外国語名(ポケモン)

登録日:2020/01/03 Fri 19:28:46
更新日:2023/10/14 Sat 15:35:07
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本項目では、ポケモンの外国語名について述べる。
なお、本項目では架空の生物種「ポケモン」だけをターゲットとし、その他登場人物や地名などについては項目の範囲外とする。



概要

ポケットモンスター」シリーズに於いても、他のフランチャイズ同様に、キャラクターには外国語名がつけられる。
他のゲームシリーズの外国語名は、「日本語のままだと聞き慣れない」場合や、
「日本では問題ないが海外では問題になる」場合なんかにつけられることが多い。

例えばストリートファイターシリーズであれば、
マイク・タイソンを明らかにパロったマイク・バイソン、本来ならば女性名なのにどう見てもおっさんのベガは、
同じシャドルー四天王でごっつい悪魔の名ながらイケメンバルログと名前を入れ替え、
マイク・バイソン→Balrog、ベガ→M. Bison、バルログ→Vegaとなっている。
肖像権の問題を抱えていたバイソンと海外的には違和感のあるベガ・バルログを
(新しい名前を用意するコストと言う大人の事情も加味して)同時に解決した荒業である。

それに対すると、あくまで設定上「生物」であるポケモンの場合、
「犬→Dog」や「猫→Cat」のような位置づけとして外国語名が設定されており、
かつてはリザードンは「Lizardon」といった日本語独自のラテン語表記を用いられることも多かったが、
昨今では英名である「Charizard」表記もメディアミックスでは使われたりする。


音写と音写でない場合

基本的に、日本語と他国語では違う名称であることが多いが、以下の条件にあてはまるポケモンは音写も多い。

  • ①電気袋枠
ピカチュウが日本側の要請により世界各国でもPikachuなのは有名な話であるが、
これだけでなく電気袋枠のポケモンは大概他国語でも同じ名前になる。
プラスル→Plusle、マイナン→Minun、モルペコ→Morpekoあたりは自然だが、
パチリス→Pachirisu、デデンネ→Dedenne、トゲデマル→Togedemaruあたりは流石に無理があるだろ…
特にトゲデマルは発音しにくいらしい。

なお、エモンガはEmolgaと音転写には近いが何故かこの項の例外扱いになっている。

  • ②伝説・準伝説
伝説、準伝説ポケモンは外国語名も同じであることが多い。
特に禁止伝説のレシラムゼクロムのときは「世界共通名称」であることがアピールされた上でReshiram、Zekromとなっていた。

ただし初代三鳥は英名ならフリーザー→Articuno、サンダー→Zapdos、ファイヤー→Moltresと変わっている。
まあフリーザー(凍らせるやつ)、サンダー(雷)、ファイヤー(火)なので伝説っぽくないからだろうが。

また第四世代のUMAトリオも、英名ではユクシー→Uxieのみそのままだが、エムリットはMespritと三匹の頭文字がUMAになるように微変更されている。
なおアグノムもAzelfと変更されている。
ユクシーがピクシー、エムリットがスピリット、アグノムがノームをもとにしているが、英名だとノームではなくエルフであろう。

第五世代でも今度はコピペロスが英名ではトルネロス→Tornedus、ボルトロス→Thunderusと変更。
ちなみにこいつらの場合、フランス語ではそれぞれBoréas(風の神ボレアースから)、Fulguris(ラテン語のFulgur/雷から)とかなり変更され、
唯一英語でも変わっていないランドロス(Landorus)もDémétéros(豊穣神デメテルから)となっている。

第七世代「カプ・」は英語:Tapu、ドイツ語:Kapu-、フランス語:Tokoとスタートが違っている。もちろん後ろも変わっている。

第八世代ではムゲンダイナが禁止伝説としては初の他言語で音写でない例となった。
これはムゲンダイナがダイマックスに関係することが由来であり、ムゲンダイマックスの訳語もろともに変更されている。
ちなみに英語だとダイマックスはDynamax、キョダイマックスはGigantamaxなので、そこらへんを考慮すると分かりやすいかもしれない。

日本語 ムゲンダイナ ムゲンダイマックス
英語 Eternatus Eternamax
フランス語 Éthernatos Infinimax
ドイツ語 Endynalos Unendynamax
イタリア語 Eternatus Dynamax Infinito
スペイン語 Eternatus Dinamax Infinito
韓国語 무한다이노 무한다이맥스
中国語 無極汰那 / 无极汰那 無極巨化 / 无极巨化

面白い外国語名

【039】プリン

英名:JigglypuffでJiggly(揺れる)puff(ふわふわ)というニュアンス。
増田氏曰く初代のローカライズ作業時に(お菓子の)プリンのような柔らかいポケモンと説明したところ、
日本と海外ではプリンの意味合いが異なる*1ためローカライズスタッフにうまく伝わらず、その場で急いでコンビニまで行ってプリンを買ってきて説明したとか。

一方面白いのがフランス語版。Rondoudouという名前で、Rond(丸い)Doudou(ぬいぐるみ)と質感についても概ね伝わっているが、
これはフランスでメジャーな子供向けキャンディと同名でもあり、「特定の地域でメジャーなお菓子」という命名背景も考慮した名訳と言えるだろう。

【107】サワムラー・【108】エビワラー

それぞれの英名:Hitmonlee、Hitmonchan。
日本語名はキックボクシング選手の沢村忠、ボクサーの海老原博幸が由来だが英名はブルース・リージャッキー・チェンと世界的なアクション俳優が由来となっている。
ちなみにカポエラーは「Hitmontop」。「top」は回す「コマ」という意味だ。

【120】ヒトデマン・【121】スターミー

ヒトデマンの英名:Staryu。言うまでもなく、「スターミー」に対する「スターユー」である。
ドイツ語もSternduと、これも英名と同じく「スター+あなた」となっている。

…のだが、フランス語では「Stari」とこっちが「スター+わたし」となっており、
進化形スターミーが「Staross」、「スター+ボス」となっている。どうしてそうなった?

【122】バリヤード

英名:Mr. Mime。「ミスターマイム」とパントマイムポケモンらしい呼び名だが、バリヤードは雌雄両方存在するポケモンである。
これは第一世代のときはまだ性別という概念がなかったため。
ちなみにフランス語もM. Mime、すなわちムッシュー・マイムとなり、英語と同じ問題を抱えている。

【133】イーブイ

イーブイの進化形(ブイズ/Eeveelution)は、日本語では語尾にルールはないが、
英語・イタリア語・スペイン語では「-eon」、フランス語では「-li」、ドイツ語では「-a」とルールがある。

特徴的なのは中国語で、イーブイが「伊布」なのだが、ブイズの語尾もまた「伊布」であり、
シャワーズは水伊布、サンダースが雷伊布、ブースターが火伊布、エーフィが太陽伊布、ブラッキーが月亮伊布、
リーフィアが葉伊布、グレイシアが冰伊布、ニンフィアが仙子伊布となっている。

【160】オーダイル

英名:Feraligatr。最後のほうがなんかへんって?
本当は「Feraligator」としたかったんだろうけど、当時ポケモン英名には10文字制限があってじゃな…。
ただ、第六世代以降も特に修正はされていない。

【203】キリンリキ

英語:Girafarig。
日本名が「キリン」を回文にした物のため、英語名もキリンの英語表記である「giraffe」を回文にした物になっている。英語圏ではない韓国語版も同様。
また、中国語版では「麒麟奇」と種族が変わっている*2が、これは発音の都合によるもの。
「麒麟奇」の発音はqi2-lin2-qi2となり、上から読んでも下から読んでも同じ名前になる。
「キリン」を使うとややこしくなるので「麒麟」を選んだ形だろう。
一応「キリン」の語源が「麒麟」なので*3、キリンのポケモンに「麒麟」表記を使うのも完全に間違いとは言いきれないが。
ちなみに、進化形であるリキキリンの英名もFarigirafで回文になっている。こちらは逆さにした部分の方が前に来ており、尻尾の部分が前に来ていることを表している。

【360】ソーナノ

進化形のソーナンスは日本語の「そうなんす」とかけたダジャレだが、英・独・西版は「Wobbuffet」であり、wobble(ふらふら、ぐらぐらする)、buffet(ぶん殴る、カウンター)とバトル面での性能を意識したネーミングになっている。
……なのだが、第三世代で追加された進化前のソーナノは「Wynaut」でwhy not? (そうしようorそうなの?)と急に日本語のダジャレを考慮したネーミングに切り替えられており、進化系列で意味合いが統一できていない。

ちなみに独・仏・韓版は最初からそれぞれの言語での「そうなんす」と「そうなの」になっているためこの問題が起きていない。後付け故仕方ないとこもあるがもう少しうまくできなかったものか。

【445】ガブリアス

英名Garchomp。
日本語のガブリアスは咬み付く動作の擬態語であるガブリにホオジロザメの学名であるCarchariasの後半の-riasをくっつけたものだが、英語ではGar(獰猛で顎と牙が発達した肉食魚の一種)にchomp(英語での咬み付く動作の擬態語。まさに日本語のガブリ!と同じような使い方をする言葉)を合成することで前述のCarchariasに語感を似せている。
結果、どちらもサメがガブリ!と咬み付くような印象を与える名前になっている。
また、ガブリアスの進化前であるフカマル、ガバイトの英名はそれぞれフカマルはGible『ground(大地)とnibble(かじる)の合成語』、ガバイトはGibite『Gible(フカマル)とbite(咬み付く)の合成語』ですべて咬み付くニュアンスの名前になっており日本名より統一感のあるネーミングとなっている。
他の言語でも基本的には咬み付くサメ、もしくはホオジロサメというニュアンスの名前になっているが、ガブリアスの特徴的な頭部のデザインモチーフであるシュモクザメが組み込まれた名前はない。
スタッフ的にはやはり温厚なシュモクザメよりも凶暴なホオジロザメのほうがガブリアスらしいと思われているようだ。
いっぽうモチーフがホオジロザメそのものかつ咬み付き技をメイン武器とするサメハダーの英名はSharpedo『shark(サメ)+torpedo(魚雷)』という突撃力を強調したネーミングなのだが、むしろ咬み付き技よりもじしんやげきりんをメイン武器としていてなおかつマッハで空を飛ぶガブリアスのほうがSharpedo、咬み付き技をメイン武器とするサメハダーのほうがGarchompに相応しいように思えなくもない。
ガブリアスもほのおのキバやかみくだくなどの咬み付き技をサブ武器としてよく使うし、サメハダーは特性加速で速度がどんどん上昇していくのでそれぞれの名前が似合っていないわけではないが。

【483】ディアルガ

世界共通名称:Dialga。なんもおかしくないって?
「増田部長のめざめるパワー」ではこの名称に関して、スペイン語の翻訳スタッフが当初NGを出していたことが語られている。
いわく、「Alga」に「昆布」という意味があり、伝説っぽくないから、というものである。
最終的にはDialga:デコンブというようなニュアンスに見えるかどうかとやり取りした上でディアルガに決定したとのこと。
外国語名もなかなか難しいものである……

【563】デスカーン

海外は子供も視聴するコンテンツのゾーニングに厳しいルールが課せられている地域があり、そうした地域では暴力的なワードなど「使ってはいけない言葉」が存在する。
当然「死」なんてもんはそうした使ってはいけないワードの一つなので英・伊・西版では「Cofagrigus」という名前になっている。
coffin(棺)agri(土の)sarcophagus(サルコファガス*4)egregious(実にひどい)という単語のかけ合わせ。

海外ユーザーからすると「英版は「セッカーン」なのに日本語版は死の棺とか非常にクールだ」そうな。
また、fagという並びが同性愛者への差別用語に該当してしまうためゲーム内のNGワード判定に引っかかってしまい、ニックネームをつけないとGTSで交換することができないという不具合も一時期誘発してしまっており、そういう意味でも海外ユーザーから賛否を呼んでしまっている。

ちなみに独・仏版はエジプトのファラオから名前を取り独はEchnatoll、仏はTutankaferでそれぞれ日本語的には「偉大なるイクナートン」「鉄のツタンカーメン」と言うニュアンス。こちらはなかなかカッコいい翻訳ではないだろうか。

一方中国は意外にもこの辺りの規制がないらしく「死神棺」という日本人からするとかなり凶悪な字面になっている。



【589】シュバルゴ

日本語名の時点で、シュバリエ(騎士)+エスカルゴという十分欧米で通用しそうな名前だが……。

英語名のEscavalierは、エスカルゴキャバリア(=シュバリエ)
フランス語名のLançargotは、ランスエスカルゴ
ドイツ語名のCavalanzasは、カヴァリア(=シュバリエ)ランツェ(=ランス)

なんと、騎士・槍・カタツムリという要素が全て異なる順番で組み合わせられている。日本語名のままChevargotとしている言語は欧米言語にはない。
ここまでさまざまな組み合わせでネーミングが成り立つことがすごい。

【686】マーイーカ・【687】カラマネロ

それぞれ英名がInkay・Malamar。
別に普通の名前なはずだが、日本語的には陰茎・マラをイメージしてしまう。
烏賊だけに烏賊臭い。

【711】パンプジン

中国語名が南瓜怪人。なんだか予算の少ない昭和特撮に出てきそうな名前である…。
ちなみに中国語版で○○人というネーミングのポケモンは他にも夫人鷹人狼人などがいるのだが、「怪人」にされたのはよりにもよって四肢のないパンプジンだけである。
微妙に謎である。

【714】オンバット・【715】オンバーン

英名・イタリア語名・スペイン語名:Noibat/Noivern(ノイズ+バット/ワイバーン)で、
フランス語名:Sonistrelle(ソニック+アブラコウモリ)/Bruyverne(騒音+ワイバーン)と、日本語の意味からすると順当な名前。

ところがドイツ語名はオンバット:eF-eM、オンバーン:UHaFnirとひと目見ただけでその特異性がわかる名前になっている。
言うまでもなく、途中に大文字が来るのはバリヤードやカプを除けばこいつらくらいであり、
オンバットに至ってはいちおうは単複同形固有名詞でもあるポケモンであるにもかかわらず、小文字からスタートする。
ちなみにそれぞれFM(周波数変調)、UHF(極超短波)が由来。

【760】キテルグマ

英名:Bewear。Bear(くま)+Wear(着てる)なのでこれだけでも日本語の訳になっているのだが、
もうひとつ、「用心する」Bewareも含まれている。そりゃ気をつけないと背骨を砕かれるもんな…。

【793】ウツロイド

ドイツ語名:Anego。古代ギリシア語で「無」を意味する接頭辞にエゴ(自我)をくっつけているのだが、
日本人から見ると「姉御」にしか見えない。
ちなみにフランス語名は「ゼロ」と「イド(本能)」をあわせたZéroïdとなっている。なんかかっこいい。

【804】アーゴヨン

中国語名:四顎針龍 / 四颚针龙。アーゴがイタリア語で針、ヨンが韓国語で龍を意味するため「針龍」、そして4つに分かれる顎を持つことと「日本語のアーゴヨン→顎・四」という、国を跨いだダジャレも含めたネーミングとなっている。
中国人にこのネタ伝わるのか?

【862】タチフサグマ~【867】デスバーン

第八世代リージョン追加進化・リージョン分岐進化の英名は結構うまい訳になっている。
まずタチフサグマはObstagoonだが、これはZigzagoon(ジグザグマ、Zigzag/ジグザグ+racoon/アライグマ)を捩った、Obstruct(立ち塞ぐ)+Goonである。
ちなみにマッスグマはLinoone(Line/直線+racoon/アライグマ)であり、ちゃんと矛盾しないネーミングになっている。

つづいてニャイキングはPerrserker。Persian(ペルシアン)+Berserker(ベルセルク)。

サニゴーンがCursolaでCorsola(サニーゴ、Coral/珊瑚+Sole/珊瑚のかけら)にCurse(呪い)。

ネギガナイトがSirfetch'dでFarfetch'd(カモネギ、Far-Fetched/信じがたいこと)にSir(サー、男性への敬称)。
ちなみに信じがたいってどこから来てるかって?そりゃ鴨がわざわざ葱背負ってくるようなこと自体が信じがたいって話さね。
ちなみに独語名はLauchzelot(Lauch/リーキ+ランスロット)とこちらもなかなか。

バリコオルがMr. RimeでMr. Mime(バリヤード)+Rime Ice(霧氷)、更にRhyme(押韻)。

最後にデスバーンがRunerigusでCofagrigus(デスカーン、Coffin/棺+サルコファガス)+Rune(ルーン)。
ちなみに中国版デスバーンも死神板という(日本人からすると)凶悪そうな名前になっている。

余談

ここまでポケモンの名前について記述したが、ポケモンの技の名前も面白い。
ただ、どうしても海外名では納得できない技もある。
「とんぼがえり」などどう訳せばいいのか?
「U-turn」と普通に訳されているが、何故にむしタイプなのかが気になる。
「のろい」も同様。海外では「呪い」の意味で訳されているが、ゴーストでない奴らは失敗でもしてるのか
他にも「ねこだまし」(Fake Out)が何故に猫ポケモンばかり覚えるのか?等々がある。


こういうケースはさすがに外国語サイトでも「日本語ではこうなっている」と説明される様子。

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最終更新:2023年10月14日 15:35

*1 海外の「プディング」は蒸しケーキもしくは固めのゼリーのような物となる

*2 キリンの中国語表記は「长颈鹿」

*3 明朝時代に中国に持ち込まれたキリンが「麒麟」と名付けられた逸話が元ネタとされる

*4 ミイラを納める石棺