機装兵 ノーヴリンク

[ショートストーリー]
混沌とした時代に追い打ちをかけるように起こった戦争の中、ミーレスを失った1人の操手が暗い基地の中でただ項垂れていた。
「お前の相棒が壊れたのは残念だが………」
戦友が彼に声をかける。
気にかけてくれているのは分かるが、帝国の機兵“レギオン”に敗北してしまった苛立ちと、聖王国のお荷物になってしまった悔しさから戦友にまで八つ当たりしてしまいそうだったので、彼は見知った顔に手のひらを向けて首を横に振った。
気にかけてくれているのは分かるが、帝国の機兵“レギオン”に敗北してしまった苛立ちと、聖王国のお荷物になってしまった悔しさから戦友にまで八つ当たりしてしまいそうだったので、彼は見知った顔に手のひらを向けて首を横に振った。
「ああ……すまない、そうだな、そろそろ出撃だ……行ってくるよ」
「生きて帰ってきてくれ」
「必ず」
「生きて帰ってきてくれ」
「必ず」
新しい装兵が基地に配備されるのは早くて1週間後、戦況によっては1カ月、もしかするともっとかかるかもしれない。
「すまない」
彼は戦友と肩を並べられない情けなさを、その一言に詰め込んで吐き出した。
~
~
日ごとに増してゆく虚しさの中、早期警戒の役割を持つ偵察部隊からとある連絡が入った。
基地内の通信魔導器が、切羽詰まったその声を皆に聞かせた。
第三次聖帝戦争は間もなく終局を迎えようとしている、聖王国は最後の戦いに可能な限り多くの戦力を前線に投入した、それは防衛が手薄になる事と同義である。
第三次聖帝戦争は間もなく終局を迎えようとしている、聖王国は最後の戦いに可能な限り多くの戦力を前線に投入した、それは防衛が手薄になる事と同義である。
この基地も、決して例外ではない。
(今から逃げて間に合うはずもない、応戦する?どうやって?……ミーレスも無いのに)
「……いいや、まだやれるぞ!」
───ふと、この基地に配属されたばかりの時に見た光景を、走馬灯のように思い出した。
列を成す鋼の巨人、その中に大きく形状が違う装兵がいたのだ。
列を成す鋼の巨人、その中に大きく形状が違う装兵がいたのだ。
“これは?”
かれはあの時、整備士にそう聞いた、そして帰ってきた答えはこうだ。
“あのノヴレスの簡易量産機さ、だが製造コストが高すぎるんでコイツの開発は中止されちまった”
“中止か”
“ああ、だからコレは未完成なんだ、欠陥も多くて信頼できねぇ、コイツは格納庫の奥で埃を被るだろうよ”
“中止か”
“ああ、だからコレは未完成なんだ、欠陥も多くて信頼できねぇ、コイツは格納庫の奥で埃を被るだろうよ”
あの時の言葉が真実ならば、この基地にはまだ装兵が在るはずだ。
彼は居ても立っても居られずに走り出した、不安な表情の仲間たちの隣を通り過ぎ、肩をぶつけても一言すら詫びず、ただこの基地に残された最後の希望を確かめようとした。
彼は居ても立っても居られずに走り出した、不安な表情の仲間たちの隣を通り過ぎ、肩をぶつけても一言すら詫びず、ただこの基地に残された最後の希望を確かめようとした。
「……こいつだ」
格納庫の端、ソイツを覆っている薄汚い布を引き剥がしてやれば、遠い記憶の中で見たものと同じ装兵がそこに横たわっていた。
ミーレスに似ているが、全体の形状は1回りほど太く、頭部には1本角のような装飾が取り付けられている。騎士のようでどこか違う、見慣れない巨人だ。
ミーレスに似ているが、全体の形状は1回りほど太く、頭部には1本角のような装飾が取り付けられている。騎士のようでどこか違う、見慣れない巨人だ。
「武装はミーレスの予備があったはずだ、正直、生き残れる自信は無いが……」
操縦桿に腕を通す。
冷たい金属の感覚が、布越しに彼の肌を伝って身震いを起こす。
冷たい金属の感覚が、布越しに彼の肌を伝って身震いを起こす。
「……やってやるぞ、俺だって操手なんだ!」
「休暇は終わりだ、目を覚ませ───!」
今、基地を救うため、戦友が帰る場所を守るため、そして再び操手として敵に立ち向かうため、機装兵“ノーヴリンク”が立ち上がった───!
[解説]
機装兵ノヴレスの簡易量産モデルとして聖華暦600年代にて開発計画が進められていた機体。
“低コストでノヴレス以上の性能を持つ機体”を目指していたが、欲張りすぎた高性能は“低コスト”という前提を破綻させてしまい、本機はこれに失敗。
設計を見直している間に簡易量産モデルとして“ミーレス”が採用されることになり、本機の開発計画は幕を閉じた。
“低コストでノヴレス以上の性能を持つ機体”を目指していたが、欲張りすぎた高性能は“低コスト”という前提を破綻させてしまい、本機はこれに失敗。
設計を見直している間に簡易量産モデルとして“ミーレス”が採用されることになり、本機の開発計画は幕を閉じた。
本機は性能評価機として5機が生産され、計画中止後に解体されることになる。その後はノーヴリンクの予備パーツらしきもの(試作のために製造されたパーツの可能性もある)を含める約10機分のパーツが聖王国中に散らばり、足りない部分をミーレスの部品で補う形で数機組み立てられたという。そのため、現存しているノーヴリンクは個体によって形状や性能が大きく異なっている(画像の機体は第三次聖帝戦争後まで生き残っていた個体、そのため、一部にアルカディア帝国の機体を利用した現地改修が施されている)
本項で記述するノーヴリンクも、複数存在する個体のうちのひとつに過ぎない。
本項で記述するノーヴリンクも、複数存在する個体のうちのひとつに過ぎない。
[武装]

ミーレスシールド改修型
ミーレスが使用していたシールドにノーヴリンク用改修プランを施したもの。性能に大差は無いが、盾裏に武器をマウントしている。
ミーレスが使用していたシールドにノーヴリンク用改修プランを施したもの。性能に大差は無いが、盾裏に武器をマウントしている。


試製単発魔導砲(正式名称不明)
ノーヴリンク用に開発されていたと思われる単発砲、総弾数7。
風のルーンを用いた簡易術式を採用しており、火力やストッピングパワーよりも、着弾時の音や巻き上がる粉塵での足止めを重視している。
ノーヴリンク用に開発されていたと思われる単発砲、総弾数7。
風のルーンを用いた簡易術式を採用しており、火力やストッピングパワーよりも、着弾時の音や巻き上がる粉塵での足止めを重視している。
その他、ミーレスが使用している武器の多くを流用して扱う。

背部推進装置
移動を補助するための噴射式推進装置、出力は標準程度で、特筆すべきことは無い。
移動を補助するための噴射式推進装置、出力は標準程度で、特筆すべきことは無い。

脚部移動補助推進装置
移動の際の動作を補助する推進装置、蹴りや砂を巻き上げる時にも使用される。
移動の際の動作を補助する推進装置、蹴りや砂を巻き上げる時にも使用される。