複数形(英語)

登録日:2020/02/15 Sat 23:58:39
更新日:2024/03/18 Mon 15:48:51
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ここでは、英語の複数形(plural form)について解説する。


概要

基本的に日本人はあまり名詞について単数であるか、複数であるかをそこまで議論しない。
「山々」とか「神々」という表現こそあるが、基本的には「3つの山」とか「8柱の神」と名詞をいちいち複数表現にすることはない。

英語の場合は逆に数については基本議論してしかるべきものとなる。
なので、「I am a pen.」(わたしはペンです)の場合、主語が複数の「We」になると「We are pens.」(わたしたちはペンです)となる。

ちなみに、英語話者は基本複数形を使うことが多い。
たとえば、「私は幼い女の子が好きです」といった場合、英語にすると「I love young girls.」となる。
「I love a young girl.」とすると、英語話者からすると「その幼女はいったい誰?」と特定したくなるのだが、
ロリコンにとって好きな女の子は誰でもいいわけじゃないとはいえ、だからといって別に特定の誰かひとりというわけではないだろう。
フランドール・スカーレットも好きだしも好きってのは別に普通だろうし。
どっちも年上だからロリコンじゃないもんとか言ってるやつは立派なロリコンだからな
同じように「昨今ではスマートフォンは重要なデバイスである」も「Nowadays, smartphones are important devices.」となる。

複数形のつくりかた

ところが、この複数形というのは外国語話者、特に非印欧語系の言語を学んできた人にはすごく躓く点でもある。
というのも、英語の複数形は絶対に決まった法則があるのではなく、語形ごとに法則があるからなのである。
とくに日本人にはこれが英語で躓いた要因であるという意見が多い。

【1】普通はsをつける

ex)
You are my dogs. (あなたたちは私の犬よ)
Yesterday I bought three mangas. (私はきのう3冊漫画本を買いました)

よくある一般的パターン。とりあえずsをつけとけば複数形なんだな、と教科書を読んだ中学生たちは最初に早合点する。
実際には犬なら「どっぐす」、猫なら「きゃっつ」、マシンガンなら「ましんがんず」とsの読み方が違ったりするが、まあいいほうだろう。
ところが次。

【2】-s, -x, -z, -sh, -chのつく単語にはesをつける

ex)
He lost two buses. (彼はバスを2つも乗り逃した。)
You can choose one of these two boxes, a larger one and a smaller one. (あなたには大きい箱と小さい箱の2つの箱のうち、どちらかひとつをあげましょう)
You have to answer five quizes correctly to get 1 million yen. (百万円を手にするには、5つのクイズに正解しなければいけません)
I can grant your wishes three times. (3つの願いを叶えてあげましょう)
He is a collector of watches. (彼は時計の蒐集家だ)

まあ、「ばすす」「ぼくすす」「くいずす」「うぃっしゅず」「うぉっちず」とは言いづらいから仕方ない。
「ばっしーず」「ぼくしーず」「くいじーず」「うぃっしーず」「うぉっちーず」となるのもしょうがないだろう。

【3】子音の次に-yのつく単語は-yを-iesに変更する

ex)
They have great bodies. (あの子達はいいカラダをしている)
I hate flies. (私は蝿が嫌いだ)

それぞれ原型はbody、fly。そろそろ中学生は思うだろう。「bodysとflysでいいじゃん…」と。
しかも母音のあとの-yの場合は「toys」「keys」とそのままなのである。

【4】-f、-feのつく単語は-f、-feを-vesに変える。

ex)
Leaves fall in autumn. (秋になり葉がおちる。)
He will be killed with knives by the maid. (やつはそのメイドにナイフで滅多刺しにされてしまうだろう)

単数形はleaf、knife。
日本人の感覚だと「りーふず」「ないふず」で何が駄目なのかと思ってしまう。
しかもこの法則、例外もあり、giraffe(麒麟)はgiraffesとなるのだ。なんでだよ。

【5】子音の次に-oが付く場合、基本はesをつける。でも時々enをつける。

ex)
He was killed by tomatoes that flew fast. (彼は速く飛んできたトマトによって死んだ)
He puts five moxen into his deck. (彼はデッキに5枚のMoxを入れている)

ダジャレを許さない野菜のほうはesをつけるのだが、本当の宝石より高いとも言われるMtGのカードの方はenをつける。
ちなみに似たような例にox(去勢牛)→oxenなんてのがある。

【6】-onのつく単語は-onを-aに変える

ex)
The agent discovered three abnormal phenomena. (そのエージェントは3つの異常な現象を発見した)
I choose girls with three criteria. (わたしは女の子を3つの基準で選出している)

単数形はphenomenon、criterion。例によって例外があり、canyon(キャニオン)→canyons、lemon(檸檬)→lemonsとなる。

【7】-umのつく単語は-umを-aに変える

ex)
That news were reported in different media. (そのニュースは複数のメディアで報道された)
I have your data. (わたしはあなたたちのデータを持っている)

単数形はmedium、datum。めんどくさいことに、日本語ではメディア、データが単数形として使われることが多く、
これらが複数形であることに気づきにくい。
他の例はstratum(層)→strata、memorandum(メモ)→memoranda、forum(フォーラム)→foraなど。

【8】-isのつく単語は-isを-esに変える

ex)
I hear that soaplands are modern oases. (ソープランドは現代のオアシスだそうですね)
Cruel angels have different theses. (残酷な天使たちは皆異なるテーゼを持つ)

単数形はoasis、thesis。
他の例はbasis(基礎)→bases、hypothesis(仮説)→hypotheses、parenthesis(括弧)→parentheses、
analysis(分析)→analyses、axis(枢軸)→axesなど。

【8】-usのつく単語は-usを-iに変える

ex)
One of the termini is red. (終端の片方は赤い)

もはや例文作るのも難しい単語ばっかりなんだけどどうしてくれんの。
単数形はterminus。終端なんて単語そうそう複数形にしねえよ。
あとはfocus(焦点)→foci、radius(半径)→radii、fungus(菌)→fungi、cactus(仙人掌)→cacti、stimulus(刺激)→stimuliなど。
2011にはPrius(プリウス)→Priiと定められた。

【9】-xで終わる単語は、-xを-cesに変更する

ex)
In gameplay, you will suffer by vortices. (ゲーム中、あなたは渦に苦しめられるだろう)

暗黒の国かな?単数形はvortex。他にはappendix(附録)→appendices、matrix(マトリックス)→matricesなどがある。

【10】-aで終わる単語は、-eをつける

ex)
These are important formulae. (これらは重要な公式です)
Bugs usually have antennae. (虫は通常触覚を有する)

単数形はformula、antenna。ここまで来ると逆に発音し難くね?
例によって例外はあり、banana(甘蕉)はbananasである。

【11】不規則変化

ex)
That mice family consists of grandparents, parents, and ten children. (そのねずみの家族は祖父母、両親と10匹の子供で構成されます)
I have no teeth. (私は歯がない)

mouse→mice、child→children、tooth→teeth。他にも、goose(鵞鳥)→geese、foot(足)→feet、man(野郎)→menなど。
ちなみにchildはchildre、childerという複数形もある。また稀だが、childsって書かれるときもある。
またMr.(~さん)→Messrs.となる*1

さあどうだろう。めちゃくちゃ多くて混乱したか?

複数形になんでルールがいっぱいあるのか

もともとは古英語や各地方言のルールが混濁したため。

古英語では基本、複数形を作る際は「-n」「-en」をつけるものであった。
例えばeye(目)ならeyenのような形。
で、英南部は「n」を好んでいたが、次第に英北部の「s」が優勢になった。
しかし、childrenはそのまま残ってしまったというのである。

また、us、um、xあたりのルールもラテン語あたりのルールをそのまま借用してしまったからである。
もともと英語っていうのは正式な言語であるラテン語に対する俗語として民衆に使われていた。
よって英語をきっちり同じルールにしよう、なんて動きはほぼ出てこなかったのである。

全部同じルールにしてしまえば楽になったはずだが、そういう動きがなかったまま広がっちゃったので、
未だに残り続けているのである。

単複同形

そんな英語において、単数形でも複数形でも同じ場合もある。
え、「単数か複数かを気にしなくていいから楽?」何を言ってるんや、英語は単数と複数で文法ちゃうねんぞ?

というわけでクイズ。以下の文章の「Pokémon」は単数でしょうか、複数でしょうか?

【1】Mary wants the shiny Pokémon. They are a Pikachu.
【2】Professor Oak said that there are 151 kinds of Pokémon in this world.

正解:【1】単数形 【2】複数形

最初の文章は、「メアリーはその色違いのポケモンがほしい。それはピカチュウである」。
うしろで「a Pikachu」と単数で受けていることでわかったと思う。
なお、おそらくはこの時点で尻尾が見えていないのか、発言者はピカチュウのオスメスを審議できないのであろう。
そこで、He is/She isではなく、三人称単数のTheyをつかってThey areと表現している。
……そこ、ひっかけクイズかよとか言わない。

次の文章は「オーキド博士は世界には151種類のポケモンがいると言った」である。
151種類のって言ってるんだから複数形である。こっちはかんたんだったね。

そう、前者の文章のように、注意深く見ないとそれが単数形であることに気づけない。
すると、後続の文章の意味をうまく読み取れなくなるのである。ちなみにPikachuも単複同形。
話し言葉ならいいが、これが大学受験だと命取りであることがわかるだろう?

というわけで、単複同形になりやすい例。

【1】群生

fish(魚)、sheep(羊)、deer(鹿)など。
ちなみにfishesという表現もできるが、意味が変わる。
ex)
I caught three fish. (3匹魚を捕まえた)
I ate three fishes as sushi. (寿司として3種の魚を食べた)

前者は「魚」の種類を問うてないのに対して、後者はマグロ、タイ、イサキのように明確に魚が違う場合の種類を問うている。

【2】発音しにくい

species(種)、series(シリーズ)など。理屈がない。

【3】-eseで終わる「人」

Japanese(日本人)、Chinese(中国人)など。

【4】-craft、-ware

aircraft(飛行機)、spacecraft(宇宙船)、ironware(鉄製品)、software(ソフトウェア)など。

【5】最近輸入された外来語

sushi(寿司)、tempura(天麩羅)、samurai(武士)、tsunami(津波)など。
でもkimono(着物)→kimonoesとか、ninja(忍)→ninjasなどの例もある。
ninjaも別に単複同形だったはずなのだが、どうやら英語圏に定着してきているから複数形が作られ始めたらしい。

他にもyen(円)、yuan(人民元)、won(韓国・北朝鮮のウォン)なんかも単複同形。

【6】ポケモン

何匹いようがSuicune(スイクン)はSuicunesにはならないし、Mr. Rime(バリコオル)はMessrs. Rimeにはならない。
ただしこれはポケモンが本質的には固有名詞であるにもかかわらず複数体同種が存在するため、であることが理由で、
かつあくまでただしい英語では単複同形というだけ。

なのでスラングでは「I herd U liek Mudkipz.(→I heard you like Mudkips)」のように、Mudkip(ミズゴロウ)にsがつくこともある。






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最終更新:2024年03月18日 15:48

*1 Mrs.やMissはこうはならず単複同形