真・女神転生デビルサマナー~悪魔召喚士~

登録日:2018/01/25 (Thu) 18:45:13
更新日:2024/04/09 Tue 13:14:49
所要時間:約 25 分で読めます




『真・女神転生デビルサマナー~悪魔召喚士~』とは1995年12月25日にアトラスから発売されたRPG。
プラットフォームはセガサターンで、当時次世代ゲーム機と呼ばれていた3Dポリゴン表現も可能にする新世代ハードでの初のメガテンとなった。
翌年

次世代機初のメガテンとあってか『真・女神転生』と銘打ってはいるが、前年までSFCで展開されてきた本家とは違い、過去作とのシナリオ上のつながりは無い。企画時点ではタイトルも『デビルサマナー』だったが、当時「召喚士(サマナー)」という単語が浸透していなかった為、女神転生の系譜を明示したタイトルになった。
シナリオ上も冒頭で市ヶ谷駐屯地のクーデター失敗や米国大使死亡のニュースなどが告げられるため、「ベースは同じだが違う世界観」と主張してるのが分かる。
この『真・女神転生if...』から発展させた、従来よりもリアル(現実世界)寄りの世界観が魅力である。

雰囲気的にはポストアポカリプス要素を廃し、登場人物の年齢が引き上げられたアダルティかつハードボイルド寄りな現代ファンタジーになった。
お馴染みのマルチエンディング方式=主人公の属性の傾きがなかったり、仲魔も連れてるだけでは言うことを聞いてくれない、といった独自のシステムが多数盛り込まれていたりと、従来とは少々毛色が違った作品に仕上がっている。

『真Ⅱ』で黙示録的な終末思想を一度描き切り、『if』で一度ミクロな世界観を描いた後、次世代ハードへの移行などに伴い『女神異聞録ペルソナ』共々世界観をリビルドするような目論見があった模様。過去作で設定・シナリオを手掛けた鈴木一也氏も本作からは関わっていない。
これ以降のシリーズでは喩え未来を描いたとしても、以前に比べてドメスティックな雰囲気に落ち着いたりしていくようになった。

シリーズにおける一つの再スタートであり、後に明確に本作と同じ世界、別時代を舞台とした『デビルサマナー』シリーズとして独自の発展がされることになった。
一方で、世界観のリアリティーが増すと共に、元々「癖が強い」「難易度が高い」と言われていたシステム面も複雑化した上に容易には使いこなせないレベルに。
メガテンマニア向けと言われた『if』以上の鬼畜ぶりで、本作での評価・反省*1が後のシリーズにフィードバックされていくことになり、実際に直接の続編である『デビルサマナー ソウルハッカーズ』は、本作から引き継がれたシステムを多く有する一方で、一転して低難度となっている。同じシステムを使ってて何でこんなに印象に差が出るんだ!?と驚くレベルである。

こうした、余りにも一見さんお断りの雰囲気や難易度もあってか、一般知名度こそ前後の作品に譲るところはあるものの
シリーズの発展に貢献した役割は決して小さくない。

2005年12月22日にはPSP版が発売された。
上記、及び後述の問題点に対応した様々な調整、追加要素によりプレイ時のストレスが大幅低減されている。


ストーリー


199X年、某都道府県平崎市に暮らす主人公は、とあるきっかけで謎の男に命を狙われる。
肉体と魂を分離させられ、三途の川まで来てしまった主人公だが、渡し守のカロンの
計らいで「葛葉キョウジ」という男の身体で復活した。

だが、表向きは探偵であるキョウジの正体は悪魔を召喚し使役するもの‐デビルサマナーであった。
なし崩し的に「葛葉キョウジ」をやる羽目になった主人公は、キョウジのパートナーである
レイ・レイホゥと共に平崎市を脅かす怪事件に挑むことになる。

登場人物紹介


  • 主人公(デフォルトネーム無し)
プレイヤーの分身。得意技は一人バックドロップ。
「たまたま」お嬢様の彼女がいて、
「たまたま」彼女がヤバい本に興味を持ち、
「たまたま」彼女に貸し出しカードを貸したが故に、
冒頭で殺される、筋金入りの不幸体質。
彼は最初何の価値もない「モブ」として、次に数々の苦難を抱える「主役」として、後に強大な「加害者」として、
"世の中には理不尽な事などいっぱいある"ことを、体を張って教えてくれる、偉大な人生の先輩である。

シド・デイビスよって、体と魂を分離させられたデビルサマナー。
得意技は悪魔をカード化した後、マハラギオンで焼き払う通称「キョウジスペシャル」
体は主人公、魂は名脇役というかなりおいしいポジションであり、アトラスの別作品にも魂だけ出張するという斬新なスターシステムを生み出した。
ただ本作においてはあまり好感が持てる人物ではなく、パートナーのレイ・レイホゥも自身の危機を主人公に救われた際には、
「キョウジだったら絶対助けてはくれなかった」と洩らしている。
詳細は人物の項にて。

  • レイ・レイホゥ
本作のパートナー枠。得意技はツンデレ。
主人公が悪魔に彼女の関係を問われた時、
「彼女」と返せば「いつからそうなったのよぉ?」と狼狽し、
「誰がこんな女」と返せば「いくらアンタでも許さないわよ!」と怒り出す。カワイイ
因みに選択した魔法のタイプ次第では、彼女も「キョウジスペシャル」を使えるようになるが、実用性はあんまりないので正直どうでもいい。

  • シド・デイビス
本作におけるライバル的存在。得意技は100%中の100%ォ!!
ダークサマナーの異名を持ち勿論悪魔を召喚できるのだが、敵と対峙する際はあくまで己の身一つで立ち向かうという非常に漢らしいファイテングスタイルの持ち主。
きっとコイツもMAG貧乏性なのだろう
彼の敗北は「安易な節約は死を招く」という教訓を組織に与え、次作の組織の刺客達は必ず悪魔を召喚してから勝負を挑むようになった。
そういう意味では彼も主人公同様、偉大な人生の先輩だと言える。

  • ドクター・スリル
造魔研究の第一人者。得意技はパーティーいかなあかんねん。
キャラクターは三枚目だが彼の持つ技術は一級品であり、舐めてかかると痛い目にあう。
彼の造魔から崩撃雲身双虎掌改め肉体の悪魔を喰らって「十年早いんだよ!!」されたプレイヤーは数知れず。

  • マリー
表向きは探偵であるキョウジに悪魔絡みの仕事を斡旋してくる占い師。得意技はピンハネ。
本作の悪魔退治の報酬は一律五万。だが、後に一人の刑事から「彼女には百万払った」という話を聞くことが出来る。つまりマージン率は…。
この事に対し当時の〇ァミ通スタッフは「天下の電〇、〇報堂もやる前からTKO負けである」という、味のあるコメントを残している。


評価


世間での本作に対するイメージは

ソウルハッカーズの前のヤツ」
葛葉キョウジは知ってる」
「途中で投げた」
「中華街」

といったものが割と少なくない。実際↑の方が項目先に出来てるし。
決してクソゲーではないのだが、非常にアクの強い作品であることは否定できない。




中華街


さて、このゲームを語る上で真っ先に槍玉に挙がるモノと言えば、3Dダンジョンの難易度の高さであろう。
代表的なものとしては先述の「中華街」や屈指の長丁場である三連ダンジョン「新市庁舎」「疑似アストラル界」「無間地獄」などが挙げられる。
「警察署」や「ヤクザ邸」「古墳大迷宮」なども苦労した人は一杯いる筈。要は後半のダンジョン全部である。
そしてそれらは全て「難しいというよりは嫌らしい」類の代物であり、「幼いころからWIZARDRYやメガテンで慣らした海千山千のツワモノたちならあるいは気付くかもしれない」レベルの罠がこれでもかとばかりにちりばめられている。








即死の恐怖


次に戦闘面だが、これも少々大味で洗練されているとは言い難い。
先ず敵が総じてタフで中々戦闘が終わらない傾向がある。終盤に近付くほどそれは顕著になり、店売り武器なんかでは敵一体すらスムーズに倒す事は出来ない。
敵がそのまま味方になりうるメガテンにおいて、それはこちらもタフであることを意味するので「なんだ、じゃあ時間が掛かるだけで安全なのね。」と思われる方もいらっしゃるだろう。
しかしここに落とし穴がある。
本作は主人公が戦闘不能になった時点でゲームオーバーなのだ。これ自体はシリーズでも珍しくはないのだが、ここに先述の要素が組み合わさると…

長大なダンジョンを延々歩かされる。
     ↓
必然的に戦闘回数も嵩む、戦闘毎のターン数も嵩む。
     ↓
主人公に即死技が飛んでくる機会も増える。
     ↓
当たりを引いて数時間の苦労が水の泡。
     ↓
心がポッキリ折れる。

というコンボが成立する。ちなみにダンジョン内でセーブできるアイテムも存在するが原則一個しか持てないので、こまめにバックアップという手段も取りづらい。

勿論こんなつらい要素ばかりではなく、君たちの破壊欲を促進する為、武具や戦法だって色々と凄いモノを用意してあるのだが、それらを知ったら知ったで、
「攻略そっちのけでひたすら魔石や宝玉を漁りまくる」ゲームになったり、
「ボスの目の前でマッパになって、お札を片手に挑発を始める」ゲームになったりと、
やっぱり色んな意味で戦闘は大味であると言わざるを得ない。




バグ


一ファンとしてはこれ以上悪いことを述べたくはないのだが、残念な事にこれで終わりではない。本作はゲームバランスに深刻に影響を及ぼすバグも幾つか見つかっている。
最も代表的なモノは「素の"速さ"が26以上になると行動順が最後になる」というバグ。
RPGにおける速さのアドバンテージについては説明不要だろう。特にメガテンでは「氷結」「感電」など1ターンだけ相手を行動不能にする状態異常が存在する為、先手の優位がより顕著に出る傾向にある。
よって速さ偏重は最もスタンダードな育成方針なのだが、これを知らずに極限まで速さに振ってしまうと、只遅いだけのポンコツ主人公が出来上がってしまうというわけだ。

ただ、皮肉な事にこのバグが及ぼす悪影響は意外と小さい。
なぜなら先述の「氷結」「感電」もバグによってそもそも機能していないからである。
「この敵には感電が有効だ!中華街をクリアして手に入る感電付与の弾丸を用意しておこう!」という攻略本の情報を信じた当時のプレイヤーは泣きを見るハメになった。
このバッドステータス不発バグは何かの拍子に正常に戻ることもあるのが厄介なのだが。



「え?金王屋?あ、玉じゃないんだ。そうなの、ふ~ん、なんかガッカリ。」(原文ママ)


散々自ら述べておいてこう言うのもおかしいが、「あ、やっぱりクソゲーなのね。」と断ずるのはもうちょっとだけ待っていただきたい。
本作にはきちんと光る所も沢山ある。特に今回から導入された画期的な試みは目を見張るべきものが多い。

まずはグラフィック。
プラットフォームがサターンになったことで描画能力が飛躍的に上昇、全ての悪魔は視覚面での個性がパワーアップした。
砕けて言えば「ピクシーは益々可愛くなり、ネコマタは益々エロくなり、モーショボーは多くのプレイヤーを魅了した」って事である。
ここでのデザインが後の作品の悪魔にも流用されている事からも、本作のグラフィック面での功績は大きいと言える。
あ、あと悪魔合体シーンはシリーズでも屈指のカッコよさなので必見。

次に造魔システム。
これは悪魔を合体させ続けることで成長する悪魔、というコンセプトのシステム。
特筆すべきは消費マグネタイトが0という事と最初からちゃあんと言うことを聞いてくれる事。
よって悪魔の一体というよりは第2のパートナーとでも言った方が良いだろう。MAG貧乏性の方々も安心。
また、一定の法則で悪魔合体させることで「英雄」という特殊な悪魔に変える事も出来る。
次作のソウルハッカーズでは造魔のタイプも増え特技の継承も可能になるなど、さらに洗練されている。

次に合体事故。
これ自体は以前のシリーズにも存在したが、本作からは「珍獣」「秘神」「死神」など、事故からでしか作成出来ない種族が誕生し、「合体事故を起こす」積極的動機が強化された。
次作のソウルハッカーズでは合体事故自体を故意に起こせるようになり、さらに洗練されている。

次に忠誠度システム魔晶変化システム。
これは自分の物欲を満たしてくれたプレイヤーへのお礼として、仲魔自身が強力無比な武具へと変化してくれるシステムである。これにより、
「愛しのピクシーやネコマタに自分の愛を示したい」という嗜好面での需要と
「キツイ戦闘を何とかしたい」という攻略面での需要を
「仲魔に貢ぎまくる」事で同時に満たすという奇跡のゲームバランスが完成した。
次作の以下略。




え?何?「全部ハッカーズの劣化じゃないか!」だって?
ほほう、そんな事を言ってもいいのかね?
例えば本作で「造魔という概念が生まれなかったら」
君たちが愛してやまないメアリたんも生まれなかったかもしれないのだよ?*3
何事においても「さきがけ」は偉大だってのが判らないなんて、ダメダメ君だね、チミ。(ガイン君)

なんて戯言は置いとくとして、どこに出しても、どれと比べても恥ずかしくない立派な美点ならちゃあんとある。
それは「アダルトな世界観とテキストのセンス」
ハッカーズや後のペルソナシリーズの様なキャラクター性を大きく前に出したジュブナイルなストーリーも非常に魅力的だが、
あまり多くを語らず、あくまでダークでアウトローな雰囲気だけを醸し続けるアダルトなストーリーもメガテンファンにとって一定以上の需要がある事は疑いがない。
そして、そんな世界観の合間合間に差し込まれるセンス溢れる台詞の数々は一度聴いたら忘れられない程のインパクトを持っている。

「デビルサマナーは世界観が好き。」
「デビルサマナーは悪魔会話が面白い。」
「デビルサマナーはNPCが頭おかしい。」

という褒め(?)言葉を聞いたことがある方もきっといらっしゃるだろう。
極一部ではあるがちょっと紹介しよう。







結局「名作」?「駄作」?どっちよ?


長所・短所共にはっきりしている為、名作とも駄作とも言い切れない。アクが強すぎる為、凡作という言葉も相応しくない。
なんとも言い難い非常に曖昧な存在。ドライな表現をするならそんなところだろうか。
しかし一つ断言できるのは、本作を形作る要素がどれもこれも「強烈な記憶として刻まれる」モノだという事。
それはここまで辛抱強く読んでくださった方々ならきっと理解してくれる筈だ。
要は

「デビルサマナー君って本っっっ当にダメな所ばっかり!!…でも…でも…でもやっぱり好きなの!!」

ハイ、クソ~。二度とやらんわこんなクソゲー。」(投げたコントローラーを再び持ちながら)

って感じのゲームである。


余談

なんと実写ドラマ化されている。しかし知名度やクオリティは…
TV版「エコエコアザラク」とか「ねらわれた学園」と枠も制作会社も同じと言えば伝わるだろう。
分からないなら視聴はお勧めしない。岡田耕始と金子一馬がゲスト出演している第1話だけ見てもいいかもしれないが。

また実写ドラマ版のノベライズという少々ややこしい代物も存在する。作者は後の小説版ライドウを手がける蕪木統文。
第一巻はドラマ前半部の小説化だが、残り二巻はオリジナルストーリーになっている。
葛葉キョウジの名や、彼がペルソナCMのヴィシュヌを召喚できる理由付けなどの補完的内容もあるので、ドラマ版視聴者は読んでおくと良いかも。


俺っちの愛しのソング聴くかい?

PCで女も男もギュイーン!

ヲタクの様な雄たけびあげて、今日も追記・修正だぜぇーー!

こいつにゃ誰だって、文句言えない。WIKIは皆で造るもんだからぁぁぁフーー!

好きにやるぜ、好きにやるぜ、

太文字でも!

取り消し線でも!

ルールは守りましょう白文字でも!

気に入りゃプラグイーンだぜい!

イェイェイェィ創造の詩ぁぁぁーーー! THANK YOU!


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最終更新:2024年04月09日 13:14

*1 更に言えば、翌96年に初代PlayStationで発売された『女神異聞録ペルソナ』も本作とは別方向にリアリティーとマニアックさを追及した作風であり、後に同様の経緯を経て『ペルソナ』シリーズとして分化。一方でシリーズ全体の方向性に反省と影響を与えることになる。

*2 シリーズお馴染みの補助魔法。周囲数マスのマップを常時表示させる。オートマッピング機能が備わっている作品では、画面の変化でターンテーブルやワープの存在を見破る事が主なお仕事になる。

*3 劇中で「メアリは造魔だ」という直接的表現はない。しかし彼女はヴィクトル(サマナーシリーズにおける悪魔合体担当)に作られた心を持たない人形であると明言されている事、造魔の性格は「虚心」である事、今は無きメガテンのカードゲームのメアリカードに「造魔の宴(中略)場にいる全ての造魔(メアリ含む)」という記述がある事などから、造魔であることはほぼ間違いない。

*4 「赤ちゃんの顔に蜘蛛の足をくっつけてエクソシストごっこしました」的なデザインの悪魔。サターンのグラレベルでは赤ん坊の頭部だと認識しづらいのが幸いか。知らなければ、だが。