南の勇者(葬送のフリーレン)

登録日:2021/09/01 Wed 03:34:44
更新日:2025/04/10 Thu 02:07:49
所要時間:約 4 分で読めます





その青年に出会ったら伝えてくれ。

道は必ずこの私が切り開くと。


人類最強であるこの南の勇者が。


概要

『南の勇者』とは『葬送のフリーレン』に登場する勇者。
本編の約80年前に活躍した人物であり、既に故人(ただし当てにならないが生存説あり)。
なお、「南の勇者」というのは通り名*1だが今の所本名は未呼称。

人間の男性であり、『人類最強』という異名を持つ勇者。
フリーレンが旅をしている本編の時代で勇者と言えば魔王を倒した勇者ヒンメルの事を指すのがほとんどなのだが、
ヒンメル一行が活動していた時代においては「勇者=魔王討伐に乗り出した若者」であり、様々な勇者が魔王討伐に挑んでおり、南の勇者もそのうちの一人。
長く伸ばした前髪を右に分け、それ以外をオールバックに整えたナイスミドルなおじさま。ちょこんと生えた口髭がオシャレ。
……ただ額が広めであり、前髪を伸ばしているのは最後の抵抗なのかもしれない。

本編の時代での知名度は当然、魔王を討伐したヒンメルには及ぶべくもなく、フェルンシュタルクもその存在を知らなかった。


活躍

七崩賢に敗れた勇者

作中初めて名前(と言っていいのか分からないが、彼を指す呼称)が出てきたのは11話。
ヒンメル一行の旅の序盤と思われる回想シーンにて、戦士アイゼンが、

人類最強といわれた南の勇者も魔王直下の七崩賢(しちほうけん)に討たれた。

と言及している。
魔王直属の幹部『七崩賢』という単語が出たのもこれが初めてであり、
読者からすれば「人類最強と言っても七崩賢の一人にやられる程度」「成長した勇者ヒンメル一行には及ばない」程度と認識した……。
というか七崩賢を解説するためだけに持ち出された名前だけの使い捨てキャラだと思った人が大半だったのではなかろうか。


ファーベル村にて

しかし、読者たちのその評価はその後一変することとなる。
それは63話でのこと。
フリーレンたちが北側諸国ファーベル村で「勇者様の像を磨いてほしい」という何度も受けたような依頼を受けたところ、
そこにあったのはヒンメルの像ではなく南の勇者の像であり、そこで初めてフェルンとシュタルクは南の勇者の存在を知ることになる。

フリーレンによって、伝聞情報という形ではあるが南の勇者の恐るべき戦績が明かされる。
なんと、彼はたった一年で魔王軍の前線部隊を壊滅させ、魔王軍の補給経路の心臓部まで到達したというのだ。
魔王軍もこの異常とも言える事態に全力で手を打つ。
彼一人を相手に魔王の腹心+七崩賢全員の計八人で一斉に襲い掛かったというのである。
しかしこの絶望的状況でも南の勇者は果敢に戦い、七崩賢を三人撃破、最後は腹心と相打ちとなって斃れるという壮絶な最期を迎えたとされる。
確かに南の勇者はそのとき七崩賢に討たれた。しかし実際はこの戦いこそが、彼が人類最強であることを証明するかのような出来事だったのだ。
フリーレンも「これは彼に相応しい二つ名だ」と認めている。実際、ヒンメル一行は魔王を倒したとはいえ、七崩賢に関しては倒したのは二人、一人は撤退させただけである*2

魔王の腹心は『全知のシュラハト』といい1000年先の未来まで見えるという未来視の力を持つ魔族であった。
魔王軍幹部全員集合して勝負という創作でもあまり見ない展開になったのも、シュラハトは相打ちになろうがそうしないと南の勇者に勝てないと知っていたからだろう。


だがこのことを知っていたのはシュラハトだけではなかった。実は南の勇者も未来視が出来たのだ
南の勇者は1年前から自分が七崩賢とシュラハトに殺される事も、そして自分ではなく勇者ヒンメルが魔王を殺し世界に平和を取り戻すと知っていた。
南の勇者としては「世界を救うのは自分ではない」「志半ばで死ぬ」のは非常に不本意であったものの、
自分の後に続くヒンメルのために道を切り開くために自ら死地に向かったのだ。

南の勇者は「道を切り開く」という言葉通り一人で前線を魔王軍の本拠地近くにまで引き上げたが、
それから数年後には腐敗の賢老クヴァールによって前線が中央諸国にまで押し戻されている。
そして南の勇者が予見したとおり、ヒンメル達によってクヴァールは封印され、魔王は討たれることとなった。

南の勇者は知っていた。世界が救われる事を。その時、自分がいない事を。
この戦いは人類と魔王軍、それぞれにおける最重要人物ともいえる二人の男が何千回もの未来視の末に選んだ妥結案だったのかもしれない。

実力だけではなく精神性も人類最強の勇者と言われるに相応しい人物であった。

その死の謎……?


悪いなフリーレン。
お前に南の勇者との戦いを見せる訳にはいかん。

これは魔族の存亡をかけた戦いであり、
敗戦処理であり、千年後の魔族のための戦いだ。

南の勇者の遺体は見つかってはいない。
そのため南の勇者を信奉する人々には「まだ生きていてシュラハトと戦っている」という伝説が語られたほどであり、一方で一般的な魔族の生態をよく知るフリーレンは「魔族に食われた」と冷静に考えている。
七崩賢には遺体すら操る事が出来る断頭台のアウラがいたが…?


そして89話。
黄金の呪いに対する打開策を見つけるべく『七崩賢』黄金郷のマハトの記憶を見ていたフリーレン
フリーレンは魔王の腹心“全知のシュラハト”が南の勇者討伐のためにマハトを誘う場面を見る。
しかし千年後を見るシュラハトは、この戦いを“敗戦処理”と形容するなど「自分が死に、魔王が敗れる未来」「フリーレンがマハトの記憶を覗く未来」までも見抜いていた。
シュラハトは、マハトと未来のフリーレンに対してこれからの南の勇者討伐後、七崩賢“奇跡のグラオザーム”にマハトの持つ「南の勇者との戦い」の記憶を消させることを伝える。

シュラハトは「千年後の魔族のため」と述べていたが、少なくともマハトと戦う時点のフリーレンにはなにかしら知られたくないことが『南の勇者vs七崩賢&シュラハト』の戦いでは起きていたらしい。
この戦いに関わったと言われる人物はフリーレンが記憶を覗いた時点ではマハト以外死亡しているはずだが…?

また、南の勇者自身もフリーレンがこの先一生口外しない未来を見たことを理由に未来視の魔法の存在を伝えている。
「人類最強たる所以」と断言するほどの魔法であれば他の人類にも教えるなりすればいいのでは……と思うところだが、
いったい彼はどのような方法で未来視の魔法を会得したのか不明。
また、もしなにか魔族に都合のよい未来・人類に都合の悪い未来が見えたのならばフリーレンに教えられたはずだが、シュラハトと同じくフリーレンに隠す選択をしたのかもしれない。


戦闘能力

剣を二本使った二刀流の剣士であることが確認できる。
全七崩賢+魔王の腹心の八人で挑んで半壊したのだから、単純な計算として七崩賢一人あたりより強いのは確実だろう。
仲間がいる様子は一切なく、DQ1勇者よろしくソロプレイで魔王軍と戦っていた様子。
とはいえフリーレンを仲間にスカウトしている所を見るに「仲間なんていらない」と考える一匹狼だった訳ではない。
単に南の勇者についてこれる実力を持つ者がいなかったのかもしれない。

さらに魔法も使う事ができ、特に『未来予知』の魔法が南の勇者が人類最強と言われるゆえん。
1000年先まで見えると謳われたシュラハトと比べどのくらい先まで見えるかは不明だが、10年後魔王がヒンメルに倒されるところ、
果てはフリーレンが一生涯自分の未来視のことを他人に口外しないところまでは見えていた。


またフリーレンのスカウトに失敗するのを予知していたにもかかわらず、
仮に仲間になっても「死ぬ」という未来に変化はないと言っていた事から、色々な可能性の未来を見られるようだ(シュラハトも同様のことをつぶやいている)。

「死ぬ未来は変えられない」と言っているが、同時に「人類最強と言われる秘密は未来を知れるから」とも言っている事から、知った未来は変えられるようだ。
「死ぬ未来が変えられない」のは戦う相手が同じ能力を持つ全知のシュラハトだからだろう。


余談

これだけ強く偉大な人物でありながら『勇者の剣』は当然持っていない。おそらく抜けなかったのだろう。
南の勇者でも無理ならいったい誰が抜けるんだろうアレ。


Wiki篭りは知っていた。Wikiが救われる事を。その時、自分がいない事を。

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最終更新:2025年04月10日 02:07

*1 本作の舞台の大陸は北・中・南という三つの地理区分があり、「北(南)の○○」というと大抵は位置関係や単純な方位ではなくこの区分を指すので、おそらく南側諸国出自という意味。なお、ヒンメルは中央出自。

*2 これは七崩賢が半壊したことで交戦機会そのものが半減している状況ではある。また、残るうちの一人マハトは単独行動を開始し魔王軍を離れている