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南の勇者(葬送のフリーレン)

登録日:2021/09/01 Wed 03:34:44
更新日:2026/06/19 Fri 19:18:47
所要時間:約 4 分で読めます





その青年に出会ったら伝えてくれ。

道は必ずこの私が切り開くと。


人類最強であるこの南の勇者が。



出典:葬送のフリーレン 第2期、30話『南の勇者』、2026年1月16日~3月27日まで放送。
「葬送のフリーレン」製作委員会、マッドハウス、
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会。


概要

南の勇者』とは、アベツカサの漫画『葬送のフリーレン』に登場するキャラクター。


本編の約80年前に活躍した勇者で、作中開始時点で既に故人(ただし当てにならないが生存説あり)。
なお、「南の勇者」というのは通り名*1に過ぎず、今の所本名は未詳。

……さて。固有名すら判っていない彼だが、ただの勇者ではない。『人類最強』という異名を持つのだ。
そもそも、主人公・フリーレンが旅をしている本編の時代において、
『勇者』と言えば魔王を倒した勇者ヒンメルを指す場合がほとんど。
しかし、ヒンメル一行が旅をしていた時代、つまりは魔王が討伐される前の時代においては、
『勇者』は「魔王討伐に乗り出した者たちの総称」で、多くの『勇者』が魔王討伐に挑んでおり、『南の勇者』もそのうちの一人であった。
とはいえ、本編の時代での知名度は当然、魔王を討伐したヒンメルには及ぶべくもなく、フェルンシュタルクもその存在を知らなかった。


外見

長く伸ばした前髪を右に分け、それ以外をオールバックに整えたナイスミドルなおじさま。ちょこんと生えた口髭がオシャレ。
ただ額が広めで、前髪を伸ばしているのは最後の抵抗なのかもしれない……?


活躍

七崩賢に敗れた勇者

作中初めて名前(と言っていいのか分からないが、彼を指す呼称)が出てきたのは11話。
ヒンメル一行の旅の序盤と思われる回想シーンにて、当時パーティーで彼と共にタンク役だったドワーフの戦士アイゼンが、

人類最強といわれた南の勇者も魔王直下の七崩賢(しちほうけん)に討たれた。

と言及している。
魔王直属の幹部『七崩賢』という単語が出たのもこれが初めてで、読者からすれば、
「人類最強と言われていても、『七崩賢』の一人にやられてしまう程度の実力」の人物で、
「『七崩賢』の上役である魔王を討伐した時点の勇者ヒンメル一行には及ばない」と判断しても仕方なかった。
というか『七崩賢』を解説するためだけに持ち出された名前だけの使い捨てキャラだと思った人が大半だったのではなかろうか。

ファーベル村にて

しかし、読者からのその評価は63話で一変する。
北側諸国ファーベル村を訪れたフリーレン一行は、そこで「勇者様の像を磨いてほしい」という依頼を受けた。
生前のヒンメルが様々な村に自身の像を立てたこともあり、その手の依頼は最早慣れたものと一行は像の下に向かうが、
その村にあった勇者の像のモデルはヒンメルではなく南の勇者であり、そこで初めてフェルンとシュタルクは南の勇者の存在を知る。

そして、唯一南の勇者の存在を知っていたフリーレンによって、伝聞情報という形ではあるが、彼の恐るべき戦績が明かされる。
なんと、彼はたった一年で魔王軍の前線部隊を壊滅させ、魔王軍の補給経路の心臓部まで到達したというのだ。
この異常ともいえる南の勇者の快進撃に、魔王軍も全力で対処することを決めたらしく、
彼一人を相手に、魔王の腹心と『七崩賢』全員の計八人を向かわせ、襲わせたというのだ。
南の勇者にとってはまさに絶望的な状況であったが、それでも彼は諦めることなく果敢に戦い、
『七崩賢』を三人討ち取り、最後は魔王の腹心と相討ちとなる形で斃れるという壮絶な最期を迎えたとされる。
結果だけを見れば、かつてアイゼンが語っていた通り、南の勇者は『七崩賢』に討たれる最期を迎えていた。
しかし戦いの実像を見れば、この戦いこそが、彼が人類最強であることを証明するかのような出来事だったのだ。
勇者ヒンメル一行であったフリーレンも、「これは彼に相応しい二つ名だ」と認めている。
実際、ヒンメル一行は魔王を倒したとはいえ、『七崩賢』に関しては倒したのは二人、一人は撤退させただけである*2

なお、この時相討ちになった魔王の腹心は『全知のシュラハト』といい、1000年先の未来まで見えるという未来視の力を持つ魔族であった。
勇者一人に魔王軍の幹部全員が結集して挑みかかるという、創作でもあまり見ない総力戦を仕掛けたのも、
シュラハトは例え自身が相討ちになろうとも、そこまでやらないと南の勇者を倒せないと予見していたからだろう。

しかし、この未来を予見していたのはシュラハトだけではなかった。実は南の勇者も未来視ができたのだ
南の勇者は自身の最期の戦いの一年前から、自身が『七崩賢』(+シュラハト)と戦って戦死することはもちろん、
その戦いの後に、勇者ヒンメルが魔王の討伐に成功し、世界に平和を取り戻すと知っていた。
南の勇者としては「世界を救うのは自分ではない」こと、「志半ばで死ぬ」ことは非常に不本意であったものの、
自らの後に続いて魔王討伐に挑み、討ち果たすヒンメルの道を切り開くため、自ら死地に向かったのだ。

南の勇者は「道を切り開く」という言葉通り一人で前線を魔王軍の本拠地近くにまで引き上げたが、
それから数年後には腐敗の賢老クヴァールによって前線が中央諸国にまで押し戻されている。
そして南の勇者が予見したとおり、ヒンメル達によってクヴァールは封印され、魔王は討たれることとなった。

南の勇者は知っていた。世界が救われる事を。その時、自分がいない事を。
この戦いは人類と魔王軍、それぞれにおける最重要人物ともいえる二人の男が何千回もの未来視の末に選んだ妥結案だったのかもしれない。
このように、実力だけではなく精神性も人類最強の勇者と言われるに相応しい人物であった。


その死の謎……?


悪いなフリーレン。
お前に南の勇者との戦いを見せる訳にはいかん。

これは魔族の存亡をかけた戦いであり、
敗戦処理であり、千年後の魔族のための戦いだ。

実は、南の勇者の遺体はいまだ見つかってはいない。
そのため南の勇者を信奉する人々により「まだ生きていてシュラハトと戦っている」という伝説が語られたほど。
一方で一般的な魔族の生態をよく知るフリーレンは「魔族に食われた」と冷静に考えている。
そういえば『七崩賢』には自らの魔法で精神支配した人間の勇士の首を刎ね、その遺体を操る事ができる断頭台のアウラがいたが……?


そして89話。
黄金の呪いに対する打開策を見つけるべく『七崩賢』黄金郷のマハトの記憶を見ていたフリーレン。
フリーレンは魔王の腹心“全知のシュラハト”が南の勇者討伐のためにマハトを誘う場面を見る。
しかし千年後を見るシュラハトは、この戦いを“敗戦処理”と形容するなど「自分が死に、魔王が敗れる未来」「フリーレンがマハトの記憶を覗く未来」までも見抜いていた。
シュラハトは、マハトと未来のフリーレンに対して、これからの南の勇者の討伐後、
『七崩賢』の一人である“奇跡のグラオザーム”にマハトの持つ「南の勇者との戦い」の記憶を消させることを伝える。

シュラハトは「千年後の魔族のため」と述べていたが、少なくともマハトと戦う時点のフリーレンにはなにかしら知られたくないことが、
この南の勇者の最期の戦いである、『南の勇者vs七崩賢&シュラハト』の戦いでは起きていたらしい。
この戦いに関わったと言われる人物はフリーレンが記憶を覗いた時点ではマハト以外死亡しているはずだが……?

また、南の勇者自身もフリーレンがこの先一生口外しない未来を見たことを理由に、己の未来視の魔法の存在を伝えている。
「人類最強たる所以」と断言するほどの魔法であれば他の人類にも教えるなりすればいいのでは……と思うところだが、
いったい彼はどのような方法で未来視の魔法を会得したのか、そしてそれを誰にも遺さなかったのかは不明。
また、もしなにか魔族に都合のよい未来・人類に都合の悪い未来が見えたのならばフリーレンに教えられたはずだが、
シュラハトと同じくフリーレンに隠す選択をしたのかもしれない。

南の勇者関連もそうだが、『葬送のフリーレン』自体がアフターファンタジー、「魔王を倒した後」の話であり、
劇中で語られる出来事の多くは、語られた時点で既に過去の出来事、つまり「終わったこと」であることが大半である。
そのため、語っていることはあっているのだが説明が足りない(あるいはその時だけ必要な説明がされる)ことばかりである。
これも一種のギミックになっている。


戦闘能力

剣を二本使った二刀流の剣士であることが確認できる。
『七崩賢』全員+魔王の腹心の八人で挑んで半壊したのだから、単純な計算として『七崩賢』一人あたりより強いのは確実だろう。
また、ヒンメル一行のように魔王討伐の旅に同行している仲間がいる様子は一切なく、DQ1勇者よろしくソロプレイで魔王軍と戦っていた様子。
とはいえフリーレンを仲間にスカウトしている所を見るに「仲間なんていらない」と考える一匹狼だった訳ではない。
単に南の勇者についてこれる実力を持つ者がいなかったのかもしれない。

さらに魔法も使う事ができ、特に『未来予知』の魔法が南の勇者が人類最強と言われるゆえん。
1000年先まで見えると謳われたシュラハトと比べどのくらい先まで見えるかは不明だが、10年後魔王がヒンメルに倒されるところ、
果てはフリーレンが一生涯自分の未来視のことを他人に口外しないところまでは見えていた。
ゼーリエ曰くこの魔法は「未来視」とは次元の違う「完璧な未来の予測」であり、ゼーリエの知る限り人類でこれを実現したのは彼だけらしい。

また、フリーレンのスカウトに失敗するのを予知していたにもかかわらず、仮に仲間になっても「死ぬ」という未来に変化はないと言っていた事から、
色々な可能性の未来を見られるようだ(シュラハトも同様のことをつぶやいている)。

「死ぬ未来は変えられない」と言っているが、同時に「人類最強と言われる秘密は未来を知れるから」とも言っている事から、知った未来は変えられるようだ。
「死ぬ未来が変えられない」のは戦う相手が同じ能力を持つ全知のシュラハトだからだろう。


余談

  • これだけ強く偉大な人物でありながら『勇者の剣』は当然持っていない。おそらく抜けなかったのだろう。南の勇者でも無理ならいったい誰が抜けるんだろうアレ。


  • 63話でフリーレンが南の勇者の功績を語るシーンの背景には、彼を題材とした人形劇が上演されている。
    アニメではこれを膨らませた演出として、南の勇者とシュラハトの戦いを人形劇で見せつつフリーレンの言葉がナレーションのように流されるシーンとなっている。
    この人形劇パートは監督の描いた人形設定*3を元に人形劇団に実際に人形を制作、かつ実演してもらい、その映像を原画としてアニメへと落とし込んでいる。


Wiki篭りは知っていた。Wikiが救われる事を。その時、自分がいない事を。

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最終更新:2026年06月19日 19:18
添付ファイル

*1 本作の舞台の大陸は北・中・南という三つの地理区分があり、「北(南)の○○」というと大抵は位置関係や単純な方位ではなくこの区分を指すので、おそらく南側諸国出自という意味。なお、ヒンメルは中央出自。

*2 これは『七崩賢』が半壊したことで交戦機会そのものが半減している状況ではある。また、残るうちの一人マハトは単独行動を開始し魔王軍を離れている。

*3 例えばシュラハトは、作中の人形作成者が実物を見たことがないであろう事から額に三つ目を持つ誇張された姿をしている。