魔女の旅々

登録日:2020/11/25 Wed 20:31:47
更新日:2024/11/22 Fri 22:48:31
所要時間:約 12 分で読めます




それは不思議な国々を旅する物語であり、
別れの物語でした。


【概要】



魔女の旅々』とは、白石定規原作、あずーるイラストのライトノベルである。
元々はKindleで電子書籍として自費出版を行っていたが、あまり売り上げは芳しくなく、2chのVIP板に宣伝を兼ねた相談スレを建てた程。
それらや口コミが功を奏して現在は加筆修正された上でGAノベルから紙の単行本として刊行され、以降はそちらのレーベルで続巻を出している。2023年4月現在で既刊20巻。
他メディアとしてコミック版(作画:七尾一綺)既刊5巻、2020年10月より放送されたアニメ版がある。
公式推奨ハッシュタグは「#魔女の旅々はいいぞ」。

いわゆる旅ものの連作短編集で、キノの旅』のファンタジー版と想像すれば分かりやすいかもしれない。
一章あたりの長さはそこまで長くなく、長くても大体数十ページくらい、短い話だと数ページで終わるときもある。
作風は基本的に主人公イレイナの一人称視点で描写されているが、まれに他の人物の一人称視点でも描写される。

原作表紙のイレイナ他の可愛いキャライラストから想像できるように、基本的にはほのぼのなストーリー展開ではある。
ただし、いわゆるただの萌え要素全開のラノベと油断していると、思わぬ鬱展開に大火傷するので、そこは要注意。

「旅々」は作者による造語であり、「魔女の旅」だと安直だから、という理由でこのタイトルになった。


【世界観】



割とオーソドックスな魔法の存在する中世ヨーロッパ風の世界観だが、一方で新聞紙に代表される活版印刷やカメラ、柱時計や銃など近代以降のガジェットの普及が散見される。
(こういったちぐはぐさはWEB小説に限らず割と見かけるといえばそれまでなのだが)

劇中の魔法使いには魔導士、魔女見習い、魔女ときっちりとしたランク分けがされており、
最高位の魔女ともなると、国を跨いで尊敬され、場合によっては国政にも関われるようになる。
具体的なプロセスは魔導士が試験に合格して魔女見習いとなり先輩の魔女に弟子入り、
晴れて師匠に認められ新たに魔女を名乗る事を許された者にはそれぞれ固有の二つ名と、魔女の証明となる星を象ったブローチが与えられる。


【作中に登場した国家】




数が多いため、主にアニメ版で登場した国を紹介する。

平和国ロベッタ
イレイナの故郷で、その名の通り平和な国なのだが、それが災いし、国に所属する魔女たちの実力が低いという弱点がある。
そのため、イレイナの実力に見合った魔女がおらず、国の魔女たちはこぞってイレイナの弟子入りを拒絶していた。

魔法使いの国
第一巻第一話の舞台となった国。正式な国家名は不明。
その名の通り魔法使いのみが入国できる国で、魔女ならば国内でもVIP待遇のような扱いを受けられる。
ただし、その時にチェックするのは魔女の証明であるブローチのみのようで、ブローチを無くしたイレイナはただの旅人扱いをされた。
街中の至るところで空飛ぶほうきに対する警告用の看板が立ち並ぶレベルで、住民の移動手段として普及しているようだ。

魔法使いのための国
魔法使いの国とは逆に、魔法使いとそれ以外の市民が暮らしている。国の文明レベルはかなりの高水準で、列車が開通しているレベル。
が、あからさまに魔法使いが優遇された社会で、魔法が使えない市民はろくな生活ができないどころか人間未満(アニマ)と呼ばれ侮蔑されている。その光景にはイレイナからはっきりと不愉快、価値観が合わないと言い放たれている。

正直者の国
国王に仕える魔女が嘘が付けなくなる結界を張るクソダサい剣を王に献上し、国民が口頭でも文章でも嘘が付けなくなったクソみたいな国。
アニメでは国民が余計なことをしゃべらないように口を閉ざして対応しているが、原作では余計なことをベラベラと喋ってイレイナの顰蹙を買っている。
しかし、実はこの結界には抜け穴があり、ジェスチャーでは問題なく誤魔化しができたり、文章で本当のことを書いても、その文の都合の悪い部分だけを消してしまえばいい。この事実を、国民は暗黙の了解として隠匿していた。
その後、この結界はイレイナと魔法統括協会から依頼を受けたサヤの活躍によって解除され、王が正式に謝罪して平穏を取り戻している。

美男美女しかいない国
国内の壁の外はスラム街で、いわゆるフツメンが普通に暮らす国だが、壁の中はなんと我々の美醜感覚で言えば不細工な面々が平和に暮らす国。なので、いわゆる美少女のイレイナは壁の中では浮いているどころか、露骨に差別される。
この国の実態は壁の内と外で美醜が逆転している国。そもそもこの国には不細工な王女が自分の容姿にコンプレックスを持っていた。そこでたまたま訪れた旅の魔女に、「自分を美人にしてほしい」と頼み込んだが、魔女はそれを断った。ブチ切れた王女は魔女を追放し、彼女から見た不細工な人間を次々と追放して壁の中には不細工だけが残った、というのが真相。
イレイナはこの国を変な国と評している。

時計郷ロストルフ
大きな時計台がそびえ立つ国。
10年前に街の二丁目にて強盗殺人が起き、その際に両親を亡くしたセレナという少女は叔父に引き取られたものの、そこで酷い虐待を受けたことで心が歪んでしまい、叔父を殺害したのちに姿を消し、やがて演劇や本にもなるほど有名となった「二丁目殺人鬼」と化してしまった。
彼女の親友だった薫衣の魔女・エステルは今から3年前に国王命令でセレナを殺してしまうも、セレナの不幸な結末を変えるために魔法を使って過去へ行こうとしていた。そして、報酬の大金に釣られたイレイナと協力して10年前の世界へ飛ぶが、その先で待っていたのは絶望の真実だった……

ラトリタ共和国
ラトリタ国立学園という魔法使いとそれ以外の普通の生徒が通える学園を擁立する観光大国。
そして、小説で今のところ唯一巻を跨いで舞台になったことのある国
学園の歴史は相当に古く、400年前から建立されていた図書館が発展して学園になった。
その図書館ではある危険な砂が封印されていたのだが、封印された400年前でも飽和状態で、あと少し砂が増えたら、封印が解けてしまうと、予告されていた。しかし、あるアイテムが使われたことで砂の量が増加してしまい、砂の封印が解け、魔族ゴーレムとして大暴れする事件が発生してしまう。結果としてゴーレムの討伐には成功したが、結局ゴーレムがどうして唐突に出現したのかは、分からずじまいになってしまう。この事件の裏側ではある二人の百合ップル誕生友情劇があるのだが……。ホントマジその発端になったアイテムをエステルさんに渡してやれよ。
この事件が原因で、イレイナは二度にわたりこの国の学校に潜入することになる。学園ものだよ、やったね!


【登場人物】



イレイナ(CV:本渡楓
本作の主人公で『灰の魔女』の二つ名を持つ旅の魔女。詳細は該当項目にて。



サヤ(CV:黒沢ともよ
記念すべき第一巻第一話で登場した魔女見習い志望の少女。
黒髪でボーイッシュ僕っ娘で、遠い東の国の出身。
紆余曲折を経てイレイナと出会い、彼女に魔法の指導を受けて魔女見習いの試験に合格、再登場時には『炭の魔女』の二つ名を持つ魔女へと昇格している。
孤独を嫌い他人に依存する性質だったがイレイナに叱咤されてある程度克服……したはいいが、今度はイレイナにやばげな感情を抱いてしまった作中でもトップクラスのやべーやつ。
本人の目の前で「師匠に『灰の魔女』に近い二つ名をねだった」と吐露しながら全財産叩いて買ったペアのペンダントの片割れを差し出す、なんてのは序の口。
ちなみに、先に魔女見習いになった妹がいるのだがそちらも(ベクトルの違いこそあれど)アレさはどっこいどっこい。
しかし10巻でイレイナと再会した際は、9巻で遭遇したあまりにもやり切れない事件での痛みを抱えかなり鬱状態だった。


フラン(CV:花澤香菜
イレイナの師匠で、『星屑の魔女』の二つ名を持つ魔女。
元々は王立セレステリアという魔法学校で教師をしているが、とある理由でイレイナの両親から彼女を弟子にして、約一年の間イレイナを指導する。
本来は両親の思惑に合わせてイレイナに挫折を味わわせるように試練を与えるが、一緒に過ごすうちに指導方針を一転させ、イレイナを魔女にまで育て上げた。
ちなみに優れた魔女だが、料理の腕は自分でも自覚出来るくらい下手。なので一緒にいた時はいつも料理担当をイレイナに押し付け、文句を言った際はあえて自分の手料理を披露し無理やり納得させていた。


シーラ(CV:日笠陽子
魔法統括協会という魔法使いの組織に名を連ねる魔女。二つ名は『夜闇の魔女』。
ぶっきらぼうで男勝りな性格。
サヤの師匠であり、フランの姉妹弟子でもある。
フランと初対面では犬猿の仲ではあったが、現在では普通に打ち解けて、互いの弟子の話で世間話をする仲。
ちなみに愛煙家で、昔は紙煙草だったが、今は弟子からもらったキセルを愛用している。


アムネシア(CV:小原好美)
原作第四巻で初登場したメインキャラで、シリーズのメインキャラでは珍しく一切魔法が使えないが、代わりに剣の腕前は優れている。
性格はゆるふわなお姉さんキャラではあるが、実はシリーズの語り部の中で唯一(やむを得ない事情ではあるが)人を明確に殺している

第四巻の約半分は、イレイナとの二人旅構成になっている。
初登場時点では眠るとそれまでの記憶をすべて失う呪いをかけられており、常時日記を携帯していた。
が、うっかりそれをイレイナと取り違えたのがきっかけで、アムネシアの事情に気づいたイレイナは彼女の旅に同行するようになった。
アムネシアの日記には、何故か故郷のことが記されており、それを頼りに一年以上旅をしていた。
+ 以下はその旅路の結末
故郷、信仰の国エストに到着したアムネシアは、帰るなり問答無用で捕らえられた挙句、処刑されそうとなる。
元々アムネシアにかけられた呪いの真意とは、エストで罪を犯したものが、自分が何をしたのか分からずに長い間世界を放浪し、
手がかりの故郷に帰ったら、その後に捕らえられ、すべて思い出させた挙句に斬首
というえげつない刑罰によるもの。
さらに言えばアムネシアの疑惑自体が冤罪。つまり、彼女は謂われない罪で延々世界を放浪させられた挙句、帰ったら帰ったで弁解の余地なく処刑されるという理不尽な目にあわされていた。
これを知ったイレイナは、彼女の冤罪を晴らすべく奮闘し、真犯人を暴露して見事に彼女を救い出すことに成功。
アムネシアは国からの謝罪としてイレイナと妹アヴィリアの記憶を保持したままの出国する権利を使い、新しい故郷を探す旅に出る。
ちなみに、イレイナと別れる前に「大好き」と告白した剛の者

第五巻以降はアヴィリアとセットで登場し、語り部を担当するが、同じく語り部になったことがあるサヤやフランとは違い、イレイナとニアミスはするが、まだ一度も再会したことはない。
ただ、イレイナに金策については教えてもらえてなかったようで、「教えてもらえばよかった」とぼやいたこともある。
ドラマCD版ではIf展開として、「イレイナとアヴィリアの三人旅」の一幕が描かれ、イレイナにデートに誘うためにぐいぐい迫る一面が見れる。























ところで、
この秀逸な項目を追記・修正するのは誰でしょう。
そう、私です。

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最終更新:2024年11月22日 22:48