LAIKA『Missing Link』のデジタルアーティスト、Joe Beckley氏へのインタビュー

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2016年後半、私たちは、ストップモーションに特化した制作会社の中でも最も成功している会社の1つであり、数々の優れた映画の中でも特に高い評価を得た『 Kubo and the Two Strings 』の製作者である LAIKA 社から連絡を受けました。彼らは次の映画でTerragenを実験的に使用し始めたばかりで、ワークフローに貢献する可能性のある新しいツールを模索していました。私たちは対話を続け、彼らの制作を可能な限りサポートするよう努めましたが、数年後、彼らのスタジオを訪問して直接制作をサポートする機会を得ました。当時、シニアVFXデザイナーのJoe Beckley氏は、ゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた最新作『 Missing Link 』の完成に向けて作業を進めていました。
今回、Joe氏とLAIKA社の協力を得て、Terragenがどのようにしてその制作に重要な役割を果たしたかを詳しく紹介する素晴らしい機会を得ました! Joe氏へのインタビュー、ビフォーアフター画像、映画のワンシーンの分解、制作テストをご覧下さい。制作現場でTerragenを使うとはどういう事なのか、高度にスタイル化された外観に合わせてTerragenの出力をどこまで押し上げる事が出来るのか、疑問に思った事がある方は、是非読んでみて下さい。

あなたの事を少し教えて下さい。どのような経歴をお持ちで、どのようにしてコンピュータグラフィックスの仕事に就かれたのですか? 現在はどこで働き、そこでの役割は何ですか?

この分野の多くのアーティストと同様に、私もアニメーションと映画制作が大好きで、幼い頃からやりたいと思っていました。オハイオ州の小さな町で育ち、オハイオ州コロンバスにある コロンバス・カレッジ・オブ・アート&デザイン(=CCAD) でアニメーションを学びました。スカルプティング、ペインティング、ドローイング、テクニカルイラストレーションの幅広い教科課程は、私の教育の基礎であり、その事にはこの先ずっと感謝しています。CCADでは、私が他に類を見ない基礎を身に着けただけでなく、業界内の多くの著名なアーティストに紹介され、生涯の友人を作る事が出来ました。

CCADを卒業した後、私はDisneyToon所有の『Fox and the Hound II(邦題: きつねと猟犬2 トッドとコッパーの大冒険)』と『Aristocats II(邦題: おしゃれキャット2)』のアート部門に就職しました。キャラクターデザインや背景画からカラーキーやスタイルガイドまで、すべてを担当しました。これはプロダクションのマスタークラスで、私の周りには素晴らしい才能を持った人たちで溢れ、最初の一歩を始める事が出来ました。その後、テキサス州ダラスの DNA Productions で、『ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!』のTVシリーズや映画『アントブリー』の制作に携わりました。私はマットペイントと2Dの仕事を行うために雇われましたが、雇われて間もなく照明部門にチャンスが訪れ、それに飛びつきました。私は残された時間を主にショットライティングとコンポジットを担当しました。『アントブリー』の制作が終わった後、私はいくつかのスタジオでフリーランスとして3Dライティングやテクスチャリング、マットペインティング、イラストレーションを担当した後、2006年にポートランドのLAIKA社に就職しました。

LAIKAに入社した当初、スタジオには3つの部門がありました。ストップモーション部門、CG長編部門、コマーシャル部門です。私はそのCG長編映画部門のライティングアーティストとして採用されました。雇われた時のプリプロダクションの作品は、何人もの監督やプロダクションデザイナーを経て、ようやく声が出るような状態で、なかなか現実しませんでした。そこで私は開発と制作の橋渡しをする、非常に小さなクリエイティブ集団の一員になって欲しいと頼まれました。私たちはデジタルデザイングループで、開発中のディレクターと協力してビジョンの実現を支援する事から、私たち自身のコンテンツの開発まで、最新の技術を取り入れたり、ビジュアルへの主流ではないアプローチを模索したりしながら、あらゆる事を行いました。限界を開拓し、限界を押し広げる自由を持つ事は、アーティストとしての夢でした。このグループは最終的に、現在のLAIKAのVFX部門の基盤となりました。

当初は少人数のグループだったので、みんな様々な役割を担っており、お互いに探求したり、学ぶ事に盛り上がっていました。私はテクスチャ作業をどんどんこなし、マットペイントやセットエクステンションなど、私は手が出せるものには何でも引き受けました。何年もの間に、現在の5つの制作サイクルを経て、ショットライティングやテクスチャリングからマットペインティング、そして現在の私につながるフル3Dのセットエクステンションまで、あらゆる仕事をこなしてきました。私は現在、シニアVFXデザイナーとして、番組のディレクターやその他の主要なクリエータから伝えられたアイデアを、キーアート、本番に即したアセット、環境、マットペインティングなどに解釈する事を主な仕事としています。私の役割は、一般的にはよりクリエイティブなものですが、確かな技術的背景を持っており、制作においても実践的な手腕を強力に発揮しています。

あなたの立場での標準的な一日はどのようなものですか? 仕事をしていてユニークで刺激的な事は何ですか?

私の仕事の最大の醍醐味は、コンセプトアート、2Dイラストレーション/デザイン、3Dのワールド/セットの構築など、その日その日によって何でも出来る事です。私の仕事は1年を通して変化しますが、特定の映画の制作中の状況にもよります。制作の初期段階であれば、2Dイラストレーションやコンセプトの上に絵を描く事が多いです。本格的な政策に入ると、スタジオ全体で他の主要なクリエータと緊密に連携して、セットエクステンションや空模様を実現させるのを手伝っています。
LAIKA社は、ストップモーションの技術とコンピュータで生成された映像を融合させて、私たちのような映画を制作している世界でも数少ないスタジオの1つです。私たちが取り組んでいる作業だけでもユニークで非常に刺激的です。これら2つの世界を融合させる事は、スタジオにとって最大の課題の1つですが、それだけではなく、私たちの仕事に対する真の情熱と誇りが生まれます。私たちのセットやマペットはすべてハンドメイドで、高度にスタイル化されているので、実物の写真のカタログや既製のテクスチャやシェーダを使って、私たちが創り上げた世界をテクスチャ化させる事は出来ません。従来のソフトウェアやワークフローをそのまま使う事も出来ません。私たちは本物のカメラでセットを撮影しているので、写真のようにリアルなレンダラーとシェーディング技術の力を利用する事が重要となります。その秘訣は、ソフトウェアを操作して、スタイルやマテリアルの作成を、それらが実際にステージで構築され、撮影される方法を模倣する事です。作成されるすべての雲、空、エクステンションは、実際の雲、空、ロケーションの物理的特性を持つ必要がありますが、スタイルを持ち、実用的なセットと同じマテリアルで作られているように見える必要があります。

以前はいくつかの部門やチームで数週間かかっていたものが、数日の内に編成する事が出来ました...

Terragenを使ってみての感想は? いつ頃から使い始めましたか? ワークフローにTerragenを選んだ理由と、それが仕事にどのように役立ちましたか? また、どのような点が気に入ってますか?

Terragenを使い始めたのは数年も前の事です。 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』 を完成させ、次回作『Missing Link』に向けて動き始めた時、目の前の仕事が膨大な量になっている事に気づき、これまでの作品でいつものように提供したものとは異なる方向性を模索し始めました。その時にTerragenに出会い、このソフトウェアを使用しているスタジオや作品を目の当たりにして、とても気に入りました。実際に使い始めてみると、アーティストにとっていかに使い易いかがすぐに分かりました。どのソフトウェアにも言える事ですが、確かに学習曲線はありましたが、最初のいくつかのハードルや問題を乗り越えたら、すぐに使い始める事が出来ました。

65の固有のロケーションと465のセットエクステンションがあり、私はその制作に非常に大きな役割を果たしました。この作品はこれまでに作品とは全く違うアプローチをしなければないらないと、放映の早い段階から思っていました。プロダクションデザイナーのNelson Lowry氏とディレクターのChris Butler氏との初期の開発段階を経て、コンセプトアートを撮影し、数日でシーケンスのロケーションや設定ショットを素早くモックアップする事が出来ました。数日かけてシーケンスの風景を準備し、シーケンスのすべてのショットカメラをTerragenにインポートする事で、コンセプトアートに基づいたラフなセットをモックアップし、ラフな照明や大気を区分けする事が出来ました。これは通常、地形の様々な部分を定義する単純な形状と、木や植物、シーケンスに関連する他のアセットを表示させるために散りばめられた粗いオブジェクトです。シーケンス内のほぼすべてのカメラから見る事が出来るように、非常におおまかなストロークを使っていました。その後、Nelson氏にいつでも意見を聞ける環境に置く事で、楽々とアートディレクション(視覚演出)を行い、すべての撮影の理想的なレイアウトを得る事が出来ました。
私は、1日のうちのラフな時間帯のライティングシナリオで、ほとんどインタラクティブに、ショットカメラを通して空やセットを見る事が出来るのが気に入っていました。Nelson氏とChris氏がラフな地形を検収した後は、私は最終的な構造物の作成とスカルプト、シェーダネットワークの完全な開発、モデラーと一緒に小道具やその他の様々なアイテムを作成し、照明や大気に磨きをかけていきました。これまでは複数の部門やチームで数週間かかっていたものが、数日で編成する事が出来るようになり、最終的な目標であるシーケンス対応のセットをより効率的に制作のために準備する事が出来るようになりました。

他にどのようなソフトウェアを使っていますか?

Terragen以外に使用している主なソフトウェアは、Maya、Houdini、Photoshop、Mari、Substance Painterです。私は時々SpeedTreeを樹木や植物のアセットに使う事がありますが、ほとんどの場合、私たちのアセットは非常に具体的でスタイル化されているため、CGモデラーが多くの植生をカスタムモデリングしたり、エレメントを素早くスタイルに合わせてセットドレス(モデルやエレメントなどに正しい外観を与え、各アイテムが各パフォーマンスに対して正しい位置を合わせる作業)したりする事が出来ました。

インスピレーションはどこから得ていますか? 好きなアーティストや作品などはありますか?

最近は素晴らしいインスピレーションの源がたくさんあるので、その中からいくつかを選ぶのは難しいです。私はストーリーテリング(物語を引用する)やビジュアルの両方で、既成概念に既成概念にとらわれない発想を持つアーティストや映画、画家が大好きです。また、多くの伝統的なアーティストやイラストレーター、絵描きの型は新人もベテランも同じように惹かれ、インスピレーションを受けています。最近のスタジオの視覚的な探求の例としては、ソニー・ピクチャーズの『 Spider-Man: Into the Spider-Verse 』で行ったCGアニメーションと、『 Klaus 』が伝統的なアニメーションで行っている事があります。どちらも、最近の長編アニメーションで、日常的にみられるものの限界に挑戦しているスタジオの例であり、LAIKAがこれまで行ってきたように、今も継続しています。ストリーミングサービスが増えるにつれ、アニメーションは全く新しい世界を切り開き、小規模なスタジオや遠隔地にあるスタジオが、今では自分たちのプロジェクトを見せるためのプラットフォームを手に入れたので、ストーリーやビジュアルの多様性をすべて見るのが本当にエキサイティングです。

他のアーティストや、同じような仕事に興味がある人たちに向かって何かアドバイスはありますか?

限界を押し広げる事を恐れず、新しいアイデアを試し、量より質を求めて努力しましょう。すべてはディティールに宿るのです。自分を鼓舞してくれる人から学び、あなた自身のビジュアルボイスを作る事を恐れてはいけません。

Terragenは非常に多くの素晴らしい映画制作で使用されていますが、幕の裏側を見る事はもちろん、他の取引先と共有する事は滅多にありません。Joe Beckley氏とLAIKA社が快くインタビューに応じてくれた事、そしてその中に含まれる多くのイメージを共有させてくれた事に、私たちは感激し、感謝しています。この インタビューのパート2 は是非お読み下さい。ここでは『Missing Link』の中でもJoe氏が特にお気に入りの環境を紹介し、物理的なセットとTerragenレンダリングを組み合わせてどのように構築されたかを詳しく紹介しています。

『Missing Link』はCGIと実用的なコンテンツを見事に融合させており、ゴールデングローブ賞で長編アニメーション賞を受賞し、それに続く2019年のアカデミー賞にもノミネートされた価値のある作品となっています。LAIKA社は、今後も限界に挑戦し続け、Terragenが彼らのツールボックスの一部になる事をとても楽しみにしています!

続きを読む: 空とセットクステンション

上をクリックすると、Terragenを使用した『Missing Link』の、Joe氏お気に入りの環境を作成した様子がご覧頂けます。

すべての画像は Laika, LLC とJoe Beckley氏によって惜しみなく提供されたものであり、著作権はそれぞれの所有者に帰属します。
最終更新:2020年05月16日 14:55