バキ外伝 ガイアとシコルスキー ~ときどきノムラ 二人だけど三人暮らし~

登録日:2022/10/19 (水) 18:31:17
更新日:2025/03/27 Thu 18:23:58
所要時間:約 5 分で読めます






超軍人と最凶死刑囚。

四畳半、広くないからごっつんこ。




『バキ外伝 ガイアとシコルスキー ~ときどきノムラ 二人だけど三人暮らし~』とは、2022年10月6日から『月刊少年チャンピオン』で連載が開始されたバキシリーズスピンオフ漫画。
作者は『WORST外伝 サブロクサンタ 名もなきカラスたち』の作画を担当している林たかあき。
原作シリーズの作者である板垣恵介も原案として名前を連ねている。

●目次

概要

唐突に存在が告知された末に連載が開始されたバキシリーズスピンオフ漫画。
月刊少年チャンピオンでは『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』(以下、烈異世界)が連載されているため、バキシリーズスピンオフが複数作同時に掲載される状況となった。

スピンオフの主役コンビとして選ばれたのは何とあのガイアシコルスキーという2人。
原作の第2部シリーズ『バキ』における2人の死闘のその後が描かれる後日談…なのだが、内容は2人が繰り広げるまさかの日常生活系ギャグとなっている。

林たかあきによる作画は非常にハイレベルなクオリティとなっており、原作から大きく離れていない雰囲気となっている。
絵柄としては第2部『バキ』よりは第4部『刃牙道』~第5部『バキ道』が意識されているとの指摘が多く、初期の第1部~第3部に似通った作画になりやすいバキシリーズスピンオフとしては珍しいという声もある。
ちなみに、シコルスキー自体は第2部のキャラクターだが『REVENGE TOKYO』においては第5部以降のデザインで描かれたことがある。

連載開始号では連載記念として『烈異世界』以来2度目となる原作者である板垣とのやり取りと連載の経緯に至った編集の説明が紹介された。公開プロレスとも言う
その説明によると『烈異世界』の好評を受けて編集長が更にバキシリーズスピンオフ漫画を欲し、『烈異世界』の連載開始時の板垣の様子を思い出した担当編集は困難だと判断するが編集長の強い願いで許諾を受けるために板垣の仕事場を訪ねることになる。
いざ板垣を前にすると急にしおらしくなった編集長が連載開始の許可とスピンオフ漫画の説明を土下座をしながら行うが、話を聞いた板垣の表情は困惑と怒りが見える明らかに複雑な顔だった。
最終的には編集長が板垣から許可を得られたと勝手に自己解釈し、『烈異世界』に続いて非公認スピンオフとして連載が始まることなったのだった…。

あらすじ

かつてロシアから脱走して来日するも、ジャック・ハンマーと超軍人・ガイアに敗れ去った最凶死刑囚の一人シコルスキー。
「オレの負けだッ~~~」「許してくれェェッ~~」という情けない降伏の叫びが地下闘技場に響いてから幾日かの月日が経過した。

ガイアの住む東京都内の小さなアパートに突如として敗れて再度収監されたはずのシコルスキーが来訪し、リベンジマッチを挑みに来た。
ところがガイアはシコルスキーの存在に動揺することもなく共に食事をする形となり、シコルスキーはガイアの日常生活のペースに飲み込まれてしまう。
戦えないばかりか一般人の対応までさせられたシコルスキーは自身に似合わぬことをさせられた結果を嘆くが、改めてガイアの隙の無さと日本という国に面白さも感じ始めていた。
するとシコルスキーはリベンジマッチを行う隙を見つけることを目的に「長期戦」を掲げてガイアの部屋に勝手に居候を開始する。

四畳半の狭いアパートの部屋の中、広くないからごっつんこな奇妙な共同生活が幕を開けた…。

登場人物

  • ガイア
本作の主人公。「オーガ」範馬勇次郎と並ぶ戦場の伝説として語り継がれる超軍人。
周囲の環境を利用し武器化する「環境利用闘法」の第一人者であり、アドレナリンを自在に分泌して
超人的な身体能力を引き出す特技を持つ。
かつては自衛隊の第一空挺師団に所属していたが、どうもこの物語においては除隊してしまったらしく*1
今は軍事関連とは距離を置いた気楽な自由人という立場で平和を満喫している。

ガイアは本作以前に『バキ外伝 GaiA』という外伝ストーリーが描かれているので、スピンオフでメインを担当するのは2度目だったりする。
自身の経歴や戦闘力の印象に反した小さなアパート「花沢荘」の102号室で暮らしている*2
シコルスキーにもその違和感を指摘されていたが、ガイア曰く贅沢な生活環境は求めていないので事足りるかららしい。静かな生活を望み入居するも、暫くしてそれは儚くも崩れ去ることとなった。
原作のシリーズ化以降は死に設定と化していた従来の姿「ノムラ」の設定が拾われており、本人も自身が多重人格であることをネタにした発言をしている。
性格はガイアらしく飄々とした雰囲気だが、大家を初めとして一般人への対応は常識的でコミュニケーション能力も高い。時にはその能力を生かして人助け?をすることも。

居住しているアパートにおいてシコルスキーからの挑戦を受けるが、同時に自分を訪ねに来ていた大家に対する対応からシコルスキーを一方的に振り回す。
自身への挑戦を企み勝手に自宅に居候を開始するシコルスキー(とガーレン)をそのまま受け入れ、以後も彼らを上手く誘導して利用する。

  • シコルスキー
かつて日本に出没したロシア出身の最凶死刑囚。原作ではジャック・ハンマーやガイアを相手に敗北を認めるが、その後に収監された孤島の刑務所内でパワーアップを遂げていた。
作品内の時系列は第2部での敗北後としか長らく明言されていなかったが、一部の描写から察するに『REVENGE TOKYO』後の可能性が極めて高い(本作の存在を原作の時系列設定に組み込めるかは怪しいが)。
後に本部と出会った際にシコルスキーがジャックが本部に敗れたことを知っていたため、少なくとも『刃牙道』以降の時系列である。
本作ではどのような経緯を経たのかは不明だが、刑務所からの脱走後にガイアの自宅を把握したようでリベンジマッチを挑みに奇襲を仕掛ける。
ところが一般人と交流しながら日常生活を送るガイアのペースに巻き込まれてしまい、やがてリベンジマッチを開始するためにガイアのアパートで奇妙な居候生活を行うことになる。

作品の雰囲気の影響もあってか原作よりもコミカルさが出ている性格となっており
基本的に不愛想な性格だが、挑発に対してはそれがどんな些細なものでも真っ向から受けて立ち
全力を尽くす律儀で生真面目な面が強調されている。
そんな彼のフル回転をガイアが上手く利用することで、どこかで誰かが幸せになる…
というのがこの作品の黄金パターン。
牛肉の個数制限に反発してコンビニ店員にだる絡みをするといった様子も描かれているが、死刑囚レベルの犯罪者としては一般人への被害はかなりショボく、基本的には無害な存在と言っていい。

また、「ボルシチを作るのが得意」という料理上手な一面や綺麗好きで落とせぬ汚れはないと豪語する程の「掃除の名人」であるということも判明。しかもボルシチを料理した際の会話で母親との親子関係は良好で現在まで慕っていることが示唆される*3など、本編で言及されなかった過去が微妙に掘り下げられている(その割に家庭用の電気洗濯機をまともに使ったことがないらしい)。
元々最凶死刑囚の中で見れば比較的に人間臭い言動が多い人物だったが、本作では更に人間臭さが増していることから「本当に単なる凶悪犯罪だけで死刑囚になったのか?」と疑う声まで出ている。
なお本作でも一応ICPOから顔写真付きで国際指名手配を受けているのだが、あまりにも堂々と暮らしているため同じアパートに住む警察官からも同姓同名の別人だと思われている。

  • ノムラ
ガイアの表人格。本編では半ば死に設定と化しているが、本作では久々に掘り起こされる。
本編においてはほぼガイアの人格しか出ていなくなっていることはノムラが引っ込み思案であるためと説明されており、ガイア自身も「表に出すぎた」と語っている。
ガイアの人格とは意識下でコミュニケーションを取り、シコルスキーの存在を客人と説明を受けた。
一応本編では気弱と言ってもそれなりに軍人としての感性は持っていたのだが、本作ではシコルスキーにすぐに土下座を試みるなど、完全に気弱で凡人として描かれている。
(後述の特殊部隊4人衆とはノムラ自身も顔見知りなので、軍人設定が完全に消えたわけではない)

作中ではシコルスキーの対応をガイアに任されるが、シコルスキー側が普段と異なる言動やガイアとは思えない行動から逆に不気味に感じ続けた末に、ガイアとは別人と判定する。
そしてノムラの抽象的な表現もあってシコルスキーはノムラを「ガイアが丸め込んで整形を受けさせて用意した影武者、不要時は監禁されている」と解釈。
お互い孤独な環境下に置かれていたことからそれなりに心を通わせ、ノムラを解放する(と思い込んでいる)ために打倒ガイアの決意を強くする一因となった*4
なお大家もガイアとノムラが別人格であることは知らないらしい。

  • 大家
ガイアの住むアパートの大家の老女。外見が女体化した徳川のジジイにも見える
ちなみに本名も「大家」といい「大家の大家さん」である。
ガイアのことは「ノムラちゃん」と呼ぶなど良好な関係を築いており、定期的にカレーのおすそ分けを行っているようだ。
ガイアの友人と説明されていたシコルスキーに対し、鍋を返しに来た際に蛍光灯の交換やシリーズトップクラスのピンチ力による肩揉みを行わせ、挙句の果てには3時間近くにも及ぶ長話に付き合わせた。自分に付き合わせた相手が凶悪犯罪者であることは想像もしていないであろう。
ガイアからロシア語の「ダヴァイ」の意味を聞いて魔法の言葉という解釈をしたり、シコルスキーとガーレンの一発触発の空気を「ダヴァイ」だけを用いて落ち着かせるなど、独特な感性と優れたコミュニケーション能力の持ち主。誰が呼んだかダヴァイばあちゃん
ガイアに気付かれることなく近づけるという、地味にスゴイことをやっている。
なおノムラがこっくりさんを使って年齢を教えてもらったところによると意外な結果が出たらしく
本人も友人と「まだ腰痛に悩まされるような年じゃないのに~」と話している場面があるなど
見た目よりは若い可能性がある。
徳川光成とも顔見知りで「みっちゃん」「大ちゃん」とあだ名で呼び合う。姉の寒子よりもそっくりだが兄弟姉妹の関係ではないようだ。


  • アレクサンダー・ガーレン
本編では『バキ』において脱獄したシコルスキーに心身ともに敗北して以降はフェードアウトしていた、ロシア屈指のレスリング選手で愛国者の英雄。
経緯は不明だが何故かガイアのアパートにシコルスキーが潜んでいることを把握しており、祖国に泥を塗ったシコルスキーへのリベンジマッチを挑みに来る(なお、シコルスキーは当初はガーレンの存在を完全に忘れ去っていた)。
本編では療養中にシコルスキーとの一戦がトラウマとなったことが示唆されていたが、本作でもシコルスキーと対面しただけで小さい地震と勘違いするレベルで肉体が恐怖で震えてしまうという癖が付いたことが判明。
しかし、療養中にシコルスキーの顔写真を貼りまくった病室で過ごすという荒療治を行った結果、肉体の拒絶反応をカバーする愛国心によってシコルスキーと戦える状態を作り上げていた。
なお本編でジャックに食いちぎられた右手の薬指・小指は失ったままで、常に包帯を巻いている。

ガイアの部屋でシコルスキーと戦おうとするも阻止され、ガイアの提案したみかんの種の成長を競う戦いもシコルスキーと共に拒絶し、戦闘モードに突入。
ところが大家の介入を受けて一時休戦ということで復讐を中止し、みかんの種の様子を見守りたいという意思もあってアパートに住むことを決める。
しかし、部屋が満室だったこともあって、種を植える際に誤って掘りすぎた穴を利用してアパートの庭の地下に部屋を作って住むことになった*5
あとなんだかんやガイアとシコルスキーと仲がいい

祖国ロシアに対するマゾヒズム的な忠誠心とは別にロシア国旗カラーのマニキュアを塗った指に指相撲で負けて興奮する大家の水着姿を見れずに舌打ちする大家に(初)恋するする等性癖の残念さが明らかになりつつある。

『グラップラー刃牙』の幼年編に登場した第1空挺団の面々。隊員紹介の時のテロップが雑。
山で大家主催のBBQをしているところに登場。
場所の取り合いで揉めそうになるが、缶蹴り勝負で決着をつけることになる。
ガイアの姿を見たときは焦っていたが、ノムラと入れ替わっていると知って安心した。
ちなみに旧アニメ版では全員の名前は設定されていたのだが原作漫画では未定のままなので
本作ではそれに倣い「ナイフ使いの人」など仮称のまま話が展開する。

被害者の会その1。街でたまたまシコルスキーと遭遇し、かつて受けた自らの被害を証明しようと尾行を開始する。

  • 舘岡
被害者の会その2。かつて敗北したシコルスキーがとある軍人に敗北し弱者に成り下がったとの情報を得、喝を入れるべく訪れるが…。

ガイアの師匠。ガイアに花沢荘を紹介したり、花見で賑わう公園でシコルスキーと酒の飲み比べ対決をしたりした。
ちなみに勇次郎に振舞われたコニャック「ハーディ・ドス・ノール」はそれ以前から呑んでみたかったらしいが
肝心の勇次郎の前で呑む時にはあまりにも恐ろしくて味がしなかったらしく
花見で大家さんに改めて振舞われたことでその美味さを堪能できたとのこと。

  • アナコンダ
最大トーナメント時に、ガーレンと戦った超巨大蛇。
ガーレンにボコボコにされて頭を踏み潰されたが、実は生きていて動物園で飼われている事が判明。
牙が抜けたかのように大人しかったのだが、ガーレンの奮起を感じ取ったようでリベンジに燃えるがごとく園内から脱走しかけた。

余談

  • 月刊少年チャンピオンの公式twitterでは「超軍人と最強死刑囚が四畳半で同棲する話。」と題で1話の無料公開が行われており、10,000リツイートを超えるなど注目を集めた。




追記・修正は多重人格の軍人か死刑囚のロシア人と四畳半の部屋で同棲できる人にお願いします。

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最終更新:2025年03月27日 18:23

*1 公務員である自衛隊員は原則所得の発生する副業は一切禁止されているが、作中でガイアはアルバイトをしている

*2 ガイアの「閑静な環境で暮らしたい」という相談に応じ師匠である本部以蔵が紹介した物件である

*3 職業は家政婦で、シコルスキーの家事スキルの高さもそれが理由らしい

*4 このことは同居生活が始まって年が明けても変わらず、未だに自分とノムラが同一人物であるという事実に気付かないシコルスキーの鈍感加減にはさしものガイアも呆れ気味であった

*5 単なる穴ではなく、内部は床・壁・天井に板張りが施され外界への昇降に梯子が用意されているなど彼の高いクラフトスキルが察せられる