オールレンジ攻撃

登録日:2013/12/29 Sun 19:36:19
更新日:2020/01/25 Sat 21:59:16
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オールレンジ攻撃とは、ガンダムシリーズにおける架空の攻撃方法の事。
本来は円状の飽和攻撃を意味する軍事用語らしいが、アニオタ的には十中八九こちらの意味で使われる。
ガンダム以外の作品でも似たような攻撃方法が出てくる場合慣例的にオールレンジ攻撃と呼ぶ事が多い。

代表的なオールレンジ攻撃兵器である「ビット」や「ファンネル」が
そのまま他作品のオールレンジ攻撃も総括する名称として使われることもある。

本体とは別に行動する多数の遠隔誘導攻撃端末による同時攻撃のことであり、
単機で多数の敵を攻撃したり、1機の敵に対し3次元的な全方位から同時攻撃する事で回避も防御も困難にするなどの使い方が可能。

兵器として極めて強力であり、エルメス以降、数々のオールレンジ攻撃可能な機体が開発されてきた。
しかしながら、オールレンジ攻撃が可能なのは特殊で貴重な人材であるニュータイプが必須であったため、
多くのオールレンジ攻撃可能機は試作機・専用機などのワンオフまたは少数量産機だった。

本体は大きな動きを見せず周囲の端末が攻撃を加えるという絵的には非常に単純な図式は、
それまでの戦いの光景を一変させるある種の神々しささえ感じさせるものであり、
このオールレンジ攻撃というアイデアはシリーズ内のみならず、多数の作品に影響を与えた。

この辺は体の巨大化や各部の複雑化を増していった変身が、
書き手側の負担を減らすために最終形態はシンプルにしたことが逆に効果的だったフリーザ様のような例に通じるものがあるかもしれない。

一方で、オールレンジ攻撃の生みの親と言っていい富野自身は、このアイデアを冷ややかに見ている。
それというのも、巨大ロボット同士で戦わせるために色々な設定を作ったにも関わらず、
オールレンジ攻撃を使う強機体が増え、ロボット同士の格闘戦が少なくなってしまったからだという。

攻撃端末は大抵の場合小型かつ高速なので、絵的な派手さに欠けたり、戦い方が似通ってしまいがちという問題もある。
これはオールレンジ攻撃があまりにも優秀過ぎたために、それまでの戦い方が馬鹿らしくなってしまった事態だと言える。

そして更に雑魚量産機が基本的にこういった装備をしていない為、
逆にオールレンジ兵器無し=雑魚という図式フォーマットが出来てしまったのも問題の一つである。

とはいえ、オールレンジ攻撃は上記の通りシンプル故に効果的に見せられるので、
それを狙ってガンダムも含め多数のロボット物、あるいはロボットでなくとも、上位の実力者であることを表す手法として今日も使われている。
見せ方としても格闘戦を仕掛けながら、オールレンジ攻撃を同時に行うなどいくらでも違いは出せるし。


余談だが、よく「ガンダムシリーズでのファンネル等は大気圏内では使用不可」と思われがちだが、一部作品を除けばこれは間違い。
ΖΖでは大気圏内で使用している描写があり、クロスボーン・ガンダムに登場するフェザーファンネルに至っては同じファンネルで地上と宇宙双方で凄まじい高速機動を行っており、地球の重力により宇宙に比べると敵MSが俊敏に動けなかった分むしろ大気圏内での方が活躍していた。*1

間違いではあるのだが、小説版UCではコロニー内でファンネルを使用した際にマリーダが動きが重いと発言し、照準を合わせられず動力炉を誤って撃ち抜いてしまったり、肉眼で捕捉し拿捕できるレベルまでの機動力しか発揮できていなかった。
シャンブロに搭載されたリフレクター・ビットも有重力下において浮遊するためにバルーンとプロペラを使用しているとされ、グレートメカニック内のインタビューにおいて「Gの影響で制御が難しい」と言及されているため、少なくともUCの設定においては大気圏内での使用は可能だが制御が困難である。


因みにSEEDに登場するドラグーン・システムは大気圏内では使用できないと明確に設定されており、
カオスガンダムの機動兵装ポッドのような高い推力を持つものだけが例外的に使用可能とされている。


なおエポックメイキングなものはやはりガンダムシリーズだが、「子機を使うロボット」のアイデアはそれ以前にもあり、巨大ロボットとしては『鉄人28号』のファイア二世の鳥ロボット、モンスターの小型モンスター(どちらも体当たり式)、
等身大ロボットだとさらにさかのぼって『われはロボット』のDV5号(注:攻撃用ではなく作業用)などが挙げられる。


代表的な兵器

  • 無線操作小型攻撃端末
かいつまんでいうとファンネルでありドラグーンであり、ブルー・ティアーズであり、パイル(タウバーンの腰についてるアレ)。
GビットなどのビットMSなども一応ここにあたる。
ラスヴェートのまで行くと端末とは一体……うごご……となってしまうが考えるだけ無駄か。

わりとポピュラーな脳波や超能力、コンピュータによる制御。
果てはハイ・ファミリアのように魔術的な要素を用いて自身の思念を端末に伝えて操り、敵機の死角から攻撃を撃ちこむ。
基本的には特殊能力による制御の方が精密かつ幻惑的に動くため、コンピュータ制御タイプは下位互換扱い。

R-3パワードのストライクシールドのように端末自体が突進するタイプ、
エグゼクスバインのT-LINKスライダーやGNファング、ニルヴァーシュtypeZEROspec-Ⅴのビットに見られる射撃・刺突・斬撃をこなすタイプ。
さらにシャンブロやサイコガンダムMk-Ⅱのリフレクタービットのような攻防一体型。
GNビット系やSPIGOTのように他の火器を強化できる攻撃補助属性持ちものも存在する。

一番歴史があるだけあって種類もたくさんあり、多彩である。

どのタイプも端末自身の火力は割合乏しいが防御は変幻自在の軌道と相まって非常に困難。
パイロットの技量が高ければこれだけで雑魚は滅殺できるし、互角の技量の持ち主を押し立てても対処させるのは難しい。

最大の欠点はエネルギーの確保。所謂電池切れ
大抵は動力について何らかの設定(エネルギーを補給する手段など)があるが、稀に使い捨てのものも存在する。
もっとも、欠点らしい欠点として描写されることは少ない。

これの対処が得意なパイロットはなかなか珍しく、
例えばシャア・アズナブルハマーン・カーンに機体で差はつけられていたとはいえあっけなく翻弄されてダルマにされてしまった(ただしシャアは逆シャア時代においては、アムロのフィン・ファンネルを避けるどころか、サザビーのファンネルでファンネル同士の格闘戦を行えるまでに熟達している)。
ファング狩り職人の刹那・F・セイエイや、「袖付きめ…」の人は存外スゴイ。

実のところ、作画がかなりメンドクサイタイプ


  • 有線操作小型攻撃端末
インコムやガンバレル・触手アームの系統。主にコンピュータ制御だが、作品によっては脳波や特殊技能で操作する。
有線故に取れる射角や射程が狭く、また端末部分だけでなく有線部分を破壊されると途端に無力化するため
無線の下位互換(特にインコムの様な細い制御通信ワイヤが付いてる以外は無線系と大差無い物)に置かれがちだが、
触手アーム系の様な有線というより太めのエネルギー供給チューブが端末に繋がっている様な物は本体からエネルギーを随時供給しながら
攻撃出来る長所があり最大出力、継戦能力の点で優位があるので、たまーに強力なこともある。
ガンダムの世界観では、ケーブルを介して操作する特性が逆に無線型のように全方位にサイコミュ感応波をまき散らさないため、ニュータイプでも感知しにくいという思いがけない強みがある。
小説版ガンダムではブラウ・ブロの攻撃をアムロはしばらく解明できず翻弄される描写がある。


  • 自身の手脚
ターンXやグレート・ジオングなどが該当。手脚など自身の機体をバラして飛ばすという荒業。
ロケットパンチがファンネルになったと考えればいいだろうか。端末の喪失=手脚の喪失を意味するため
迎撃されない自信がない限り無闇に出せなさそうなのが難。
尤も空間戦闘においては手足など飾りである。

  • エネルギーの直接操作
ギラーガ(レギルス)ビットや、グランゾンのワームスマッシャーが該当。
ワームスマッシャーはなんか違う気もしなくはないが、65535箇所同時攻撃が可能なんだからオールレンジ攻撃でいいんじゃないかな……

エネルギーを直接ぶつけるため、端末を破壊して数を減らす事の出来ない厄介な代物。
バリアでの防御はオールレンジ攻撃の死角に回り込んで撃ちこむという特性上なかなか困難なので、躱すのが対策として最上となる。

小型ビットでもあるレギルスビットは負担が大きい代わりに汎用性が凄まじく高い。
ついでに作画的にも負担が少なくてうれしい。



弱点、そして衰退


開発当時は強力な攻撃手段であったビット・ファンネル、そしてそれを駆使したオールレンジ攻撃だが
それ以降の時代では対策がなされていった…というよりは自然に徐々に衰退していった。

  1. コストが高い

    NT専用機全般に言えることだが、前線での戦闘に堪える高度な演算処理機能を持たせようとするとどうしても莫大なコストがかかる。
    オールレンジ攻撃が可能な機体は、例外なく限定的な生産に留まっている。
    しかも小型機であるビットやファンネルはどうしても損耗率が高く、使い捨てにせざるを得ない場合も多かった。

  2. 無線兵器である

    システムはどうあれビット・ファンネルも無線兵器である以上、通信を傍受されたり妨害されたりというリスクがつきまとう。
    (ユニコーン・ガンダムのサイコミュジャック(NT-Dシステムの機能の一つ)など)

  3. 小型機である

    高速で回避行動がとれるとはいえ小型である以上、一撃必殺の火力は無い上に相手の攻撃に対する防御力が皆無に等しい。
    しかも搭載火器・燃料の関係上、射程も短く航続距離も短め。
    さらに用法上の問題もあり敵に接近していかざるを得ず*2、そこを狙い撃ちされると結構簡単に落とされる。(ガンダムXのジャミルなど)

  4. 製造・整備できる人材が限られる

    NTに合わせて製造・調整しているため、開発するためには専用設備に加えてNTを研究したり研究結果を盗むなどが必要であり、コストを度外視しても専門の研究所や大企業でもなければ作れない。そのためジャンク屋やそこらの工場などが製造・整備するのは不可能に近い。


これらの弱点のうち、特にコストが高い上にパイロットを選ぶことが最大の弱点と言える。
NTを用意できなければただコストが高いだけの邪魔者であり、更にNTでもパイロット適正やNT能力が低ければやはり微妙な代物となる。
兵器として最も重要な『数を揃える』の邪魔になるため、特段の事情がなければ優先度が低くなる。
逆シャア前後までは常に紛争が起きていたような状態だったため、新兵器や強敵に対抗するためにも研究開発が進んでいたが、
大規模な戦火がしばらく遠ざかっていたそれ以降の年代では、軍からの需要が無くなっていったためか衰退していっている。

また、相手が非常に強力なパイロット・機体の場合、回避したりビットを破壊してくるなど、それでもかなり強力な武器であることには変わりないが効果は薄くなる。
そのためオールレンジ兵器を搭載する分の余剰や労力を機体の強化につぎ込むという選択肢も大きなものとなってくる。

絵面というメタ的な側面が衰退の最大の理由だが、
こういった理由からオールレンジ攻撃は戦場の主力にはなり得なかった。
一対一でも当然有効だが、多数を相手に戦闘する場合(実際の戦場ではむしろ一対一で戦う場面は少ない)にはそれ以上に有力な攻撃手段であったため、
後代でも特に指揮官機にこれらの武装が搭載されることもあった。




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