作画崩壊

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作画崩壊 - (2021/02/27 (土) 08:36:00) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/04/14(木) 01:41:12
更新日:2024/04/14 Sun 20:49:54
所要時間:約 15 分で読めます




作画崩壊(さくがほうかい)とは、アニメを始めとする漫画、ゲーム、イラスト等で稀に起こる現象。



【概要】

素人目に見ても明らかに出来の悪い作画のことで、
特筆すべき点は趣味でイラストを公開するアマチュアではなく、
あくまでそれを職業とするプロのアニメーターや原画家が描いている点である。

アニメ等の媒体では動く絵を見せる事を第一とする都合上良作・駄作と評価を下す基準が作画の出来に左右される場合も非常に多く、
作品自体の評価の比重は絵がかなりの部分を占めているといっても過言ではない。

脚本や声優の演技はいいのに作画ひとつで台無しになることも多く、見た者を残念な気持ちにさせる。
原作がある作品で起こると原作ファンの怒りは並大抵のものではないだろう。


【要因】

さて、作画崩壊が起こり得る主な原因は、
  • 時間がない
  • 製作費が少ない
  • 作画チームのレベルが低い
  • 作画監督のレベルが低い
  • 手抜き
等が挙げられる。

できれば何とか修正を行いたいのだが、このようなスケジュールや予算の逼迫によって発生した不可抗力的な原因に対してはどうしても荒業を使わざるをえない。

  • クォリティが低い海外のスタジオに発注せざるをえなくなったり*1
  • 力量のある作画監督が各社取り合いで捕まらず「腕が良く筆も早いが、画風が一昔前」或いは「キャラデザと著しく相性の悪い画風の作画監督」がピンチヒッター的に就いたり*2
  • 経験の浅いアニメーターを作画監督にせざるを得なくなる場合もあり*3

等の理由で発生するのがほとんど。

一部は円盤化の際に修正される場合もある。

作画崩壊は製作側にとっても不本意ななものであることには間違いない。ただ、アニメや漫画の制作現場は時間に追われながらの作業なので、アニメの根本をなす脚本や絵コンテの作成が難航するとそれだけ作画に掛けられる時間も少なくなる。

また、アニメのような大人数が関わる現場ともなれば、作画陣の人数が多ければ多いほど一枚に掛けられる時間も多くなり、
それだけ作画の安定にも繋がるが、その分多くの人件費がかかるというジレンマがある。
アニメ30分分一話を製作するのに掛かる費用は最低でも2か月・一千万円は必要ともいわれ、一話一話を丁寧に作り込むには時間も金も足りないのが現実である。
TVアニメや連載漫画なら放送前(掲載前)に製作が始まる為、序盤は作り込むことも可能だが、
終盤に近付くに連れ貯金は減っていき、どんどんシビアになっていく。
結果、作画崩壊が起きやすくなってしまうのだ。

これを防ぐ為、キャラクターデザインを起こす際に無駄な線を極力省く、
なるべく動画枚数を減らすよう動きの少ない演出を心掛ける等、制作陣も苦心している。

視聴者の心を掴む一話、物語のクライマックスに当たる部分、最終回や原作の名シーンに力を注ぐ為、中盤で予算や労力を温存するのも一般的。
これは逆に名最終回を生み出す要因となったりもする。

しかし、こうした努力の上でも起こってしまう悲劇なのである。

最近はそれほどでもないが、4クール以上が普通だった昔のセル画アニメでは、放送期間の長さや作画に掛かる手間から頻繁に起こっていた。
例えば日米合作で有名な「トランスフォーマー」は本当に息つく間もなく作画が乱れまくることで有名で、
陰影が無い、輪郭がフニャフニャになる、武器を持つ手が逆になる、配色がフェイズシフト装甲ばりに変化しまくる、
また作画ミスも毎回の如く発生し、キャラの立ち位置がシャッフルされる、顔が突然ブサイクになる、ビームが銃口からはみ出る、破壊された者が一瞬で修復される、軍隊のマークが敵軍のものになる、
酷い時にはキャラが分身する、描くキャラを間違える、セル画の重ね合わせミスで巨大化するなどもはや名物と化している。

アニメ版「ロスト・ユニバース」4話「ヤシガニ屠る」に於いて作画が悪かったことから、作画崩壊のことをヤシガニと呼ぶこともある。
これはそもそも企画段階からスケジュールが無茶苦茶だったことにより、作画監督飛ばし(いわゆる「ノー作監」)が行われるに至ったせいである。
また、アニメ版「夜明け前より瑠璃色な」の料理シーンで、出てきたキャベツが緑色の球体状の何かであったことから、
同作のアニメ版は「キャベツ」と揶揄されている。
この2つは時間がなかったことで作画監督が殆ど作業が出来なかったことで発生したもので、特に「ヤシガニ」は製作期間が尋常でない短さだった。

この二作は全体的に作画が酷い為、代表的な作画崩壊アニメとして挙げられることが多い。
「MUSASHI-GUN道-」を加えて「三大作画崩壊アニメ」に数えられることも。


【注意】

なお、「作画崩壊」とは作画のクォリティが著しく低い場合を指すのであって、
「大きさがおかしい」「色が設定と違う」「状況的にありえないものが描かれている」「指の数がおかしい」などの不備は
作画ミス」と呼ばれて区別されている。

また、80年代辺りまでのアニメでは画風の統一は今現在よりも厳密ではなく、担当作監毎の絵柄が強く出やすい傾向にあったため
回ごとにキャラデザの画風が異なることが一般的であった。これも作画崩壊とは呼ばないので注意。

また、
1.静止画として見ると崩れている作画であっても、動画として見ると迫力のあるカットになっている場合もあり、
2.金田伊功氏・湯浅政明氏の様に最初からパースが歪んだ空間であることを表現する演出があり、
3.メディアミックス化の際に、意図的に原作の雰囲気から掛け離れた設定・デザインを採用することもあり、
4.エンドカード・記念ムック等で起用されたゲストが好き放題に解釈して描くこともある。
これらは作画崩壊ではありません。はやる気持ちを抑えて、
1は「中割り*4」・2は「金田(湯浅)パース」・3は「リファインデザイン」・4は「トリビュート(或いはアンソロジー)」と呼ぼう。
そうしないと、許可を出した原作側にもアレンジした制作陣にも失礼だ。

そもそも、本来アニメーションとは動画用に描かれた絵の連続で表現するものであり、
キャプチャーした静止画に難癖付けるのはナンセンスというもの。

アクションシーンの中割りなどは、躍動感を表現するために意図的にデフォルメすることが多い。
静止画として見ると骨格がおかしかったり、輪郭がブレていたりすることは多いが、動画としては迫力あるものになっていたりする。
特にベテランのアニメーターが担当すると、この傾向が顕著。

これは昔からある表現技法なので、動画の一部を切り取ってネタにしたり、作画崩壊だと騒ぎ立てるのは
技法についての知識もない奴がおちょくるだけの無礼な行為である。

また、表情などをほとんど視認できないロングショットなど、フニャフニャな作画でも動画にしたときにほとんど違和感のないものも存在する。

良識あるファンならば、アニメの絵は動画として楽しもう。

確かに、絵心のある人にとっては僅かなデッサンの狂いに腹立たしさを覚えるかもしれない。
しかし絵の知識に乏しい人からすれば「どこが?」と思えることもあり、粗探しも過ぎると作画厨扱いされかねない。
よっぽど酷いのはともかく、多少なら気にしない…或いは気づかず純粋に楽しむ人も多いので自重も大事である。
絵の質も作品に没入するための大事な要素ではあるが、それのみならず全体の出来こそが何よりも注視すべき点だろう。




















【おまけ ~画伯達が描いたシーン~】

ふぅ、真面目な説明はこんくらいでいいだろ。



作画崩壊……それは時に芸術を生む。

見た者の腹筋を崩壊させるシュールな絵面が生み出されることがあるのだ。

描く方がある程度狙ってやってる顔芸と根本的に違うのは、
プロが真面目にやっているのに明らかにおかしいところだろう。いってみればシリアスな笑いに近い。


以下、良い作画崩壊集(画像がなくなった為例として作品名のみ)


1、キャラクターやメカのデザインが明らかにおかしい(いわゆる「かんたん作画」)

出典:魔法少女リリカルなのはStrikerS 、8話、セブン・アークス、
2007年4月~9月、©なのはStrikerS PROJECT
  • 遊戯王シリーズ(作画監督が愛される作品。井上監督のAGOや大邪神川口&飯飼の愛せない作画が有名。)
  • 聖闘士星矢 (無印の河合回、アフロディーテ戦3邪神作画連発伝説、Ωの八島回。)
  • 北斗の拳(ケーーーン)







  • みなみけ~おかわり~
  • かみちゃまかりん

  • そんな声出しちゃイヤ!(そんな作画をしちゃイヤ!)
  • 魔法先生ネギま!(安全牌と言われていたネギま!?も15話目にて撃沈)
  • PSYCHO-PASS サイコパス(公式で謝罪文が出た)
  • 銀魂(わざとやっていることもあるが、ネタ抜きで星海坊主編はヤバい)
  • サムライフラメンコ(海外発注の作画が、カット300枚に対してリテイクが200~250枚)
  • GANGSTA.(サムライフラメンコと連続で作画崩壊を起こして、製作会社が倒産)
  • ポケットモンスターXY(主にデデンネ関係)
  • 俺が好きなのは妹だけど妹じゃない(先行上映が制作上の都合で中止になった時点で危ぶまれていたが、やはり2話で崩壊し、その後作画崩壊が続き、10話中9話が作画崩壊したという異様な作品となってしまった)
    6話ED原画クレジットの正直困太も本作を語る上で欠かせない。
BDの発売を2ヶ月延期し作画修正して発売すると期待したが、肝心の中身が作画修正を全くせず、TV版の作画のまま発売するという暴挙に出た。

出典:俺が好きなのは妹だけど妹じゃない、3話「俺と妹は二人で一人のラノベ作家だ」より、
18年10月10日から放送中、NAZ × マギア・ドラグリエ、いもいも製作委員会、
©2018 恵比須清司・ぎん太郎/KADOKAWA/いもいも製作委員会

2、動きがカックカクで不自然
  • 天空戦記シュラト(シュラってる)

3、2とは逆に動きを出すために人物の画像(骨格など)がヘン
  • NARUTO(サスケェ…)
  • 鉄腕バーディーDECODE:02(演出)


4、1~3の全てがおかしい
  • 超時空要塞マクロス(よく出来ているところと、出来ていないところの格差が激しすぎる)
  • MUSASHI-GUN道-(最初から最後まで酷かったが、最後には自分達でネタにしてしまっていた)
  • ガンドレス(作画ばかりでなくキャラの色が良くて3色、最悪単色。DVD発売時には修正前が特典になってしまった)
  • 学園都市ヴァラノワール(OVA)(尋常でない作画枚数の少なさ、紙芝居というレベルを越える)
  • DYNAMIC CHORD(珍妙なパースに画風の違いすぎるモブ、背景美術や意味不明な演出も手伝って2017年最強のネタアニメ扱いされた)
  • ロスト・ユニバース(ヤシガニ、OPすら未完成…、しかも最先端の試みである3Dは納期を守れていた上に品質すら安定していた)




  • 夜明け前より瑠璃色な(キャベツ)


  • EX-ARM(ロイヤルリムジン社のタクシーに圧倒的に見劣りするクオリティの3DCGのメインキャラと、そちらに画風を合わせていないがCGより滑らかに動く2Dのモブを平然と並べて世界のSFに宣戦布告)

しかし、上記の「三大作画崩壊アニメ」に代表される、映像全体で作画が大きく崩壊している作品はともかく、
明らかにコマ送りをしてたった一瞬の不自然な部分(所謂中割)を

「作画崩壊w」

とか言ってる無礼な人間もいる(大抵の人が愛ゆえに行っている場合が多いが井上善勝監督の伝説の200話など)。
皆さんはもっと寛容な心を持って、純粋に作品を楽しんでいただきたい。

なお、2002年に朝霧の巫女東京ミュウミュウサイボーグ009で作画崩壊の同時多発テロが起こったのだが、
その隣で星のカービィが放送したのがあの「星のデデデ」である。

また、デュエル・マスターズVSRF第20話では作画崩壊をネタにした回がある。
詳しくは当該項目参照。




追記・修正はミスヤシガニを受賞してからお願いします。

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