機装兵ノヴレスMk-Ⅱ
[解説]
ノヴレスMk-Ⅱは上記した通り、開発者にとっては後続機のための実験試作機であり、聖王国にとっては要求仕様に満たない残念な出来の機装兵、アイオライト・プロダクションにとっては後々のための習作を兼ねた技術習得のための機体であったと言えよう。
この機体はフラタニティ・フレームを初めて採用した、第六世代機兵のはしりであり、単純な完成度で言えば「枯れた」信頼性の高い技術を多用している分だけ、かなりの物がある。
開発者はこの機体を、様々な試験に用いる目的で3~4機製作していたと、記録には残された。
正確な機数はこの後のシリウス戦役による混乱で、はっきりとは分かっていない。
開発者はこの機体を、様々な試験に用いる目的で3~4機製作していたと、記録には残された。
正確な機数はこの後のシリウス戦役による混乱で、はっきりとは分かっていない。
しかし残念な事にこの機体は、フレーム構造以外は旧態依然とした技術を用いて設計、建造されたため、画期的なフレーム構造を用いているのに能力的にはせいぜい「優秀機」止まりであり、聖王国が期待した「伝説の再来」には遠く及ばない物であった。
せめてフレーム材だけでなく、装甲材にも錬金金属イシルディンを用いていれば、かなり話は変わったはずである。
しかしそうでは無かった。重ねて言うが、開発者は後続機のためのデータ取り用に使えれば良いと、出資者や本社とのコンセンサスも取らずに突っ走ったのだ。
結果、聖王国は手を引いたのである。
せめてフレーム材だけでなく、装甲材にも錬金金属イシルディンを用いていれば、かなり話は変わったはずである。
しかしそうでは無かった。重ねて言うが、開発者は後続機のためのデータ取り用に使えれば良いと、出資者や本社とのコンセンサスも取らずに突っ走ったのだ。
結果、聖王国は手を引いたのである。
だがこの機体数機のうち1機は実際のところ、試験操手の1人であったカトル・ビーダーフェルトによって実戦にも持ち出され、データを取られた。
わずかに残されたあまり信頼のおけない記録によれば、カトルの手で実戦に供されたのは3号機であったとも言われている。
わずかに残されたあまり信頼のおけない記録によれば、カトルの手で実戦に供されたのは3号機であったとも言われている。
更に事実上の後継機であるジータが出現した後は、彼の同僚操手によって引き続き実戦任務において運用された。
更に強化パーツなども用意され、何時頃からかは記録が曖昧だが装甲も、実戦に持ち出された1機だけはイシルディン製の物に換装された様だ。
結局ノヴレスMk-Ⅱは、かなり息が長く使われたのである。
更に強化パーツなども用意され、何時頃からかは記録が曖昧だが装甲も、実戦に持ち出された1機だけはイシルディン製の物に換装された様だ。
結局ノヴレスMk-Ⅱは、かなり息が長く使われたのである。
[ショートストーリー]
機装兵ノヴレスMk-Ⅱの開発者、フランク・ビーダーフェルトは、自室でやけ酒を呷った。
聖王国が、ノヴレスMk-Ⅱの研究開発から手を引くことが確定したためだ。
彼が考案し完成させたフラタニティ・フレームも、時代のあだ花として消え去る事であろう。
聖王国が、ノヴレスMk-Ⅱの研究開発から手を引くことが確定したためだ。
彼が考案し完成させたフラタニティ・フレームも、時代のあだ花として消え去る事であろう。
何故そんな事になったのか。
理由は簡単だ。
聖王国がノヴレスMk-Ⅱに期待していたのは、かつての伝説的機装兵であるノヴレスの再来であった。
しかし完成したノヴレスMk-Ⅱは凡庸でこそなかったものの、その出来はせいぜい「優秀」が精一杯であり、伝説の再来には程遠い物だったのである。
理由は簡単だ。
聖王国がノヴレスMk-Ⅱに期待していたのは、かつての伝説的機装兵であるノヴレスの再来であった。
しかし完成したノヴレスMk-Ⅱは凡庸でこそなかったものの、その出来はせいぜい「優秀」が精一杯であり、伝説の再来には程遠い物だったのである。
フランクにとってノヴレスMk-Ⅱは、本来通過点にしか過ぎなかったのである。
そのため失敗を避け、フラタニティ・フレーム以外の新機軸は使用せず、いわゆる「枯れた」信用のある技術のみを使って無難に纏めたのだ。
そしてフレーム以外は旧態依然とした技術で纏めたにも関わらず、ノヴレスMk-Ⅱはそれこそ「優秀」な結果を出す事ができた。
彼からすれば、充分に成功と言える。なのに聖王国は勝手に失望し、勝手に研究から撤退してしまった。
彼にとっては、ノヴレスMk-Ⅱは実験機でしかなく、それから得たデータをもって製作する予定であった、ノヴレスMk-Ⅲこそが本番であったのに。
そのため失敗を避け、フラタニティ・フレーム以外の新機軸は使用せず、いわゆる「枯れた」信用のある技術のみを使って無難に纏めたのだ。
そしてフレーム以外は旧態依然とした技術で纏めたにも関わらず、ノヴレスMk-Ⅱはそれこそ「優秀」な結果を出す事ができた。
彼からすれば、充分に成功と言える。なのに聖王国は勝手に失望し、勝手に研究から撤退してしまった。
彼にとっては、ノヴレスMk-Ⅱは実験機でしかなく、それから得たデータをもって製作する予定であった、ノヴレスMk-Ⅲこそが本番であったのに。
「……くそっ!」
苛立ちを吐き捨てるフランク。
直接の原因は、彼と聖王国側のコミニュケーション不足だろう。
聖王国が欲していたのは、実験機としてとりあえず完成させてみたレベルの機体では無かった。
聖王国はノヴレスMk-Ⅱがそれこそ伝説の再来と呼ばれるほどの力を発揮する事を望んでいたのだ。
それをフランクは全く理解していなかったのだ。
聖王国が欲していたのは、実験機としてとりあえず完成させてみたレベルの機体では無かった。
聖王国はノヴレスMk-Ⅱがそれこそ伝説の再来と呼ばれるほどの力を発揮する事を望んでいたのだ。
それをフランクは全く理解していなかったのだ。
更に彼にとって苛立たしい事は、ノヴレスMk-Ⅱの共同開発者である彼の妻、ヒルデ・ビーダーフェルトが研究チームの中心人物となって量産方法を実現し確立した特殊素材、錬金金属イシルディンを潤沢に贅沢に使用した重機兵ガーラルが、ノヴレスMk-Ⅱ、フラタニティ・フレーム、ひいては彼フランク自身の未来を閉ざす形になった事である。
ヒルデは研究者としては非常に優秀である。
フランクも、研究者としては尊敬さえしている。
だが彼の妻でありながら、彼は彼女の事を、女としては見限っていた。
彼の心は既に愛人の元にある。
フランクも、研究者としては尊敬さえしている。
だが彼の妻でありながら、彼は彼女の事を、女としては見限っていた。
彼の心は既に愛人の元にある。
そんな妻が、今まで量産できなかった物を量産してみせた特殊素材……。
それが使われた重機兵が、彼を追い詰める。
それが使われた重機兵が、彼を追い詰める。
無論、彼女に責任は無い。
その特殊素材を重機兵ガーラルに使用したのはアイオライト・プロダクションそのものだ。
あまつさえ、彼が固執するフラタニティ・フレームも、妻ヒルデのチームが量産方法を確立したイシルディンが無ければ形にならなかった。
それ故、彼の理性は妻を責めてはいけないと理解している。しかし感情が理性に追いついて行かない。彼は再度、酒を呷った。
その特殊素材を重機兵ガーラルに使用したのはアイオライト・プロダクションそのものだ。
あまつさえ、彼が固執するフラタニティ・フレームも、妻ヒルデのチームが量産方法を確立したイシルディンが無ければ形にならなかった。
それ故、彼の理性は妻を責めてはいけないと理解している。しかし感情が理性に追いついて行かない。彼は再度、酒を呷った。
フランクは気付かなかった。
自室のドアが、ほんの僅かに開いて、そしてまた閉じた事を。
彼とヒルデの息子であり、ノヴレスMk-Ⅱの試験操手の1人に抜擢されたカトルが、父親に技術者としての意見を聞きに来ていたのだ。
だがカトルは、やさぐれる父親に軽蔑の視線を送ると、音を立てずにドアを閉じて立ち去った。
自室のドアが、ほんの僅かに開いて、そしてまた閉じた事を。
彼とヒルデの息子であり、ノヴレスMk-Ⅱの試験操手の1人に抜擢されたカトルが、父親に技術者としての意見を聞きに来ていたのだ。
だがカトルは、やさぐれる父親に軽蔑の視線を送ると、音を立てずにドアを閉じて立ち去った。
この時フランクが酔っていなければ……。
自暴自棄になっていなければ……。
もしかして彼に新たな栄光の道が開けていたかも知れない。
自暴自棄になっていなければ……。
もしかして彼に新たな栄光の道が開けていたかも知れない。
しかし彼は、チャンスを逃した。
そして彼の名はかろうじて、フラタニティ・フレームを初めて使用した機装兵であるノブレスMk-Ⅱの主任開発者として、そして後世に輝かしく名を残した機装兵技師にして操手、カトルの父としてだけ、機装兵開発史の一部に小さくなかば埋もれる様にして残るだけである。
そして彼の名はかろうじて、フラタニティ・フレームを初めて使用した機装兵であるノブレスMk-Ⅱの主任開発者として、そして後世に輝かしく名を残した機装兵技師にして操手、カトルの父としてだけ、機装兵開発史の一部に小さくなかば埋もれる様にして残るだけである。