魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st

登録日:2015/04/24 Fri 17:28:56
更新日:2024/12/05 Thu 16:14:42
所要時間:約 7 分で読めます






それは、出逢いの物語



魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』は2004年に放送されたTVアニメ、『魔法少女リリカルなのは』のリメイク作品。
2010年に全国の映画館で公開された。

制作:セブン・アークス
原作・脚本:都築真紀
監督:草川啓造

主題歌「PHANTOM MINDS」歌:水樹奈々

挿入歌「Don't be long」歌:水樹奈々

EDテーマ「My wish My love」歌:田村ゆかり

概要

リリカルなのはシリーズの第一作目(通称、無印)のリメイク作品。そのため物語の大筋は同じ。
深夜アニメの劇場版によくある再編集+新規カットの総集編ではない、映像・音声共に一新した完全新作アニメとなっている。
物語の基本的な構成こそ無印と変わらないものの、映像や演出の質は別物と言っても良いほどに上がっており、特に空中での戦闘シーンは迫力あるものに仕上っている。

序盤はいわゆる「魔法少女」であった無印とは違い、TVシリーズを経て増量された軍事的な魔法設定を逆輸入しており、
シリーズの傾向に合わせたリメイクと言える。
とはいえ無印の頃から、後に言われる「熱血バトル魔法アクションアニメ」の片鱗を見せているため、人によってはそれほど違和感は感じないだろう。

アニメの1クールを映画の尺に収める都合上、主人公高町なのはの日常風景の多くがカットされ、
逆に物語の主軸と言えるライバルフェイト・テスタロッサの家庭事情が掘り下げられた構成になっており、
フェイトの過去に大きく関わりながらも無印ではドラマCDのみの出番だったキャラクターも登場する。

この手の映画化に付きものである尺不足は見受けられるものの、逆に言えば無駄がないのでテンポ良く纏まっており、映像の進化も相まって良リメイクと言える。
1クール視聴する時間が惜しい人は無印より先にこっちから観てもいいかもしれない。
公開版とBD/DVD版の演出はかなり異なっている。

2012年にはTVシリーズの第2期のリメイク作品『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』が放映された。



ストーリー(公式HPより)


それは、小さな事件と、出会いの物語。

平凡な小学三年生、高町なのはに訪れた小さな事件。

それは「魔法」との出逢いと異世界の遺産「ジュエルシード」を巡る戦いの運命。

愛機「魔導師の杖」レイジングハートとともに駆ける空に立ち塞がった、同い年の少女魔導師、フェイト・テスタロッサ。

哀しみを秘めたフェイトの瞳。避けられない戦いの中、なのははそれでも、自身の想いを伝えたいと願う。

哀しき運命と、勇気の誓い。

二つの想いが軌跡を描き、二人の少女は空を舞う。

――劇場版「魔法少女リリカルなのは」The MOVIE 1stはじまります。


登場人物

登場人物には特に変化はないが、防護服のデザインの変更、魔力のランク・運用スタイルなど細かい設定が追加されている。
他にも、上記の通り無印のドラマCDからリニスが登場。
それに伴ってドラマCDや小説版で補完されていたプレシアの過去もピックアップされている。
反面、日常シーンのカットによって高町家の面々はしゃべらないためキャストはない。

高町なのは
CV:田村ゆかり
ごくごく普通の小学3年生だったが、異世界からやって来たユーノと出会ったことで魔導師となり、異世界の遺産『ジュエルシード』を集めることになる。
幼いころの事情から「寂しさ」や「悲しみ」に人一倍敏感であり、
フェイトを気に掛けるのも、初めて出会った際に彼女が「悲しい目」をしていると感じたため。
魔法に関しての才能と適応力は天性のものがあり、初陣でいきなり魔力砲撃ディパインバスターを披露した。

フェイトとの初戦闘では敵わなかったものの、以後は彼女との差を縮めるために、
授業中にまでマルチタスクで訓練に励んだ上、さらに「対フェイトの戦術」を練り上げるという末恐ろしい9歳。
なのはが魔法の才能に恵まれているとはいえ、大きな実力差があるフェイトに空戦で対抗できたのは、
フェイトが魔力も体力も万全ではなかったことと、なのはの空戦機動が全て「対フェイト戦」のために積み上げられたものであったことが理由である。
漫画版では高い空間把握能力を持っていることが強調されており、これもなのは独自の強みとして活かされている。

彼女の代表的なBGMの一つである「星の輝き」も劇場版用にアレンジされているが、序盤が宇宙怪獣でも出てきそうな壮大かつ絶望感溢れる曲調となっている。

フェイト・テスタロッサ
CV:水樹奈々
母に命じられジュエルシードを集める異世界の少女。
なのはと違って既に魔導師であり、同じくジュエルシードを集めるなのはと衝突する。
最愛の母のために健気に尽くすも、まるで八つ当たりのような母の虐待を受け続けるという薄幸の少女そのもの。
それでもかつての優しい母に戻ってほしい一心でジュエルシードを集め続ける。
魔導師としてはなのはにも劣らない才能に加え、幼い頃から英才教育を受けているため非常に優秀。
圧倒的なスピードからの接近戦を中心に、雷を伴った射撃・砲撃も行う。

しかし使い魔であるアルフのサポートがあっても度重なるジュエルシードの収集作業には限界があり、中盤以降は心身共にかなり疲弊した状態だったと言える。
長谷川氏の漫画版では「万全の状態」でのスピードを披露し、あのクロノも目で追えない一撃を繰り出した。

ユーノ・スクライア
CV:水橋かおり
地球に散ってしまったジュエルシードを回収するために海鳴に訪れた異世界の少年。とある事情でフェレットの姿をしている。
なのはの魔法の先生となるが、映画の尺の都合上その役割はレイジングハートと分け合う形になった。
防御に結界など相変わらずの安心サポートをなのはに提供する。

アルフ
CV:桑谷夏子
フェイトの使い魔。赤毛の狼を素体として作られている。
今作でもその忠犬ぶりは変わらないが、どちらかと言えば人間形態での登場が多くなっている。
彼女がプレシアに反抗するシーンはどこかの汎用人型決戦兵器の様な迫力を醸し出している。

リンディ・ハラオウン
CV:久川綾
時空管理局の提督兼艦船アースラの艦長を務める女性。
息子は同じくアースラの執務官であるクロノ。
物腰柔らかな大人の女性だが、時に艦長として厳しい態度をとることもある。
今作では後衛タイプの魔導師(総合AA+)という設定が追加されている。
出身世界も明かされた……というか変更されたというべきか。そのせいでヴァイスが涙目に。

クロノ・ハラオウン
CV:高橋美佳子
時空管理局の執務官を務める少年。
魔導師として一流の実力を持ち、戦闘の際は黒衣の防護服を纏う。
物語がなのはとフェイトを中心にしている関係から、無印の終盤で見せたスーパークロノタイムは無くなってしまった。

エイミィ・リミエッタ
CV:松岡由貴
艦船アースラの通信主任。相変わらずの手際の良さで事件解決に貢献している。


プレシア・テスタロッサ
CV:五十嵐麗
フェイトの母親であり、この事件の元凶兼中心人物。
ある理由からフェイトに遺失物であるジュエルシードの収集を命じる。
娘のフェイトには冷たい態度をとり続けており、時には憎悪すら感じる虐待も行う。
以前は娘のことを第一に考える心優しい女性であり、数年前に起きたある出来事を切っ掛けに現在の様な冷徹な人物へと変わっていった。
今作では彼女にも設定が追加され、次元魔導師・条件付SSランクという魔導師として破格の技術を持つことが判明した。

リニス
CV:浅野真澄
数年前に存在したブレシアの使い魔。
フェイトとアルフの家庭教師を務めていた。バルディッシュの製作者でもある。
「フェイトの魔導師としての完成」という使い魔としての役目を終えた後、静かな消滅をむかえた。
教え子であるフェイトとアルフを愛し、娘にすら冷たい態度を取るプレシアは主人として大切に思いつつも、使い魔としては複雑な感情を抱いていた。


空戦

このシリーズは無印の放送時から魔法少女らしからぬ熱い戦闘シーンが特徴だが、
本作ではその中でも空中戦に力が入れられており、激しい魔法戦闘に拍車がかかっている。

基本的にはTVシリーズと同じく魔法で空を飛びながら戦闘を繰り広げるのだが、
今作での空戦は現実における戦闘機同士のドッグファイトを彷彿させるものになっており、
『いかに高速度で飛翔し続け、相手の攻撃アングル外から一方的に攻撃を行うか』を主眼に動いている。
そのことを踏まえて戦闘を見てみると面白いかもしれない。

もっとも戦っているのは戦闘機ではなく生身の人間であり、飛んでいるのも推力によるものではなく魔法。
空気抵抗を利用した急減速による背後取りというシーンもあるものの、実際の戦闘機の空中戦とはかなり違う。
あくまでそれっぽいという程度。


コミカライズ

長谷川光司、緋賀ゆかりによる漫画版がそれぞれ1つある。

魔法少女リリカルなのは MOVIE 1st THE COMICS 漫画:長谷川光司
無印の小説版の内容をベースにサイドストーリーを詰め合わせたような一品。
こちらのラストバトルも映画とはまた違うとても熱い展開になっている。
全2巻。

ORIGINAL CHRONICLE 魔法少女リリカルなのは The 1st 漫画:緋賀ゆかり
こちらは純粋なコミカライズに近いが、映画化するに当たってカットされた無印の日常シーンをある程度補完し、ドラマCDの内容も加えられている。
他、劇中では示唆される程度だったなのはの孤独な幼少時の心中や、プレシアの事故当時の場面が詳しく描かれている。
全7巻。


劇中劇

劇場版の宣伝漫画であるりりかる歳時記や一部のドラマCD、DVD/BDのオーディオコメンタリーでは、
この作品(次作の2ndも含めて)がテレビシリーズ内で制作された劇中劇であるとされている。
しかしリリカル歳時記自体が多分にメタ要素を含んだ内容を扱っていることや、ドラマCDもアニメ雑誌や映画の前売り券に付属した特典であることも考えると、
単に宣伝とキャラ同士の掛け合いを目的としたファンサービス的な設定とも考えられるため、劇中劇であることを公式設定と言うには少しあやしいところ。
ViVid以降の作品で劇場版の話題が本編で出たことはない。番外漫画やコメンタリーでは話してるけど。

後にテレビシリーズとは別に劇場版設定の平行世界が存在していることが明らかになっている。


余談

同日公開の映画『劇場版Fate/stay night Unlimited blade works』の、
公開初日の舞台挨拶にて、アーチャー役の声優、諏訪部順一さんが、

「上映する前にひとつ問おう。ここはリリカルなのはの劇場ではないぞ。間違っている人間はいないか。大丈夫か」

「ここはFateだ。Fate言うても奈々ちゃん出てくるわけじゃないからな。大丈夫?」

というフェイト繋がりのネタを披露した。



それは、追記・修正の物語


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最終更新:2024年12月05日 16:14