三岐鉄道三岐線

登録日:2022/03/22 Tue 12:45:48
更新日:2024/03/28 Thu 20:28:50
所要時間:約 7 分で読めます




三岐鉄道三岐線とは、近鉄富田駅と西藤原駅を結ぶ三重県の鉄道路線である。
総延長は26.5km。

概要

名前的に三重県と岐阜県を結んでいそうだがそんなことはない*1
四日市地区の通勤・通学輸送を担っているほか、私鉄では数少ない貨物輸送も行っている路線の一つ。

同社の路線である北勢線との乗り換え駅は存在しない。

北勢線とは違い自動改札機は無く、硬券が現役


運行形態

全列車が各駅停車のワンマン運転。
朝・夕方の時間帯は概ね20~30分に一本、それ以外の時間帯は40分に一本程度。
基本的に起終点の近鉄富田-西藤原での運行だが一部保々発着の列車がある。

西野尻を除く全駅が有人駅だが近鉄富田を除き窓口が開いているのは6:50~20:30のみ。

サイクルパスが行われており、大矢知~西藤原では車内に自転車を持ち込むことが出来る。
土休日では大矢知~西藤原で行われいるが平日は三里~西藤原でのみ利用可能。
その他長期休暇期間であれば平日でも9:00~16:00まで利用可。

貨物輸送

JR富田~東藤原では貨物輸送が行われている。
東藤原駅からは太平洋セメント藤原工場へ引き込み線が出ており、そこからセメントや炭酸カルシウム、フライアッシュの輸送が行われている。

セメントは富田駅まで運ばれた後、関西本線と日本最後の鉄道可動橋(跳ね橋)である末広橋梁を経由し四日市の太平洋セメント出荷センターへ運ばれる。

セメントの生成過程で生じる炭酸カルシウムは関西本線、東海道本線武豊線、衣浦臨海鉄道線を経由し愛知県碧南市・知多郡武豊町の火力発電所に運ばる。その帰りに発電の過程で生じるフライアッシュを積んで東藤原に戻ってくる。
炭酸カルシウムは発電所で大気汚染物質を抑える脱硫に用いられる。
フライアッシュはかつて産業廃棄物として処分されていたが、コンクリートに原料として混ぜ合わせることで耐久性や利便性を向上させる作用があることが分かり、セメントの製造に用いられるようになった。
このようにセメント工場と火力発電所には強い繋がりが存在しており、炭酸カルシウム・フライアッシュ輸送はこの橋渡しとして機能している。

また割と最近まで突放*2を行っていたことでも知られている。しかし2020年辺りを最後に廃止されている。

車両

電車

かつては自社発注車や国鉄や小田急、相模鉄道からの譲渡車も存在したが現在は全て西武鉄道からの譲渡車となっている。
101系を除き3両固定編成。

今後の予定として、JR東海から211系電車を購入していることが明らかにされた。
これについては事前の発表が無く、突如富田駅まで深夜に回送されたことから発覚したもので、更新計画は前々からあったもののあまりの予想外ぶりに皆が驚いたとか。

  • 701系
元西武401系。
三岐鉄道初の冷房車で、導入にあたり台車を交換している*3
クモハ側は元々中間車だったが導入にあたり運転台を接合して先頭車にしている。
801F、803F、805Fの3編成が在籍するが803Fは2019年に西武鉄道赤電カラー、805Fは2018年に西武鉄道レモンイエローカラーに復刻して運行している。
復刻にあたり塗装だけでなく導入時に不要となるため外した電気連結器をダミーで再設置している。

  • 851系
こちらも元401系だが導入時に台車を履き替えていない。
こちらもクモハは先頭車化改造をされている。
851Fの1編成のみ在籍するが、2013年に脱線事故を起こし西藤原側のクハ1851が復旧されず事故現場で解体された。
その後は後述の751系の部品取り用の新101系を整備して編成に組み込み復旧させた。この際方向幕はLED化された。
そのため前後で顔が違う編成となっている。

  • 101系
元西武401系。食パン電車。
他の形式が3両編成だがこの形式のみ2両編成となっている。
101F、103F、105Fの3編成が在籍。
101Fは三岐鉄道旧標準塗装で運行されている。

  • 751系
元西武新101系。
2009年導入の三岐鉄道としては一番新しい車両。
235Fと283Fを伊豆箱根鉄道譲渡分と分け合って導入した。
実際に運用されたのは751Fのみだが部品取り用で237Fも譲渡された。当初は運用する予定は無かったが前述の通り851Fの復旧用にクハ1238のみ用いられた。

貨物輸送用

機関車は入換専用のED301を除き全て重連で運用される。
  • ED45
ED451~ED459が在籍。
454と455は富山地方鉄道から譲渡されたもの。459は東武鉄道から譲渡されたもので、譲渡後長らく運用されていなかったが中部国際空港建設時の土砂輸送用に改造が行われ、それ以降は運用されている。

  • ED5081
元東武鉄道ED5080。
ED5081とED5082が在籍。
元々は成田空港建設用に製造された機関車。
空港完成後は東武鉄道に譲渡され、2003年の貨物輸送が廃止まで運用された。
その直後に三岐鉄道に売却されたが運用に入ることなく長らく保管され続けた。そのため三岐鉄道での運用開始は5081は2014年、5082は2011年と結構最近。

  • ED301
元南海電気鉄道ED5202。
グレーの車体にオレンジ色の帯の凸型機関車。
え?こんなやつ見たことない?それもそのはず。普段はセメント工場での入換えでのみ用いられ、まず人前に姿を見せないのだ。
本線上に姿を見せるとしたら年一度程度の検査時のみ。
もしその姿を拝めたら本当にラッキー。

  • タキ1900
JR貨物所属。東藤原駅常備。
セメント輸送用タンク車。

  • ホキ1000・ホキ1100
JR貨物所属。東藤原駅常備。
炭酸カルシウム・フライアッシュ輸送用ホッパ車。
通称:白ホキ。ホキ1000は現在ホキ1100に置き換えられ廃車が進んでいる。

  • チキ6000
JR西日本所属。
レール輸送用長物車。
年一回のレール輸送でのみ入線する。

駅一覧

  • 近鉄富田
近鉄名古屋線乗り換え。関西本線富田駅は徒歩7分程度で乗り換え可能。
近鉄とは改札とホームは共用で、三岐線は3番線から発着する。
三岐線では交通系ICカードが使えないため、ICカードで近鉄に乗ってきた場合は一度改札を出る必要がある。
かつてここに乗り入れる列車は無く、1970年までは全て後述の富田駅発着だったが1985年には全て近鉄富田発着となった。

  • 富田
大矢知~近鉄富田間の三岐朝明信号所*4で富田駅方面へ線路が分岐している。
現在は貨物列車のみ発着しており、ここでJRの機関車と付け替えを行う。
かつては国鉄富田行として旅客列車も発着していたが、前述の通り1985年に富田乗り入れは廃止された。
方向幕にはJR富田も入っているがイベントぐらいでしか使われたことがない。
また三岐鉄道の本社もこの付近。

  • 大矢知
聖武天皇時代の役所の遺跡である国史跡久留倍官衙遺跡と資料館の最寄り駅。徒歩15分程度。

  • 平津
伊坂ダムと様々な自転車に乗れる伊坂ダムサイクルパーク、伊坂城跡の最寄り駅。それぞれ北東に徒歩20分程度。
また駅の南側の踏切は今や希少なゴング式踏切となっている。
警報音として電子音のスピーカーではなく本当に鐘が付いており独特な音が聞ける。

  • 暁学園前
その名の通り暁学園前最寄り駅。
ホームにカップヌードルの自販機があり、駅には駄菓子屋が併設されている。

  • 山城
イオンモール東員最寄り駅。ここからイオンへバスが出ており片道10分、大人200円。

  • 保々
車両基地がある駅で三岐線の運行における中心駅。当駅終始発の列車も存在する。
廃車車両の解体もここで行っている。

  • 北勢中央公園口
その名の通り北勢中央公園の最寄り駅……なのだが実際は2kmぐらい離れている。

  • 梅戸井
ここからいなべ市。
大安病院最寄り駅。

  • 大安
駅に大安図書館が併設されている。
縁起のいい駅名から入場券が人気。

  • 三里
両ヶ池公園最寄り駅。約3km。
851Fの脱線事故が起きたのはここ。

  • 丹生川
貨物駅跡地を利用し貨車を中心に車両を展示する貨物鉄道博物館が構内にある。
毎月第一日曜日のみの開館だが保存車だけならそれ以外の日でも見学可。
開館日であれば北勢線阿下喜駅まで無料のシャトルバスが運行される。更に阿下喜駅の軽便鉄道博物館も開館しているのでそちらもどうぞ。
駅から線路沿いに南に歩くと藤原岳をバックに列車が撮れる場所がある。

  • 伊勢治田
貨車の留置などを行うため構内がやたら広い。
北勢線と徒歩で乗り換えたければここから阿下喜駅まで22分程で着ける。
名松線伊勢八太駅と名前が似ているが特に関係はない。

  • 東藤原
貨物列車の運行はここまで。駅の北側に引き込み線が伸びており、太平洋セメント藤原工場へ通じている。
駅前にはかつてセメント輸送に用いられていたホキ25267(ホキ5700形)が展示されている。

  • 西野尻
三岐線唯一の終日無人駅。

  • 西藤原
終着駅。そして三重県最北端の鉄道駅。
蒸気機関車を模した駅舎が特徴で、構内にはE102号蒸気機関車、ED222号電気機関車、三岐通運DB25が保存されている。
駅前は広場になっており、5インチゲージ鉄道のレイアウトがあり、月一度桑名工業高校が桑工ゆめ鉄道としてミニ列車を運行している。
また藤原岳登山口や藤原岳自然科学館の最寄り駅。


追記・修正はED301を目撃したことがある方にお願いします。

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最終更新:2024年03月28日 20:28

*1 じゃあ何で三岐鉄道なのかというと元々三岐鉄道は三重県と岐阜県関ヶ原方面を結ぶ目的で設立されたため。

*2 「とっぽう」と読む。傾斜や機関車で押した勢いで貨車だけを走らせる入換方式。

*3 台車は西武鉄道で再利用するため。

*4 かつては三岐朝明駅として旅客営業をしていたが1989年に信号所へ格下げされた。