重機兵 ガーラル
[ショートストーリー]
「……ほんとに出来ちまったよ、おい。」
ホバー推進装置を小型化して組み込んだ、発想だけは画期的な失敗作のアルカディア帝国重機兵ホプリタクスを、カルマッド機兵工房にて彼の一族が設計したのは聖華暦613年の事。
もう90年以上も昔のことだ。その当時の開発に関する経緯や記録は、彼の家に代々伝わっていた。
彼自身はカルマッド機兵工房にて、技量や知識は優れるが、一族の先達が世に送り出してしまった失敗作の件で、代々冷遇される立場であった。
まあ、彼に思う所や、不満が無かったとは言えない。だからこそ彼は、アイオライト・プロダクションのヘッドハンティングに応じ、会社を移籍したのだから。
だが移ったその先の会社で、まさかホプタリクスの設計思想を継承するホバー推進装置搭載機を開発させられるとは、思っても見なかったのである。
もう90年以上も昔のことだ。その当時の開発に関する経緯や記録は、彼の家に代々伝わっていた。
彼自身はカルマッド機兵工房にて、技量や知識は優れるが、一族の先達が世に送り出してしまった失敗作の件で、代々冷遇される立場であった。
まあ、彼に思う所や、不満が無かったとは言えない。だからこそ彼は、アイオライト・プロダクションのヘッドハンティングに応じ、会社を移籍したのだから。
だが移ったその先の会社で、まさかホプタリクスの設計思想を継承するホバー推進装置搭載機を開発させられるとは、思っても見なかったのである。
「ホバー推進装置の更なる軽量小型化と魔力運用の効率化、アイオライトが持つ秘匿電子計算機によるホバーノズル形状の流体シミュレーションでの徹底した効率化、それに加えて……。」
それに加えて、これもまたアイオライト・プロダクションの技術者チームが量産に成功した、かつて伝説の名機ノヴレスに装甲材として用いられていた錬金金属イシルディン。
それを骨格構造を兼ねたモノコックの一次装甲、そして二次三次の装甲板全てに贅沢に潤沢に用いる事で、機体そのものを大幅に軽量化した。イシルディンが量産できる様になったからと言えど、こんな贅沢が許されたのは、この機体がアイオライト・プロダクションにとって実験機的側面を持っていたからだろう。
それを骨格構造を兼ねたモノコックの一次装甲、そして二次三次の装甲板全てに贅沢に潤沢に用いる事で、機体そのものを大幅に軽量化した。イシルディンが量産できる様になったからと言えど、こんな贅沢が許されたのは、この機体がアイオライト・プロダクションにとって実験機的側面を持っていたからだろう。
だが彼は本来、ホバー機構を組み込んだ機兵が本当にものになるかは、怪しいと思っていた。
いや、造れることは造れるだろう。だが失敗作ホプリタクス同様に、操手があっという間に魔力切れを起こしてしまうのではないか……。
何度も繰り返された電子計算機によるシミュレーション結果を見てすらも、彼は信じ切る事はできなかったのだ。
いや、造れることは造れるだろう。だが失敗作ホプリタクス同様に、操手があっという間に魔力切れを起こしてしまうのではないか……。
何度も繰り返された電子計算機によるシミュレーション結果を見てすらも、彼は信じ切る事はできなかったのだ。
しかしガーラルは完成した。確かにホバーを使用すると、稼働時間は短くなる。
しかし主脚歩行を併用し、要所要所でホバーを用いる様にすれば、戦闘に充分な稼働時間が得られたのである。
しかし主脚歩行を併用し、要所要所でホバーを用いる様にすれば、戦闘に充分な稼働時間が得られたのである。
「……ほんとに出来ちまったよ、おい。」
彼は再び呟く。
だがその顔には、隠しきれない喜びが浮かんでいた。
だがその顔には、隠しきれない喜びが浮かんでいた。
[解説]
重機兵ガーラルは、当初アイオライト・プロダクションによりホバー推進装置搭載装兵と言うタイプの現行技術による再検証と、ヒルデ・ビーダーフェルト女史率いる研究チームが量産化に成功した錬金金属イシルディンを機兵の構造にフル活用した場合のコスト検証のために提案された機体であった。
だがこの重機兵は驚くべきことに、新機軸フラタニティ・フレームを用い、聖王国の肝いりで共同開発されていたノヴレスMk-Ⅱと、ほぼ互角の戦闘能力を示して見せたのだ。
余談であるが、ノヴレスMk-Ⅱが第六世代機兵としてカテゴライズされた際には、それと同等の戦闘能力を持つこの機体も、構造的には第五世代機兵であったにもかかわらず、第六世代入りする事となる。
だがこの重機兵は驚くべきことに、新機軸フラタニティ・フレームを用い、聖王国の肝いりで共同開発されていたノヴレスMk-Ⅱと、ほぼ互角の戦闘能力を示して見せたのだ。
余談であるが、ノヴレスMk-Ⅱが第六世代機兵としてカテゴライズされた際には、それと同等の戦闘能力を持つこの機体も、構造的には第五世代機兵であったにもかかわらず、第六世代入りする事となる。