悪疫(あくえき)は悪性の流行病のことである。日本語の「悪疫」には、ペスト、コレラ、天然痘などが含まれる。
中世ヨーロッパに認識されていた疫病には、「ペスト、天然痘、麻疹、結核、ジフテリア、疥癬、トラコーマ、炭疽病、丹毒、麦角熱、発汗症、梅毒、舞踏病、ハンセン病、インフルエンザ」があった。
ノストラダムス関連
ノストラダムスの時代に猛威をふるった悪疫の一つは、間違いなくペストであろう。ペストは14世紀の大流行では、ヨーロッパの人口の4分の1とも3分の1とも言われる膨大な死者を生み出したことで知られる。
ノストラダムスが生きていた16世紀には、そこまでの大流行はなかったにせよ、やはり恐ろしい病気であったことに変わりはない。
ノストラダムスは
アヴィニョン大学に通っていたとされるが、1520年ごろにペスト流行に伴い講義が中断された。
最初の結婚の後、妻と幼い子2人と死別したが、妻子の死因はペストだった可能性がある。
妻子と死別後の放浪を経て、1546年にエクスでペストが大流行した際に、ノストラダムスは市から雇われ、ペスト治療にあたった。
晩年、フランス全土を巡幸中であった国王親子は、ノストラダムスに会うためだけに
サロン市に立ち寄ったが、その際に、住民たちはペスト流行を理由に近隣に逃げていたという。国王一行は市に戻るように命じ、入市式を挙行させた。
このように、ノストラダムスの生涯の様々な場面で、ペストと関わりのあるエピソードを見いだせる。
単語の意味
ノストラダムスの予言では、悪疫を意味する語は、以下のとおりであり。
pesteは、当然「ペスト」を意味する。しかし、現代の仏和辞典でも、古語として「疫病」「伝染病」などの意味が載っている。
中期フランス語の語義として、DMFには「伝染病」(épidémie, maladie contagieuse)、「災禍」(fléau, caractère terrible)などがあり、DFEには「伝染(病)」のほか、「死」(death)、「荒廃させるもの」(one that ruines or spoyles)といった意味が載っている。
なお、pesteの語源はラテン語のpestis(伝染病)である。
pestilenceは現代語では「悪臭、腐敗臭」「毒気」の意味で、古語として「悪疫」などの意味である。中期フランス語では、「災難、困難」(malheur, trouble)、「殺戮、荒廃」(carnage, misère)などの意味もあった。
pestilent は pestilence の形容詞形で「悪臭を放つ」などの意味だが、現代ではpestilentielの方が一般的のようである(『ロベール仏和大辞典』にはpestilentは載っていない)。
plagueは英語ではペストや悪疫の意味だが、中期フランス語では「傷」や「痛手」の意味で、悪疫の意味で使われていたかどうかは、議論の余地がある。
登場箇所
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最終更新:2020年03月10日 02:25