消化試合

登録日:2018/02/05 (月) 21:05:17
更新日:2018/05/13 Sun 14:18:39
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自分にとっては消化試合だが、相手にとって重要な勝負こそ全力を尽くす

― 米長邦雄



消化試合とは、重要な物事や目的が終わった後のイベントや試合を指す。
既に結果が確定しており、本当にただ消化されるだけの試合。

プロスポーツにおける消化試合


主にリーグ戦形式のプロスポーツで生じやすい現象。

参加者(チーム)同士で対戦を繰り返し、その結果の総合成績で順位を決めるリーグ制プロスポーツにおいて、優勝が最終戦まで決まらない事はまずない。
ほとんどの場合は全試合の終了を待つことなく、シーズン途中の成績で優勝するチーム・選手が決定されてしまう。
その後行われる試合は、優勝チームはどれだけ負けても1位の座を奪われる危険性がないし、
2位以下のチームはどれだけ勝っても優勝することはできないという、プレイヤー側も観客側もやや張り合いに欠けるものとなる。
これを一般的に「消化試合」と呼ぶ。

消化試合では何を見ればいいの?


  • 個人タイトル争い(野球の首位打者争いや本塁打王争いが代表的な例か。熾烈になりすぎた結果醜い争いになることもあるが)
  • 一つでも上の順位を目指す(少しでも上位ならば賞金が増額したり来季シード権が手に入ったりすることもあるし、それにやはり最下位は避けたいだろう。新人ドラフトやハンデの関係でビリ2やビリ3より最下位が有利になる場合もあるが)
  • 上記と重なる部分はあるが、プレーオフ出場権争い(2位以下でもプレーオフで一発逆転出来る場合。また上位リーグと下位リーグの入れ替えを実施している場合は降格回避や昇格チャンスを得るためにシーズン終盤でも気が抜けない)
  • 新人・若手選手や2番手3番手として控えにいる選手のテスト
  • 成績が微妙な選手のテスト(そこで結果を残せなければ解雇に繋がるので当人は必死)
  • 引退選手の引退試合
  • 試合出場数などの通算成績記録の積み上げ

こうして見ると、消化試合と言いながら意外と見るべき部分は少なくない。

特に若手や今まで出場が少ない選手が一番見られる時期であり、デビューの前後から応援してきたファンには嬉しい時期になることも。
…中にはこの消化試合の出場が選手人生の中で数少ない出場だった……なんて残酷なことも起きるが。

一方で、主力選手は上記の選手達のテストの影響や出場中の事故防止、あるいはダメージ回復のために休場し出番が減る。特にこの後にプレーオフが控えている場合は露骨に減ることが多い。
主力選手目当ての人は個人タイトル争いでもしていない限り、やや観戦には寂しい時期となる。

実際問題、個人タイトル争いの渦中にいる選手や若手的には消化試合感はないと思われる。
しかし観客目線では、マニア的なファンでもない限り盛り上がりにどうしても欠けるのも事実である。


消化試合をなくすには?

消化試合が生じるのは、選手や観客はもちろん、チームや興行の主催者にとっても好ましい事ではない。盛り上がりが減れば観客動員数も減り、ひいては収入が減るのだ。
プロ野球のクライマックスシリーズをはじめ、リーグ戦でも消化試合が生じづらいようなシステムを取るスポーツは少なくない。

  • 野球
日本のプロ野球のリーグ戦は現在年143試合制で行われるが、シーズン途中から優勝可能性のないチームが分かってくるためどうしても消化試合が発生してしまう*1
このためシーズン後半に張り合いが無くなってしまうことに危機感を持った日本野球機構は、プロ野球再編問題を機にクライマックスシリーズ(CS)*2を導入。
こうしてCS制度が導入されて以降のプロ野球においては露骨な消化試合は減少傾向にある。
(もっともCSはCSでシーズン中に1位まで頑張る意義が薄れてしまうという問題もあるのだがそれはまた別の話)

また、年162試合をで行うMLBでは消化試合を特定条件下で消滅させるルールが存在する*3


  • 大相撲
大相撲では、力士の強さを一覧にした「番付」というシステムがある。
本場所で沢山勝つと「番付」が上がって上位への出世の道がひらけ、一方で負けが込むと「番付」が下がって給料はじめ各種待遇が露骨に低下する。
さらに1場所辺りの試合数に当たる番数が15番と少ない事もあり、優勝の可能性がなくなった力士たちも最終日まで気の抜けない相撲が続くのである。
(もっとも、こうしたシステムが八百長を招いてしまったのは皮肉というほかない)

  • サッカー
多くのプロサッカーリーグは、Jリーグにおける「J1」「J2」のように、「強いチーム同士が戦うリーグ」と「強くないチーム同士が戦うリーグ」を設けている。
下位のリーグで優勝などの好成績を残したチームは上位のリーグへ昇進できるが、上位リーグで低い順位になったチームは下位のリーグに降格となる*4
降格圏内から脱出するための「残留争い」は、優勝争いにも匹敵する熾烈な戦いとなるため、順位の低いチームは「消化試合」という言葉とは無縁である。基本的に上位リーグの方がいろいろと待遇が良いので、降格したチームから主力がボロボロと抜けていく事が多い。その分昇格・残留争いは熾烈である。
1部リーグ優勝経験のある老舗チームや、国際代表選手を多く擁するチームでさえ、終盤で涙を飲む事は珍しくない。ただ、救済処置として入れ替え戦を実施するリーグもある。
また、上位リーグでは優勝・残留争いに加えて、UEFAチャンピオンズリーグやAFCチャンピオンズリーグ(アジアチャンピオンズリーグ)などチーム別国際大会の出場権や上位リーグのリーグ戦上位の副賞として賞金が与えることもあり、上位リーグの中間に位置しているチームにとってもこれらの争いが熾烈であるため、プロ野球よりも消化試合が発生しにくいのである。

プロテニスはリーグ制ではなくトーナメント形式の大会を繰り返す形*5であるが、大相撲の番付と似たランキングシステムがある。
過去一年間の成績を表すポイントで選手の順位を決め、これによって出場できる大会のグレードが決まる形をとっている。
どんなグレードの大会であれ、基本的に試合1勝ごとに賞金とランキングポイントが付くためシーズン終盤になっても完全な消化試合というものは発生しにくい。
団体戦形式で3日間かけて行われる国別対抗戦は2日目で決着が着く場合があるため、その場合は3日目分の試合が選手にとって消化試合となってしまうくらいか。

選挙における消化試合


政治の世界では、候補者間であまりにも差がある選挙戦が消化試合と呼ばれることがある。

ある候補に対して有力な対立候補がおらず、勝ち負けが見えているような場合、選挙当日までの日程が消化試合と言われる。
例えるなら、地方の首長選挙での「現職4期目・連立与党&有力野党連合推薦」vs「無所属新人 弁護士 左派政党推薦」というような感じか。
もっとも、プロスポーツリーグとは違って結果は当日まで分からないので、限りなく低いとはいえ大どんでん返しの可能性は常に秘められているのだが。


フィクションにおける消化試合


物語上のラスボスを撃破した後の敵との戦い(エピローグ)が「消化試合」と称されることがある。

消化試合扱いされる敵は「ラスボスの一味の残党」「これまでの物語に影響していないぽっと出の小物・チンピラ」「以前戦った敵の復活」とか。
ラスボスを倒すまでに至った主人公の力を前には見せ場もなく倒されるのがオチ。
一応「物語のラストで戦った相手」には違いないため、形式上は作品のラスボスという立場ではある。
…尤もファンの間や公式媒体でラスボスとして扱われることはほぼないが。

一方で、物語上のラスボスを撃破した後に現れた上述したような敵でも、作品中トップクラスに強いというパターンもある。
その場合は消化試合と皮肉られることは少なく、「裏ボス」「隠しボス」といった扱いを受ける。
つまりまとめると、消化試合扱いされる敵は「主人公の脅威になれない」ことが理由でそのように言われる全てだろう。

ただし、消化試合扱いされる戦いでも「主人公の戦いはこれからも続いていく」という表現としては重要な描写なのは間違いない。

一方、バトルものの漫画や小説などでは主人公グループ以外の試合はそれ以降ライバル関係となるキャラや、過去のライバルなどの注目人物以外
消化試合気味、もしくは結果だけ書かれて終わりなんてことも多々ある。
ドラゴンボールの天下一武道会の予選などがその例だろうか。


人生は消化試合


我々の人生を消化試合だと呼ぶ(自虐する)パターンもある。

「俺の人生何の目的もないや…」「何のために生きてるんだ」と、人生に意義が見いだせない悪い意味で使われることが多い。
しかし悪い解釈だけではなく考え方次第では前向きな解釈も可能で、良い意味で使われることもあるっちゃある。
消化試合は勝敗があまり関係ない物なので「人生を消化試合とする=人生に勝ち負けなどない」なんて捉え方もできる。

そもそも消化試合という単語は何も意味がないという表現とは微妙に=の関係にならない。
つまり人生消化試合と自虐するのはどこかで人生に希望を持っている裏返しではないだろうか。
それに人生とは消化試合ではなく罰ゲームとか煉獄という見方もある。


注意


優勝といった大局に影響しない、あるいはフィクションで物語の本筋が終わっているために消化試合と思えるような勝負はあるのかもしれない。
また、あまりにも実力差がありすぎて傍から見れば消化試合にしか見えない組み合わせだってあるかもしれない。
しかし忘れてはならないのは、傍からみて消化試合に見えても当事者にとっては人生のかかった大一番であり、選手・チーム・キャラクターが好きで応援しているファンも必ずいるということである。
ある勝負について消化試合という感想を抱くのは自由であるが、当事者やファンの近くで「これって消化試合じゃないの?」などと口にするのは慎むべきであろう。
我々が気楽に眺めている勝負だって、その先には全力で戦っている人々や本気で応援している人々がおり、そういった人々がいるからこそ存在するということを忘れてはならない。



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