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更新日:2025/06/08 Sun 17:16:36NEW!
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東武鉄道とは、
東京都墨田区に本社を構える日本の大手私鉄である。
東京証券取引所の鉄道部門で最も若い番号を持っている。
概要
東京都、
埼玉県、
千葉県、
栃木県、
群馬県の1都4県に鉄道路線を保有しており、総営業キロ数は463.3kmである。
この路線網の長さはJR以外の民鉄としては近畿日本鉄道に次いで第2位であり、関東では最長となっている。
また、相互直通運転を行なっている他社の路線も多く、地下鉄4路線、私鉄1社2路線、第三セクター3社3路線、さらに特急列車が
JR東日本に乗り入れている。
車両の走行エリアは北は
福島県、西は
神奈川県まで及び、大手私鉄が元々ない
茨城県以外の関東全県に乗り入れる唯一の大手私鉄である。
「東の東武、西の近鉄」と言われるくらいに、数ある大手私鉄の中でも経営規模の大きさが桁違いである。
かつてはケーブルカー、路面電車に貨物営業まで手広く手がけていた。また保有車両も幅広いことや、料金制度や駅構造などに国鉄との共通点が多く、「ミニ国鉄」とも呼ばれていた。
現在も観光列車として
蒸気機関車を保有しており、これは大手私鉄では唯一である。
関連会社として、東武グループなる東武鉄道を中心とした企業があり、東武百貨店、東武バス、東武動物公園、東武ワールドスクウェアなどがある。
東京スカイツリーは建設地が元々貨物ヤードの跡地であったことから、東京スカイツリーの建設にも深く関わっている。
マスコットキャラクターが複数存在しており、東武
ポイントカードの「トブタン」や東武鉄道お客さまセンターの「姫宮なな」といったキャラが存在するが、鉄道むすめのフィーチャーぶりが凄まじい(詳細後述)。
かつてはモモンガをモチーフとした「とぶっち」というキャラがあった。
路線
◆本線系統
●
伊勢崎線
浅草から
北千住、春日部、東武動物公園、久喜、館林、足利市、太田を経由して伊勢崎および押上から曳舟に至る、「
東武本線」と呼ばれる系統の主幹路線。
その総距離は114.5kmと、1路線としてはJR・旧国鉄継承路線を除くと最長距離である。
また、北千住~北越谷間の18.9kmは方向別複々線となっており、これはJRや第三セクター鉄道以外では日本最離となる。
久喜(南栗橋)以南の急行・準急電車は、押上から
東京メトロ半蔵門線を経由して
東急田園都市線に直通し、
中央林間まで乗り入れている。
また、東武動物公園(南栗橋)以南の各駅停車の大半が、北千住から
東京メトロ日比谷線に直通し中目黒まで乗り入れている。
2012年3月のダイヤ改正と併せて、東武動物公園以南に「
東武スカイツリーライン」という愛称が付けられた。
東京都内を走る関東の私鉄の本線クラスでは唯一JR
山手線と接続しておらず、山手線への足掛かりとなる北千住駅の利用者数は、山手線の主要駅に匹敵するレベルとなっている。
東武を代表する幹線であるものの、沿線に所在する東武百貨店は
1つもない(池袋店→東上線、船橋店→野田線、宇都宮店→宇都宮線、栃木市役所店→日光線、大田原店→最寄駅がJR西那須野駅であり、
東武沿線ですらない)。
かつては小規模店舗として東京ソラマチ店があったが、2016年1月に営業を終了している。
●
日光線
伊勢崎線の東武動物公園から分岐して、栗橋、栃木、新鹿沼、下今市を経由して東武日光に至る、94.5kmの路線。
東京と国際的観光地である日光を結ぶことを目的としており、特急をはじめとする優等列車が多い。
JRの特急「日光」「きぬがわ」が栗橋の連絡線を介して
JR宇都宮線から乗り入れており、東武の特急「スペーシアきぬがわ」「スペーシア日光」もJR線経由で
新宿まで乗り入れている。
特急を除く運行系統は車両基地のある南栗橋で分断されるが、最近この駅は違う意味で注目されている。
●
鬼怒川線
日光線の下今市から分岐して鬼怒川温泉を経由して新藤原に至る16.2kmの路線。
名前の通り鬼怒川温泉街の玄関口となる路線であり、特急「スペーシア」は東武日光よりもこちらに多く入線する。
2017年8月から、約半世紀ぶりとなる蒸気機関車牽引列車「SL大樹」の運転が開始されている。
長年新藤原止まりだったが、1986年から
野岩鉄道会津鬼怒川線、1990年から
会津鉄道会津線にそれぞれ直通運転を開始。現在は浅草からの特急「リバティ会津」が会津田島まで乗り入れており、会津・尾瀬観光の玄関口としての役割も担っている。
会津田島から先は非電化区間であり、会津鉄道から東武線に乗り入れている気動車による会津若松(一部は喜多方)行きの列車もある。
●亀戸線
伊勢崎線の曳舟と亀戸を結ぶ、3.4kmの路線。
東京23区内にあって運転本数もそれなりながら全列車が2両編成という、都会のローカル線のひとつ。
開業当初は総武鉄道両国橋駅(現:
総武線両国駅)まで直通運転する基幹路線として扱われており、短距離ながら路線のほとんどが複線なのはその名残である。
●大師線
伊勢崎線の西新井と大師前を結ぶ、1.0kmの路線。
初詣で西新井大師に向かう人にはお世話になっているだろう。
駅数はたった2駅のみで、亀戸線と同じく2両編成。改札は全て西新井で行なっているため、大師線内は切符なしで乗ることになる。
元々は伊勢崎線の西新井と東上線の上板橋を繋げる路線である西板線として計画されていたが、様々な災難が重なった結果、この区間が開通したのみで頓挫した。
今後、無人運転の実証試験が行われる予定。
●桐生線
伊勢崎線の太田と赤城を結ぶ、20.3kmの路線。
特急「りょうもう」の多くはこの路線を走る。また、各駅停車の多くは太田から小泉線の東小泉まで直通している。
●佐野線
伊勢崎線の館林と葛生を結ぶ、22.1kmの路線。
1日1往復のみ特急「りょうもう」が走る。かつては葛生から先に貨物専用線があり、多くの貨物列車が走っていた。
●小泉線
伊勢崎線の館林と西小泉(12.0km)、およびその途中の東小泉と太田(6.4km)を結ぶ、18.4kmの路線。
館林~太田間は伊勢崎線よりも距離が短いため、乗る電車によってはこちら(東小泉乗換)のほうが早い場合もある。
●宇都宮線
日光線の新栃木と東武宇都宮を結ぶ、24.3kmの路線。
各駅停車の大半は日光線の南栗橋まで直通しており、かつては1日1往復で特急「しもつけ」が走っていた。
東武宇都宮駅とJR宇都宮駅は1.6kmほど離れているが、
宇都宮市の中心部には東武宇都宮駅のほうが近い。
特急「しもつけ」の廃止に伴い、東武で初となる全運行列車のVVVF化を達成した路線だったりする。2023年6月から「
いちご王国ライン 」の愛称が付けられており、駅名標が独自のデザインに変更されている。
●
野田線
大宮から春日部、野田市、流山おおたかの森、柏、新鎌ヶ谷を経由して船橋に至る、62.7kmの路線。途中の春日部で伊勢崎線と接続する。
埼玉県と
千葉県の主要都市を結び、沿線の大半がベッドタウンとなっている半環状線で、都心方面に向かう他の路線との乗り換え駅が多い。
元々柏で接続していた2つの路線を統合したのに加えて、かつては貨物輸送のために国鉄とも繋がっていたことから、柏駅がスイッチバックとなる配線になっている。そのため、基本的には柏を境に運行系統が分かれている。
他の路線で使われていた旧型車両が最後に送り込まれることが多く、2004年からは8000系だけの路線となっていたが、2013年からはリニューアル車を含む10000系列、さらに約70年ぶりとなる新型車両の60000系や80000系が導入され、急激に車両の近代化が進んだ。
このついでに2014年4月には「
東武アーバンパークライン」という愛称も付けられている。
なお、大宮と柏を結んでいることから、Jリーグチーム「
RB大宮アルディージャ」対「柏レイソル」の対戦を「
野田線(アーバンパークライン)ダービー」と呼ぶことがある。
◆東上線系統
●
東上本線
池袋から和光市、川越、坂戸、森林公園、小川町を経由して寄居に至る路線で、通称「
東上線」。
上記の本線系統は観光列車が比較的多いのに対して、こちらは純然たる通勤通学に特化している。有料座席定員制の「TJライナー」と観光輸送を目的に設定された「川越特急」が看板列車。
和光市~志木間の5.3kmは複々線となっている。
小川町以南の特定の急行・各駅停車および一部の快速急行は和光市から
東京メトロ有楽町線、同
副都心線に直通しており、前者は新木場、後者は
東急東横線や
東急新横浜線・相鉄新横浜線を経由して
みなとみらい線の元町・中華街、
相鉄本線の海老名、いずみ野線の湘南台まで乗り入れている。
伊勢崎線を中心とする本線系統とは線路が直接繋がっておらず、実質的には全く別の路線。
池袋は前述の通り東武本線には存在しない
山手線接続駅であり、東武線全線における1日の乗降客数はダントツの1位。
元々は東武の子会社だった
東上鉄道という会社の路線で、かつては本線系統と東上系統の部署の交流が深くなかったこともあり、本線系統に比べて設備や接客などの面で長いこと遅れを取るなど冷遇されていたが、次第に潜在力の高さが見直されるようになってきた。
●越生線
東上本線の坂戸と越生を結ぶ、10.9kmの路線。
ローカル色の濃い支線だが、沿線に高校や大学が多く、輸送需要はそれなりに高い。
JR八高線が乗客を奪われているのはだいたいコイツのせい。仕方ないけど。
◆廃止路線
●伊香保軌道線
高崎線、前橋線、伊香保線の3線。いずれも路面電車。渋川駅を接続点にして、高崎駅、前橋駅、伊香保駅への3方向に運行されていた。
●日光軌道線
日光市内を走った路面電車。国鉄日光線の日光駅から馬返駅までを結んでおり、末期には連節車も運行されていた。
沿線に古河電工の工場があったので、路面軌道には珍しく貨物列車(国鉄の日光駅には連絡引込線があった)が運行されていた。
急勾配もあって輸送力が不足したため、結構巨大な箱型電機が路面区間を豪快に走行していた。
●日光鋼索鉄道線
日光市内にあったケーブルカー。日光軌道線の終点であった馬返駅から明智平駅までを結んでおり、ここから明智平ロープウェイに接続して、(明智平)展望台駅まで向かう事が出来た。
●矢板線
鬼怒川線の新高徳駅から東北本線の矢板駅までを結んでおり、定期列車で最後まで蒸気機関車が使用されていた路線である。
●熊谷線
熊谷駅から妻沼駅までを結んでいた。本線・東上線系統両方とも接続しておらず、最後の非電化旅客路線となった。本来は小泉線の西小泉まで接続させて、太田へと向かう予定であった。
●啓志線
東上本線の上板橋駅から分岐してグラントハイツ(現在の光が丘公園)までを結んでいた、GHQ職員用の非電化路線。路線名は進駐軍の軍人で建設時の工事総責任者であったヒュー・ボイド・ケイシー中尉の名前をもじったもの。
他にも数多くの貨物線を有していたが、いずれも廃止となっている。
車両
関東の私鉄では唯一阪急グループのアルナ工機とのかかわりが深く、30000系まで車両製造を担当した。
アルナ工機解散後は日立製作所・近畿車輛・川崎重工に発注を実施している。
変わったところでは、気動車を主に製造していた富士重工業(現:SUBARU)製の車両も存在する。
車両は更新やリニューアルを頻繁に実施し、落成から半世紀以上使用するため関東の私鉄では他社への譲渡電車が少なく、むしろ蒸気機関車や電気機関車の譲渡が多いという不思議な現象が起きている。
現在他社に譲渡されて運用されている東武の旅客用電車は、岡山電気軌道に移籍した100形とアルピコ交通に移籍した20000系がある。
かつては西武鉄道・南海電車とともに通勤車両の正面部に車両番号の表示を実施していなかったが,1987年以降順次表記が開始されている。
現行の車両
◆特急用
●N100系
2023年7月にデビューした日光・鬼怒川線用特急車両で、愛称は「スペーシアX」。
日光東照宮陽明門の胡粉をイメージした白い車体が特徴で、先頭車はXを模した側窓形状を持つ。
東武の特急車両では初となる前面展望構造を採用しており、コックピットラウンジ、1+2列のプレミアムシート、2+2列のスタンダードシート、半個室構造のボックスシート、コンパートメント、最上級のコックピットスイートと6両で6種類の座席配置が存在し、スペーシアを上回る豪華な仕様となっている。
6連4本が導入されたが、JR線への直通対応は未定。
2024年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
●
100系
日光・鬼怒川線用特急車両。愛称は「
スペーシア」。
個室などの豪華設備がある、バブリーな東武を代表する名車。
主に「けごん」と「きぬ」で運用されており、JR直通の特急列車や浅草~春日部間の「スカイツリーライナー」にも使用される。
500系とN100系導入に伴い、一部編成は廃車が始まった。
1991年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
●200系
伊勢崎線特急「りょうもう」用。
文字通り、東京と栃木・群馬の両毛地区を結ぶビジネス特急。
DRCこと1700系・1720系の機器を流用して造られたため、足回りがややゴツい。
そのため車歴は50年以上に及び、これに置き換えられた1800系よりも古い。
2016年6月から2018年12月までは台湾鉄路管理局との友好協定締結記念の一環として、200系の1編成が特急「普悠瑪(プユマ)」をイメージした塗装に変更されていた。
2021年には1800系を模したリバイバルカラーが登場し、2024年からは沿線にあるアサヒ飲料の群馬工場とコラボし、同社の主力商品である
カルピスのカラーリングを纏った特別塗装車「りょうもう『カルピス』EXPRESS」、2025年にはMLB Tokyo Seriesの開催を記念して、先頭車にMLBのロゴマークを貼り付け、MLB機構のカラーリングを纏った特別塗装車「『MLB Tokyo Series』開催記念ラッピング列車」も登場した。
老朽化に伴い、500系導入後は廃車が進められている。
●500系
26年ぶりに新造され、2017年4月から登場した特急車両。多様性を意味する“Variety”と自由度を意味する“Liberty”を合わせた造語「リバティ(Revaty)」が愛称。
全て3両編成。併結して6両編成にすることも可能で、途中で分割して異なる行先へ走らせることができるなど、目的に応じた多種多様な運行ができるようになっている。
製造担当は川崎重工で、同社製の車両は後述する7300系以来。
当形式の導入に伴い、6050系・300系・200系・100系の4形式が置き換えられており、東上線系統とJR直通を除いた全ての特急列車に使用される。
2018年鉄道友の会ローレル賞受賞。
◆旧快速用
●6050系
東京近郊の私鉄には珍しい2ドアクロスシート車。全て2両編成で、増解結による柔軟な運用が可能なのが特徴。
後述する6000系を野岩鉄道乗り入れに際して冷房化と車体更新を実施した。後年5700系の置き換えとして機器類も新造した編成も登場している。
直通する先の野岩鉄道と会津鉄道も同型の車両を所有しており、所属による区別はされておらず共通運用となっていた。
29編成(+野岩鉄道3編成、会津鉄道1編成)が製造され、このうち後年新造の2編成は観光用車両「スカイツリートレイン」634型に改造された。
かつては日光線の快速および区間快速を中心に使用されていたが、2017年4月のダイヤ改正で快速と区間快速が消滅したことにより、南栗橋以北限定の急行・区間急行・普通用となり、浅草口に入線する定期運用はなくなった。
老朽化が著しいことから2017年から廃車が開始され、年を追う毎に減便および20400型への置き換えが進み運用が減少。
2022年3月のダイヤ改正で上述区間での運用は終了し、東武車は定期運用を離脱。会津鉄道所属編成も引退し、定期運用は鬼怒川温泉以北で野岩鉄道所属編成が残るのみ。
◆普通用
●
8000系
1963年に登場してから半世紀以上に渡り活躍している、東武の汎用主力電車。
2両から10両まで自在に組成可能で、一系列で712両という製造数の多さから、同様に大量生産された旧国鉄の103系になぞらえて「
私鉄の103系」の異名を持つ。
高運転台の前面形状が特徴的で、後述する吊り掛け更新車にも採用され東武を象徴する顔となった。
1986年から修繕工事を開始しており、1987年分からは前面形状が大きく変化した。
派生形式として、8両編成をローカル線用に3両へ短縮した800型と850型がある。
●9000系
有楽町線直通車として登場した、東上線用のステンレス電車。
東武初の10両固定編成かつ12年ぶりの新形式車両となった。
VVVFインバータ制御を採用したマイナーチェンジ版の9050型もある。
今後、2026年から導入予定の90000系への置き換えが計画されている。
●10000系
8000系の後継車であり、東武の主力となっている汎用車両。
東武初の5桁形式で、近鉄以外の大手私鉄でも初となる5桁形式である。
先に登場した9000系を地上線向けにアレンジしたもので、東武初の界磁チョッパを採用。
2007年からは修繕工事車も登場したが、一部の車両は8000系よりも先に廃車されている。
●10030型
1988年から登場した10000系のマイナーチェンジ車。
同じステンレスながらビード付き・ダルフィニッシュのスッキリした車体となり、前面形状も6050系や8000系修繕工事車に似たものとなった。
派生形式としてクーラーキセや内装を変更した10050型(50番台と呼ぶこともある)、VVVFインバータ試作車の10080型がある。
野田線に転属した車両は車体の帯色が水色と黄緑に変更され、某コンビニチェーンのコーポレートカラーと似通ってているために、「ファ◯マ電車」と呼ばれ、同社もこの車両でラッピング広告列車を運行したことがある。
●20000系(20400型)
日比谷線直通の2000系置き換え用として1988年に登場。
全車3ドアでチョッパ制御の20000型・編成前後2両ずつが5ドアになりVVVF制御を採用した20050型・全車3ドアに戻されシングルアームパンタを装備した20070型の3グループに分かれる。
後述の70000系の導入により短編成化・ワンマン対応改造を実施し、大半の車両が20400型に変身した。
改造の種車から20410~20440型に区分され、5ドア車は扉を埋めて3ドア車に変身した。
鬼怒川線・日光線南栗橋以北と宇都宮線に導入され、同線の6050系・8000系を置き換えた。
中間車の一部は改造した後アルピコ交通に譲渡され、同社の20100形として運用中。
●30000系
10000系列の後継車であり、連結も可能な車両。4両編成と6両編成があり、連結して10両編成になる。
元々は半蔵門線との直通用に作られた車両だが、連結時中間に来る運転台が
東急田園都市線の混雑においてネックとなったため、直通用の機器を50050型に譲って本線地上区間で使用されていたが、2011年以降順次東上線に転属し全車10両に固定化された。
●50000系(50000型)
東上線用の増発用に作られた車両。派生形式も含めて、全て10両固定編成。
この形式から久々の日立製作所製となり、同社の「A-train」工法を採用。最初の編成のみ非常用の貫通扉を持たない。
アルミ合金のダブルスキン構造により、遮音性の向上と車体の軽量化による省エネが図られている。
なお、後期の編成では後述の50050型に合わせた車体幅となっている。そして、50000系列全体として、前期の車両は手すりが弧を描くA-train特有のもので、後期の編成は標準的な手すりとなり、ドア中央部に黄色のラインがある。このため、50000型の後期の編成と50050型の後期の編成はほとんど仕様が同じということになっている。
30000系と入れ替わる形で2編成が半蔵門線直通用として本線系統に転属している。
●50050型
半蔵門線との直通用である30000系に代わる車両で、東武本線用としては初の10両固定編成。
ぱっと見他の50000軍団と見た目は変わりないが、車幅は半蔵門線直通のため少し狭くしている。
一部の編成を除き、直通用の機器を30000系から流用している。製造時期により側面窓の形状が違っている。
●50070型
東上線の有楽町線・副都心線への直通増備用に作られた車両。
東武の車両で初めて行先表示器にフルカラーLEDが採用されている。また、50000系列で唯一車内LCDを装備している。
●50090型
東上線の通勤ライナー「TJライナー」用に作られた車両。
TJライナー以外では川越特急は全てこの列車で、その他の種別でも使用される。
関東私鉄では初のデュアルシート車で、座席は乗務員の操作で切り替え可能。
TJライナーや川越特急、一部の快速急行などではクロスシートとなり、それ以外はロングシートとなる。
●60000系
本線の中古転入車ばかりが導入され続けていた野田線に導入された車両。
前身の会社の時代から約70年ぶり、東武野田線としては初の新型車両となる。
50000系列をベースにしつつ、「人と地球にやさしい車両」をコンセプトにより一層の省エネとバリアフリー化を追求して新設計され、数々の最新技術が導入されている。
6両編成で登場したが、今後は2025年3月に登場した80000系の大半に中間車1両をねん出し、5両に短縮される予定。
●70000系(70000型)
20000系列の後継車となる日比谷線直通用車両。
この車両と80000系は近畿車輛の製造となる。
20m4ドアの7両編成であり、直通相手の
東京メトロ13000系とは設計がほぼ共通化されている。
この車両の導入により、日比谷線共々停車駅のホームドアの設置とワンマン運転の準備が進められる予定。
●70090型
70000系のうち、日比谷線直通ライナー「THライナー」用に作られた車両。
東武では50090型に続くデュアルシート車で、座席は乗務員の操作で切り替え可能。
THライナーではクロスシートとなり、それ以外はロングシートとなる。
●80000系
2025年に登場した野田線用通勤車。この形式から5両編成に短縮されており、上述の60000系からの中間車を編入した編成も登場予定。
70000系列をベースにして数々の最新技術が導入されており、一部の編成には架線・軌道・保安装置を走行中に常時検測・モニタリングする装置を3号車に搭載している。
◆その他
●634型
特急「スカイツリートレイン」用として、6050系の2編成4両を改造した車両。「634」の読みは「ムサシ」であり、東京スカイツリーの全高である634mにちなんでいる。
屋根から回り込む形の展望窓が設置され、座席はペアスイート・シングル・ツインに分けられているほか、サロンやイベントスペースなども設けられている。
2017年4月を最後に特急「スカイツリートレイン」としての運行を終え、現在は原則団体専用車両となっているが、時折臨時特急や車両検査に伴う代走運用に入ることも。
改造は総合車両製作所が担当。同社の前身の一つである東急車輛時代には車両製造も担当していたが、合併後の現社名での取引はこの形式が最初となった。
●C11形207号機
日光・鬼怒川地区の活性化を目的としたSLの復活プロジェクトのために、
JR北海道から借り受けたSL。前照灯を左右除煙板のステー上に各1基ずつ搭載する独特のスタイルのために、ファンから「カニ目」の通称で呼ばれる。
また、九州を除くJR各社から客車やディーゼル機関車・施設などを譲り受け、2017年8月から鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間の「SL大樹」で運行を開始。2020年10月からは日光線の下今市~東武日光・東武日光~鬼怒川温泉間を走る観光列車「SL大樹ふたら」でも使用されている。
●C11形325号機
真岡鉄道から譲り受けたSL。
2020年7月から鬼怒川線・日光線を走る(ry
●C11形123号機
かつて
江若鉄道で運用されていた蒸気機関車。新製時は「
ひえい」の名が付けられたが、国鉄C11形と同一設計であるために同社の「C11形1号機」に改番された。
その後北海道に渡り、雄別鉄道→釧路開発埠頭で運用された。1975年に廃車となり道内の個人に引き取られていたが、2011年に日本鉄道保存協会へ譲渡された。
SL列車の拡充を模索していた東武の目に留まり、日本鉄道保存協会から譲り受けされ、東武入籍後にこの車番に改名した。
2022年7月から(ry
●DE10形
JR東日本から譲り受けたディーゼル機関車。1099号機と1109号機の2両を保有する。
蒸気機関車を運転する際に必ず最後方に連結される他、蒸気機関車の不調時やメンテナンス時に「DL大樹」(または「DL大樹ふたら」)として代走する。
1109号機は寝台特急「北斗星」のDD51形に似せたカラーリングに塗り替えられている。
●14系
「SL大樹」・「SL大樹ふたら」用の客車で、
JR東海とJR北海道から譲り受けた車両の2種類が存在し、塗装はオリジナルだが内装は前者はほぼ原形、後者は夜行急行「はまなす」時代に大幅改修されている。
●12系
同上。
JR四国から譲り受けた車両で、大規模な改造をしたうえで展望車として使用されている。1両は青塗装にグリーン帯、1両は茶塗装に赤帯とかつての一等客車を彷彿させるカラーリングとなっている。
過去の車両
●1720系
イノシシを思わせる顔つきの特急車両。「DRC」の愛称がある。
国鉄との日光への旅客輸送対決の切札として投入された。
戦後の頃から様々な新型電車やサービスの投入により対決してきたが、この車両の登場によりシェアのほとんどを奪い国鉄に勝利した。
国鉄特急グリーン車同等のリクライニングシートにジュークボックス・公衆電話装備と当時の水準からみてもかなり豪華で、デラックスロマンスカーの名は伊達ではない。
しかし1980年代になると外観が古めかしいことや、同世代の他社の特急車が軒並み置き換えられたこともあり、鉄道雑誌では「いつになったら置き換えられるのか」という記事がテンプレのように出てくることとなった。
スペーシアの登場に伴い引退した後、足回りは200系に再利用され、後に第1編成の先頭車が東武博物館と岩槻城址公園に展示されている。
譲渡された車両の中には、わたらせ渓谷鐵道の神戸(ごうど)駅最寄りのレストランとして転用されたものがある。
業平橋の地下秘密基地に競技専用編成が置いてあるというのは全くのデマである
●1700系
1956年に登場した、東武初の鋼製量産高性能車。
貫通扉付きの箱型の車体で登場し、2両ユニット編成を組んで分割併合列車にも使用された。
DRC登場前に冷房改造も実施されたが、DRC登場後は機器類を流用してDRCと同じ車体・編成に更新され共通運用化された。
●250型
1998年に登場。「りょうもう」の増発用として6両編成1本のみ製造された。
車体の見た目こそ200系と同じだが、完全新造された車両のため主要機器は当時増備されていた30000系と同じものが採用されている。
500系の導入に伴い、200系より早く2022年に廃車となってしまった。
●300系・350系
急行「りょうもう」用だった1800系を改造した車両。
6両編成が300系、4両編成が350系となる。
野岩・会津鉄道へ直通運行する特急「南会津」、日光線の補完特急「きりふり」「ゆのさと」や宇都宮線の特急「しもつけ」、夜行列車「尾瀬夜行23:55」「スノーパル23:55」などに使用されていた。
300系は2017年4月のダイヤ改正で、350系は2022年3月のダイヤ改正でそれぞれ引退した。
●1800系
急行「りょうもう」用の車両。
赤い車体に白い帯をつけた車体が特徴で、「ペコちゃん」という通称があった。登場時は4両編成だったが、利用者の急増を受ける形で中間車2両を増結して6両化された。
1987年には前照尾灯を角形にした1819Fが増備されており、こちらは落成当初から6両を組んでいる。
200系登場後は一部が300系・350型に改造されたほか、なんと普通列車用に格下げ改造を受けた編成も登場した。
「りょうもう」撤退後も前述した1819Fが臨時列車向けに使用されていたが、2018年5月をもって引退した。
●5700系
1951年に登場した日光線用の特急電車。57系とも呼ばれる。
当初は「猫ひげ」と呼ばれた湘南型のA編成と貫通型のB編成・C編成の2種類の前面が登場したが、後にA編成は貫通型に改造された。また貫通型の一部の編成(C編成)は東武初となる直角カルダン駆動を導入したが、故障が頻発するために吊り掛け駆動に改造された。
定期の優等運用離脱後も臨時列車や団体列車用として長らく活躍し、1991年に引退。
大手私鉄の吊り掛け車で、しかも優等列車向け車両がほぼ車体更新されずに平成期まで運用された珍しい例であった。
現在は湘南型に復元されたA編成の1両と貫通型(B編成)の前面部分が東武博物館に保存されている。
●6000系
日光線の快速用電車として1964年に登場。8000系をベースとして20m2ドア片開きの車体、セミクロスシートの内装にしたもの。
1985年から6050系への更新工事が開始され、1986年に引退。
2019年には6050系で本形式のツートンカラーをリバイバルした編成も登場した。
現在、群馬県のとある民家に車体が保存されている。
●7300系
昭和期の東武鉄道を代表する20m4ドア片開きの吊り掛け通勤車で、73系とも呼ばれる。
7300系は、終戦後に運輸省から割り当てられた国鉄63系電車を6300系として就役させた後、国鉄の72系改称に合わせて7300系と改番された。後に次述の7800系と同様の車体に更新され共通運用化された。
1984年に全車引退。
●7800系
そして、その7300系に独自の改良を加えたのがこの形式。78系とも呼ばれる。
製造時期によって20番台・90番台・60番台・70番台の4タイプが存在する。
セイジクリーム単色時代には、煤けた屋根との対比から73系ともども「カステラ電車」の愛称で親しまれていた。
すでに他社では全金属車体やカルダン駆動の導入が進んでいた中、最終グループまで半鋼製車体の吊り掛け駆動で落成し引退まで第一線で使用されていたことから、良くも悪くも保守的な東武を象徴する形式だった。
1979年から次述の5000系列に更新された。
●5000系・5050系・5070系
で、その7800系の車体更新車がこちら。
7800系の機器を、8000系に準じた車体に更新したもの。
1980年代の更新車のため、車両冷房や側面方向幕の設置など吊り掛け更新車とは思えない近代化が図られた。
平成以降は大半の車両が野田線に集結し21世紀に入ってもしぶとく残り、2006年まで活躍した。
●3000系・3050系・3070系
戦前~戦後に新造された旧型車の部品を流用し、車体を8000系(前面)と2000系(側面)に似た18m級に更新したもの。
種車が様々なため、見た目は同じでも制御シーケンスが合わないため併結できない組み合わせがあるなど複雑怪奇な形式。特に3070系はこれが顕著であるため、車体更新直後は初代5000系を名乗っていた。
また、台車が統一されていない事が当たり前なので「
台車の博物館」の異名があった。
1996年に引退。一部が1988年から上毛電鉄に譲渡されたが、こちらも2000年までに全て引退している。
前橋市のとある
幼稚園に何故か保存されている。
●2000系・2080系
日比谷線への直通運転開始に備えて投入された車両。18m3ドア両開き。
東武初の高性能通勤車で、東武の鋼製通勤車では最後までセイジクリームの塗装が残された。
後継の20000系に置き換えられて1993年に全廃。
経年の浅い中間車に関しては、先頭車化やモーター撤去などの改造を行い、2080系と新規に形式を付与して野田線へ転入させて新塗装化も実施したが、無理な改造が祟ったのか本家より早く1992年に全廃された。
登場から廃車まで非冷房であり、2080系への改造車もこれは変わらなかった。
●キハ2000形
1954年に登場した熊谷線用かつ東武唯一の新造気動車。
もともと熊谷線の列車は蒸気機関車牽引の客車列車であったため、その鈍足ぶりから「カメ」の愛称がついていたが、気動車でスピードアップした以降も「特急カメ号」と呼ばれていた。
1983年の熊谷線廃線と同時に引退し、現在は1両が熊谷市立妻沼中央公民館に隣接する熊谷市立妻沼展示館に保存されている。
余談
『
クレヨンしんちゃん』や『
らき☆すた』など、
埼玉県を舞台とする漫画やアニメの作中で、東武の電車が登場することがある。
前者は伊勢崎線・日光線では2016年11月から2017年10月までの期間限定で、50050型による『クレヨンしんちゃん』のラッピング列車が登場し、後者は2012年1月から3月まで、秩父鉄道との合同企画で『らき☆すた』と『
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の記念乗車券が発売され、これに合わせて200系1編成に『らき☆すた』のヘッドマークが付けられたことがある。
伊勢崎線の堀切駅周辺はドラマ『
3年B組金八先生』の舞台としても知られる。
前述した近鉄とは路線網の広さに加え観光列車の運行、そしてターミナル駅近くに高層建築物を保有している等営業施策も似通っていることからコラボ企画が度々行われており、2024年4月には正式に営業連携することを発表し、「リアル桃鉄」の対抗戦が行われた。
かつての茶色の制服のデザインを手掛けたのはあのドン小西。雑踏に混じっても利用者が駅員を見つけやすいというメリットがあったが、社員からは目立ちすぎて不評だったとか。
社内で早くから目を付けていたのか、トミーテックの鉄道制服キャラクターコンテンツ『鉄道むすめ』でやたらと優遇されており、
「栗橋みなみ」(駅務係。名前の由来は南栗橋駅)
「渡瀬きぬ」(東武トップツアーズのステーションコンシェルジュ。名前の由来は渡瀬駅+特急「きぬ」)
「春日部しあ」(スペーシア車内販売員→スペーシアX「GOEN CAFÉ」スタッフ。名前の由来は春日部駅+特急スペーシア)
「栗橋あかな」(同上。名前の由来は南栗橋駅+日光線の旧有料急行「あかなぎ」)
「川越あさか」(東上線車掌。名前の由来は川越駅+朝霞台駅)
「鬼怒川みやび」(特急スペーシア車掌。名前の由来は鬼怒川温泉駅+特急スペーシアのカラーリング「雅」)
「大桑じゅり」(SL大樹機関士。名前の由来は大桑駅+「大“樹”+り」)
と、東武グループだけで7人もいる。さらにゲスト参加として、前述の
「姫宮なな」(お客さまセンターコミュニケーター。名前の由来は姫宮駅+七里駅&七光台駅)
宇都宮線沿線の栃木県壬生町おもちゃのまち活性化キャラクターの
「壬生えみこ」(駅務係。名前の由来は壬生駅+おもちゃのまち駅前の静態保存SL「A3形58号機」)
も含めると総勢9人にもなり、この人数の多さは他に類を見ない。
関東の私鉄はゆるキャラをメインに使用し、鉄道むすめは導入しても放置や黒歴史扱いとしている例が多いことを考えると極めて異例であり、沿線の町おこしなどを兼ねた関連イベントの開催にも積極的で、その力の入れようには並々ならないものがある。
追記・修正は東武電車をご利用いただきながらお願いいたします。
- 東武宇都宮線はただいま『いちご王国ライン』になってまーす -- 名無しさん (2023-10-11 17:43:27)
最終更新:2025年06月08日 17:16