狙撃手の名を持つモノ
聖華暦756年 5月
よく晴れた日だった。
雲も少なく、どこまでも抜けるような澄んだ青い空。
小高い丘の上で、辺りを見回す。
程よく吹き抜けていく風が気持ちいい。
このまま、ここで昼寝と洒落込みたいところだ。
雲も少なく、どこまでも抜けるような澄んだ青い空。
小高い丘の上で、辺りを見回す。
程よく吹き抜けていく風が気持ちいい。
このまま、ここで昼寝と洒落込みたいところだ。
側に待機しているエーテル索敵機を背負った従機に向かって、反応があるか問いかける。
僚機からは、索敵感なし、と返事が返ってくる。辺りに不審な物体は見当たらない。
僚機からは、索敵感なし、と返事が返ってくる。辺りに不審な物体は見当たらない。
オレ達は聖王国聖騎士団に所属する偵察部隊だ。エーテル索敵機を積んだノイ・サルファガス一台と護衛のガエ・アッサル二台の従機三台で構成される。
今回、禁忌の地に於いて魔獣駆除の任を受け、オレ達の所属する大隊は行軍している。
今回、禁忌の地に於いて魔獣駆除の任を受け、オレ達の所属する大隊は行軍している。
オレ達の向かっている禁忌の地は、言わば魔獣どもの巣窟だ。
禁忌の地が近い街や集落は、時折現れる魔獣によって被害が出てしまう。
その為、こうやって聖騎士団は魔獣の間引きをする為に禁忌の地に定期的に侵攻する。
禁忌の地が近い街や集落は、時折現れる魔獣によって被害が出てしまう。
その為、こうやって聖騎士団は魔獣の間引きをする為に禁忌の地に定期的に侵攻する。
今は先遣中隊の目となって、中隊の周りの警戒を行なっているところだ。
とは言え、遮蔽物となる物のほとんど無い荒れた平原、今オレ達が陣取っているこの丘くらいしか、隠れる場所など何も無い。
とは言え、遮蔽物となる物のほとんど無い荒れた平原、今オレ達が陣取っているこの丘くらいしか、隠れる場所など何も無い。
こっちから周りをすっかり見通せるが、それは魔獣の側からも同じ事だ。
だからこそ、索敵範囲の広いエーテル索敵機の重要性はとても高い。
さらに今回から新型の高性能索敵機を使わせて貰っている。
オレ達から半径10kmは全てお見通しという訳だ。
だからこそ、索敵範囲の広いエーテル索敵機の重要性はとても高い。
さらに今回から新型の高性能索敵機を使わせて貰っている。
オレ達から半径10kmは全てお見通しという訳だ。
警戒はしているが、何も無い事は先刻承知済み。
魔獣の姿など、影も形も見えはしない。
お陰でこれから危険地帯へ足を踏み込むというのに、どこか気の抜けた雰囲気がオレ達を含め、中隊全体から感じられる。
魔獣の姿など、影も形も見えはしない。
お陰でこれから危険地帯へ足を踏み込むというのに、どこか気の抜けた雰囲気がオレ達を含め、中隊全体から感じられる。
若い新入なぞ、呑気な事に中隊に向かって手を振っている。
それに右翼の端のマーセナルが手を振り返す。どこまでも呑気だ。
ホントに昼寝でもしたくなる。実にいい天気だ。
それに右翼の端のマーセナルが手を振り返す。どこまでも呑気だ。
ホントに昼寝でもしたくなる。実にいい天気だ。
遠雷を聞いた気がした。
目の前を行軍していた中央のマーセナル一個小隊が消える。
間髪入れず空を切り裂く音が聞こえて来た。
目の前を行軍していた中央のマーセナル一個小隊が消える。
間髪入れず空を切り裂く音が聞こえて来た。
突然の事で、何がどうなったのか、すぐに理解出来なかった。
今度ははっきりと遠雷を聞いた。
左翼の一個小隊が吹き飛び、一瞬遅れて金切音が聞こえたのを認識して、ようやく事態が呑み込めた。
どこからか砲撃を受けたのだ。それも機兵数機を一瞬で吹飛ばす程の威力の砲撃を。
今度ははっきりと遠雷を聞いた。
左翼の一個小隊が吹き飛び、一瞬遅れて金切音が聞こえたのを認識して、ようやく事態が呑み込めた。
どこからか砲撃を受けたのだ。それも機兵数機を一瞬で吹飛ばす程の威力の砲撃を。
右翼の小隊に撤退を進言しつつ、どこから砲撃されたのかを必死になって探る。
着弾地点は西へ向かって跡が付いている。これは東から撃たれている。
着弾地点は西へ向かって跡が付いている。これは東から撃たれている。
弾痕はまるで散弾銃で撃たれたような感じだが、一発一発の大きさと着弾範囲が尋常じゃない。砲撃を食らったマーセナルはバラバラなんてもんじゃない細切れの状態のようだ。
まともな塊の破片が残ってやしない。
それにエーテル索敵機には反応がない。どうなってやがる?
まともな塊の破片が残ってやしない。
それにエーテル索敵機には反応がない。どうなってやがる?
くそっ、すぐにここから離れなければ。
僚機に声をかけ、すぐに移動を開始する。
その時、オレは三度目の遠雷を聞いた…
僚機に声をかけ、すぐに移動を開始する。
その時、オレは三度目の遠雷を聞いた…