スペック(バキ)

登録日:2013/05/24 Fri 12:32:11
更新日:2025/07/11 Fri 22:11:50
所要時間:約 5 分で読めます






分かるかね看守諸君ッ
私はねッ

敗れ去りたいのだよッッ


スペックとはバキシリーズ第2部「最凶死刑囚編」に登場する死刑囚の一人である。
モデルとなった人物はロシアの大量殺人犯、アンドレイ・チカチーロ。

CV:伊丸岡篤(PV)、茶風林(2018アニメ)

目次

【概要】

初登場は第五話「アメリカ・スペック」。
昼食のトマトケチャップを利用し、血を吹いたフリをしてカウンセラーを食事受け渡し口に近づけ、パンチ一発で顔を潰すという悪行を既に行っていた。*1
そのため彼の独房の周囲には金属製品を付けて近づくことすら許されないという。
シンクロニシティーにより空手のブラックベルト(黒帯)のカウンセラー、ジム教授と警備員数名を殺害後、金歯を使って鍵を外し
水深200mの潜水艦を利用した海底刑務所より脱獄。
陸に上って監視員を皆殺しにしてタバコをふかし、意気揚々と東京に赴いた。

風貌は50歳程度、スキンヘッドに皺の深い顔つきで身体中にな刺青が彫られている。身長は完全版表紙によると7フィート3インチ(220センチ)。死刑囚の中で最も大きい。

その性格は後々の顛末を含めると死刑囚一残虐非道である。
常に狂気を滲ませた笑みを浮かべ、初対面の刃牙の目の前で自分の頬を拳銃で撃ち抜き、握手と称して人の手首
を渡し、

オマエノ愛スル者ノ手ダゼェェッ!

と叫んで前蹴りを食らわす程外道。
後でタダのモブの警官の手首だと分かるが
いや、それでも人一人の手首切り落とした残虐行為に変わりはないが……
いきなり出て来た死刑囚の残酷さ、外道度合いを読者にはっきり知らしめただろう。
刃牙もまた、幼少時に自分を挑発するため夜叉猿の首を玩具にした範馬勇次郎になぞらえたのか、
『アイツそっくりだ』とその残虐性に戦慄するのだった。

その後は地下闘技場に向かうことに。
死刑囚が集合した際には徳川のじいさんに「アンタにわざわざプレゼントされるまでもなく、ここに素敵なのがゴロゴロいる」と発言して口火を切って死刑囚同士が睨み合う一触即発の空気を作り出すなど胆力もすさまじい。

その場では何もすることなく闘技場を後にして警察官にあっさり捕まるが…

外に出たい時には独房の壁を破って好きな時に出てコンビニで中華まんを買ってくるなどやりたい放題。*2警察署を完全にホテル扱いしていた。
しかも、この中華まんを買ってきた時に日本通貨を持ってるかどうかも疑わしい上に店員が手足が不自然な方向に曲がり血まみれで倒れていたので、
とても合法的な手段で手に入れたとは考えられない。
ぶっちゃけた話、万引き通り越して強盗傷害あるいは強盗殺人である。
恐らく5人の中でキルスコアもトップであり、劇中だけでも日米合わせて100人近くの人間を殺害している。*3
他の4人が無関係な人間を極力手にかけず、「結果的に」殺人をしている傾向があったのに対し、彼だけは明確に殺人を楽しんでいる節が見受けられ、生粋の無秩序型シリアルキラーと言えるだろう。

日本に20人しか居ないテロ対策用装備に身を包んだありがたい特殊部隊の隊員達6人がかりでも全く攻撃(鉄球弾*4)が効かず、
子供扱いして素手で6人全員皆殺しにした挙句、死刑囚と何時出会うか分からない状況下にも関わらず公園でデート中の刃牙を狙うが……


【戦闘能力】


「残念だったな看守諸君…わたしには君等に教えていないことがまだまだある。」

振る舞い、残虐性、放尿量等、色々目につくが本当に突筆すべき点は、
恐ろしく発達した心肺機能であろう。
最高5分間無呼吸で全力の運動・活動が出来るという特性を生かした前述の200mの潜水艦からの脱出、更には自由の女神に素手で殴打痕を残すという大暴挙に出る。
海兵達の「戦争以上に国防的な作戦」が無ければ自由の女神は本気で粉砕されていた。
加えて死刑囚軍団特有の周囲のあらゆる物品・道具を利用した凶器攻撃、不意打ち騙し討ち上等の卑劣でダーティーな戦法も痛烈。
神を素手で破壊した彼にとっては「武器の使用は相手を気遣っていると豪語していた程であり、その実力は確かな物だったのだろう。実際読者からも「死刑囚最強の男」と呼び声も高い。
しかし、勝負を仕掛けた相手が悪かった……

こんな化け物染みた肺活量の持ち主であることから、のちの2018年アニメで付けられた二つ名は「呼吸を捨てた外道」
まさに彼を表現するのにぴったりの二つ名である。

  • 無呼吸連打
自身の超人的心肺機能を生かした打撃の超高速ラッシュ。
絶え間ない無数のパンチやキックが相手を襲う。
「反撃のタイミングもクソも無い」「倒れ骸と化すまで攻撃は終わらない!」とは本人の弁。
アニメでの解説によると「鍛え抜かれたアスリートの無酸素運動をも遥かに凌駕する攻撃」「呼吸しなくては攻撃は続かない。だがその呼吸のタイミングこそがわずかな隙、反撃の可能性を産むが、その呼吸が無いため一瞬の反撃も許さない」とのこと。


【関連人物】

バキのデートを襲おうとしたスペックをいきなりかっさらった人物。
戦おうと服を脱いで露わになった刺青や疵だらけの身体を見てスペックも

「ビューティフル」

と声を漏らした。
街灯に叩きつける、公園のベンチ、脱いだ花山の靴、落ちていた石などの凶器攻撃、前述の無呼吸打撃で追い詰めたかに見えたが、桁外れのタフネスさに物を言わせて攻撃されるなかお構いなく強引に一撃を食らわして立場逆転。
流石のスペックもこれには動揺を隠せず、

(なんてパンチだ……)

「まだやるかい」

冷や汗を流すスペックに問い掛ける花山。

「元気……イッパイ……ダゼ……」

答えるスペックの顔面に更に一撃。

「まだやるかい」

再度問い掛ける花山に怖気付いた様子のスペック。スペックは降参した……

と思いきや

カチャ

「!」

バァン

警察から拝借していた5発の銃弾を噛ませ花山の顔面を爆破する。これで逆転、勝負あり……

と思いきや

「まだ……やるか………」

「ヒ……」

顔面爆破されても倒れない花山。*5
怖気付きながらもヤケクソでパンチを放ったスペックにカウンターでパンチを返す。
殴り飛ばされたスペックは街灯にぶつかり電線に接触した状態で感電し昏倒。そのまま警視庁に土産として送り届けられた。


が………!

  • 片平恒夫(34)
CV:天野ひろゆき(キャイーン)
スペック確保の礼に園田に超VIP待遇として花山を送り届けるよう命じられたドライバー役。警視庁内のポスト本部以蔵
彼の回想の元、復活を遂げたスペックと花山の決戦の全容が語られる。
また、2~3分そこらで彼と園田以外の警官はスペックに殺され殉職させられた為、彼自身はかなりの強運の持ち主とも言えるだろう。

空手の試し割りでよく使われるトリック*6、閃光弾(スタングレネード)を「我々の知る中で最も強い光」、その光を浴びた時に人はどうするか*7、等の様々な薀蓄を交える中で

「やはりアナタ達はワカってない。花山薫という人物を―――」
「警察官の私がこう言うのも何ですけど」
「チョット憧れちゃいますね。男として」

など、花山に対する尊敬の意。
二人の対決における行動を正確な観察眼と柔道をやっている実体験を交えた緻密な解説を決着が付くまでやってのけた。

彼の解説スピリットは後にアメリカの刑務所内の囚人と警備員、果ては花山自身にまで受け継がれた。
この対決はバキの中でもベストバウトとして名高い。




以下ネタバレ






喧嘩VS殺し合い




本当に甘い……。

やはり少年(ボーイ)です…。


喧嘩(ファイト)じゃない。

殺し合いなんだよ。


復活したスペックは、園田と上記の片平以外のその場にいた警官を(婦警さん含め)全員皆殺しにすると、怪力でパトカーを転倒させる。この時のノリはホラー映画で倒したハズの怪物が突然復活し、主人公に逆襲を掛ける展開まんまである。ってか園田さんよく生きてたな。

先制で特殊警棒が飴のように曲がるまで滅多打ちにしたうえ拳銃で両膝を撃ち抜き強烈な前蹴りで食らわせ、
「試し割りのトリック」の応用で頭を足でアスファルトにしこたま叩きつけ、花山の口内に拳銃を突っ込み勝利を確信する…も、かつてのトラウマを思い出した花山が覚醒し形勢逆転。
「試し割りのトリック」を仕返しされてしまう。

しかし劣勢時も閃光弾で怯ませると、裸締め胴締めで首を締め上げる。
「殺し合い」に多くの武器を使ったスペックが、最後の最後で最も信頼たる武器として頼ったのは、自らの肉体であった。

……だがここで、花山薫最大最強の必殺技である握撃が炸裂。
左腕を破裂させられ、呆然としていた所を内腿まで引き千切られてしまう。
最後の足掻きに中指をファックサインの形で根元まで耳に刺す(これは三半規管どころか脳まで達する程)も、それでも止まらない花山に人間が鍛えられない箇所である喉を握りつぶされてしまう。
「殺し合い」は「喧嘩」を全てにおいて上回ると豪語していた殺人鬼は、「喧嘩屋」の誇りと意地の前に完全敗北したのだった……。



以降は筋骨隆々の身体がわずか一週間内に急激に衰弱しミイラのようになってしまった。
そしてなんと実年齢97歳の老人であることが発覚。
かつてとある外見年齢40代だが実年齢88歳の冒険家が、長年探し求め続けた財宝を発見した途端、急速に老いて老衰で死んでしまったという逸話のように、
スペックもまた「敗北する」という目的を達成した影響で、年老いるのを忘れてしまった肉体が急速に老いてしまったのだった。
初めて敗北を知った充足感からか、その顔は満足した笑みを浮かべており、アニメ6話においては、彼の治療にあたった医師らの話からも彼の夢が実現したことを推測できる内容となっている。


【余談】


最凶死刑囚の中では最初に敗北し退場したスペックではあるが、その凶暴性、確かな実力、そして作中屈指の怪物である花山と文字通りの死闘など印象に残る場面も多く、
死刑囚の中でも存在感が際立っているからと、バケツの似合うロシア人や、負けを認めずにすぐ報復しにくる白人全身に凶器を仕込んだイギリス人公園最強の生物に敗北した日本人も見習って欲しいなどとよく比較されがち。





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最終更新:2025年07月11日 22:11

*1 ちなみにそのカウンセラーはアマチュアレスリングの元全米チャンピオン。

*2 余談であるがスペックはコンビニではなく『スーパーマーケット』と称していた。

*3 恐らくは単体での殺害人数は全シリーズを含めても、勇次郎・ガイア・武蔵に次ぐ第4位と思われる。前述の3人は戦場という「殺らなきゃ殺られる」状況なのに対し、スペックの場合は大半が一般市民なのでそのイカレぶりは顕著である。

*4 作中での解説によると、プロ野球選手が全力投球した硬球を至近距離からぶち当てられるに等しいとのこと。

*5 銃弾は運良く脳や頚椎などに行かず、頬の皮膚と筋肉が破裂しただけで済んだ。そのせいで移植した皮膚が定着するまでマスク生活を余儀なくされたが。

*6 鉄の土台からほんの僅かに石を浮かせる事で、テコの原理で割るトリック。もちろん独歩や克巳などの「本物」はそんなトリック使わなくても割れるだろう。

*7 普通の人間は「体を丸める」。花山は立っていたが流石に数秒間視力を失い、パンチを外してしまった。