PDW(個人防衛火器)

登録日:2011/04/09 Sat 10:38:50
更新日:2025/07/07 Mon 21:09:02
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概要

PDW(Personal Defense Weapon/個人防衛火器)とは1986年に、アメリカで発行されたD/296文書が定義した新機軸銃のこと。



歴史

1986年当時、ボディアーマーの普及と高性能化により、拳銃弾を使用する拳銃短機関銃が対人制圧に十分な能力を発揮できない場合が出てきた。
軍の後方部隊ではニーズに合致した護身用火器が存在しなかった。拳銃は威力不足。かといって突撃銃は強力すぎるし大きくかさばる。
そこで以下の条件に合致した新機軸銃の要望を出した。

  • レベルⅢA*1のボディアーマーを貫通する弾薬
 小銃弾(5.56mmNATO弾)に匹敵する必要があり、かなり高い条件となる。

  • 短機関銃並のコンパクトさ/突撃銃用中間弾薬より小型の高速小口径弾
 後方部隊に持たせる銃なので、銃も銃弾も小さくして装備全体をコンパクトにしたい思惑があった。

この要望案に手を挙げたのがベルギーのFN社とフランスのGIAT社*2
FN社は翌1987年に上の条件を全て満たしたP90を開発した。
当初は米軍含め大々的には採用せず、民間市場でも弾も銃も専用品であるためかなりの高嶺の花となってしまっていた。
湾岸戦争の後方部隊などで細々と使用される程度であったP90。
しかし、在ペルー日本国大使公邸占拠事件にてP90を持つ突入部隊の映像が全世界に放映され、P90やPDWというジャンルが注目を浴びることとなる。
自衛火器のみならずCQBなどにも適応できる点が評価され、2021年にはNATO標準規格としてPDW用弾薬が追加されるなど徐々に株を上げている。



現在

PDWに分類される銃は幾つも開発されており、一つのカテゴリとして認知されている。
ただし弾の格の都合確実に主力小銃にはなりえず、再訓練も必要となるため軍でも大々的には使用されてはいない。
それでもドイツ軍分隊支援火器射手のサブウェポンや英国警察などで採用され、従来の銃器の穴を埋める存在として活躍している。
先の活躍から、テロ対策や後方撹乱*3などを目的とした特殊部隊ではコンパクトさから採用する場合がある。
また、PMC(Private Military and Security Companies/PMSCs/民間軍事会社)ではメーカーのテストケースで装備される場合も。
PMCはあまり直接戦闘を行ってはならないケースが多く、その場合後方の人員補填として投入される。後方というPDWの想定した戦場とマッチすることも採用の要因の一つであろう。



主なPDW

専用弾を用いて専用の銃から撃つタイプ

  • FN P90
  • H&K MP7
  • GIAT ADR(フランス)
  • CBJ-MS(スウェーデン)
  • MSMC(インド)
  • ST CPW(シンガポール)

突撃銃から派生したタイプ

  • KAC PDW
  • AAC ハニーバジャー

強めの拳銃弾を用意してそちらに対応するタイプ

  • PP-2000

既存の銃を縮めただけのタイプ

  • H&K MP5K PDW
  • B&T MP9
  • マグプル PDR
  • GG-95PDW(ヤティマティックの派生)
  • FMG-9



余談

PDWという用語は広義なもので、必ずしもP90の専用弾を使うものを指す訳ではない。
軍、警察やSPが装備する護身用火器全般(短機関銃や拳銃なども含む)を指してこう呼ぶ場合もある。

巷では「PDW=ポケモンブラックホワイトの機能の1つ・ポケモンドリームワールド(Pokemon Dream World)」らしいので、
「P90ってPDWだろ?」なんて言うと話が噛み合わないよ事件が起こるので、相手を見極めて発言しよう。



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最終更新:2025年07月07日 21:09

*1 NIJ国際規格で決まっている防弾性能のランクで、ⅢAは9mmパラベラム弾どころか.44マグナム弾が貫通しない程度

*2 GIAT ADR。弾薬のテスト中にP90が選択されたため開発中止

*3 敵の後方に対して攻撃を行う。コマンド部隊。