国鉄211系電車

登録日:2025/03/10 Mon 16:08:07
更新日:2025/05/29 Thu 08:38:16
所要時間:約 15 分で読めます



211系とは、国鉄が開発した近郊型電車である。
国鉄分割民営化後もJR東日本JR東海JR西日本の3社で製造され、計827両が導入された。

概要

老朽化した111系・113系・115系等の置き換えを目的に導入された。
先に登場した205系の近郊形バージョンという位置づけだが、もともとの開発は本形式が先行して行われており、諸事情で205系のほうが前倒しで導入された経緯がある。
外観や制御方式のメカニズムは後年の車両にも多大な影響を与え、JRグループ発足初期の新型車両は本形式を基礎として開発された例がほとんどである。

車両解説

205系に引き続き軽量ステンレス車体を採用し、近郊形なので片側3扉となった。
前面形状は貫通型だが、白色のFRPを使った平面的なデザインとなり、前面窓を左右に大きく拡大したブラックフェイスとなった。
窓下には前照尾灯はケースにまとめて配置、貫通扉上に行先表示器を設置しており、この形状は後述する213系や分割民営化後各社に登場した近郊形にも採用された。
ちなみに、開発初期のイメージイラストは曲線的な前面形状や2段窓など、それまでの113系の面影を残すデザインだった。

内装は0・1000番台がセミクロスシートで、それ以外はロングシート。民営化後の増備車はロングのみである。
セミクロスシート車も車端部は混雑緩和の観点からトイレのある個所を除きロングシートに変更された。

走行装置は205系と同じ界磁添加励磁制御、713系に引き続きMT61型主電動機を採用し、性能向上と省エネ化が図られた。
M車とT車の比率が2M3Tでも25‰までの勾配では、M車とT車が1:1の比率である113系と同等以上の走行性能を有している。
また、国鉄の近郊型電車としては初めて電気指令式ブレーキが搭載された。

会社別解説

本稿では譲渡車両についても解説する。

JR東日本

1986年3月から運行開始。
東海道線東京口では15両編成で運用され、かつては浜松駅までの直通列車もあった。
グリーン車は当初平屋のサロ210・211の2両だったが、1989年に混雑緩和を目的に世界初となる狭軌の2階建て車サロ212・213が登場。
これにより平屋+2階建ての組み合わせ*1に組み替えられた。
なお、基本編成のうち最後に増備されたグループのN31・32編成は2両とも2階建て車で落成している。

2004年から後述するの宇都宮・高崎線系統でのグリーン車サービス開始に伴い、後述するサロ124・125が211系に編入され、基本編成のグリーン車は全車2階建てに変更。捻出された平屋含めた余剰グリーン車は宇都宮・高崎線系統へ転出した。

E233系の導入に伴い2012年で東海道線から撤退し、基本編成は後述する長野地区への転出が行われた。

1986年2月から運行開始。
寒冷地向けの1000・3000番台が導入され、2M3Tの5両編成を組んでいた。
2004年のグリーン車導入に際し3000番台の一部がサハ2両をグリーン車に差し替えて10両を組成、それ以外の編成は5両+3両もサンドイッチする形で連結された。

E233系の導入に伴い2014年までに宇都宮・高崎線からは撤退。
以降は3000番台が両毛線上越線信越本線の115系・107系置き換えに廻ることとなった。
転用車は4両または3+3の(半固定式)6両編成で、内装の一部改造を実施。
2024年からは延命工事としてベンチレーターの撤去を順次実施している(長野地区の編成も同様)。

このグループの特徴として、前面窓上部分の黒い個所が薄くなっている*2。東海道線向けのグループやJR東海の車両には見られないので、走行環境の差と思われるが詳細は不明。

  • 房総地区
113系置き換えのため、宇都宮・高崎線へのE231系追加投入で余剰となった3000番台が2006年から転入。
転属に際しては帯色が房総エリアの特急車と同じ黄色と青に変更され、行先方向幕も113系と同じラインカラー入りに変更された。
5両編成で運用されたが、6両編成をこれで置き換えたため積み残しが出てしまう、運用効率が悪い*3などの理由から2013年3月までに209系に置き換えられ長野地区へ転出した。

  • 長野地区
中央本線篠ノ井線大糸線で使用されていた115系置き換えのために2013年から導入された。
0・1000・3000番台の3種類があり、いずれの編成もドアの半自動化および乗降部への袖仕切りの設置工事が実施されている。
帯色は信州色を踏襲したアルパインブルーとリフレッシュグリーン。
富士急行線やJR東海の中央西線・飯田線にも乗り入れる。

JR東海

ここでは便宜上、番台毎に解説する。
なお、同社ではいずれの番台も311系・313系・315系との併結を行っていた。
  • 0番台
1986年11月のダイヤ改正で神領電車区に4両×2編成を導入。導入当初の帯色は東海道新幹線の車体色をイメージした青帯だった。
また、0番台では唯一のクモハ211が導入されている。
1988年に帯色が湘南色に変更され、自動解結装置・電気連結器の搭載を実施。翌年には大垣電車区に転出した。
1999年には120km/h運転対応としてヨーダンパの設置やブレーキの改修などの改造工事が行われた。
主に東海道線名古屋口で運用されていたが、2011年に神領電車区へ再転属したのちは関西本線で運用された。
2022年の315系導入に伴い引退。これをもってJR東海から国鉄形車両はすべて姿を消した。

  • 5000番台
1988年から導入されたグループ。
名古屋・静岡地区に導入され、後者は「静岡大陸の象徴」「静岡が静岡になったのはだいたいこいつのせい」というくらい良くも悪くもおなじみだった。
前面形状が213系と同じ助士席側窓が下方向に拡大され、眺望性が改良されたものとなっている。
台車や補助電源装置、空調、座席など多くの機器が新設計となり、車外スピーカーが搭載されるなどJR東海独自の仕様が随所に目立つ。
基本は2M1Tの編成を組むため、加速力が非常に高い。
中央線ではラッシュ時最大10連で活躍し、「愛・地球博」のアクセス臨時快速「エキスポシャトル」として愛環線にも10連で乗り入れた。
315系の導入に伴い徐々に置き換えが進み、2025年2月11日で引退。
ここでは次車別に解説を行う。

○1次車
1988年7月製造。
このグループに限り、側面行先表示器が3色表示LED式となっている。
しかし、当時のLED方向幕は視認性が低いと判断され、JR東海では2000年代中盤までLED方向幕の採用が見送られている*4

○2次車
1988年11月~1989年3月製造。
行先表示は幕式に戻されたが、サイズは1次車のものを踏襲している。
大垣電車区に導入された唯一のグループ。

○3次車
1989年7月製造分で、このグループから静岡電車区への配置が行われた。
行先表示の寸法が0番台と同等に戻される。
このグループからトイレの設置が行われたほか、パンタグラフが狭小限界に対応したものとなり、5600番台に改番された。
従来車もトイレ設置車両を連結するため編成替えが行われている。

○4次車
1990年3月に導入され、神領電車区に配置された。
方向幕のフォントがJR東海独自のものに変わっている。

  • 6000番台
1990年に登場した211系では唯一の1M車。
1M車なのでメカ的には213系なのだが、車体が3ドアということもあって211系に分類された。
それ以外の設計は5000番台4次車に準じている。
当初は御殿場線向けに導入されたが、運用に適さず翌年の増備車と共に全車東海道線方面に転出した。
315系の導入(ry

JR西日本

東日本・東海のイメージが強い211系だが、実は2両だけ導入された。
瀬戸大橋線開業に合わせ導入されたジョイフルトレイン「スーパーサルーンゆめじ」の動力車ユニットがそれ。
「ゆめじ」は後述する213系のパノラマグリーン車の完全体ともいえる車両で、運用によっては「マリンライナー」に連結されることもあった。
2010年に引退。

三岐鉄道

JR東海に所属していた5000番台が三岐鉄道に譲渡され、2025年5月から同社の5000系として三岐線で運行を開始。
内装はロングシートのままだが、新たに自動放送装置とLCD式の車内案内表示器が設置され、共に三岐線では初採用。
改造担当はJR西日本テクノスで、ドアステッカーがJR西日本のそれと同じものとなっている。
帯は三岐車一般色と同じオレンジと黄色の帯となっている。南武線とか言わない。

派生形式

冒頭にも記したように、分割民営化初期の新車は本形式をベースにしている例がほとんどである。
「機器類が同じ」「前面や車体が同じ」例を拾ってゆくとキリがないので、本項では2形式に絞って紹介する。
  • 213系
1987年3月に登場した国鉄最後の新形式車両で、簡単に言ってしまえば1M版の211系。
車体は2ドアで車内は転換クロスシートが並ぶ。
このメカニズムは当初横須賀総武快速線の211系導入計画に際して開発されたものだった。
岡山地区に0番台、分割民営化後にJR東海で5000番台が導入されている。

0番台は当初宇野線快速「備讃ライナー」、瀬戸大橋線開業後は快速「マリンライナー」として運用され、「マリンライナー」導入に際して一部編成がパノラマグリーン車を併結するための組み換えが行われた。
老朽化に伴い、「マリンライナー」に223系/5000系導入後は岡山ローカルへ転用され、一部の編成は先頭車化改造が行われている。
その後1編成は観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」に改造されたほか、パノラマグリーン車とサハ1両がこれまた半端車の223系9000番台と組み合わせて技術試験車両「U@tech」として運用された。

5000番台は関西線の165系置き換え用として導入されたが、313系の導入に伴い2011年に関西線から撤退。以降は飯田線に転用されることとなり、ドアの半自動化やトイレ設置などの改造が行われた。
313系の追加転入に伴い、こちらも2025年度内に引退予定。

  • サロ124・125
サロ212・213と同時期に登場した113系の2階建てグリーン車。
外観は完全にサロ212・213で、ブレーキ装置が異なるため124・125の形式が与えられた。
サロ124-1~8は485系の台車を流用している。
1990年には横須賀・総武快速線用としてスカ色帯をまとった車両が登場。
このグループは成田空港輸送に対応するため、大形の荷物置き場が設置されている。
E217系の導入に伴い1996年に同線から撤退し、以降は帯を湘南色にして東海道線で使用。
上述の通り2000年代中盤に全車が211系に編入された。


追記・修正は、トイレなしの211系で熱海~豊橋間を乗り通した経験のある方にお願いします。

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最終更新:2025年05月29日 08:38

*1 末尾数字が奇数・偶数のペアになるように組成。

*2 電解二次着色アルミニウム板で黒く仕上げるもので、201系の軽装車も同様の措置が実施されている。

*3 4両編成しか入線できない鹿島線への入線が不可能だった。

*4 新幹線ではN700系、在来線では313系以降フルカラーLEDを採用している。