シーシーレモン(遊び)

登録日:2012/03/05(月) 06:56:18
更新日:2025/04/08 Tue 18:07:51
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シーシーレモンとは、子供、時には大人が興じる手遊びの一つ。
が、呼び名は地方・世代によって様々。「戦争」、「寿司じゃんけん」、「ドンパッチ」、そもそも名前が無かったりもする(後述)。
しかし、やり方を説明すれば何人かは覚えてる程度には有名である。

なんとなくドラゴンボールっぽいのでその辺の漫画から影響を受けているのだろう。


■遊び方
基本は二人組のタイマン戦で行う。事前にライフ数を決めておく。

①プレイヤーは互いに向き合いながら同時に手拍子を二回打つ。

②その後、まずは「溜め」によってエネルギーを1つ溜める。

③再び手拍子二回

④ここからは、手拍子二回をする度に「アクション」を起こす。
そのアクションごとの効果で勝敗を決める。決めておいたライフが先に無くなった方が負け。

以下、一例。なお呼び名と同じく地方によって必要な「溜め」の数や技名等が違う。
また、この項目で言う「エネルギー」は説明のためのものであり、そもそも「溜め」としか呼ばないコミュニティも多いことを併記しておく。


  • 溜め
丸めた両方の手を胸の前で指同士をひっかけ合うように上下に重ね合わせ、エネルギーを1点チャージする。
最初はこれをしないと何もできない。地域によっては手間を省くため「ゲーム開始時点で既に1回溜めた状態」ということもある。

広げた両手を相手に向けて攻撃する。必要なエネルギーは1点だけの基本技。
「溜め」状態の相手には攻撃が通るが、攻撃同士でかち合ったら両者ノーダメージ。また「ガード」には防がれてしまう。
必要なエネルギーは1点の地域と2点の地域がある。
呼び名は地方によって「波動拳」など。また、この動作がピストルを撃つものというパターンもある(後述)。

  • ガード
両手を胸の前でクロスし、相手の攻撃をガードする。だいたい溜めなしで繰り出せる。
ただし、霊丸は防御できない。呼称としては「バリア」なども。
エネルギーを1点使わなければ使えないとするコミュニティもある。

  • 霊丸
左手を受け皿にし、右手で銃の形を作る。エネルギー3点で発動できる。
ガードを貫通できる攻撃であり、かめはめ波とかちあった場合はこちらが勝利する。霊丸同士がかち合った場合は両者ノーダメージ。
どちらかというと地方ルールで、存在する地方によってはスペシウム光線だったりする。

  • 跳ね返し/反射
手の甲側で指先を合わせて弾くような形を作り、相手の技を跳ね返す。
ガードと同じく強力な技には通じない。呼称としては「ミラー」なども。
上述の4つの役はどんなコミュニティでもエネルギー消費数や動作が異なるだけだが、この役の存在からかなり大きなローカルルール差が生じてくる。
エネルギーを消費することで使うもの、「ゲーム中1回しか使えない」とするもの、そもそもこんな役がなかったというコミュニティもあるだろう。

  • 封印
資料が少ないので共通の動作は不明
相手のアクションを封印する。
一度のみだったり、アンチ系の「封印解除」があったりもする。

コメント欄なんかを見てみれば他にも役がいくつかある。これらのパターンに該当しない役があれば追記をお願いします。


単純ながら、手拍子二回という短い間で「攻撃をしなければ勝てないがやみくもに攻撃しても防がれる」という絶妙なルールバランスが生み出す駆け引きを楽しむものであり、
なんだかんだで奥が深いといえる頭脳戦的な遊戯。学校にはおもちゃを持っていってはいけない・スマホのゲームなんて遊んでいたら教師に怒られるが、これなら両手があればとりあえず遊べる上に勝ち負けの要素がある。
そのため「叩いて被ってじゃんけんぽん」「あっちむいてホイ」「グリンピース」「握手してじゃんけんしてあいこだったら叩いて先に根負けした方が負けのやつ」「指で5を作って消していくゲーム」「『いっせーの』で親指を上げるゲーム」「たけのこニョッキ」といった手遊びとともに、学校では定番の遊びといった感じ。
ただしこの遊びは中学生くらいになると次第にやらなくなっていき、高校になるともうやっている人の方が稀になっていくという意味では「小学生の遊び」の範疇に入る。


このゲームは単純ながらうまくできており、小学生も遊ぶために頭を使うということがよく分かる。
元々「溜める」「ガード(消費0)」「攻撃(消費1)」の3つだけで成り立つゲームなのだが、必勝法を探るにつれて「相手が一度溜めたら、攻撃してくるまでずっとガードをしていればいい」ということが分かってくる。
このガード有利の環境を是正するために「溜め回数が一定回以上でガードや攻撃を貫通する強攻撃を出せるようにする」「ガードにもエネルギーを必要にする」というルールが追加される。
そうすればガードを続けているだけでは相手に強攻撃を出される、あるいはガードを連続で繰り出せないためじり貧になる可能性が高まるため、相手が強攻撃を出す前にさっさと隙をついて倒してしまいたい、と攻勢が有利になっていくのである。
しかしそうなると今度は「エネルギーを出し尽くした側が逆転できる手段がない」ということが問題になり、たとえば「ライフルールの追加による逆転要素の追加」「溜め回数の全体的な増加」「攻撃を反射する役の追加」で対応していく……というわけ
そしてその流れで様々な役が追加されるようになっていき、だいたいルールがこんがらがっていってエネルギー管理や役の強弱の把握ができなくなり、みんな飽きて別の手遊びに移っていくまでが大まかな流れである。
古いカードゲームなんかを経験している人には既視感があるかもしれない。遊びというのは割と同じ道をたどっていくものであり、こういう視点から長寿ゲームを見てみると見えるものが変わってきて面白い。

非常にローカルルール化が激しいものであり、小学校の頃に転校や進学塾通いを経験した……つまり文化の違うコミュニティを渡ることを経験した人ならこのローカルルールの深さは肌に染みていることだろう。
たとえば「反射という役が存在しなかった」「霊丸のさらに上の役が作られていく」みたいな感じ。そもそもこの遊びを知らないというコミュニティもあったかもしれない。

また、進めるにつれて互いの溜め数や後出し等でもめることもあるかもしれない。
そんなときでも喧嘩はNo。仲良く解決しよう。小学生は遊びに行ける範囲が狭い=友達を選べないこともあり、実は大人よりもこの辺を柔軟に解決する能力に長けている。


■名称について
この遊びの名前というのは、実は多くの日本人にとって長年大きな悩みの種だった
というのもそもそも名前をつけていない地域の方が圧倒的に多いから
名前がついていないコミュニティだとどう呼ぶんだよという話だが、タグについている「暇だなぁ←コレやろうぜ!」という流れでなんとなく始まっていくものであり、
同じ手遊びである「指で5を作って消していくゲーム」や「『いっせーの』で親指を上げるゲーム」と同じく正式名称が存在しない。
2010年代初頭までは「手を2回たたいて溜めたり撃ったりするゲーム」の方が通りがよかったくらいであり、名前を付けて呼ぶと逆に「お前のローカルネタを押し付けるな」なんて怒られたくらいである。

しかし名前がないものの項目なんて作るわけにはいかないため、たとえばこの記事の初版製作者は暫定的にこの「シーシーレモン」という名称で呼ぶことで項目を作った。
そもそもアニヲタwikiは一度項目が作られると、名称を変更するのが結構ホネなサイト*1ということもあってこの名前が既成事実的に定着することを手伝ってしまったようである。
実際「正式名称はシーシーレモンである」という論拠としてこのページを挙げる人間も珍しくないくらいである*2タグに正式名称不明って書いてあるじゃねぇか

ここで言いたいのは、このゲームができてから「シーシーレモン」という名前がつくまでの間に非常に大きな開きがあるということ。
つまりこの遊びの名前を調べる→本項目をはじめとしてこの遊びを「シーシーレモンゲーム」と紹介するページにたどり着く→wikiが言ってるんだから正式名称だ、と納得して広めていく、ということが横行し、
結果としてこの名称が「正式名称」として定着しつつある……というのが現在までのこのゲームの名前をめぐる大まかな流れなのである。
Wikipediaでも「手を2回叩いた後攻撃などのアクションをする遊び」として紹介されており、CCレモンゲームを名称のひとつという位置づけに留めている( 参考リンク )のだが、多分この中でもシーシーレモンが一番通りがいいのではないだろうか。

そもそも「なんでシーシーレモンなんだ?レモン要素どこだ?」と思っている人もいることだろう。
コミュニティによってはこのゲームの基本となる「パン、パン、(行動)」の流れに合わせて「シー、シー、レモン」と歌うというルールがあり、この溜め動作の手で丸っこい形を作るものを「レモンを作る(ためる)」と見做しているそうである。
そういうコミュニティの子や出身者に話を聞いてみると、「レモンをためるからシーシーレモンゲームだ」と説明する。
しかし実はこのゲームは「溜める位置」「攻撃の方法」も多彩であり、これが大雑把に「ドラゴンボールのかめはめ波を模したもの」「ピストルを撃つ行動を模したもの」で分類できる(「レモンを作る動作」はかめはめ波系)ため、ピストル系の場合はそもそもレモンってなんだよという話になってしまう
そしてこの「シー、シー、レモン」と歌うという動作を真似してみると、なんとなくピンと来る人もいるかもしれない。
1994年に発売された清涼飲料水「CCレモン(サントリー飲料)」のCMソング、水前寺清子の歌っていた「シーシーレモンっ あシーシーレモンっ!」という妙に耳に残るあのリズムとまったく同じなのだ。
そして攻撃にかめはめ波の動作が取り入れられていることや、ここで取り上げられている「霊丸」という名前が示す通り、80~90年代の少年の間で爆発的な人気を誇った「ドラゴンボール」や「幽遊白書」からそれらの行動の着想を得ていることは想像に難くない*3
他にも小学生向けの雑誌や通信教育なんかだと名前を付けて紹介せざるをえないため、それっぽい名前を付けて紹介することがあるようだ。こういったこともありとにかくこの遊び、深く調べようとすると途端に深みに引きずり込まれる。
80年代前半に生まれた人から上には急速にこの遊びを知る人が少なくなるという調査結果もあり、おそらく現在20~30代のアニヲタ諸兄の場合はご両親が知らない人の方が多いことだろう。

つまり我々が何気なくやっているこの遊び、調べてみるとそりゃもう相当な深淵であり、大学のゼミや卒論で研究題材にして地獄を見るという大学生も決して少なくない
なにせまともな資料が一切ない*4のである。
インターネットで尋ねるのと顔を突き合わせて尋ねるのではまったく答えが違ってくるので、小学校の頃に違うコミュニティで過ごしていた人が近くにいるなら聞いてみるといい。
高校や大学の友人、即売会やオフ会で会った人、バイト先や就職の同僚、恋人や伴侶、その友人知人、ご子息の通っている施設の先生……きっと面白い答えが返ってくるはずだ。

ただし昨今の子供たちの間では「シーシーレモンゲーム」の通りが良いという話もあるため、その経緯はともかくとしてぶっちゃけもう正式名称として取り扱ってしまってもいいだろう。とか言ってたらサントリー公式が採用したが

このゲームの解明はそれこそ図書館のレファレンスルームや古本屋などで本腰を入れて探す必要が出てくるし、それでもおそらく手ごたえはないだろう*5
そもそも別にそれをしたところで最近の小学生にはスマホという文明の利器が暇つぶしを手伝ってくれるのだから詮無きこと。
探偵!ナイトスクープ」や「水曜日のダウンタウン」あたりに調べてもらうのが一番の落としどころかもしれない。


追記・修正は、溜め六回で発動し、ライフ数を二個減らせることが可能な「ダイナマイト」(ご当地ルールのひとつ)を発動させてからお願いします。

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最終更新:2025年04月08日 18:07

*1 そもそもこのゲームには正式名称が存在しておらず、こんなゲームに真面目に向き合う人なんて暇な人間くらいしか存在しない。

*2 もちろんYoutubeの動画や個人ブログ・個人サイトなんかを挙げるパターンも多いが、後者は現在の検索エンジンのSEOに適応できていないため出てくることが少なくなっている。

*3 似たようなものに「傘を使った遊び」という定番ネタがある。今の世代だと「鬼滅の刃」あたりになるのだろうが、「るろうに剣心」や「ダイの大冒険」だった時代もあった。子供というのは割とテレビから影響を受けるものなのだ。

*4 資料を自称するものが大体インターネット時代以降のものをソースにしているため、それ以前の世代のことを調べられない。ゼロ年代の大学生ならまだ「別の大学に通っている人やその親兄弟」という形で聞き込みが行えたが、現在同じことをしてもネットで調べたことを自分の知識のように言う人が多いためどうしても難しくなる。……決してこのwikiを敵視してあげつらっているのではなく、まともなゼミや講義だと大学生が教授から真っ先に正される行動であり、wikipediaなどでも「出典無効」などを出されるまともなパターンはこれである。

*5 ネット時代の都市伝説として有名な夏目漱石の「月がきれいですね」や、あるアナウンサーが言ったとされる「十万人の宮崎勤」などは調べても「これだ!」という答えが出てこない。現在ではどちらも熱心な調査者の手で情報がまとめられ、「どうやら作家が自分の論に説得力を持たせるために話を盛ったもの」とされている(cf.「アインシュタインの予言」「ゼークトの組織論」)が、それですら明確に確かだとは言えないのだ。