黒い家(小説)

登録日:2021/04/09 (曜日) 22:30:53
更新日:2024/01/09 Tue 00:01:29
所要時間:約 10 分で読めます





「保険金いうのは、自殺した時でも出ますんか?」



概要

ホラー作家貴志祐介の代表作。
第4回日本ホラー小説大賞受賞作品。
保険金殺人を題材にしているが、人間の悪意による日常への恐怖が細部に至るまで恐ろしく描写されている。貴志氏が生命保険会社に勤めていた事からその辺りの生々しさも抜群。
心理学やサイコパスについても深く言及されており、これで「サイコパス」という言葉を覚えた人も多いのでは。

実写映画化されているが、映像化にあたって表現しにくい部分の変容は観れるものの、所々の描写が稚拙だったり、意味の分からない演出が多すぎたり、音声ボリュームが小さすぎて何言ってるか分からなかったりと問題点が多すぎる迷作。大竹しのぶの怪演とおっぱいは見ものだが、普通に検索しても凄まじい形相の画像が出てくるので注意。
因みに貴志氏もカメオ出演している。

韓国でもリメイクされた。
(情報求む)




ところで
玄関や窓には鍵を掛けていますか?


あらすじ

生命保険会社に勤める若槻慎二は、ある日顧客の菰田重徳から奇妙な電話を受けて家に呼び出され、そこで長男の菰田和也の首吊り死体の第一発見者になってしまう。
状況から自殺と判断されて死亡保険金が請求されるも、若槻は重徳の態度から他殺を確信しており独自に調査を進めるが…


登場人物

  • 若槻慎二
演:内野聖陽
京都府の生命保険会社支店の主任を勤める男性。正義感や責任感は強く、仕事柄そこらのチンピラの恫喝に動じない肝の持ち主。
大学では昆虫学を専攻しており、物事を虫の営みに例える癖がある。
幼い頃にいじめが原因で兄が自殺しており、半ば見殺しにしてしまったトラウマからEDになるほど。その為、冒頭にて借金苦で自殺するかもしれない相談電話を受けた際には過去を語って説得する一面を見せた。
仕事などは貴志祐介氏の実体験とのこと。

  • 黒沢恵
演:田中美里
大学に勤めている若槻の恋人。有名メーカーの社長令嬢であり、麗しい容姿に心理学者の卵という実績、性的に抱けない若槻を労わる聖母のような包容力と完璧超人だが、少々世間知らずなお嬢様ゆえか精神的に脆い部分もあるらしい。
金石からはヒューマニストと皮肉っぽく言われていた。

  • 葛西好夫
演:石橋蓮司
若槻の先輩の支店副長。
明るい好々爺だがかなりのやり手で、かつて暴力団事務所に監禁されたこともあるという。

  • 醍醐則子
大学に研究室を構える心理学教授。
若槻から相談と文集を渡されて心理学の観点から重徳を調査する。
実写版では登場せず、恵が役を兼任している。

  • 金石克己
演:桂憲一
アメリカに留学経験もある犯罪学の研究者で、醍醐教授にアドバイザーとして招集された。
どこか人間や社会そのものを見下ろしているが、実はバイでありその辺りが関係しているのかもしれない。
若槻もロック♂オンされた。

  • 松井清
演:町田康
若槻を事情聴取した巡査部長。前科持ちで常日頃からトラブルの絶えない菰田家に加え、若槻の証言から他殺の線を強めていくが…

  • 三善茂
演:小林薫
生命保険会社の抱える潰し屋。元筋モンの現インテリヤクザであり、人当たりの良い笑顔と喋りでさえ若槻は怖さを感じている。
毒を以て毒を制す通りの厄介な客担当で、モラルリスクに胡座をかいていたチンピラ入院客から契約解除を即結させるなど手腕も確か。


黒い家
菰田家。閑静な住宅街に建てられた、朽ちかけの真っ黒なお家。元は板前だった桂という男が死亡した折に遠縁の菰田幸子が相続したもので、僅か数年で荒れ果ててしまったという。
重徳の拾ってきた何十匹もの野良犬の鳴き声による騒音、放置した生ゴミや動物的な悪臭などから近隣とトラブルが絶えない。

  • 菰田重徳
演:西村雅彦
「黒い家」の住人。年齢以上に老けてくたびれた印象を持つ男。実は事故に見せかけて障害給付金を受け取る「指狩り族」だった男で、夏場にも関わらず常に左手に軍手をはめているのは失った親指を隠すため。
旧姓は小坂で幸子と結婚した時に苗字を変えた。
若槻を「黒い家」へ寄越した張本人だが理由は曖昧で接点もなし、息子の死体ではなく若槻をうかがう反応などの挙動不審ぶりから、若槻は子どもを自殺に見せかけて殺害した犯人とみている。

  • 菰田幸子
演:大竹しのぶ
「黒い家」の住人。重徳の妻。陰気で鈍重な中年女性。顔立ちも不細工で細目、そして無希釈の香水で常に強烈な臭気を漂わせたパチンカスという怪人物。
和也は彼女の連れ子で、後に対面した若槻は冒頭の電話相手が彼女だと気付いている。
保険に入っていたのは一家三人であり、若槻は和也の次に殺害されるとみて警察関係者を装った警告文書を送るが…

  • 菰田和也
演:針谷俊
「黒い家」の住人。若槻が第一発見者となった首吊り死体の少年。
両親から見放されて育った学習遅帯児であり、それを苦に自殺したとみられている。





以下、ストーリーのネタバレ



菰田和也が自殺か他殺かで警察や本社が揉めて裁定が遅れるなか、菰田重徳は支社へ訪れては力なく催促して若槻に迫るを毎日のように繰り返していた。

若槻が独自に調査して重徳の級友や担任の話を聞いたところ、重徳と幸子は同級生であり、飼育小屋の動物が揃って首を吊られて殺されたり、重徳の付きまとっていた少女が溺死する事件が起きていた事が判明。
若槻は心理学も参考にするため文集を借り、それを醍醐教授へ届ける。

あくる日に来た重徳は支社にて指を噛んで出血する自傷行為にまで走り、暫くして若槻の家に無言電話による嫌がらせが頻発するも、何の権限もない支社の自分を追い込む理由が分からず、只々ストレスがたまっていく。

また重徳に興味を持った金石が彼を尾行したらしく、若槻は内心憤りながらも専門家の見地から話を聞く事にするが、
「あの男はあなたを殺す可能性があります」
「善意で踏み固められた道も、地獄へ通じていることがある」
「彼らは自分の子供にすら愛情を抱かない」
「環境汚染でDNAが損傷した人間ではないミュータント」
「サイコパスによってサイコパス紛いが生まれ、それによって保護色のように本当のサイコパスが目立たなくなる」
「ゲームやアニメの、躊躇いも見せずに悪人を殺す主人公はサイコパスにしか見えない」
「オオカミですらサイコパスの個体を群れから追い出そうとする」
等々の極端なサイコパス論を聞かされるのだった。
「若槻さんは、オオカミと人間の、どっちが賢いとお思いになりますか?」


しばらくして本社は生命保険の支払いを決定。
更に菰田幸子へ警告文を送った後日、恵の飼い猫達が頭を斬り落とされ、それが若槻の家に送りつけられるというショッキングな事件が発生。
段々とエスカレートする行為に身の危険を感じた若槻は警察へ捜査の進展を確かめに行くが、そこで松井から衝撃的な話を聞かされた。

菰田和也の死亡推定時刻に、菰田重徳は完璧なアリバイがあったのだという。

殺人ではなく自殺だったのか?
若槻は敬遠していた金石の意見を聞くため連絡を取るが、研究室にも顔を見せず無断欠勤が続いているという。




数日後、警察から身元不明の死体の確認のため出頭を命じられる若槻。身元を特定できる者がなく、唯一あったのは若槻の名刺だけだというのだ。
確信めいたものがありながらも否定したい若槻は松井に連れられて霊安室を訪れ、
あまりにも凄惨な拷問の末殺害された金石の残骸と再会する

金石は重徳に見つかり、自分への見せしめに殺されたのだと若槻は戦慄。

だがなぜか? そんな事をする理由は?


生命保険犯罪の事例集を読んでいた若槻は、我が子を自殺に見せかけて殺害した母親の記録を目にする。

彼らは、自分の子供にすら愛情を抱かない

ここで若槻は、幸子が和也を殺した犯人だという仮説に辿り着いた。
よくよく調べてみれば、
  • 菰田幸子の旧姓は白川幸子であり、息子の義男は絞殺され、前夫の勇は指名手配犯として行方不明
  • 臭いに関しては嗅覚障害の可能性もあり、生まれつきであれば母親の匂いなどを感じる事が出来ずに感情の発達が阻害される事例が多い
  • 醍醐教授が文集から見つけた菰田幸子の作文は有名な大量殺人者と酷似したものであり、フォン・フランツ女史が「この人間には、心がない!」と言った代物
という確証に近いものが次々と発掘されていく。
…とはいえ、菰田和也の保険金は既に支払われており、若槻は忘れようとした。










数日後、支社に届いたのは菰田重徳の事故資料。
病院に赴いた若槻と葛西は、両腕のなくなった重徳の姿と、何事もないように対応する幸子の姿を見せつけられた。
たまたま残業していた重徳は、たまたまストッパーを付けるのを忘れた裁断機で事故を起こし、たまたま迎えに来た幸子に発見された…そんな都合の良すぎる話を白々しく語る幸子。
若槻は重徳が意志欠如者として、母性愛を求めた結果サイコパスの幸子に食われてしまったのだとようやく認識。
高度障害の保険金三千万円が降りると聞き、最後に若槻達へ幸子はこう質問した。

「この人が死んだら、もっぺん保険金もらえるんか?」

因みに直ぐに治療すれば再接合は容易だったが切り落とされた両腕はなぜか見つからず、数時間後に幸子が雑菌ひしめくダンボールへ入れて持って来たらしい。



警察は重徳が事故だったと証言したことから、いくらなんでも金のために自分の両腕を切り落とす奴なんかいないという真っ当な理由で民事事件に切り替えており、アテにならないと判断した本社から潰す要請が来たことで三善が派遣される事に。

若槻も付き添って病室へ向かうが、三善は凄まじい怒号と裁判をちらつかせる合理的手法で幸子を追い詰めた。

「まちがいなく人を殺してますよ」

三善は幸子から何かを感じ取った事で、今後は自分一人でけりをつけるという。
かってにやってくれと内心投げやりながらもこれで一件落着だと、若槻は安堵した。







数日後。
夜中に起きた若槻がコンビニから帰ってくると、アパートの自宅へ鍵を開けて入った菰田幸子を目撃する

なぜ菰田幸子が自分の家の鍵を持っているのか?

混乱する若槻が近くの公衆電話から自宅へかけてルームモニター機能で様子をうかがうと、幸子は怨嗟を吐き続けながら部屋を只管に荒らしていた。
数分後に幸子が去った後、家に戻った若槻は破壊され尽くした部屋の写真立てを見て、唯一合鍵を渡していた恵の事を思い出し、警察に通報して幸子より先に黒い家へと先回りする。

黒い家へ侵入した若槻は恵を探す途中、台所の床が取り外されて土嚢が積み重なった上に重徳の愛犬達の死骸がばら撒かれている事、そして風呂場で首と両腕を切断された三善の無残な死体を見つけるが、浴槽にて拘束された恵を発見した。
錯乱していた恵を抱き抱えて連れ出そうとした所に幸子が帰宅し、若槻は納戸に隠れて様子をうかがう。
何者かの侵入を察した幸子がゆっくりと台所へ歩いてくると、かっと開いた目は四白眼であり獣のような形相、しかも凶器として持っていたのは刃渡り45センチ以上もあるハモ切り包丁だった。
恵の微細な声で幸子に居場所を気付かれ万事休すかと思われたが、向かってくる沢山のパトカーのサイレンが聞こえてきた事で幸子は逃走した。

その後、警察の調査で黒い家からは何十体もの白骨死体が掘り返され、その中から前夫の勇の死体も発見された。
幸子は恵を大学のトイレ内で拐い拘束、そして如何なる手段でか捕らえた三善を目の前で生きたまま解体したのだという。
警察は依然逃亡中の幸子を追うが行方は知れず、恐ろしい目に遭った恵は実家に引き取られて両親からやんわりと絶縁を突きつけられ、若槻は傷心しながらも保険会社でいつもの業務をこなしていた。



数日後、有名な高倉嘉子という外務員から電話を賜った若槻は夜10時に会社で落ち合う約束を交わし、一人残業に勤しむ。

そこで、ほんの少しの疑問から菰田幸子が高倉を脅して電話を掛けさせ、自分を殺すのだと認識するも、時既に遅しと電話線と社内の電灯は切られてしまっていた。
暗い社内を彷徨い守衛の死体を発見、そして狡猾な罠によって幸子と対峙する若槻。中年女性とは思えない膂力に力負けし、ハモ切り包丁で左手を斬られて死に掛けるが、至近距離からの消化器による目潰しから頭部への殴打によるコンボで殺害に成功した。



当然正当防衛が認められ、入院生活を送る若槻。その間に恵と通話するが、芯の強さと両親との間に確執のあった彼女は若槻との交際を続ける事を告げる。若槻もまた、ふとした事で兄の死の真相に気付き、トラウマを乗り越える事に成功していた。


だが若槻が仕事に復帰した直後、菰田幸子を超えるかもしれないサイコパスが保険会社にやってきた所で、物語は幕を閉じた。












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最終更新:2024年01月09日 00:01