「本当に……大丈夫なんですか?」
「あれほど魔物がいるんですよ。やっぱり一緒に逃げた方が……」
しかしそんな男性の心配を、エルフの男は平然と笑い飛ばした。
「ハッ確かに並の奴らならあんな数の魔物相手に戦ったならすぐにくたばっちまうだろうな。だが──オレほどの男となれば、あんな奴らは軽く捻ってしまえるのさ」
「貴方が強いことは知っています。でも、あれほどの数を……」
「いいから任せておけ。このアダンがあの程度の奴らに負けるものかよ。ただ、流れ弾が飛んで行っちまうと危ないから避難はちゃんとしておけよ?」
「貴方が強いことは知っています。でも、あれほどの数を……」
「いいから任せておけ。このアダンがあの程度の奴らに負けるものかよ。ただ、流れ弾が飛んで行っちまうと危ないから避難はちゃんとしておけよ?」
自信満々に言い切る男を見て、人族の男性はとうとう心配を口に出すことを止めた。言葉で止まることは無いと悟ったのだ。
「わかりました、この村はアダンさん達に任せます。ただ、ちゃんと戻ってきてくださいね。子供たちも貴方のお話の続きを待っているんですから」
「たりめぇだ。ガキどもには楽しみに待っておくよう言っといてくれ」
「たりめぇだ。ガキどもには楽しみに待っておくよう言っといてくれ」
そんな言葉を交わし、二人の男は別れる。魔物の襲来まで一刻の猶予もない。彼らにもそんな悠長に話を続ける余裕はなかったのだ。話し終えた男のもとに、小柄なエルフの男が近づいてきた。
「おうダリオ。雑魚共の様子はどうだった?」
「そりゃもう烏合って感じだぜ。数だけはバカみたいにいるが、連携はいつぞやの緑色した奴らとは比べるのも失礼なほどだ」
「わかった。細かいところは村人達の避難が終わったら教えてくれ」
「おう。他の連中にもそう伝えておくさ」
「そりゃもう烏合って感じだぜ。数だけはバカみたいにいるが、連携はいつぞやの緑色した奴らとは比べるのも失礼なほどだ」
「わかった。細かいところは村人達の避難が終わったら教えてくれ」
「おう。他の連中にもそう伝えておくさ」
話が終わり次第、別れる。迎撃の準備は未だ不十分であったからだ、そうやって各員で準備を分担し、村人達が全員村から離れたころ、彼らは再び集結した。集まったとは言っても、たったの四人ではあったが。全員がそろったところで、アダンと呼ばれていた男が口を開く。
「準備が終わったようだな?では各員報告を。まずはダリオからだ」
「了解したぜ船長。魔物共について報告だ。種類としてはラームボアにスケルトス、ゴブリンにゾンビ……いろいろだな。まぁ全部ぶん殴れば良い。数は……見りゃわかるだろ?大量だ」
「了解したぜ船長。魔物共について報告だ。種類としてはラームボアにスケルトス、ゴブリンにゾンビ……いろいろだな。まぁ全部ぶん殴れば良い。数は……見りゃわかるだろ?大量だ」
余りにも大雑把な報告だったが、彼らにとっては十分なようで、納得したかのようにうなずいていた。次にアダンはテオバルドという細身の男に報告を頼んだ。
「武器についてだな?まず船長の錨だが、刃は完全に鈍になってるな。まぁ振り回すだけなら普通に使えるだろ。次はダリオのだが……」
テオバルドという男は、淡々と武器の状況について報告していく。要約すると武器は全部劣化しているらしい。
「まぁ最悪木でもへし折って使えば良いだろ。最後、オスカル」
「はいよ。村人たちにも頼んで即席で作ったバリケードだが……まぁ長くは持たんだろうな。魔物共への嫌がらせ程度だ」
「はいよ。村人たちにも頼んで即席で作ったバリケードだが……まぁ長くは持たんだろうな。魔物共への嫌がらせ程度だ」
最後にアダンはバリケードについて確認したが、これもまた不十分なものであるようだ。そして全ての報告を聞き終えた船長はしかし満足そうに笑みを浮かべ、話し始めた。
「敵は大量、武器は鈍、防備は貧弱で船は無い。挙句仲間は三人しかいないと来たもんだ。こりゃヒデェ逆境だな」
船長アダンは淡々と現状を告げていく。しかし不足を告げるその顔は、全くもって絶望などしていなかった。
「さてテメェら。こんな逆境で、オレ達は奴らに"勝てる"と思うか?」
船長と同様に、船員たちも全く絶望などしていなかった。
「「「当然!!!」」」
「そうだ!その通りだ!武器も船も人も足りず、敵が無数に在ろうとも!オレ達が敗北し、恩人たちを危険に晒すことなんてあり得るわけがねぇ!なんせオレ達は第一船団!陛下に仕える最強の船乗りだ!」
「そうだ!その通りだ!武器も船も人も足りず、敵が無数に在ろうとも!オレ達が敗北し、恩人たちを危険に晒すことなんてあり得るわけがねぇ!なんせオレ達は第一船団!陛下に仕える最強の船乗りだ!」
船長は叫んだ後、錨を持ち上げ、魔物たちの方へと足を進める。船員たちも船長に続く。彼らも戦いのプロである。今の自分たちの状況を考えれば、どんな結末を迎えるだなんてわからない筈がない。しかしそれでも彼らは確信しているのだ。"守り抜ける"と。
「さぁ野郎ども!帆を張れ!錨をあげろ!あのクソッタレな魔物どもに!クンペル海賊団の!エルニア帝国第一船団の底意地を!見せつけてやろうじゃねぇか!!!」
そんな船長の激と共に、男達は無数の魔物に突っ込んでいく。防衛戦が、始まった。