シャン・チー/テン・リングスの伝説

登録日:2021/09/10 Fri 19:46:14
更新日:2025/03/27 Thu 02:04:20
所要時間:約 14 分で読めます




◆シャン・チー/テン・リングスの伝説



最強ゆえにいをじた新ヒーロー誕生

マーベル・スタジオの新時代が始まる















概要


『シャン・チー/テン・リングスの伝説(Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings)』とは、2021年に公開された米映画。
MARVEL社のコミックヒーロー「シャン・チー」の実写映画化作品である。
MARVELコミックヒーロー映画化シリーズ、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画通算25作目にしてフェーズ4の映画第2弾。

今作の主人公シャン・チーは、原作ではブルース・リー主演のカンフー映画『燃えよドラゴン』のヒットにより登場した、アジア出身のカンフー使いのヒーローだった。
そして、『ブラックパンサー』のヒットにより、非白人のヒーローが浸透しつつある現在、遂にMCUにも登場することとなる。

本作で描かれるのは、中国を拠点とした悪の秘密結社と、中国神話の礎となった異界の戦い。
その中で、主人公シャン・チーは、秘密結社の首領である父と対決を迫られる。
複雑な家族の関係とオリエンタルなカンフーアクションを丁寧に描き、MCUのヒーローオリジン映画として申し分ない出来となっている。

主演がほぼ無名に近い俳優だった事や、アジア系人種に対するヘイトクライムが問題視される最中での公開になった事、
韓国の名優マ・ドンソクが出演し、クロエ・ジャオのアカデミー監督賞受賞後第1作となる次回作『エターナルズ』の方に話題が集中していた事などから、公開前はディズニー上層部からも微妙な反応をされていた。
更にアメリカでは公開から45日後にDisney+での配信が決まっているため、早期配信を前提にした中での劇場公開をディズニーは「興味深い実験」と称し、
本作の興行収入の結果次第で今後配給していく映画の公開形式を判断していく方針を仄めかす発言に対して主演のシム・リウが反論する事態にも発展した。

だが、今作はそんな下馬評を覆し、レイバーデイ(米国における労働者の日)公開の映画でも新記録を達成。
アジア系に対するヘイトクライムも横行する中で、アジア系を中心とした根強い支持を得ている。
一方で舞台となった中国では、政府の意向により2021年9月現在配給の承認が降りておらず、未公開状態である。

MCU作品で日本語吹き替え版の声優が全員プロ声優で固められたのは『スパイダーマン:ホームカミング』以来となり、
ディズニー配給としては『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』以来、約7年半ぶりとなった。
ちなみに本作には中国語の台詞も多いが、その部分は吹き替え版でも原語版の流用となっている。

監督は『ショート・ターム』『ガラスの城の約束』といった親子関係に関する映画を監督しているデスティン・ダニエル・クレットン。
主演は今作が映画初主演となるシム・リウで、「一見普通の男だが実は芯の強さがある」キャラクターがハマり役と評判。
ヒロインには『オーシャンズ8』『フェアウェル』といった話題作に出演しているラッパーのオークワフィナ。
更に脇には『インファナル・アフェア』3部作や『レッドクリフ』2部作のトニー・レオン、『グリーン・デスティニー』のミシェル・ヨーといったベテランのアジア系俳優が名を連ねている。






ストーリー


とてつもない力を秘めた10個のリング。それを駆使し、世界を裏から支配してきた男が指導する「テン・リングス」という組織が存在していた。
その男は、神の力を操るという不思議な村を追い求め、その果てに村に住む一人の娘と恋に落ち、二人は結ばれた。
やがて夫婦は二人の子に恵まれたが、その幸せは長くは続かなかった。
一つの不幸により仲の良かった家族はやがて崩壊し、離散して暮らすこととなったのだ。

現在。サンフランシスコに住むホテルマンのショーンは、友達のケイティと共に平穏な生活を過ごしていた。
しかし、ある日怪しい集団がショーンを襲い、母の形見のペンダントを奪われてしまう。
凄まじい格闘術で連中と互角に戦ったショーンは、問い詰めるケイティに自らの正体を明かす。
ショーン―――本名シャン・チー―――は秘密結社テン・リングスの首領の息子であり、自分を狙っているのは格闘術を叩き込んだ父なのだと。

シャン・チーは妹シャーリンに危険を伝えるためケイティと共にマカオへと向かうが、そこでもテン・リングスの兵の襲撃を受け、結局三人とも捕まってしまう。
テン・リングスの本拠地へと連行され、父ウェンウーと再会するシャン・チー。
そこで彼は、父の目的が死んだはずの母と再会するため、彼女の住んでいた幻の村ター・ローから解放するということだと知る。

妄執に取り憑かれた父を止めるため、シャン・チーは一足先にター・ローへと向かい、伯母から母の武術を授かる。

今、父と子の世界を懸けた戦いが始まった。





登場人物


  • ショーン/シュー・シャン・チー
演:シム・リウ/吹き替え:細谷佳正
サンフランシスコのホテルマンをしている青年。喧嘩は好まない温厚で人当たりのいい人物。
その正体はテン・リングス首領の息子で、殺人のための武術を幼少時から叩き込まれており、凄まじい戦闘力を持つ。
小さい頃は両親と妹と一緒に平和な時を過ごしていたが、母の死以来、父から後継者になるための特訓をさせられていた。
やがて父から暗殺者としての最初の任務を与えられるも、その果てに嫌気が差し、米国へと逃げて「ショーン」の名で全てを忘れて生活していた。
そして現在、父の刺客の襲来を機に再び父と対峙することとなり、彼の目的の果てに、母の村、ひいては世界の危機を知る。
自分の人生を狂わせ、知らず知らずの内に世界を危機に追いやろうとする父を止めるべく、力を以て彼に戦いを挑むのだが……。


  • シュー・ウェンウー
演:トニー・レオン/吹き替え:山路和弘
テン・リングスの首領で、シャン・チーの父。
千年以上前に、手に入れた10個のリングの力で暴虐の限りを尽くし、富と権力を得て永遠の若さをも手に入れた、世界の影の支配者。
傲慢で居丈高、視野も狭く思い込みの激しい性格だが、リーとの結婚後は家族に対する慕情が少なからず芽生えていた。
ター・ローの村の噂を聞きつけて潜り込んだ先に、リーと出会い彼女に一目惚れし、リングの力を捨ててまで彼女と普通の家族を作ろうとする。
だが、妻の非業の死により復讐の念に取り憑かれ、再びリングを装着して首領に舞い戻り、妻の命を奪った一派を壊滅させる決意を固め、そのために息子を兵器として育て上げる。その果てに、息子だけでなく娘にまで去られ、失意の日々を送っていた。
そこへ、「村の中に閉じ込められている」というリーの声を聞き、助けるために子供達を無理矢理呼び寄せてター・ローへと攻め込むことを決意。
それを反対した子供達と対立することになり、妻にもう一度会いたいという呪縛から逃れられないがために、
逆らうならば身内であろうと容赦はしないという覚悟の元、シャン・チーの最大の脅威として立ち塞がる。


  • ケイティ・チェン
演:オークワフィナ/吹き替え:ニケライ ファラナーゼ
シャン・チーの学生時代からの親友。お喋りで陽気な人懐っこい女性。
中国人としての名前は『ルイウェン』。
異性の友達ではあるが、気さくで親しみやすい性格なため、男女の関係には発展していない。
プロ級のドライブテクニックを持ち、バック走行でもお手の物なほど運転が上手い。
突然の親友のカミングアウトにも動揺することなく、彼に付き添って全てを受け入れるほど胆力があり、シャン・チーの心の支えとなっていた。
実力はあるが何事も長続きしたことがなかったため、ずっと自信を持てなかったが、ター・ローでの特訓の成果で弓を上達することに。
趣味はカラオケで十八番はイーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア/Hotel California」。
ミッドクレジットではシャン・チーとウォンと共に熱唱した上、そのままエンディングで原曲が使用された。


  • シュー・シャーリン
演:メンガー・チャン/吹き替え:内田真礼
シャン・チーの妹。
兄に負けず劣らずの武術を使う、クールな美女。
幼い頃、母の死以来「リーを思い出すから」という理由で見向きもされなくなり、独学で武術を習得。
そして、兄に置き去りにされてから6年、彼に失望して家出し、マカオで裏の闘技場を開いて裏社会のコネを作り上げていった。
久々に訪ねてきた兄と再会し、怒りをぶつけるも直後テン・リングスの襲撃により一度は見捨てて窮地に追いやった上で共闘。
そのまま兄と同行して父と再会し、彼の野望阻止のためにター・ローへと向かい、伯母のナンから実力の解放を勧められ、兄と共に最大限の力を発揮する。


  • イン・リー
演:ファラ・チェン/吹き替え:木下紗華
シャン・チーの母。
ター・ローの出身であり、村の守り神である龍の力を借りることで自然の力を操る武術を使いこなす。
村に忍び込もうとしたウェンウーと出会い、力をぶつけ合うことで惹かれ合い、彼と共に生きることを決意。
ウェンウーとはター・ローでの暮らしを望んだが、村人から野心家だったウェンウーを拒絶され、自分が力を捨てて村を去ることで結婚した。
二人の子供に恵まれ、穏やかな日々を過ごしていたが、ウェンウーに恨みを持つ一派の襲撃を受けた際に子供達を守るために一人で立ち向かい、圧倒的な数を前にして命を落としてしまう。
彼女の死を機に、シュー家は徐々に崩壊していくことになる。
そして現在、失意のウェンウーの耳に、死んだはずの彼女の声が聞こえるようになり……。


  • イン・ナン
演:ミシェル・ヨー/吹き替え:塩田朋子
リーの姉でシャン・チーの伯母。
彼女もまた、妹同様に龍の力の使い手であり、ター・ローでも指折りの戦士である。
妹の子供であるシャン・チーとシャーリンを優しく出迎え、彼らに改めてター・ローの使命を伝え、村に伝わる武術を教える。
ことにシャン・チーには、「自分が何者か」を教えた上で、母と同じ型を叩き込む。
ミシェル・ヨーは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』にアリータ役でカメオ出演していたが、今回別役でMCUへの再出演を果たした。


  • トレヴァー・スラッタリー
演:ベン・キングスレー/吹き替え:麦人
アイアンマン3』以来の登場となる元舞台俳優の男性で、シャン・チー達とは別の牢屋に閉じ込められていた。
同作の真の黒幕であるアルドリッチ・キリアンに利用されたとは知らず、テン・リングスの首領「マンダリン」役として演技でアメリカを恐怖に陥れたが、トニー・スターク/アイアンマンの活躍によってキリアンが倒されたことで逮捕された。
なお、「マンダリン」とはキリアンが勝手にでっち上げた名前であり、本来の首領ウェンウーは名乗ってもいない名前である。
そして、厭わしく思ったウェンウーによって刑務所から拉致され、処刑されそうになったが咄嗟にやった芝居がウケたために「道化」として生かされ囚われの身だった。
仲良くなったター・ローの動物・モーリスの言葉が分かったためター・ローへの道案内役としてシャン・チーらに協力することになり、共にター・ローへ向かって何故か戦う事になる。
ちなみに、役者を志したのは幼少期に見た映画『猿の惑星』の猿の演技に感銘を受けたからだが、本人はあれを『特殊メイクをした人間』ではなく、『本物の猿』だと思っている。*1


  • レーザー・フィスト
演:フロリアン・ムンテアヌ/吹き替え:間宮康弘
ウェンウーの側近を務める西洋人。後述の特徴からも分かるが、レーザーは「Laser(光線)」ではなくRazor(カミソリ)である。
右腕の前腕部から先がない屈強な大男であり、特殊な伸縮自在の刃の義手を右腕に装着している。
テン・リングスの一員であることを誇りに思っており、首領を裏切ったシャン・チーとシャーリンを敵視している。


  • デス・ディーラー
演:アンディ・リー
顔に京劇の面のようなマスクを被った忍者風の戦士。
子供の頃のシャン・チーに殺人術を叩き込んだ古株のメンバー。
一応立ち位置的には重要な役どころだったはずだが、あまりに出番が少なく最期もかなり雑。


  • グアン・ボー
演:ユエン・ワー
ター・ローの長老。弓の達人であり、村民に弓術を教えている。
若干頭が固く、当初はシャン・チー一行を歓迎していなかった。
シャン・チーの力になりたいと願うケイティに弓を教え、彼女に師匠として仰がれる。
演じているのはカンフーハッスルの大家の旦那役の人。


  • モーリス
ター・ローに住む幻獣。顔がないブタかウサギみたいな生き物。
元ネタは中国神話の生物「渾沌」。
ター・ローへの道を探していた際にテン・リングスに連れ去られ、牢屋でトレヴァーと共に過ごしていた。
脱走しようとするシャン・チーらに手を貸し、ター・ローへの道筋を教え、村に帰ることに成功する。


  • ジョン・ジョン
演:ロニー・チェン/吹き替え:櫻井トオル
マカオの裏闘技場の経営者の一人で、シャーリンの側近。
シャン・チーが上司のシャーリンの兄であることを知りつつ、闘技場の注目を集めるために二人を戦わせるなど性格は悪い。


  • ウォン
演:ベネディクト・ウォン/吹き替え:田中美央
至高の魔術師の相棒の魔術師。
裏闘技場の常連出場者であり、アジア系の観客から注目を集めていた。
アボミネーションを相手に優位に戦うなど、戦闘に慣れている様子がうかがえる。
シャン・チーもまた彼のファンらしい。


  • エミル・ブロンスキー/アボミネーション
インクレディブル・ハルク』以来、実に13年ぶりの登場。かつてハルクの強さを追い求め、ハルクの血を輸血した男の成れの果てである怪物。
2022年配信予定のドラマ『シー・ハルク』への登場が発表されており、生存は明確となっていたのだが、今回同作に先駆けてカメオ出演し、元気に生きていることが発覚。
ウォンによって施設から抜け出し、闘技場で戦いながら腕を磨いていたようだ。
戦いが終われば、ウォンによって大人しく元の施設に帰っていった。





キーワード


  • テン・リングス
アジアを拠点に置いている秘密結社。
ウェンウーによって結成された、世界征服のための足掛かりとされた組織であり、武術に長け、様々な暗殺や裏工作によって世界を裏から牛耳っていた。
アイアンマン』シリーズにも名称のみが登場していたが、前述の通り『アイアンマン3』のマンダリンはこの名を騙った別物に過ぎない。


  • 10個のリング(テン・リングス)
ウェンウーの得物である10個の腕輪。
凄まじい力を持ち、衝撃波や一個一個でオールレンジ攻撃を仕掛けることが可能なだけでなく、所有者に永遠の若さを与えることが可能。
その出自は不明であり、材質に関しても不明な点が多い。
原作では、とある有名ヴィランの種族の技術である。
また、原作でトニー・スタークがシャン・チーに送った氣のブレスレットに類似している。

  • ター・ロー
中国の竹林の奥にあるという、別の次元にある神の力を持つ仙人の種族や神獣や幻獣等が住む村。
普段は入口は竹林に隠れており、侵入しようものなら動く竹林によって命も落としかねない。
1年に一度、清明節の日にだけ現れる道によって入ることが出来、また秘密の抜け道も存在する。

中は美しい自然に囲まれ、様々な幻獣と共に人々が暮らす長閑な村である。
竜、麒麟、妖狐、カイチ、鳳凰、混沌などが生息する。
村民は、魔界に通じる「ダークゲート」から、人間の世界への魔物の侵略を阻止する使命を与えられており、日々鍛錬に勤しんでいる。


  • グレート・プロテクター
ター・ローの守り神である、偉大な力を持つ雌の竜。
過去にこの竜の活躍によって、魔物を封印することができたという。
リーやナンはこの加護によって自然の力を操ることができた。そしてシャン・チーもまた、その片鱗があるという。


  • 闇の魔物
ター・ローの奥にある「ダークゲート」に封印された、魔界から侵略せんとする邪悪な存在。
数多くの人間を門の向こう側から言葉巧みに唆し、門を開けさせようと目論む狡猾な性質を持つ。
巨大なドウェラー・イン・ダークネスと、魂を食らいボスへと運ぶ小型魔物のソウルイーターズの二種類がある。











「実は本当は追記・承正じゃないんだ」

「本当は何?」

「修正」

「は?習性?」

「修正」












































































演:マーク・ラファロ/吹き替え:宮内敦士
  • キャロル・ダンヴァースキャプテン・マーベル
演:ブリー・ラーソン/吹き替え:水樹奈々

シャン・チーが持っていたテン・リングスを解析するアベンジャーズの関係者達。
バナーは『アベンジャーズ/エンドゲーム』のようなスマートハルクではなく何故か元の姿に戻っており、更に指パッチンの影響が残っているのか右腕を負傷している。
分かったのはリングが未知の材質で出来ている事と、何か信号を送っている事だが、それ以上に分からない事だらけで会議は終わった。
唖然とするシャン・チーとケイティにウォンは語る。「これから先、君らは想像もつかないような人生を送るだろう」と。


……とはいえ、その時はその時だ。今は楽しむ。それがシャン・チーとケイティなのだ。






  • シュー・シャーリン
「テン・リングスを解体する」と言ってシャン・チーと別れたが……そんな気は全くなく、ちゃっかり父の跡を継いでテン・リングスの新首領に居座った。
果たして、新しいテン・リングスは世界にとっての敵か、味方か?











THE TEN RINGS WILL RETURN

テン・リングスは帰ってくる





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最終更新:2025年03月27日 02:04

*1 本人曰く、「猿が馬に乗っているシーンでどうやって馬に乗っているように演技させたのか、未だに分からない」とのこと。