海洋温度差発電所および完全電化工業都市群建設計画
[解説]
聖華暦834年8月に発動した、『OTEC計画』の正式名称。計画名からわかる様に、この計画は海洋温度差発電所の建設と、そこから得られる電力を利用して稼働する完全電化の工業都市群の建設を主眼としている。
ただしそれだけではなく、『母なる魂への洗命計画』という自由都市同盟における食料の大増産計画ともリンクしており、そちらへの電力供給と同時に電力で稼働する各種機器類の提供も含まれている。
更には工業の原材料として必要な各種鉱物資源や原油などの確保についても視野に含まれており、内部的に見ると複数の計画が有機的に複合した大計画であった。
ただしそれだけではなく、『母なる魂への洗命計画』という自由都市同盟における食料の大増産計画ともリンクしており、そちらへの電力供給と同時に電力で稼働する各種機器類の提供も含まれている。
更には工業の原材料として必要な各種鉱物資源や原油などの確保についても視野に含まれており、内部的に見ると複数の計画が有機的に複合した大計画であった。
この計画は、名前からわかる通りに世間一般で禁忌とされる科学技術(厳密に言えば科学でない学問は存在しないのだが、便宜上そう呼称する)による、自由都市同盟の復興計画である。自由都市同盟はバフォメット事変により、屋台骨をへし折られる直前まで追い詰められた。そのままでは同盟は、アルカディア帝国かカーライル王朝・聖王国のどちらかに、飲まれて消えてしまっていただろう。
そこで原案ダライアス・アームストロング技術中佐、主導ナイジェル・サイアース中将という体勢で発動されたのが、この計画である。
そこで原案ダライアス・アームストロング技術中佐、主導ナイジェル・サイアース中将という体勢で発動されたのが、この計画である。
この計画の中核となる海洋温度差発電所は、同盟の南端でであるバラライカ共和国に建設される事が決まっている。本来は海上に建設されるのが最も有効な海洋温度差発電所なのであるが、海の魔獣による脅威があるために海沿いの陸地に建設される事になっている。
海沿いの土地で地下1000mまで掘り進み、そこから横方向海側に坑道を伸ばす事で深海の深層海水を取得し、地上で手に入れた温かい表層海水との温度差で発電を行うのが基本概念だ。また手に入れた深層海水を用い、水産生物の養殖や農業利用をはじめ、栄養学的にも素晴らしい性質を持つ事から直接的に塩、酒、水産加工品、調味料、その他の食料生産にも転用予定である。
海沿いの土地で地下1000mまで掘り進み、そこから横方向海側に坑道を伸ばす事で深海の深層海水を取得し、地上で手に入れた温かい表層海水との温度差で発電を行うのが基本概念だ。また手に入れた深層海水を用い、水産生物の養殖や農業利用をはじめ、栄養学的にも素晴らしい性質を持つ事から直接的に塩、酒、水産加工品、調味料、その他の食料生産にも転用予定である。
だがこの計画は、禁忌とされる科学技術に、極めて大きく頼った計画である。この計画が初期段階でアルカディア帝国やカーライル王朝・聖王国に漏洩すれば、それは下手をすれば自由都市同盟の終わりを意味する。
そのため、この計画への参加企業は注意深く選ばれた。そのはずであった。
しかしながら計画がある程度進められた聖華暦835年2月、同盟屈指の企業の1社であるアイオライト・プロダクションが、ナイジェル中将に接触を取って来る。その目的はやはり、本計画への参加による多大なる利益であった。
そのため、この計画への参加企業は注意深く選ばれた。そのはずであった。
しかしながら計画がある程度進められた聖華暦835年2月、同盟屈指の企業の1社であるアイオライト・プロダクションが、ナイジェル中将に接触を取って来る。その目的はやはり、本計画への参加による多大なる利益であった。
当初アイオライト・プロダクションが参加企業に選ばれなかった理由は、明白である。この会社はいわゆる死の商人として広く知られており、機兵他兵器開発に於いて自由都市同盟だけでなくアルカディア帝国やカーライル王朝・聖王国とのパイプが太かった、いや、あまりにもそのパイプが太すぎたのである。
ナイジェル中将の当初の判断では、この会社にアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の両国に対して、秘密を守らせるのは困難であると考えられていたのだ。だが拝金主義的なところのあるアイオライト・プロダクション側からすれば、この様な大計画から排除されるのは看過できるものではなかった模様。
ナイジェル中将の当初の判断では、この会社にアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の両国に対して、秘密を守らせるのは困難であると考えられていたのだ。だが拝金主義的なところのあるアイオライト・プロダクション側からすれば、この様な大計画から排除されるのは看過できるものではなかった模様。
ここでナイジェル中将は、アイオライト・プロダクションの要求を突っぱねる事も可能であったが、それはそれで何か裏にやましい事があると言っているも同じである。いや、実際に科学技術に頼った復興計画がある事はバレたらヤバいのだが。
そこで彼はダライアス技術中佐と諮った上で、アイオライト・プロダクション自身が秘密を守らねばならない様に画策する。彼らはアイオライト・プロダクションに、完全に科学技術の産物である発電機本体とそれを駆動するタービンを製造させたのである。
この秘密がアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の両国にバレたなら、アイオライト・プロダクション自体も致命傷を負う。ナイジェル中将とダライアス技術中佐は、その様に仕向けたのだ。
そこで彼はダライアス技術中佐と諮った上で、アイオライト・プロダクション自身が秘密を守らねばならない様に画策する。彼らはアイオライト・プロダクションに、完全に科学技術の産物である発電機本体とそれを駆動するタービンを製造させたのである。
この秘密がアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の両国にバレたなら、アイオライト・プロダクション自体も致命傷を負う。ナイジェル中将とダライアス技術中佐は、その様に仕向けたのだ。
こうして紆余曲折はあったものの、聖華暦835年時点に於いて計画それ自体は着実に前進しているのである。