登録日:2017/04/05 (水) 01:57:58
更新日:2025/04/23 Wed 00:39:55
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アリアンロッド艦隊総司令
ラスタル・エリオンの名において命じる。
ダインスレイヴ隊!
禁忌を以って報復せよ!
ダインスレイヴとは、『
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場する架空の兵器。
エイハブ・リアクターによる電磁加速で、特殊弾体の運動エネルギー弾(KEP)を超高速で発射する上位機構の
電磁投射砲(レールガン)。
名前の由来は北欧神話に登場する呪われた魔剣「ダインスレイヴ」(余談を参照)。
形状のモデルは所謂ニードルガンやパイルガンないし
水中銃であるとみられる。
ある使用場面から米軍が開発中と噂の衛星兵器「神の杖」を連想する者も多い。
が、「神の杖」はそもそも不発に終わる確率が高く成功しても運動エネルギーの拡散が局所的であるため爆弾数発分の威力しか出ない。
◆概要〜禁忌の弩弓〜
ダインスレイヴは、専用の弾頭と対応した電磁砲をセットにした運用形態のこと。
特殊弾体は、モビルスーツ(MS)のフレームや武装の素材に使用される高硬度レアアロイを杭、もしくは矢の様な形状に加工したもので、大気圏突入や標的への着弾でもほとんど変形を見られない凄まじい強度を誇る。
一方電磁砲は、エイハブ・リアクター一機分以上の出力を全投入可能なとてつもない容量を持ち、通常砲弾でも峡谷を崩落させるほどの破壊力を発揮する。
そして弾も砲もMSと背比べができるほど長い。
あまりにも長いため砲身に弾体が収まりきらず、砲口の前だけでなく後ろからも弾体が飛び出している。
実際機能としては「特殊弾体を用いたレールガン」以外の何物でもない。
どのぐらいすごいかと言えば、艦砲の直撃がかすり傷にしかならない防御力を誇るナノラミネートアーマーを、射線の付近にいただけでその余波で爆散させるほど。
運動エネルギー弾である為、着弾した対象には行き場を失った莫大なエネルギーが襲う。地表に着弾すればちょっとしたクレーターが出来る。(なのに砲弾は無傷、どうやって直進ベクトルのエネルギーが拡散したのか)
しかもこれで量産性が悪くないらしく、その気になれば数十のダインスレイヴ搭載機をずらりと並べることもできる。
充電、装填に時間がかかるという欠点はあるものの、それを補って余りある画期的な兵器である。
元々は
モビルアーマー(MA)と激しく戦いを繰り広げていた厄祭戦時代、MAへの対抗手段として開発された兵器の一つ。
戦後はその威力、そしてミリタリーバランスの崩壊を招く恐れから、
ギャラルホルンによる条約のもと長らく使用を禁止されてきた。
あくまで
特殊弾体とレールガンのセットでダインスレイヴであり、レールガンで通常弾体を使用する分にはグレーゾーン。
それの所持を理由に名瀬が作中で摘発されたが、名瀬を摘発した本人であるイオクもまた作中で通常弾体の
レールガンを使用している。
・・・というよりギャラルホルンの新型量産MS・レギンレイズの兵装オプションの中に
レールガンが存在する。
◆バリエーション
•ガンダム・フラウロス
背中の遠距離砲撃ユニットに二門の
レールガンが装備されている。
テイワズ製。
ガンダム・フレームのツインリアクターによって与えられる威力は絶大。
しかしながら単に背負わせるだけ
というわけにもいかないらしく、ダインスレイヴ発射自体はMS形態でも不可能ではないものの、正確な射撃を行う際には砲撃モードに変形する事で反動に耐え、砲撃精度を上げる必要がある。
自力でのダインスレイヴの弾体の装填ができるかは不明。弾体を3つに分割して格納、発射直前に砲身内で組立を行って装填する機構こそ存在するが、その機構を用いたダインスレイヴの弾体の装填は行われていない。
パイロットのノルバ・シノは、レールガンによる通常弾体を「
ギャラクシーキャノン」、ダインスレイヴを「
スーパーギャラクシーキャノン」と呼称していた。
•グレイズ
アリアンロッド艦隊が使用し、作中で最も猛威を振るったダインスレイヴ専用グレイズ。
左腕が丸ごと大型の
レールガンとなっており、背面にはジェネレーターらしきものが増設されている。
また、頭部センサーが通常のグレイズと異なり、目玉がスコープの様に飛び出す仕組みになっている。
見た目通り機動力はガタ落ちしていると思われ、片腕がない分近接戦闘能力も壊滅的。
電磁砲自体もフラウロスのものに比べて大型であり、装填役に
フレック・グレイズを用意しなければならない。
しかしながら、
阿頼耶識システムを持たない
量産機で大量運用が可能なため、兵器としての完成度ではフラウロスに勝るとも劣らない。
•ガンダム・キマリスヴィダール
ドリルランスにダインスレイヴの発射機構を、肩部シールドに弾丸と補助電源が備わっており、使用の際にはランスと盾を連結させて発射形態を取る。
アニメ版では終始
ガンダム・バエルとの接近戦しか行わなかった為、使用されることはなかった。
漫画版ではバエルとの接近戦で使用、バエルソードを破壊してマクギリスを追い詰めるにまで至った。
•オルトリンデ(※設定のみ)
外伝『月鋼』に登場。
ダインスレイヴの運用に特化したMSの予定であったとされる。発射機構を実装する前に終戦を迎えた上、戦後はダインスレイヴが禁止となったため、発射機構は2対のブレードという形に変更した経緯を持つ。
◆劇中の活躍
初登場は第37話、修復されたフラウロスの背部に搭載された電磁投射砲がダインスレイヴ用のものであった。
ダインスレイヴの破壊力を知っていたマクギリスが助言する事で鉄華団のMA討伐作戦に組み込まれる事となった。
発掘当初はショートバレルの電磁砲しか残っておらず、オーバーホールの際にフラウロスのデータから復元、初使用時はこれで通常弾体を発射。
それでも地形を変えるほどの破壊力を見せつけ、崖崩れによってプルーマとハシュマルを分断することに成功した。
ちなみにこの時、マクギリスはダインスレイヴがギャラルホルンによって禁止扱いされている兵器ではあるが、通常弾体で使えばグレーゾーンだと述べていた。
・・・が、この判断が後々大きく響く事となってしまった。
その後鉄華団の兄妹組織であり、鉄華団に多大な支援を行っていたタービンズの積み荷からダインスレイヴが発見され、タービンズが密輸容疑で終われる身となってしまった。
しかしながら、これは名瀬・タービンを疎ましく思っていたジャスレイ・ドノミコルスと、鉄華団に憎悪を向ける
イオク・クジャンによる陰謀。
発見されたダインスレイヴはイオクがギャラルホルンで保管されていたのを持ち出したものであり、タービンズの容疑は濡れ衣。
さらにイオクは、タービンズ検挙に際し戦闘目的で実際にこれを運用。超長距離から一方的に打ち込む事で、瞬く間にタービンズを壊滅に追いやった。
今まで砲弾による致命打がほとんど与えられなかったナノラミネートアーマーが情けないほどあっさりと貫かれていく様は、タービンズメンバーと視聴者を戦慄させた。
その後、
マクギリス・ファリドが起こした革命軍(と鉄華団)の蜂起に際し、ラスタル・エリオン率いるアリアンロッド艦隊がこれを大々的に運用。
こちらはイオクとは違い、わざわざ革命軍に忍び込ませた
スパイがダインスレイヴでアリアンロッドを攻撃する、という工作をしたうえでの運用であった。
それによりアリアンロッドは「禁止兵器使用に対する報復としてこちらもダインスレイヴを使用する」と主張、圧倒的数量のダインスレイヴを遠慮容赦なく撃ち込みまくり、革命軍と鉄華団を半壊させた。
一方鉄華団も、ダインスレイヴ用のロングバレルに換装したフラウロスで、これまたテイワズで一発だけ密造に成功していた本物のダインスレイヴを運用。タービンズの密輸容疑が濡れ衣とも言い難いことに……
ラスタルを狙撃することによる文字通りの一発逆転を狙うが、アリアンロッド側の奮闘により作戦は失敗した。
最終回では、ラスタルが火星に追い込んだ鉄華団を討伐するため、地上の包囲軍に対して抵抗を続けていた
ガンダム・バルバトスルプスレクスと
ガンダム・グシオンリベイクフルシティに対して使用。
二機が急に撤退を始めた地上部隊に対して警戒の為に足を止めていた隙を狙い、衛星軌道上から地表へ向けてダインスレイヴを発射。バルバトスには直撃こそしなかったものの、その衝撃波で瞬く間に大破させ、グシオンは直撃を受けハルバードと右腕と左のバックパックユニットを失い戦闘の趨勢を決することとなった。
◆運用における問題点
作中で猛威を振るい、鉄華団やマクギリス達がなすすべなく追い詰められたことから万能兵器のように描写されていたが、実際の運用はそこまで万能ではなく問題点も存在する。
グレートメカニックでこの兵器の弱点についていくつか挙げられている。
しかし、この兵器に限らず本書の内容と本編中の描写にたびたび食い違っている箇所がある。
本項では同書で記された弱点と本編中の描写との食い違いについて列挙していく。
①誘導兵器ではなく、初見殺しに依存している
ダインスレイヴは結局は大型の銃でしかないので、弾頭が直線上にしか飛んで行かない。
作中において
エースパイロットですら喰らってしまうのは、「鉄血の世界のパイロットは、ナノラミネート装甲によって多少の弾丸は効かない、と刷り込まれてしまっている。その影響で回避より防御や突撃を優先する傾向があるから」と解説されていた。
グレートメカニックによると「逆に自分に撃たれている事を分かってさえいて、かつそれが避けねばいけない攻撃だと知っているならパイロットによっては回避する事が可能」と記述されている。
しかし作中では直撃でなくとも余波だけでMSが爆散している描写が散見される為、どの程度までが回避する事が出来るということなのかは曖昧である。
言い換えれば、ダインスレイヴの危険性を相手方が認識して警戒し始めれば、相応の技量のパイロットなら発射の瞬間を見切って対処可能なのである。
実際、射出されるのを見ていたマクギリスは難なく、シノはライドを射線から庇い、背後から不意に撃たれたジュリエッタですら紙一重ながら回避出来ていた。
発射の瞬間を掴ませない超遠距離から撃つという、本作最終話等のような運用でその問題は解消出来るが、これも三日月程のパイロットなら、タイミングさえわかれば致命傷を避けて回避出来た可能性にも言及されている。
更に同書では人間のような先入観が無いMAは回避してしまうとも解説されている。
しかし、本編では回避するどころかイオクが狙撃した
レールガンを当たるまで気づかない有様だった。
ダインスレイヴもイオクの使用した物と基本原理が共通している
レールガンである以上、これを回避するどころか当たるまで気づけないのに「MAなら回避できる」・・・というのはやや説得力に欠ける話である。
あくまで目の前でダインスレイヴを撃たれたら(=不意打ちでないなら)かわせる、という事なのだろう。
もしくは好意的に解釈するならば、ナノラミネートアーマーに対して大したダメージにならない通常火器を避ける必要はないとMAのAIが判断しており、ダインスレイヴ級の兵器なら避けようとした、といったところか(本編での描写が一切無いのであくまで妄想の域を出ない考察ではあるが)。
ただ、この件に関して留意したいのは本編に登場したハシュマルがMA全ての性能という訳ではない可能性があるということ。
事実、スタッフによるとハシュマルはMA全体で上位から3番目ほどのイメージで作られたと語られている。
②地形へのダメージが大きく、あまり地表に向けて使用できない。
本編で使用されたのはほとんど宙域における戦闘だったため表面化しなかったが、ダインスレイヴ使用の余波は凄まじく地形すら変動させてしまう。
特にMAが人口密集地に集まる習性を考慮すると容易に使用すると、むしろ被害が拡大する。
厄祭戦時は「街を守る為に使用を躊躇って人々が虐殺されてしまっては本末転倒」という事情もあったのだろうが、本編中の時系列では余剰火力が過ぎるだろう。
実際、本編最終話でバルバトスとグシオンに使用された際にはある程度離れた地点で戦闘が繰り広げられていたにも関わらず、ダインスレイヴの着弾の余波によって鉄華団の基地そのものがほぼ崩壊してしまっている。
③機動性の高い兵器にはそもそも当たりにくい。
これらの問題を解決しても今度は命中率の問題が浮上してきてしまう。
いくら発射起点を探られないようにしてもそもそもダインスレイヴは広範囲型の兵器ではないため、一基揃えただけでは戦略兵器の意味が無い。
虚を突いて外す確率が低いかなりの近距離から撃つ選択肢もあるが、次弾装填に時間を要するこの兵器ではリスクが大きい。
MAなら鉄華団が本編でハシュマル相手に実行したように当たる地点までおびき寄せる、もしくはガンダムによる接近戦で動きを止めるといった戦法が取れるが、MS戦において使用者側にとって安全な対応策としては、敵の動きを何らかの形で止めて超遠距離狙撃を狙うか、数を揃えて面制圧を行うかの二択のみ。
とは言え直撃させずとも余波だけでMSを破壊できる威力があり、数を揃える為のコストも大した事がないので実現は難しくないだろう。
④倫理的な観点から大衆の支持を受けにくい。
①から③の問題点を解決しても今度は民衆の反発という最大の壁が立ちはだかる。
そもそもギャラルホルンの手によって条約による使用禁止を掲げたのだから下手に使えば民衆からの反発は当然、求心力の低下に繋がりかねない。
実際、タービンズ(一応は民間企業であり降伏信号も打っていた)に
イオク・クジャンがダインスレイヴを使用したことがバレた一件でラスタルはテイワズに大きな借りを作ってしまい、マクマード・バリストン側に数年後にまで渡る餌の提供を余儀なくされている。
ちなみにラスタルは③の問題をアリアンロッド総司令の権限を最大限に活用し、回避しきれないだけの弾数を揃えたことで解決。さらに鉄華団との最終決戦では火星の大気圏外から射出することで①の問題を解決した。
②に関しては使用したのがほとんど宙域だったということと、鉄華団本部への使用はマスコミの退避、事後処理でダインスレイヴ使用の責任を鉄華団と革命軍になすりつけたことで解決。(都市部への地震や、光学望遠で丸見えなのでかなり無理があるが)
④についても革命軍側に潜り込ませた間者に先制攻撃させることで大義名分を生み出し、解決した。(用意していた数の差を突っ込まれたら終わるけど)
◆余談・名前の由来となった「ダーインスレイヴ」について
「ダーインスレイヴ(Dainsleif)」は北欧神話に登場する魔剣のひとつである。
『ヴォルスンガ・サガ』に登場するグラニの使い手・シグルスを討ったグンナーとブリュンヒルデの一族に伝わる魔剣で、その名は『ダーインの遺産』を意味している。
元々、優れた鍛冶師であるドヴェルグの一人、ダーインが鍛えたこの剣は、魔龍ファーブニールの数多の財宝の一つであった。
しかし、ファーブニールはシグルスに討伐されたため彼のものとなり、その後さらにシグルスを斃したグンナーのものとなった。
そしてグンナーは弟のヘグニと財宝を分け合い、その中にダーインスレイヴはあった。
これを継承したヘグニは「一度抜けば必ず誰かを死に追いやり、また狙い違わず、決して癒えぬ傷を与える」と誇ったのだった。
…だが、魔龍の財宝には筆頭である黄金の指輪・アンドヴァリナウトを初めとして、呪いがかけられていた。
ティルヴィングとならぶ大業物であったダーインスレイヴも例外ではなく、その呪いは「一度鞘から抜けば返り血を浴びるまで鞘に戻らず、所有者に破滅を齎す」というものであった。
そのため、かつての所有者であったファーブニール、シグルスがそうであったように、ヘグニもまた破滅の道を辿ってしまう。
フン族の王アトリに攻め込まれ、ダーインスレイヴを振るって果敢に応戦するも、二人そろって滅ぼされてしまうのだった。
総括すると北欧神話に登場する『呪われた道具』の中でも筆頭格の魔剣。
…ではあるのだが、
ティルヴィングと同じくやや影が薄い。
レーヴァテインなどのように「世界を滅ぼす」
というわけでもなく、「すんごく強いけど持ち主は死ぬ」という地味さが問題なのかもしれない。
ただ、剣としては文句なしの一級品なので、
ファンタジーなどではかなりの上位武装として扱われることも多い。
もっとも、ほぼ間違いなく呪い効果が付いてくるが。
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最終更新:2025年04月23日 00:39