H&K MP7

登録日:2011/03/08(火) 16:45:17
更新日:2025/08/22 Fri 21:05:43
所要時間:約 5 分で読めます




性能

全長:380mm(伸長時850mm)
重量:1.6kg
口径:4.6x30mm
装弾数:15/20/40+1
連射速度:950RPM
動作方式:ショートストロークガスピストン ターンロックボルト



概要

H&K MP7とはドイツのHH&K社が1999年に発表したPDW(個人防衛火器)である。
発表当時は「PDW」の名だったが、2001年にドイツ軍その他に試験採用されるにあたってMP7(Maschinenpistole7/7号機関拳銃)の名が冠された。
現在はトライアルを経て改良されたMP7A1、A2が現行の生産型となっている。
弾は完全新規設計だが、それ以外は手堅い設計。
機関部はG36に近く、チャージングハンドルはM16、それ以外の操作系はUSP。外見上の構成はUZI(MP2)など従来の短機関銃に近い。
P90と並び、専用弾系統のPDWとして独特な地位を築いている。



前史

ボディアーマーに対抗出来るPDWに関する要求が発表された際、FN社以外にもGIAT社やH&K社も動いていた。
その際にH&K社が出したのがMP5K-PDW。大まかに言えばMP5の短縮版にしっかりした折り畳みストックを付けたものである。
しかし従来の拳銃弾では要求を達成することが出来ず、危機感を持ったことが開発の切っ掛けである。

MP5K-PDW

銃弾そのものには特段変更のない9mmパラベラム弾を使用するため敗れたもののコンセプトは悪くないものであった。
PDWとして並び立つことはなかったものの、SWATや要人警護向けでの売上が堅調であったとされる*1
後にはUMPの開発や、同じく9mmパラベラム弾を使用するPDW*2が開発されていることからも言えるだろう。


特徴

専用弾

弾丸は90年代に頓挫したG11の4.7x33mm弾の弾頭データを元に開発した4.6x30mm弾。
小口径のスチールコアFMJ弾*3を720m/sの速度で飛ばすことを想定しており、マズルエネルギー自体は530J程度と9mmパラベラム弾と遜色ないものの貫通力に秀でる。
CRISAT研究に準じたターゲット*4を200mから貫通可能である。
無論ここまで小さい弾だと対人ダメージ(マンストッピングパワー)も落ちるので、対ソフトスキンなフランジブル弾*5なども用意されている。
口径を狭めたことで弾薬がかさばらず、拳銃と同サイズの短いマガジンでも20発を収めることができる。

デザイン、機構

UZIに似たシルエットとなっており、実際ドイツではMP2からMP7への転換を進めていることから意図したものと思われる。
UZIらオープンボルトシンプルブローバック式ではどうしてもボルトの重さなどで軽くはできないのだが、MP7は突撃銃同様の閉鎖機構を備えたことでより軽く抑えることができた。
ポリマーフレームと合わせて重量1.8kg(P90はマガジン抜きで2.8kg)。ほぼ完全に収納できるストックと合わせて大型拳銃程度のコンパクトさを誇る(実際にホルスターも存在する)。
操作系もアンビで利き手やスイッチングに対応しているが、排莢口がスイッチ出来るかは不明。

A1では上左右の3面が、A2では下面もレールとなっており拡張性は高め。A1以前では折り畳み式フォアグリップが装着されている。
折り畳み式のアイアンサイトはフルフラットな上面レールに取り付けられており、立てればKAC系バックアップサイトに近い感覚で狙え畳めば拳銃のオープンサイトのように扱える。
マガジンも従来と同じ装弾方式なので相談抜弾や拡張マガジンへの交換が行いやすく、40連マガジンを装着しCQB向けの攻撃的な銃にもすることができる。
マズルには専用サプレッサーと亜音速弾も用意されており、MP5SDなどにも静粛性で引けを取らない。

このようにコンパクトかつ拡張性に富んだ設計のおかげで適応可能な範囲が広く、強力な大型拳銃として警備や後方部隊に車両搭乗員が使用したり、小型短機関銃として対テロ作戦やCQBで活用されたりしている。



配備

2000年に「後に発展改良すること」を前提に仮制式兵器として選定され、MP7の制式名称を与えられる。2004年には改良型「MP7A1」がリリース。
弾切れを遅くするためにボルトストロークを延ばして連射速度を落とし、前方側面にアクセサリーパーツを付けられるようにしている。
P90におけるFive-seveNのように銃弾が共用の拳銃P46(UCP/Ultimate Combat Pistol)も開発されていたがMP7自体が大型拳銃として扱えるためあまり実用面での恩恵がなく開発中止となっている。
Five-seveNも弾数以外は少しパッとしないのでその判断自体は間違いではないと思われる(FN社がFNX以前まであまり拳銃を作っていないこともあるが…)。

P90の5.7x28mmSS190弾とはしばしば比較されるが、こちらは貫通で、あちらは生産性*6で優れるとされる。
SS190弾のほうが優れるとされた時期もあったものの微々たる差であったことやドイツ軍からの反発もあり、現在では両方ともNATO制式弾とされている。
  • ドイツ(国防軍、GSG-9)
  • イギリス警察(セミオート、20連マガジン)
  • イタリア特殊部隊
  • 韓国海洋警察特別攻撃隊SSAT
  • ノルウェー陸軍
  • リトアニア軍
  • アメリカ海兵隊
  • アメリカ海軍SEALs(DEVGRUがビンラディン排除を目的としたネプチューンスピア作戦にて使用)
  • バチカン市国のスイス衛兵
etc...
対テロ特殊部隊や補助武装のほかにも、要所の衛兵や警察での配備がみられる。

日本でも陸上自衛隊が4.6mm短機関銃Bとして本銃と思われる装備を少数調達しており、特殊作戦群にて運用されていると思われる。

民間市場ではMP7そのものは販売されておらず、似た形状のものがピストルかSBRとして販売されているのみである。警察や軍向けで十分売れていることと、5.7x28mm弾と違いまだパテントが切れていないらしいのが大きいか。



フィクション

映像作品

  • ステルス
 カーラ大尉が脱出後に使用
 かなり普及している様子

書籍

 チセリが使用
 第4話の福山邸武装メイドが使用
  • あそびにいくヨ!
  • 終末のマリステラ
 コルノ准尉が使用

ゲーム

  • CoD:MW3
  • メタルギアソリッド4
  • レインボーシックス・ベガス
  • The Division
 シリーズ全作品で登場
  • Escape from Tarkov
 MP7A1、A2が実装。あくまで5.56x45mm弾には叶わない5.7x28mm弾と異なり、FMJ SXはM856A1に勝りAP SXはM995にも劣らない。それでいて低反動、安価等々かなり強力。運営と寝た武器とネタにされる*7

遊戯銃

縁日の出店などで見られる中国産安物エアガンにG36の名称でMP7が売られているのがある。

まともなエアガンでは、東京マルイ(電動ガン・ガスブロ)とKSC(ガスブロ)で販売されています。
マルイの電動MP7は射程と電気容量が他の電気ガンに劣る。ガスブロはどっちの会社もなかなか良く出来ている。
ディティールが若干異なる他に14mmのねじが切られてたり、ホップアップの調整が楽なのでマルイのほうが使いやすいっちゃー使いやすいかも。
コンパクトさ故にスナイパーのお供としてよく腰にぶら下がっている。
ただし、両社製品ともに実銃取材時のミスのため、本物より少し小さい。
「リアルサイズじゃなきゃ嫌だ!」という人はVFCのガスブロを選ぼう。台湾メーカーの製品のため、上記二社より予備マガジンの入手性に難があるが…。




追記・修正よろしくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年08月22日 21:05

*1 そもそもPDW自体かなり広義な意味もある言葉である

*2 強装弾や徹甲弾(PP2000やPP19-01など)、近い規格の専用弾(CBJ-MSなど)を使用するようにはなっている

*3 FMJ SXやAP SX。軍での呼称はDM11、DM31、DM41。

*4 1.6mmのチタンプレートを20層のケブラーで補強したもの。旧NIJ規格でIIIA程度。

*5 Action SX

*6 概ね5.56x45mm弾の設備の改修で生産可能

*7 実際性能は実装されている通りなのでゲームシステムと噛み合った結果ではあるのだが、それでも強さに対して安すぎる