二虎流(ケンガンアシュラ)

登録日:2020/5/1(金) 16:00:00
更新日:2025/03/21 Fri 18:08:14
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二虎(にこ)(りゅう)とは『ケンガンアシュラ』の主人公十鬼蛇王馬の使用する謎の武術。
世間では十鬼蛇二虎が創設し、1代で途絶えたといわれている。




概要

元は不法占拠地区内にて「臥王流」と呼ばれる日本の古流柔術から発展した体系で、源流の技術のうち武器術や暗殺術などを廃して素手格闘術に特化させたもの
曰く「現代には不要な技術」を無くし、更に「怪腕流」など他の流派の技術を取り込んだことで、
奇襲を基本とする臥王流とは異なり、真っ向勝負に向いた仕上がりとなっている。
臥王流の発展型ではあるものの、源流の単純な上位互換という訳ではなく
下記の系統のうち操流や金剛については臥王流からおおむね引き継がれている一方、
白兵戦用の武器術が見られず*1、逆に実戦では使いづらい技法の水天*2を取り入れるなど、
総合的に見れば臥王流とは相互互換の技術体系に仕上がっていると言えよう。
また槍や鞭などにも対応できる対武器用の技術や、その名残に近い技も散見される。

技法は主に4つの系統に分けられ、
  • 自他の身体の力の操作を行う柔術中心の操流ノ型(そうりゅうのかた)
  • 歩法と走法が中心の火天ノ型(かてんのかた)
  • 肉体硬化による防御と打撃に特化した金剛ノ型(こんごうのかた)
  • 関節技や極め技及び脱力による肉体の軟化に特化した水天ノ型(すいてんのかた)
の四つが存在。また2種類の型を組み合わせて別種の技としても運用可能。
また、番外扱いで「無ノ型」が存在する。

これら4系統の技には(きわみ)と呼ばれる奥の手が存在する。
ただしこれは他の格闘漫画によくある「一撃必殺になり得る切り札」というニュアンスでの奥の手ではなく「どのような身体状況であっても最後まで使うことができる」という意味での奥の手。
強力な技であることには間違いないが、殺傷力には直結していないのが特徴的。

なお「一子相伝の武術」という訳でも「原理を秘匿しなければならない裏の武術」という訳でもないため、使い手が伝授したければ自由に他人に伝授することも許されている。
また世の中には似たような技も存在しており、ニュージランドのマオリであるムドー一族が用いるムドー家流格闘術などは、操流に相当する「風」、水天に相当する「水」の系統が存在し、また二虎流の奥義に近い技まである。


種類

操流ノ型

いわゆる格闘漫画などの「合気」のイメージに近いもので、相手の力を受け流し、あるいはそのまま返すことを得意とする防御主体の技術体系。
敵の打撃を受け流して急所への命中を回避する手段にも使うことができる。
臥王流の時代から存在するある意味では由緒正しい技術。ムドー家流においては「風」と呼ばれる技に近い。

  • (やなぎ)
相手の力を見極めてタイミングを見計らって僅か数mgだけその力に加重することで力の流れを乱し、相手の攻撃を逸らし体勢を崩させる柔の技。
力の流れを乱して暴走させることで力の潮流を己の支配下に置くことが肝であり、敵を転倒させるのみならず、多人数が相手ならば敵の攻撃の流れを逸らして意図的に同士討ちさせることも可能。
使いこなすには力の流れを見切るだけの優れた動体視力が必要となる。
基本崩し技であるため攻撃力自体は低いが、王馬は好んでこの技を使用しており作中で最も多く使われた。
ただし完璧な技ではなく、若槻のような規格外の怪力持ちだった場合、使い手の受け流す力以上のパワーで無理矢理抑え込まれてしまうと無力化されてしまうのがネック。
臥王流にも同名にしてほぼ同性能の技が存在しており、二虎流では最も古い技法の一つと言える。

  • (がら)
相手の攻撃を受け止めるようにして力の進行方向を変えることで、打撃力をそのまま押し返し相手の関節を破壊するカウンター技。

  • 流刃(りゅうじん)
側面から力を加えることで、打撃の軌道をずらす守りの型。
理論上は銃撃をも防ぐことができ、達人にもなれば銃弾の入射角を見極め手の甲の骨で弾道を変えて受け流している。
二虎はこの技で幼少期の王馬を救っており、王馬も「俺の二虎流はこれから始まった」と言うなど感慨深い技でもある。

  • 転地(てんち)
身体に強烈な回転をかけながら放つ回転式の肘撃ち。
手加減した状態であっても螺旋を描くような軌道で相手を吹き飛ばす程の威力を持つ。

  • 絶氣(ぜっき)
相手の胸の中央部を掌で強打し神経を破壊する技。
背骨の一部を歪めて自律神経を抑制する応用法もあり、神経異常による幻覚や幻聴を治療することも可能。

  • 操流ノ型・極「傀儡(くぐつ)
体内の力の流れを操流によって増減させ、必要最小限の力で体を効率良く動かす技。
一見地味だがマスターすることで、強者との連戦に次ぐ連戦で満身創痍となった肉体であっても疲労を感じさせないスムーズな動きを取る事ができる。


火天ノ型

立ち技で用いる歩法などが中心の技術体系。
その性質上直接的な攻撃技はないが敵を翻弄するにはうってつけであり、スタンド状態では欠かせない技術である。

  • 火走(ひばしり)
焔のように揺らめいて敵を幻惑する歩法。

  • 烈火(れっか)
瞬発力を活かし、一気に間合いを詰める走法。

  • 幽歩(ゆうほ)
瞬時に相手の死角に回り込み、まるで攻撃をすり抜けたように錯覚させる歩法。

  • 火天ノ型・極「縮地(しゅくち)
筋肉に頼らず「骨で立つ」ことを極意とし、重心の傾きによって移動する歩法。
通常の動きとは明らかに「間」が異なるため、相手は突如として間合いが伸縮したかのように錯覚する。
仙術「縮地」から名を頂いている。


金剛ノ型

筋肉を絞めることで鋼のように固めて攻防に転用する技術体系。
主に打撃戦に用いるが、組み技へのカウンターにも使用可能で、硬化させた手指で相手を掴んで逆襲することもできる。
攻防共に強力な効果を発揮する反面、『ケンガンオメガ』では練度不足だと肉体を護るどころか逆に自傷させてしまう諸刃の剣としての側面が描かれている。
こちらも源流の頃から存在している技術が元になっている。

  • 不壊(ふえ)
『金剛ノ型』の基本となる技。
攻撃のインパクトの瞬間に当たる部位の筋肉を締めることにより筋肉を硬化させ、あらゆる打撃に耐える剛の技。
極めればコンクリート片を投げつけられてもびくともせず、ナイフすら刺さらなくなる。
肉体の硬化により衝撃の浸透率を局限させる効果もあり、自分より少々体格の勝る相手の打撃くらいならば力負けもしなくなる。
基本的には受け身にも使える防御の型であるが、肉を締めた状態で相手を向かい撃つことで攻撃にも転じることが可能な攻防一体の技術。

ただし欠点もちらほらあり、まず筋肉を締めて防御する技のため、頭部のような筋肉の量の少ない部位では当然使用することは不可能。
また、筋肉を締めて固める関係から発動中は機動力が低下してしまう。このため繊細な動きが必要な操流ノ型とも相性が悪く、複合することができない。
そのせいか修業時代〜初期の王馬も「ダサい」「性に合わない」と好んでいなかった。

実際のところ臥王流の同性能の技である「纏鎧」は、原則として回避などが不可能な際の緊急対応技であり、
また同じくその応用である「穿」なども刃物が手にあれば不要であるため、基本的に常時発動するようなものではない。
作中でも不壊・纏鎧に相当する技の使い手が、使いっぱなしにしたせいで機動力と体力だけを徒に消耗する結果となり敗北してしまっている。

  • 鉄砕(てっさい)
不壊の要領で拳や脚を固めて打撃力を強化する技。
一見すると普通のパンチだが、相手が手に何か握り込んでいるのかと錯覚させるほどの威力があり、拳を固める時に生じる握力は相当なレベル。
本領を発揮すれば岩壁に自身の身長を超えるクレーターを穿つほどの破壊力を発揮できる。
こちらも万能ではなく、『ケンガンオメガ』では拳を凄まじく固める関係上、「長時間使い続けると負荷のせいで逆に使用者の拳にダメージが発生する」「技の練度が低い場合、拳の硬化の解除に時間がかかり中々元に戻せない」といった難点が明らかになった。
ただしそれを応用することで「ずっと硬化させたまま相手の腕などを握り砕く」という戦法も可能ではあるため、非効率ではあるが活用自体はできる。
派生として
  • 鉄砕の要領で行う蹴り技「鉄砕・(しゅう)
  • 鉄砕で固めた拳によって高速かつ連続で相手の顔面を殴り付ける、次世代型の「鉄砕・(つらね)
がある。

  • 鉄指(てっし)
筋肉で指関節を硬化させて敵の急所を突く技。人体の点穴を圧迫する場合にも用いられる。
シンプル故に相手の骨を砕く、刃を指で挟みへし折る、骨折した指で拳を固める等の応用が可能。
また点穴を圧迫して自身の体に掛けられた極め技を外す際にも有効となる。
臥王流で言う「穿」に近いが、今のところ源流と異なり人体を無理やり貫き殺害する描写はない。

  • 飛斧脚(ひぶきゃく)
飛が会得した次世代二虎流の技。
敵の頭部目掛けて放つ、敵の首から上を刈り取るかの如き強烈な飛び蹴り。
「火走」による高速移動から奇襲のように瞬時に繰り出せる技。

  • 金剛ノ型・極「抱骨(ほうこつ)
筋肉のコントロールにより負傷部位を動かす技。
例え骨折をしていても適切な応急処置さえされていれば、骨折箇所であろうと万全な時と変わらず自由に動かすことができる。
そのあまりに自然な動作は骨の専門家である暮石光世でさえ舌を巻くほど。
怪腕流にも類似する技が存在する。


水天ノ型

肉体の脱力による軟化や関節技を旨とする技術系統。
現代格闘技を意識しているが如く寝技や組み技も豊富。
一対一の素手格闘試合には欠かせない型である反面、多人数や武器相手には使いづらい技が多いためかこちらは実戦暗殺術に近い臥王流では見られない。
だが脱力による「攻撃の受け流し・分散によるダメージの軽減」は実戦でも有効であり、似たような概念の技術がムドー家流にも「水」として存在する。
これも完璧な技ではなく、脱力によるダメージの軽減は密着状態だと効果が半減してしまうという欠点がある。

  • 水草取(みなくさと)
脇と手の甲を絡めるように槍などの突き込みを封じる技。

  • 首断(しゅだん)
相手の隙をついて背後に回り、背中合わせになった状態で喉に両手を回して組んだまま体を屈め、頸部を締め上げると同時に海老反りで背骨を苛む極め技。

  • 捻切地蔵(ねじきりじぞう)
投げ飛ばした相手の腕を取り、肩と肘の関節を極める技。

  • 海月固(くらげがた)
相手の懐に入り、ヘッドロックを逆向きにする要領で上腕部を使って頸部を締める技。
そのまま投げ技へと繋げることも可能。

  • 水龍脈(すいりゅうみゃく)
組みついた相手の腰を取って投げ、腕で首と脚を上から押さえつけると同時に脛の部分で相手の背を下から押し上げることにより、首と背骨を一度に極める技。
本編では絞め技として使用していたが、本来は技をかけて「即折る」ための殺人技。

  • 双魚之縛(そうぎょのしばり)
相手の突き手を取って腕ひしぎの要領で抱え込み、逆の手を両足で抑え込んで相手の動きを封じる技。

  • 舞蛇(まいへび)
飛が会得した次世代二虎流の技。
やアイススケート選手を彷彿とさせる柔軟な身の逸らしにより相手の攻撃を回避する。

  • 水天ノ型・極「水鏡(みかがみ)
相手の体を利用して関節技・絞め技をかける技。4つの極の中では唯一の攻撃技。
本来は重傷や骨折などで自分自身の腕では通常の絞め・極めを掛けられなくなった状態で使用するためのものだが、五体満足な状態で使っても十分に強力。
奥義・鬼鏖同様決まった型を持たない無形の技であるため状況に応じた臨機応変な使い方が求められる。
修行当時に二虎から水鏡の技の内容について聞かされた当時には「『極』の割に地味で不細工な技だ」と言って王馬はあまり好んでいなかった。
コスモ戦で使った時にはコスモによって右手の小指が折れた状態であったので、投げ技をして右の上腕と肩でコスモの左腕を挟み込んで右手で左腕を掴むことで、自身の上腕と肩とコスモの左腕による首絞め技になり更に王馬自身のの体でコスモの内臓を圧迫するという形で使用した。

複合技

上記4系統の技術を組み合わせた応用の技術体系。
攻撃力が大幅に高まるため、これらの技がしばしば戦いの決め手になる場合が多い。

  • 操流・火天ノ型「不知火(しらぬい)
頭部へのハイキックの勢いを保ったまま体を回転させ、逆の脚での踏み付けに繋げる技。

  • 操流・火天ノ型「畝焔(うねりほむら)
トップスピードを保ったまま上半身を一気に傾け急激な方向転換を行う走法。
重心の移動を利用することで90°近く進行方向を変えられるが、無理な動きを行うため足への負担が大きい。

  • 操流・水天ノ型「水燕(すいえん)
拳を緩く握り、不規則な起動でラッシュを叩き込む技。

  • 金剛・火天ノ型「瞬鉄(しゅんてつ)
火天ノ型「烈火」のスピードを乗せた状態で金剛ノ型の技を繰り出す技。
二虎流最速の技だが、攻撃が直線的でタイミングを読まれやすいためカウンターで使用する時に最も高い効果を発揮する。
シンプル故に派生技も多く、
  • 「不壊」の要領で肘から突進する「瞬鉄・爆」
  • 強烈な踏み込みで瞬時に接近し鉄砕で固めた拳のストレートを撃つ鉄砕との複合技「瞬鉄・砕」
  • 「鉄指」で高速の抜き手を放つ「瞬鉄・穿」
が存在する。
『ケンガンオメガ』では、「相手が不壊のような技を習得していて相手の方がその技の練度が高い」という状況下の場合、殴った自分の方の拳が損傷して大ダメージを負ってしまうという弱点が明らかになった。

  • 金剛・水天ノ型「鉄砕(てっさい)(かい)
大外刈りに近い形で相手を投げ飛ばし、その勢いのままに倒れた相手に「鉄砕」の拳を叩き込む技。

  • 火水天ノ型「炎水(えんすい)
突進した速度を維持したまま急に上体を低くして相手に組み付く技。

  • 操流・水天ノ型「骨喰(ほねばみ)
関節を緩めて可動域を広げる技。
体質で可動域の広い者とは違い、使用すると骨に相応の負荷がかかる模様。

  • 操流・水天ノ型「縛鬼(ばくき)
飛が会得した次世代二虎流の技。
相手の力の流れを操作して受け流しながら瞬時に四肢で相手の両腕と首を絞め上げる。

  • 火・水天ノ型「絶壊(ぜっかい)
飛が会得した次世代二虎流の技。
強烈な踏み込みで近づき、円を描くような両手を合わせた掌打を叩き込み吹き飛ばす。
似たモーションで言えばかめはめ波

  • 操流・火天ノ型「(ヒル)
もう一人の十鬼蛇二虎」が独自開発した二虎流の技。
人差し指と中指を密着させ、操流の身体操作と火天の加速を利用して指が触れた部位の皮膚に摩擦で火傷を生む技。
ジャブのように高速で腕を振るい、衣服諸共一瞬で皮膚を焼き焦がす。
本人も嫌がらせ用のせこい小技だと自認しているが、食らい続けた相手は例外なく発狂したとも語る一種の拷問技。


その他の技

  • 無ノ型「空」
鳩尾から丹田にかけて意識を集中させ、腹圧を高め一気に空気を放出させることで、精神の統一や体内機能の調整を行う空手の息吹や中国拳法の内攻に類似する呼吸法。

  • 体外離脱
睡眠中に行うイメージトレーニング。
脳内で現実と同じ環境を作り、対戦相手のイメージと戦闘をすることで反復学習と戦闘経験を積むことができる。
王馬は二虎に教わってから14年毎日行っており、1回の睡眠で平均8戦している。
それにしては弱いのは内緒だ。
ただし、相手の実力を一部しか見ておらず情報不足の場合、例え行っても仮想敵の強さは不完全なものとなる。

  • 水中シャドー(仮称)
二虎流独自のトレーニング法。
水中に潜って息が続く限界までシャドーを行う、水中抵抗を利用した無酸素運動によって全身の筋力と心肺機能を鍛えるもの。
ケンガンアシュラ』時代の王馬は平均約7分間の水中シャドーが可能であった。

  • 二虎流「鬼車(オニグルマ)
臥王鵡角考案の新型二虎流武術。攻撃技だが型は判明していない。
左の掌底を顔面に当ててひるませてから、そのまま右腕を大きく掲げた上段の構えから強烈な加速度をつけて放つ超高速のアッパーカットを撃ち込む連続技。


奥義

鬼鏖(きおう)


操水火金

その技は、四位一体


ニ虎流の四系統全てを極めることで初めて伝授される、「鬼をも殺す」という意味を冠する奥義。
その正体は上記の基本四系統全ての要素を持つカウンター。ニ虎によればこの技は全系統の上位にあるのではなく中にあるのだという。
その原理は
1:「操流」によって相手の攻撃の力の方向をずらし受け流す
2:「水天」の脱力によって水となった体に受け流した威力を透過させる
3:「火天」によって瞬時に最適なポジショニングや姿勢を確保
4:「金剛」によって受け流した威力に自分の力を上乗せして叩き込む
という難解なもの。故に操流→水天→火天→金剛と繋げるカウンターを全て鬼鏖と呼ぶ。
即ち本質はあらゆる局面と相手の攻撃の種類に応じて変幻自在に形を変える無形のカウンターであり、無形故に如何なる局面でも繰り出せるのが最大の強み。
劇中では「胴体で受けて拳で返す」という使われ方が多かったが、例えば「頭部への突きを蹴りで返す」といった芸当も可能。

この技で特に重要なのが操流と水天。
身体は加速装置にも減速装置にもなる為、受け流す方向を誤れば攻撃を受けてしまい、脱力が不完全ではダメージを受け流す過程で自滅してしまう諸刃の剣。
加えて自分の体を「道」にして力を返すため、内臓への負担も大きいというデメリットを抱えている。

決まった形を持たないことが最大の強みであるが、逆に言えばこの技の使い手は相手や戦局に応じてどう受けてどう返すかを瞬間的に判断し、戦闘という極限環境下でも完全な脱力を実行しつつ、臨機応変且つ複雑な「力の操作」を瞬時に実践しなければならない
よって使い手の瞬発力・決断力・想像力・創造力といった生まれながらの資質に性能が直結する。
そのためあの黒木玄斎にすら「技の性質を見切った自分でも防ぐことは容易ではない」と言わしめ、この技を体得した王馬を「化生の類」と端的に評して直球に人外呼ばわりした魔技。
事実決勝戦の最後に放たれた鬼鏖も、防ぎこそしたものの右腕を犠牲にせざるを得なかった。


この技の取得には「感覚をひたすら研ぎ澄ます過程」が必須。
そのために死の森として知られる餓鬼ヶ原樹海の内部に篭り、手加減無しの二虎を相手に延々と組手を重ねることで「心身が極限まですり減るほど徹底的に追い込む」という形で行われる。
かつての仲間もこの技の伝授の過程で命を落としたという。
ちなみに組手はお行儀よく常に真正面とやり合うわけではなく、不意打ちあり奇襲ありの何でもありの実戦仕様。休憩時間=ほぼ気絶に近く、たとえ気絶しても長時間気絶しようものなら問答無用で二虎からの襲撃を受ける。
食事も自給自足で賄う必要があり、二虎からの襲撃を警戒しながら食事の採集を行わなければならない。
「死ぬ気で頑張れば乗り越えられるシロモノを、「試練」とは言わねえ」とは師匠・二虎の談。
このように二虎流の他の技に比べて別次元に習得難度が高く、習得に失敗すればそのまま死に至る荒業を乗り越える必要があるので、ニ虎も伝授にはあまり乗り気ではなかった。
後述の通り、伝授の過程で仲間が命を落としたとされる二虎流の奥義ははこの技ではなく憑神の可能性が高く、鬼鏖は十鬼蛇二虎考案の可能性が高い。
友が命を落としたなどこの技の伝授に関する話は出鱈目であると思われ、どのように考案したかは不明である。
少なくとも二虎と二虎流の再構築に携わった黒木玄斎は知らない技であった。


もう一人の十鬼蛇二虎考案の奥義

憑神(つきがみ)前借(まえが)

本編開始から王馬が度々使用していた技。
正体は意識的に心拍数を高めることで血流を加速させて発生した熱量を運動能力に変換し、攻撃のスピードを急上昇させる技。
発動中は心拍が高まることで心音がエンジン音のように周囲へ鳴り響き、体表の血管が腫脹するためか体色も赤く変化のが大きな特徴。状態が進行すると白目が呉一族のもののように変化する。
攻撃の高速化だけでなく、途切れない攻撃が可能になるメリットを有しているのも大きな利点。
王馬の切り札であり、雷庵戦までは追い込まれると安易に利用してしまうクセがあった。

攻撃力の飛躍的な向上を齎す反面欠点も多い。
まず第1に、急激な速度の増加をもたらす代わりに動きに精彩が無くなり、二虎流の一部の技が使えなくなる。
特に金剛ノ型との相性は最悪で、コントロールできていない状態で使えば、最悪血管が裂けてしまう恐れがある。
使用者よりも体格や身体能力で劣る相手を短時間で蹂躙する場合には非常に有効である反面、巨漢との相性は悪く、一時的に互角の戦いを繰り広げられるようになるものの戦闘後には肉体に大きなダメージを負う。
事実、王馬はプロレスラーの関林戦では技の手数は増えても決定打にはならず、自身がダメージを負ってしまっている。

第2に、この技の使用時には心臓に平常時の4〜5倍に相当するほどの負荷がかかるため、全身の血管に損傷が生じて吐血や鼻・目からの出血を起こす。
そればかりか、脳内出血が原因で記憶の喪失や混濁、幻覚、幻聴など重篤な症状が現れ、記憶の混濁によるものか普段以上に好戦的な性格へと変化する。
王馬が記憶の一部を失っていたのも、この副作用のため。

そして第3にして最大の欠点として、血液の循環を速めるという性質上、出力に比例して出血量が増加するため、裂傷を負った状態で使い続けると失血死する可能性がある。

総じて「使えば使うほど命をすり減らす諸刃の剣」ともいうべき危険な技であり、王馬自身も自分の命がそう長くないと理解していた。
しかしトーナメント2回戦以降、王馬は出力をコントロールすることができるようになり、力の上昇率を抑える代わりに体の負担を軽減することが可能になった。
今までの前借りは言わば暴走状態であったが、出力調整によって記憶の混濁も起こらず、鬼鏖も含めて二虎流との併用も可能になり、王馬は「自分だけの武」を完成させた。

ケンガンオメガ』では王馬vsロロン戦で久々に発動された…が、心臓の寿命を縮める禁じ手という性質は変わらず。
「連続使用5秒以内」がリミットらしく、完全開放を解禁した際は「(これはヤベぇ。我ながらよくもまあ、こんな技長時間やってたぜ……)」と激しい疲労を味わいながらも自嘲していた。
その代わり「出力を抑えながらの瞬間発動」ならば負担は軽く、一瞬だけ発動させて瞬間的にギアを高めるやり方を現在は切り札として使用している。

本来、この技は二虎ではなく「本物の二虎」を名乗る男から授けられたものだが、王馬は誰に教わった技なのかを思い出せずにいた。また、技の名も忘れており、記憶を取り戻すまでは「前借り」と呼んでいた。
開発者によれば、呉一族の「外し」に対抗するために考案された技術であるらしく、潜在能力の解放を行う「外し」とは似て非なるものである。



第弍奥義「降魔(こうま)

危機に瀕した際に風景がスローモーションに切り替わる「タキサイキア現象」の原理を用いた技。
スピードが早くなるわけではないが相手の動きを的確に見切れるようになり、短時間の連続使用で「深度」が高まる。
ただし自身の意思で「脳のリミッター」を解除することはできず、危機的状況下でなければ発動できない。
さらに使いすぎると自律神経を失調してしまい、幻覚や幻聴に悩まされる危険性もある。

また『ケンガンオメガ』にて大久保直也が使用した「黄金の八秒」は降魔と同じ原理であるが、こちらは深呼吸で大量の酸素を取り込んだ後、思考と呼吸を放棄することで一時的に向上した脳の処理速度を用いて長年刷り込まれてきた戦闘経験の反射だけで戦う闘法。
要は無呼吸打撃であり、降魔を任意で発動するようなものであるが、反射速度・攻撃速度が上昇し攻撃間の隙間が消える反面身体への負荷は激しく、最大八秒間までしか使用できない。そして何らかの要因で体力の消耗が加速した場合使用時間は比例して低下していく。


第参奥義「神魔(しんま)

「虎の器」飛王芳に伝授された新たなる奥義。
肉体が呉一族の外しに似たような状態に変化するが、実態は憑神と降魔の併用。
常人の平常時の数十倍という異常加速した心音は最早簡単に聞き取れないレベルであり、強化の度合いは呉一族の秘技「外し」を瞬間的に凌駕。
  • 若槻の異常筋力に匹敵するパワー
  • 敵の猛攻が静止したスローモーションのように知覚できる視野と反応速度の強化
  • 憑神を凌駕する圧倒的攻撃速度
を得られる。
また常人の数十倍を刻む鼓動によって発生する数十倍の速さの血液循環速度を応用し、傷口から血を弾丸のように飛ばして牽制する小技も使えるようになった。
更に憑神の欠点だった「一部の技の使用不可」が解消されており、上記2大奥義のいいとこ取りと言える効果を持つ。

しかし心臓と脳への負荷は憑神と降魔以上となり「外し」をも上回る負荷が生じるようになった結果、本来は「使用=の文字通り禁断の技。
出力調整を誤れば憑神の比ではないレベルで死に直結するため扱いはかなりシビアとなっている。
二虎の4000人の弟子の中で、命を落とさずに扱えたのは飛王芳のみ。


餓鬼ヶ原樹海

二虎流と因縁深い、不法占拠地区から西へ100kmほど離れた所にある広大な樹海。
一帯が強力な磁場に覆われているため方向感覚を乱され、迷い込んだら最後に度と脱出できないと言われる。
広大な土地と豊富な土壌がありながら如何なる生き物も対応できない。
結果鳥獣の鳴き声も聞こえず、ムカデのような小さな地虫しか生物がいない反面、植物は豊かで薬草も自生している。
二虎曰く「あらゆる生き物を拒む死の森」「ここに比べたら「中」は天国」
劇中では二虎流奥義伝授のため、王馬の最終試練の修行場として用いられた。

……のだが、実は数十年前の時点で樹海の一部は観光地化が進んでおり、中にそびえ立つ苦死山(通称・死者の山)周辺は多分一般人でも安全な登山ルートが設けられている。
世界観を共有している『ダンベル何キロ持てる?』では苦死山が皇桜女学院高等部の課外授業のハイキングで利用されていたりする。


二虎流と十鬼蛇二虎

かつて、不法占拠地区「中」を圧倒的な武力による統一を目論んだ男がいた。古流柔術「臥王流」最後の継承者「臥王鵡角」は孤軍奮闘を続けるも、30年経っても野望達成には至らず、野望を次世代に託すことを決意する。

まず、臥王流から現代において不要な様式を切り捨て、かねてより交流のあった「怪腕流」当主「下地 和文*3が技術の編纂に協力したことで新たな武術「二虎流」が生まれた。*4

そして鵡角は「中」の孤児達を弟子に取り、二虎流を伝授し、その全員に「十鬼蛇二虎」の名を与えた。全員に同じ名前を与えたのも「中」の人間であることを印象付けるため*5と、複数の十鬼蛇二虎が「中」の各地で武勇伝を残すことで「1人の十鬼蛇二虎」となり「中」を統治する為の架空のカリスマを作り上げることだった。

やがて有力組織が二虎の排除に本腰を入れ始めたころに奥義の伝授を行うため餓鬼ヶ原樹海へ向かうが、その時に起きた惨劇で弟子の大半を殺され、鵡角も姿を消してしまった。

ケンガンオメガ第129話現在、登場した十鬼蛇二虎は2名。全員で7人の二虎がいて、二虎や鵡角は二虎をそれぞれを数字で呼び合っていた。
そして潜んでいた裏切り者によって樹海の惨劇が引き起こされ、作中で登場した2名を除いた4名が死亡し1人が生死不明となる。


二虎流の使用者

  • 十鬼蛇王馬
本編主人公。「虎の器」と呼ばれる一人。
前借りによって記憶の一部を失うが後に回復。記憶と二虎流全ての技を取り戻し「自分だけの武」を完成させる。
実はたった4年で二虎流全ての技と奥義を取得していたりする。

  • 十鬼蛇二虎
王馬の師匠。
王馬の命を救い、二虎流を授けた。前借りで暴走した王馬に「枷」をはめた後、「本物の二虎」との闘いで重症を負い、狐影流の平良 厳山との決闘で敗死してしまう。
王馬の前に幻覚として度々登場するが、これは王馬が彼のことを父親のような存在として思っていたため。

樹海の惨劇の後に臥王の足取りを追った先で黒木玄斎と接触している。

王馬に憑神/前借りを授けた張本人。
かつて二虎と同門であったが樹海の惨劇の際にに鞍替え。
その後、二虎に憎悪する刹那にどういわけか二虎流を伝授する。
現在も蟲に在籍し、最高幹部と同等の権力を得ている。

少年時代に王馬に命を救われ、罪深い自分を裁く神として神聖視している。
しかし二虎に師事した王馬が以前とは違う存在になっていたことにショックを受け、二虎を憎悪するようになる。その時に「もう一人の十鬼蛇二虎」に出会い二虎流を伝授された。

「もう一人の十鬼蛇二虎」によって教えられた二虎流の技を使用する。
そのためか、王馬の二虎流を「自分が知る二虎流とは違う」と発言している。

「もう一人の十鬼蛇二虎」が育て上げた第三の愛弟子。「蟲」お抱えの「虎の器」の正体。
王馬とアギトの弟弟子に当たる。
他の蟲構成員同様その経歴を隠し煉獄内に潜伏していた。

続編の『ケンガンオメガ』主人公。
二虎流の達者である王馬と実質的な師弟関係を築いているため、『二虎』とは全くの無関係だが、王馬の指導により習得している。王馬から眼が良いからは覚えが早いと言われている。
現状では柳・鉄砕・烈火・不壊の4種類の技しか習得しておらず、実戦での行使にも慣れていないために発展途上。
だが今までの使い手たちとは異なる運用法も編み出しつつあり、
「お前なら俺と違う方向に二虎流を広げていけるかもな」と、王馬にも太鼓判を捺されており、その才能を認められている。
また他ならぬ王馬が光我への伝授に乗り気であることから、仕合と仕合の間に新技を習ったりと一足飛びで学んでいる。
自力で瞬鉄・砕を編み出して実戦で用いたことから思い入れも深いようで、「中」潜入時には王馬から二虎流の後継者になることまで打診されていた。



虎の器

作中で王馬がこの呼び名で呼ばれ、飛が「虎の器」となることを目論んでいるが、死に際の飛が語った真相は「虎の器」は「十鬼蛇二虎の後継者」であり、「虎の器」と認められれば、二虎の技と知識のすべてが引き継がれるとのこと。

なお、「虎の器」となれるのはあくまで二虎流の使い手だけらしく、二虎流の基になった臥王流の使い手でもある臥王龍鬼王馬と同じ遺伝子を持つ(=王馬と龍鬼は「蟲」によって作られたクローン)が「虎の器」にはなれないとのこと。


余談

奥義・鬼鏖の伝授のために登場した餓鬼ヶ原樹海だが、世界観を共有している『ダンベル何キロ持てる?』ではこの樹海にそびえ立つ「苦死山」(通称「死者の山」)が学校の課外授業のハイキングで利用されていたりする。

外部の技術を取り込んではいるが、上述もしたニュージーランドの原住民であるマオリ族の伝説の勇者「ジョナ・ムドー」の一族に伝わる武術はニ虎流に酷似しているが、あくまで似ているだけで直接的な関係はない模様。
どんな武術も突き詰めれば同じ人間による身体運用法であり、二虎流自体も様々な技術体系を編纂したものだから、世の中に類似した技術があるのは自然の理であろう。


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最終更新:2025年03月21日 18:08

*1 二虎流の使い手には高度な武器術を用いた者たちもいるが、彼らですら「二虎流」の名を冠した武器の技は使っていない。なお原型の臥王流では明確な武器術が複数存在しており、作中ではそれらを素手格闘に応用しているケースがままある

*2 修行時代の王馬が麻薬の売人と戦った際、地面にガラス片を撒いているシーンでも分かるが、寝技は地面が悪いと大半が無効になってしまう。組み技自体も刃物を持っていれば重要性は低下するため、グラップリングが主体の水天の攻撃技は一対一の試合以外だと活かすのが極めて難しい

*3 黒木玄斎の師匠

*4 二虎流に臥王流と怪腕流に類似・同名の技があるのはそのため。

*5 「十鬼蛇」も「二虎」も「中」の居住区の名前