内川コピペ

登録日:2011/12/15(木) 17:59:23
更新日:2021/03/31 Wed 23:16:24
所要時間:約 4 分で読めます




本拠地、横浜スタジアムで迎えた中日戦。
先発三浦が大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった。
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声。
無言で帰り始める選手達の中、昨年の首位打者内川は独りベンチで泣いていた。
WBCで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト……
それを今の横浜で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「どうすりゃいいんだ……」
内川は悔し涙を流し続けた。
どれくらい経ったろうか、内川ははっと目覚めた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した。
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」内川は苦笑しながら呟いた。
立ち上がって伸びをした時、内川はふと気付いた。

「あれ……?お客さんがいる……?」
ベンチから飛び出した内川が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった。
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにベイスターズの応援歌が響いていた。
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「セイイチ、守備練習だ、早く行くぞ」

声の方に振り返った内川は目を疑った。
「す……鈴木さん?」
「なんだアゴ、居眠りでもしてたのか?」
「こ……駒田コーチ?」
「なんだ内川、かってに駒田さんを引退させやがって」
「石井さん……」
内川は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた。

1番:石井琢
2番:波留
3番:鈴木尚
4番:ローズ
5番:駒田
6番:内川
7番:進藤
8番:谷繁
9番:斎藤隆

暫時、唖然としていた内川だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった。

「勝てる……勝てるんだ!」
中根からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する内川、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。







……切なすぎる。


まず、横浜が大敗を喫する場面からコピペは始まる。
このマイナスムードの中、ファンの「100敗か…」の一言により、横浜という球場全体のドンヨリ感を肌身に感じることが出来る。

そして選手一団も無言で立ち去る。この淡々とした風景から分かることは、球団自体が既に諦めムードに侵されていることである。

首位打者内川の葛藤と涙の描写が入り、そのまま永遠に目覚めることのない夢の中へ誘われるのである。



夢の中で内川は黄金期の横浜と出会う。ここからがこのコピペ最大の見せ場だ。


その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……


個人の結果だけでは勝利を得られない。首位打者だからこそ分かる、勝てる事への喜びに酔いしれるシーンでは、読み手である我らも涙に誘われる。

本来なら内川の打順にいるはずの中根からグラブを受け取るという小粋な演出も、ベイスターズ全盛期を知る者なら感慨に浸れるであろう。

しかしそれは彼が死の間際に見た幸せな幻想にすぎないと言う展開がまた深く突き刺さる。

そしてこのコピペのミソ


吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

野球のみならず、様々な分野の改変版が存在するが、いずれにおいてもこの部分だけは改変してはならない約束となっている。
(逆にこの部分をいじるとにわか認定される。まあいじろうがいじらまいが個人の勝手ではあるが)

他の分野に改変した時、「吉村と村田って誰だよ」とツッコまれるのを待つのが通の楽しみ方とか。

因みになぜ吉村と村田なのかというと、吉村は怪我、村田は病気によって戦線から離れていた事が理由とされる……らしい。
(ただ単に「(内川の死を)看取った」の間違いだという説もある)

実は、オリジナルでは「多村と村田」になっていたが、多村仁志は既にホークスに移籍した後だったために、多村を吉村に置き換えたバージョンが普及した。

そして月日が経ち、内川も村田も吉村もベイスターズを去ったが、多村は吉村との交換でベイスターズに帰ってきた…ものの中日に移籍して2016年引退。コピペで大量失点する三浦も2016年引退した。
その年、コピペに登場する人物が全員去ったベイスターズはクライマックスシリーズへの初出場を果たし、2017年にはまさかのCS勝ち上がり日本シリーズ進出となった。
同じく進出したホークス所属の内川(とついでに吉村)の気持ちも気になるところである。


このコピペを理解するために必要なこととして、このコピペが作られた2009年前後の横浜ベイスターズ、及び内川聖一の置かれた状況がある。
ベイスターズは2001年の3位から3年連続最下位。2005年の3位を挟んで良くて4位、だいたい最下位という超暗黒時代であった。
特に2008年には内川自身が首位打者、主砲の村田修一が本塁打王を取るもチームはダントツ最下位。内川の打率がチームの勝率を上回る事態になるほどの負けっぷりであった。
その後内川はWBC2009のメンバーに選出。コピペの通り世界一の美酒を味わう。
そんな状況で迎えたオープン戦、開幕投手と目されていた三浦大輔が4回10失点と大炎上してしまう。
試合後建てられた2chのスレで「三浦大量失点」「今年こそ100敗」というキーワードが飛び交う中このコピペが投下されることになる。


+なおこのようにDeNA時代になって成長した横浜に対する内川の心持ちをねつ造したコピペも2015年頃から流れている。
内川「なんて球だ…あんなやつが居て筒香や梶谷を中心に上手くまとまってる…」
内川「俺があの打線にいれば…いやいなくても軽く優勝出来るチームになったな」
内川「…戻りたいなぁ」

うん、まあねーよって感じだが。そもそも2015年頃も内川の所属するホークスは優勝もしくは優勝争いを繰り広げているので、戻りたくなる理由が(古巣への未練以外に)存在しない。
なおコピペ中の「あんなやつ」とはDeNAの山﨑康晃のことであり、このコピペは2015年6月2日のSB対DeNA戦(結果は5-6でSBの敗北)の後に誕生した



改変の一例

魏国、五丈原で迎えた第五次北伐
司馬懿を追い詰めるが廖化が冠に騙される痛恨のミス、またも討ち取れずにいた
陣中に響く将兵のため息、どこからか聞こえる「なぜ子午谷から攻めぬのだ」の声
無言で戦支度をする兵卒達の中、蜀の丞相諸葛孔明は独り渭水のほとりで泣いていた
先帝の下で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる武将達・・・
それを今の蜀漢で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」孔明は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、孔明ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい渭水の流れが現実に引き戻した
「やれやれ、泣いて馬謖を斬らなくちゃな」孔明は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、孔明はふと気付いた

「あれ・・・?陣中が騒がしい・・・?」
慌てて自陣へ戻った孔明が目にしたのは、五丈原を埋めつくさんばかりの兵達だった
千切れそうなほどに軍旗が振られ、地鳴りのように鬨の声、銅鑼の音が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする孔明の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「軍師殿、軍議の時間です、早く参りましょう」声の方に振り返った孔明は目を疑った
「し・・・子龍?」  「どうした孔明、居眠りでもしていたのか?」
関羽・・・」  孔明は半分パニックになりながら作戦図に目を通した
1番:趙雲 2番:法正 3番:関羽 4番:張飛 5番:馬超 6番:諸葛亮 7番:黄忠 8番:関平 9番:龐統 暫時、唖然としていた孔明だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
馬良から羽扇を受け取り、戦場へ全力疾走する孔明、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、五丈原で生ける仲達を走らす孔明(木製)が発見され、吉村と村田は静かに剣閣の露と消えた

この他にも色々あるが、どの版でも最後は必ず吉村と村田が息を引き取る


余談ではあるが、上記のオーダーでパワプロクンのペナントレースに挑む動画がある。
結果、セ・リーグ4位という大躍進に成功した。




「出来る……追記修正出来るんだ!」
中根から携帯電話を受け取り、アニヲタWikiで全力追記修正する内川、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……

翌日、携帯電話を握りながら冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。

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最終更新:2021年03月31日 23:16