シヴァ

登録日:2011/05/10 Tue 23:50:28
更新日:2024/03/18 Mon 15:48:38
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■シヴァ

『シヴァ』ヒンドゥーの三大主神の一柱。
三神一体(トリムールティ)では「破壊」を司り、名は「吉祥」を意味する。
姿は豊かな黒髪をたたえ、首に蛇を、腰には虎の皮を巻いた一面四臂の青黒い体の男神。
二つの手に三叉戟と斧を持ち、残りの手で恩恵を与える印と、恐怖を取り除く印を結ぶ。
姿が青いのは理想の苦行者としての汚れた姿を顕しており、ヒンドゥーでは実際に泥や灰に塗れて苦行を行う修行者が存在する。

ヒンドゥーの前身となったヴェーダ文献時代の暴風神ルドラ*1が、ヴェーダ=バラモンがヒンドゥーに変化して行く中で様々な神話を取り込みつつ姿を変えていったとされる。

一言で言えばヒンドゥーの最強神であり、雷神インドラをも圧倒する事が出来る。
神話に於てはブラフマーヴィシュヌをも含む神々や人々の願いに応じて魔神退治に出かける事が多い他、
その凄まじい力で障害を制圧する存在として描かれている。

額に“第三の眼”を持つ事で知られるが、これは瞑想中に妻のパールヴァティが退屈だったのでシヴァの眼を手で目隠しした所、
世界が闇に包まれ生類が恐れおののいた為に、それを救うべく開眼して世界を照らし出したとされる。 
この眼からは修行の邪魔に現れた敵対する魔神アスラ(阿修羅)を一瞬で焼尽くす等、凄まじい威力を持つ光が放たれた。
これはシヴァ派の修行者の象徴ともなっており、彼らは額にその図像を記す。

代表的な神妃はヒマラヤの娘パールヴァティー。
彼女はシヴァの最初の神妃であるブラフマーの孫娘サティーの生まれ変わりとされ、実の父親であるダクシャとシヴァの不仲を気に病み夫の名誉を守る為に炎に身を投じた彼女が転生。
再びシヴァを慕い、シヴァの試験(シヴァ以外の男性に肌を触れさせないと云う誓いを溺れそうな老人に化けて試し、彼女が誓いを破っても救助したこと)により、晴れて今世でも結ばれる事が出来たと云う。
彼女は慈愛に満ちた女神であると同時にシヴァの男性性力に対応した肉感的な女性性力の象徴であり、シャクティ(性力)とも呼ばれる。
また、シヴァ神妃である事から母(ウマー)とも呼ばれ、この名は烏摩妃として仏教経典にも見られる。
この他にも多数の神妃を持つが、これはシヴァ信仰の拡大の中で地方の信仰かシヴァ信仰に組み込まれていった結果であり、パールヴァティーの化身であるとも考えられている。
パールヴァティー以外で有名な神妃にはインドラを初めとした古き神々を駆逐した水牛の姿をした強大なアスラの王マヒシャを退治するべく、神々の怒りの光から誕生した十本腕の女神ドゥルガーや、魔神シュムバとチャンダ、ムンダ兄弟らとの戦いの中でドゥルガー(パールヴァティー)の額から誕生した全身黒色の殺戮の女神カーリーらが居り、特にパールヴァティー、ドゥルガー、カーリーをシヴァの創造、維持、破壊の三相に対応した女神として同体とする信仰もある。

息子には人気者の象頭の神ガネーシャ、戦神として名高いカルティケーヤ(スカンダ)らが居るが、実はかなり強引にシヴァとパールヴァティーの息子とされている神である。
彼らはそれぞれ大聖歓喜天、韋駄天として仏教でも知られている。

仏教では大自在天、魔醯首羅天と呼ばれ仏法に従わない神として描かれ、
大日如来の呼び寄せた降三世明王に神妃である烏摩(パールヴァティー)と共に踏まれて調伏されている。

一方、強大な神であるが故にその分身とも呼ぶべき神格が仏法の守護者として取り入れられており、不動尊大黒天がシヴァに由来している事は特に知られている。



【リンガ】

シヴァを顕す象徴……それはズバリ「男根」である。
インドではシヴァに遣える者の生活圏に多くのリンガが作られているが、これはシヴァ神その物であり、シヴァ神は凡る場所に遍在していると考えられる。
ヒンドゥーでも宇宙の根本原理に性交を通じて一体化しようと云う、タントラ・ヨーガの男性原理をシヴァが象徴している為であり、
妻のパールヴァティ(及びその変身)が女性原理を象徴している。

このタントラ・ヨーガに於ける根本原質は「シャクティ(性力)」と呼ばれ、
男女の交わりにより第一のチャクラ(ムーラダーラ=会陰部)から伸び上がり、螺旋を描いて第七のチャクラ(サハスラーラ・パドマ)へと至る道を解放する事を目指すのである。

また、シヴァと神妃パールヴァティの合身した姿(アルダーナリシュヴァラ)も知られているが、
これは男性原理と女性原理の究極の合一(というか、そのまんま)を顕す。



【シヴァの異名】

偉大なるシヴァは、様々な異名を持つ。
シヴァが最高神としての地位を固めるまでにヴィシュヌ同様、様々な神や英雄の伝説を取り込んだ結果と思われる。
が、ヴィシュヌがそれらの伝説を化身(アヴァターラ)として取り込んでいるのに対し、シヴァは自身の伝説として取り込んだ面がある。

これらの異名から、破壊と再生を司るインド神話の最強神にして、舞踊と性交の神であるシヴァの姿が窺える。


●主な異名

▼バイラヴァ(畏怖者)
▼カーラ(黒/時間)
▼ハラ(破壊者)
▼ブーテーシャ(悪鬼の王)
▼ムンダマーラー(髑髏をかける者)
▽ナタラージャ(舞踏王)
▽ナテーシャ(舞踊神)
▽シャンカラ(吉祥なる者)
▽マヘーシュヴァラ(支配者)
▽マハーディーヴァ(偉大なる神)
▽パシュパティ(家畜の王)
▽ガンガーダラ(ガンジス川を支える者)

等が挙げられる。


仏教では大自在天と呼ばれ、仏に帰依しようとしない神とされるが、これも上記の異名に依る。

一方で大黒天や不動明王と云った重要な尊格もシヴァに起源を求める事が出来る。



【シヴァの神話】

基本的な情報を紹介した所でシヴァの神話を紹介していくが、インドらしく非常にダイナミックな物が多いのが特徴。

また、シヴァ派の神話では讃美を。ヴィシュヌ派の神話ではやや否定されているが、これは逆の立場でも同じなので気にする事ではない。


以下、代表例。

●シヴァの出現

ブラフマー「ワシが宇宙の創造者だ」

ヴィシュヌ「いや、私です」


口論になる二人の前に巨大な燃え上がるリンガ(チ○コ)が出現。
その先端を見た方が偉大として、ブラフマーは白鳥に変身し天へ。
ヴィシュヌは猪に変身し水中に向かうが、果ては見えなかった。

二人が自分達にも敵わない存在を認め讃歌を捧げると、リンガの中から千手千足三眼のシヴァが出現。

「小者同士で何争ってんの?つーか俺ら元々同じ存在なのにケンカとか意味なくね?」……と二人を諫めた。

……こうして三神は、それぞれの役目で世界を治める事になったと云う。


●シヴァとブラフマー

ある日、ブラフマーとシヴァが「世界の創造者」はどちらかで口論となった。
短気なシヴァはブラフマーの五つの頭の内一つを切り落とし、怒りながら帰っていった。
後にそこから破壊神のシヴァと創造神のブラフマーと名付けられて云った。


●三城のアスラを退治する

金、銀、鉄で出来た堅牢な城に住む魔神三兄弟が居た。神々はその守りを崩せずに苦しんでいた。
創造神ブラフマーは「対抗出来るのはシヴァ神だけ」と問い、神々の迷惑さからもシヴァは仕方なく討伐する事になる。

そこで神々はシヴァの為に立派な戦車を拵え、ブラフマーは御者に、ヴィシュヌは矢尻に姿を変えた。
そしてシヴァが射た矢は三つの城毎、魔神三兄弟を滅ぼした。


●ガンジス川を受け止める

長いので割愛するが、仙人に不敬を働き殺された先々代の従兄弟を供養すべく、バギーラタと云う王様が天からガンジス川を地上に降下させる為に苦行を行った。
魂を救済するためには聖なる川・ガンジスの水が必要だったのである。
ガンジスの女神は苦行を認め降下を決めたが、大地を打ち抜く可能性があった為に
「誰か受け止める者が居なければいけない」
と語った。

バギーラタはシヴァさんしかその役をこなせないと考えていたので、“また”苦行を重ねシヴァに祈願し、その役目について貰える事になった。

しかし、タカビーなガンジスの女神は約束したにもかかわらずシヴァみたいな田舎者では自分を受け止められないと考え、
地上を滅ぼすつもりでシヴァの頭上に落下した。
……が、流石のシヴァはその高慢なガンジスの女神の企みを見抜き、逆に豊かな髪の中に捕らえ女神を閉じ込めてしまった。

女神「いや……出れないぃぃぃぃぃぃぃ!」

シヴァ「クソ女はそこで朽ち果てな!!」

しかし、言い出しっぺの自分をガン無視した神々の小さな争いを憂慮したバギーラタが“また”苦行してシヴァに懇願したのでガンジス川が遂に地上に降りましたとさ。

バギーラタ「……くたびれたっす」

なお、上記の異名の一つ「ガンガーダラ(ガンジス川を支える者)」はこのエピソードに由来する。


●無限のセクロス

ある時、七聖仙が集まり、最も偉大な神は誰かを話し合っていた。
そこでブリグ仙が代表して三神を尋ねたが、ブラフマーは自分が知識の管理者であると自惚れブリグ仙に挨拶もしなかった。

次にシヴァ神を尋ねるとパールヴァティとの性交の真っ最中で、終わるまで待っていたが何百年待っても終わらなかった。

最後にヴィシュヌ神を尋ねたが、ヴィシュヌはアナンタ龍王の上で寝ており、やはり何百年も起きなかった。

いいかげんにキレていたブリグ仙はヴィシュヌの頭を蹴飛ばして起こしたが、眼を覚ましたヴィシュヌは逆にブリグ仙の足を心配したので、
最も偉大な神はヴィシュヌと云う事になった。


●カーリーと合体

黒き女神カーリーとは、神妃ドゥルガーの額から生み出された悍ましき女神である。
カーリーが魔神の血を吸い尽くして勝利するという方法で倒した時の事……。
勝利の舞いを踊るカーリーだが、テンションが上がり過ぎた女神の舞いの余波が周りの地上を破壊寸前に追い込んだので、
仕方無く夫のシヴァが間に入り衝撃を緩和した。


●人獅子退治

ヴィシュヌは、苦行によりブラフマーから“神も悪魔も人も獣も倒せない肉体”を手に入れたアスラを倒す為、
人でも獣でも無い人獅子に変身してアスラを倒したが暴走。
世界を破壊し始めた。

シヴァは仕方無いので更に恐ろしいものに変身し人獅子を殺した。


【現代創作に於いて】

現代のヒンドゥー教においても重要な神の為、最高神らしからぬ扱いや神話に沿わない表現について関連団体から苦言が出ることもシヴァシヴァ。
神をも恐れぬ日本のクリエイターも時には「シヴァっぽいけどシヴァじゃない」「インドっぽくてシヴァより強いけど、インド神話の神じゃない」等の誤魔化し配慮をすることも。

  • 女神転生シリーズ
ほとんどのタイトルに登場。種族は基本的に「破壊神」だが、当該カテゴリが存在しないFC版2などでは魔神、真1では天魔。
種族内のみならず全体でも最強クラスの仲魔として扱われている。
デザイン的には初期から第三の眼、青い肌、4本の腕と基本は押さえてある。『デビルサマナー』でより原典に忠実な姿に描き直され、以降はこちらが定着している。
また、伝統的に神獣バロン+鬼女ランダの特殊二身合体で作ることができる。
真・女神転生Ⅱ真・女神転生if...では、最大HPの割合に応じたダメージを与えラスボスにも効果のある『てんばつ』を所持しているため、自身のHPの多さも相まってラスボス戦では攻防の要として活躍できる。属性とレベルが許すならぜひとも加えたい。

インド神第1弾シリーズの火属性を担当するレアガチャ限定モンスター。
進化前は腕が2本しかないが、進化後は腕が6本に増える上に三股の鉾を装備するなど強そうな見た目になる。
スキル「第三の目」は1ターン敵の防御力を0にするというものであり、高防御の敵を楽に倒す事が出来るので優秀。後に上方修正で火ドロップを強化する効果も追加された。
また、後に分岐究極進化が追加され、更にその後究極覚醒進化が追加。最終的には転生進化、超転生進化が追加されてより強力なモンスターに変貌した。
更にモンスター交換所でドラゴンとこいつが融合したようなモンスター「シヴァ=ドラゴン」というのも追加。勿論こちらも後により強力なモンスターと化し、様々な面で優遇されていると言えるだろう。

プレミアムガチャのイベント「神々の覚醒」シリーズで初登場。こちらは闇属性。
進化のみならず分岐の神化形態もあり、一見すると強力そうに見える。
…が、神話には冒頭でも書かれているような設定を持っているにもかかわらず、実装の時期が初期頃だったからか星4のハズレ枠となってしまっており、かなり弱い。
それ故に上記のパズドラの方と比べてネタにされる事が殆ど無く、おまけにレア度と性能が災いして排出されてもすぐ売られる等、非常に不遇なモンスター。神話とは何なのか
しかし、ある時彼にまさかの転機が訪れる…詳しくは上の記事にて。

初期GATシリーズの一機デュエルガンダムの武装強化形態であるアサルトシュラウドの装備に、シヴァと名付けられたレールガンを右肩に装備している。

  • Cygames作品
神撃のバハムートに登場、その後同じデザインと声(速水奨)でグランブルーファンタジーShadowverseにも登場。
「神撃」と「シャドバ」での描写はフレーバーテキスト程度。
「グラブル」では星晶獣で、火の元素を司る大天司ミカエルの使徒という設定。色々まずい気がするが、英語版でもきっちりShiva名義。
召喚石とプレイアブルキャラ双方で実装済み。キャラ側もそれなりに強いのだが、先行実装かつ唯一無二の火力をもたらす召喚効果の関係でグラブルのシヴァと言えばまず石の方を指す。

【余談】


FFに同名の召喚獣がいるが全く関係ない。そもそもあっちのはシリーズ通して『女』である。
全くもって関係ないが一応おさらい…




追記・修正は永遠に交わる事の出来るパートナーを見つけてからお願いします。

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最終更新:2024年03月18日 15:48

*1 モンスーンの神格化で、暴風の唸り音を名前の由来とする。風神ヴァーユと雷神インドラの眷属。