44マグナム弾

登録日:2018/10/11 Thu 22:30:35
更新日:2025/06/30 Mon 20:00:39
所要時間:約 5 分で読めます





Uh uh. I know what you’re thinking. “Did he fire six shots or only five?”(おっと、考えはわかってるよ。俺がもう6発撃ったか、まだ5発か。)

Well, to tell you the truth in all this excitement I kinda lost track myself.(実を言うと、こちらもつい夢中になって忘れちまったんだ。)

But being this is a .44 Magnum, the most powerful handgun in the world and would blow your head clean off,(でもコイツはマグナム44っていって、世界一強力な拳銃なんだ。お前さんのドタマなんて一発で吹っ飛ぶぜ。)

you’ve gotta ask yourself one question: ”Do I feel lucky?”(楽にあの世まで行けるんだ。運が良ければな。)

Well, do ya, punk?(さあ、どうする。)

ハリー・キャラハン 映画『ダーティハリー』より



性能

弾丸直径:10.9mm
弾丸全長:41mm
薬莢全長:32.6mm
弾頭重量:13g(200gr)
銃口初速:391m/s
マズルエネルギー:1030J



概要

.44マグナム弾(フォーティーフォー)とは、1955年にS&W社がリボルバーM29と共に発売した拳銃用弾薬である。
エルマー・キースなる銃器愛好家がより強力な弾を求めて.44スペシャル弾をもとに試作。S&W社とレミントン社に働きかけたのがきっかけ。

発表直後からM29の成功や狩猟用のレバーアクションライフルに転用されたりと人気が出始める。そして1971年に映画『ダーティハリー』の公開によってその人気は爆発的なものとなる。
この映画の主人公が使用していたのが.44マグナムのリボルバー拳銃であり、作中でも最強の拳銃弾として大活躍していたため、.44マグナムは世界最強の拳銃弾として認知されるようになった。

とはいえその威力に関してはかなり誇張されている側面もあり、ダーティハリー以降の作品では以下のような場面が見受けられる。
  • 車のエンジンをぶち抜く*1
  • トラックの突撃も止めてしまう
  • 力の弱い女子供が使うと反動で肩を激しく痛める
  • 命中した人間をドロップキックを喰らったプロレスラーの如くぶっ飛ばす
*2
*3
*4

現実は怒涛の補足の通りである。
一応マズルエネルギーはAK-74の5.45x39mm弾に届くか届かないかだが、5.45x39mm弾はアサルトライフル用の弾としても弱いほう。
むしろそうした滑稽さが.44マグナム弾を人気たらしめているのである…かもしれない。

近年では.454カスール弾や.500S&Wマグナム弾、.50AE弾といったより強力な拳銃弾が登場したことで拳銃弾最強の座からは転落したものの、実用的な範囲では最強クラスの拳銃弾である。

実用的といっても、この弾を使う意義は対人ではない。狩猟や森林での居住において携行し、熊などから身を守るために用いるのだ。
S&W M500よりも小さく一般的なホルスターに収められるサイズ感で携行できるというのは、選択肢としては十分以上なメリットである。



余談

  • 上記の仕様のとおり、本銃弾の直径はは0.44インチ≒約11.2mmではなく10.9mm(.429口径)。
 これは.44マグナムのもとのもと、.44ロシアン弾の頃の計測方法が現在のように薬莢の内側ではなく外側で行われていたことに起因する。
 .44スペシャル弾が製造される際に命名の更新が市場に与える影響が大きいと判断され.44口径の名前を維持。そして現在に至る。
 仮に本当の意味での.44口径マグナム弾が存在していた場合、.454カスール弾に匹敵すると思われる。



.44マグナム弾を使用する主な銃

 当初は.44AMP(Auto Mag Pistol)を発射する、マグナム弾対応の自動拳銃を謳っていた。しかし動作不良などの欠陥(通称オートジャム)で評価されず設計者は無念のまま逝去。
 しかし2015年にAutomag LTD. Corp.によって新生オートマグとして生まれ変わった。そしてその際に.44マグナム弾にも対応した。
  • マーリン M1984
 レバーアクションライフルM336の.44マグナム弾仕様。
 M336系列はウィンチェスター社製と違い右側面に排莢されるため、普通のライフルスコープを装着できるのが利点。



フィクションでの登場作品

映画

本弾薬を一躍人気にした作品。主人公・ハリー・キャラハン刑事の愛銃・S&W M29と共に登場。4のみ終盤で44オートマグに交代する。冒頭の台詞は『1』の劇中で2回聞くことができる。

主人公・トラヴィス・ビックルがS&W M29を密売人から購入し、弾丸をダムダム弾*5に改造する。

  • エクスタミネーター
主人公・ジョン・イーストランドが使用する。こちらではより殺傷能力を高めるべく、弾丸を水銀弾に改造している。

アニメ

海坊主こと伊集院隼人が.44マグナム弾を使用する銃を所持。
戦車相手にぶっ放すシーンもあったが流石に効かない…と思いきや、2発目でキャタピラのボルトを破壊して撃退に成功している。

  • ルパン三世
アニメ第2シリーズ66話、「射殺命令!!」にて敵キャラ、インターポール警部兼殺し屋のビューティーが.44口径コルトパイソンと共に使用する。
ビューティーは条約で警察の使用が禁じられているダムダム弾*6ルパンを射殺寸前にまで追い込み、次元さえも対決を避けるなどかなりの強敵として苦しめた。
本作でのビューティーの.44マグナムの威力はかなり大袈裟で、自動車のエンジンはおろか車体や岩をも粉々に破壊するなど誇張され過ぎなシーンばかりである。サイコガンじゃあるまいし。
なお、現実では.44口径のコルトパイソンは試作品だけで終わったそうで製品化はされていない。

ドラマ

主人公・加納錠治は.44マグナム使用のスタームルガー・ニュースーパーブラックホークをぶっ放す。
日本で。もちろん人間に。容疑者段階でも撃ち殺しまくる。

何人かのレギュラー刑事*7が.44マグナム対応のS&W M29を所持・発砲しているが、対応弾までそうかどうかは回によってバラツキが見られる。
一方で敵サイドで強烈なインパクトを残したのがPART-Ⅰの102話『兇銃44オート・マグ』に登場した笹井興業お抱えのヒットマンの笠松。サブタイトル通りに44オートマグをガンガンぶっ放し、終盤ではコルトローマンを持つ大門との一騎討ちにて散った。

主人公・スレッジ・ハマーはマギーと名付けたステンレス製のM29派生のM629を愛銃とする。

漫画

中川圭一がS&W M629で使用。

主人公・黒岩鉄夫が使用。

ゲーム

西部編の主人公、サンダウン・キッドが手に入れる最強武器として登場。
この武器の攻撃力は「29」と設定されており、使用しているのはS&W M29ではないかと言われている。

サガ1では最強の単体拳銃武器として登場する。
サガ2DSの説明では「一撃でほうむることができるずばぬけた威力の銃」とのこと。
ただし銃火器はグループ攻撃を重視するものであり、わざわざ単体攻撃のコレを使うプレイヤーは少ない。
塔で拾うならまだしも、買える時には上位版で防御力無視のビームライフルがあるので、まず使われず金策として売られる。
サガ3では空気。

シリーズ通して登場する代表的な拳銃。なのだが、毎回「拾うならまあ使ってもいいけど、買う程の武器じゃなく、拾った次の町で上位互換武器が安く買える」という不遇な扱いをされる。
しかも登場するのも大体序盤、良くて中盤。世界最強の拳銃(笑)と失笑を買っている。

度々、最強クラスの拳銃の弾として登場する。
耐久性が人と大差ないゾンビは確実に頭部を粉砕。ウイルスで変異した大型クリーチャーも数発で撃破できる程の威力。
特にバリーの.44マグナムはタイラントさえも一撃で倒すほどの超威力を発揮する。

マングースという名のリボルバー拳銃が.44マグナム弾を使用する他、.44マエダSPという毒薬弾も登場する。

  • TheHunter:Call of the Wild
環境保護区の管理官である主人公が狩猟に用いる。(本作は人間NPCは通信のみの登場、マルチプレイ時の仲間には発砲行為がキャンセルされる純粋な狩猟ゲーム)
使用銃はレッドホークとマーリンM1894。
(ライセンス料の関係で実名は使われていない)
銃弾は共用可能で、想定される狩猟対象は同一。中型のノロジカから大型のクマやヘラジカまで幅広く対応する。
M1894を使うとライフルのスコアが上昇する他、対応スコープや有効射程による差別化が図られている。

  • レインボーシックスシージ
過去作から再登場した攻撃オペレーター、DEIMOSが専用セカンダリとして.44 VENDETTA(M29のカスタム品?)を装備。拳銃の中では一番破壊可能壁等の破壊力が高く、本人の能力(回数等の制限付きで敵一人の位置をリアルタイムで察知する)と相まって壁越しや床越しでの攻撃に使用される(突き上げ付き下げとして本ゲームでは一般的な戦術であるが)。



追記・修正は「44マグナム」という拳銃は存在しない事を理解してからお願いします。


この項目が面白かったなら……\BANG!/

最終更新:2025年06月30日 20:00

*1 ダーティハリーでは誤解されているが、このときのターゲットは運転手

*2 車のエンジンブロックは何重にも重なった金属の塊でありライフル弾でも貫通は難しい。一応ドアなどエンジン以外の箇所は非防弾構造なら通常の拳銃でも貫通可能。

*3 トラックを止める程の制動力はない。『バイオハザード4』ではこの辺の誤解との折衷案か、突っ込んでくるトラックと戦う戦闘で「攻撃し続けたことでボンネットから火が出て運転手の視界が塞がれ横転する」という仕様になっている。そのため横転ポイントまではいくら攻撃したとしても止められない。

*4 被弾者を吹き飛ばすには銃弾程度の威力では足りない。おおむね驚いて逃げようとする動作と撃たれて倒れる動作が重なっただけといえる。

*5 正式名称は拡張弾頭で、命中すると弾の直径が大きくなる様に変形し、人体内に運動エネルギーをフルに伝え傷を拡大するように作られた銃弾。カルカッタ(現コルカタ)近郊の工業都市・ダムダムの兵器工場で作らせたことに由来する。尚、後にダムダム弾の一種として貫通力の低いホローポイント弾が開発され、狙撃での二次被害(貫通による人質の殺傷)を避ける目的でSWAT等が使用するようになっている。

*6 作中で次元が「1929年のベルサイユ条約で禁止された」と説明しているがこれは誤りで、実際は1907年のハーグ会議において使用が禁止された。そもそもベルサイユ条約は第一次大戦の講和条約である。

*7 PART-Ⅰの松田刑事、PART-Ⅱの沖田刑事、PART-Ⅲの山県刑事。このうち沖田刑事は末期にコルト パイソンに持ち替えている。