艦から戦力を送り込む。
その後、「敵の追跡から逃れる」、「生存者救出のためにふたたび海岸沿いに接近する」の2つを両立するためフルスピードを発揮。

『揺れるイントゥ・ザ・ブルー』

敵組織により発生した〈ミスリル〉内部での裏切りと、それを前提としたガウルンの計画、そして「この艦のシステムを知っている何者か」の工作によってダーナが乗っ取られ、艦にも部隊にも危機が訪れる。
敵の策でまともに動ける人員自体皆無に近い中、残りの僅かなメンバーとかなめの大活躍によって制御を取り戻し、敵の排除に成功。

『踊るベリー・メリー・クリスマス』

作中で初めて対水中戦闘に突入。しかし艦長としてこれまで数々の危機を乗り切ってきたテッサは別の目的のため艦にはいない。
副長のマデューカスが指揮を執るが、乗組員目線ではテッサの指揮あってこそのダナンであり、彼らは不安げ。

はたして、戦闘が終わってみればマデューカス操るダナンの完勝。世界最強の艦に歴戦のサブマリナーが合わされば、喧嘩を売るのは無謀もいいところだった。

『つづくオン・マイ・オウン』

この巻のダナンの位置づけは、「絶海の孤島に押し寄せてくる敵、〈アマルガム〉の大攻勢からの唯一の脱出手段」。
それが整備中というタイミングでの敵襲であり、マオやクルツたち陸戦要員は、出港準備完了までの時間を稼ぐべく超巨大AS〈ベヘモス〉3機らからなる敵集団の迎撃を敢行。

多大な犠牲を払いながらも、なんとか最低限の準備を終えて出航。
最後に残ったベヘモスをダナン自身による質量差を使った体当たりと味方ASからの支援により撃破し、アマルガムの追跡が届かない海中へ姿を消した。

『つどうメイク・マイ・デイ』

アマルガム、もっと言えばレナードへつながる手掛かりを得るための作戦の一環として、AS戦に突入した味方の支援のために巡航ミサイルを発射。
目的としていた情報の入手(要するに敵幹部の拘束)には失敗したが、この支援もあったとはいえ、通常型AS一機で敵の〈ラムダ・ドライバ〉搭載型ASを撃破することに初めて成功。

『ずっと、スタンド・バイ・ミー(上)』・『ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)』

レナードの計画を阻止すべく、宗介レーバテインを載せメリダ島へ。
当初テッサは宗介だけを載せて艦は自分1人だけで動かすつもりだったが、マデューカスの強い反対と檄によりベテラン揃いの乗組員と共に向かうこととなった。

道中待ち構えるアマルガムの特殊潜航艇や米海軍の艦船たちを被弾上等で突破し、被弾とリアクターの限界により行動不能にはなったが最大の目標の一歩手前まで到達することに成功。白兵戦に突入し、マデューカスの活躍もあり敵をなんとか退ける。
その後、島へアマルガムの手による核攻撃が迫る中、生き残った人員は残されていた飛行機で脱出。

ダナンは核により跡形もなく破壊された。
後日、冗談交じりに(予算のあてがあれば)「TDD-2」を作るかと問われたテッサは、即座に否定した。





スパロボシリーズにおいて】


『フルメタル・パニック!』が参戦したスーパーロボット大戦J、及びWに登場。
さすがに他の戦艦と違い移動範囲がだけなので、たまに援軍で現れた時に使えるだけである。残念。
ちなみにフルメタの挿絵担当の四季童子さんが描いた4コマではスパロボネタ等で飛べない云々言ってるとテッサが笑顔で「飛べますよ?」と言ってたりする。

修理補給を持つので少し便利だが、前線が陸上に移ると放置される。
あしゅら男爵の海底要塞ブードとの潜水艦対決は見物。

武装はハープーンとトマホークでどちらも射程がクソ長い(J及びWでは最大15。ここまで長いのは、他で言うとZシリーズのアクエリオンの無限拳ぐらい)。何気にスパロボで現実世界の兵器が登場したのは本艦が初めてである。
改造不可なので大ダメージは見込めない。しかし、並のASやMSや機械獣程度ならぶっ飛ばせるので、Jでは頑張ればテッサをダブルエースにできる。
修理装置と補給装置もついているが、地上に上がれないため使う機会は少ないだろう。
パイロットはテッサ、マデューカス、カリーニンの三人。祝福や応援を持っているので使ってやろう。


第3次Z時獄篇ではついに終盤で正式加入。なんとオムニ・スフィアの力で単独で宇宙に上がれるようになるというどこぞのヤマトもビックリな方法で宇宙戦艦に変化した。かがくのちからってすげー!
射程オバケっぷりも相変わらずで、ハープーンが射程10でトマホークが射程13(以前より短くなってるじゃん?と思うだろうが、EVOLの無限拳と同射程な上に、射程2から撃てるようになった)、
そして地味に魚雷が適応に難があるもののP武器射程7というとんでもない事に。ただし射程1に入られると文字通り手も足も出ない。
ただし、修理・補給装置はなくなった。
また、天獄篇では早期に参入するようになったものの、宇宙では射程が短くなってしまうので弱体化している。

ちなみに作者の賀東氏公認…というか、「全力でOKを出した」「細けぇ事はいいんだよ!」「どこまでも行こうよ!宇宙の果てまでも!」とノリノリだった模様。
寺田Pと賀東氏はJの時点で飛ばすつもりだったが、開発スタッフがあくまでも潜水艦としてのダナンに拘ったため、見送られたそうな。


Vでも第3次Z同様、宇宙での運用が可能。(フルメタが属している、宇宙世紀の)世界では至る所で戦いが起きているため、当初から宇宙での運用も可能なように設計されており、ネルガルが少し整備しただけで宇宙に打ち上げられるようになった。
ただ、宇宙でも航行出来る潜水艦ということで、宇宙と海中を行き来するのにはマスドライバーのような物で打ち上げる必要があり、また他の戦艦のように空を飛べる訳ではないので、地球上ではマップ以外では使用不可。
ただし、地球ではない火星や惑星フェルディナ、ガミラス本星では出撃できたりする。重力が弱い火星やフェルディナについてはともかく、地球と同等と思われるガミラスでなぜ普通に飛んでいるのかは謎。


ソーシャルゲームのX-Ωでも、自軍戦艦として運用可能。
本作では、いつものスパロボとはシステムが異なるため、とうとう地上マップでも普通に出撃可能になった。(ダナン以外にも『マジンガーZ』の敵である海底要塞サルードも普通に地上に出てきている)
ノーマルモードでは自軍の移動速度やクリティカル率を強化するため、進撃イベント等の早く敵を殲滅することが求められる時は頼りになる。
VSバトルモードでは貴重な命中・回避率・行動力を強化する効果を持ち、回避型の陣形を組むときによく使われた。






〈ダーナ〉。わたしの合図で、この項目を追記・修正しなさい。
《アイ・マム》


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最終更新:2025年06月17日 02:46