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あぁ いいな!

登録日:2022/12/21 Wed 08:58:59
更新日:2026/08/22 Sat 00:48:46NEW!
所要時間:約 3 分で読めます





『あぁ いいな!』とは、歌手ユニット「W(ダブルユー)」の楽曲である。


【概要】

そもそも「W」とは、辻希美と加護亜依の2人によって結成された、ハロー!プロジェクト所属のアイドルデュオである。
本曲は、そのWの2枚目のシングルとして2004年8月18日に発売された楽曲。
作詞・作曲はモーニング娘。のプロデューサーであるつんく♂、編曲は鈴木Daichi秀行が担当している。カップリング曲は「乙女の携帯電話の秘密」。

本曲でひときわ目を引くのが、どこか場違いな印象を与えるナマズというフレーズである。
もっとも、そこを除けば、年頃の女の子の等身大の欲求や日常、淡い恋心をテーマにした、いかにもアイドルソングらしい楽曲……の、はずだったのだが


タイアップ

本曲は、あるテレビアニメの主題歌としても起用された。
そのアニメこそ、国民的アニメドラえもんである。
本曲は、いわゆる大山版『ドラえもん』における10代目エンディングテーマとして使用された。

小泉今日子、吉川ひなの、SPEEDなど、女性アイドルが『ドラえもん』の楽曲を担当した前例はこれまでいくつも存在していた。しかし、アイドルユニット、しかも当時勢いのあったハロプロ所属のユニットを起用するという人選は、それまでの『ドラえもん』としてはかなり攻めたものだったと言える。



そして曲の世界観を表現した結果、こうなった。



【EDアニメーション】

まず、アニメーションには終始、原作・アニメ本編に出ない、歌詞由来のナマズのキャラクターが登場する(「地震なまず」というひみつ道具ならあるが、それとは別物)。

Bメロでは、のび太しずかジャイアンスネ夫夜の歓楽街をバックに、歌詞そのままに金持ち風(なぜか明治っぽい)のコスプレをする中、ドラえもんだけナマズのコスプレ……どころかナマズの人魚と化す。
(ちなみに普段の服装から変化する際、原作漫画のコマが被さる演出がある)
すると、例のナマズがドラえもんを見つめ「❤」状態に。

続くCメロでは、チェア2つが置かれたビーチでナマズが、かき氷2つを持ちながら誰かを待っている様子に。
その後ドラえもんは夫婦岩を背景に駆けていき、ガールフレンドの猫・ミイちゃんと寄り添いながら見つめ合う場面に変わる。
それを見たナマズはショックを受け、立っていた岩場ごと崩れ落ちてしまう。

そしてDメロでは、ピンクのフリフリエプロンを着たジャイアンの母ちゃんがカレーの味見をするのだが、激辛だったのか鼻から炎を吹き出してしまう。息子ならまだしも料理上手な母ちゃんが極端に味加減を間違えるとは思えないが…。
その後ドラえもんが夜の住宅街を歩く後ろをナマズがストーキング。ドラえもんは夜空に輝くミイちゃん型の星座を見つめるのだが、突如ナマズ型の星座に変わり、しかめっ面になる。
そしてレギュラー5人とナマズが夫婦岩を背景に駆けていき、先程の「ミイちゃん→岩場ごと崩れるナマズ」の映像が再び繰り返される。

最後に、ナマズがレギュラー5人と一緒に自分もレギュラー面して手を振り終了する。


総じて、ナマズがドラえもんに横恋慕しているかのような映像となっている。
いくら恋心を歌っているとはいえ……。

【評価】

その独特すぎる内容から、当然ファンの間では、ドラえもん屈指の迷曲として扱われるようになった。
口さがない者からは「オッサンが無理して若者に合わせようとしてスベってるみたいな感じ」という辛辣な意見を浴びせられることも多い。

更に言えば、この曲が大山版ドラえもんにおける最後のエンディングテーマである。
2005年の大山版終了後、水田版で『もしものがたり』が起用される2025年まで、約20年にわたって新たなエンディングテーマが登場しないこととなった。

しかし、リアルタイムで視聴していた人の中にも、

「大山版最後のエンディングは(ひとつ前の)『YUME日和』だったと思っていた」

という人は少なからず存在する。無意識に記憶から消去したのだろうか…

実際、大山版最後の放送回は前年に公開された映画『ワンニャン時空伝』の地上波放送であり、その際に流れたエンディングが『YUME日和』だったため、そう記憶してしまうのも無理からぬことではある。

兎にも角にも、26年間続いた大山版ドラえもんという作品を締めくくるには、あまりにも奇抜すぎた曲だったのかもしれない。
実際、アイドルタイアップ曲が多く、シュール路線の()曲『スイミン不足』を擁する『キテレツ大百科』なら、むしろ違和感がなかったのではないかという声もある。

ただし、末期の大山版ドラえもん自体がカオスかつシュールな作風へと傾いていたことから、

「末期の大山版ドラえもんにぴったりな曲」

という、良いのか悪いのか分からない評価も見られる。
「最後のEDなのに、あまりにもクセが強い」という点まで含めて、この曲が大山版ドラえもんの最後を飾ったこと自体が、ある意味では末期の大山版らしいと言えるのかもしれない……。

最後に、つんく♂は本曲について
人間誰しも、「朝起きたら、○○○○になってたらいいな〜」って寝る前に想像したりしますよね。
今回の「W」は、他愛もない些細な夢から、無限の夢まで、女の子の様々な欲望と日常を曲にしました。
普段、通学途中にどんな王子様と出会うかわからないので、
精一杯、背伸びして、おしゃれして、背筋伸ばして、リップ引いて、
でも、地元の駅まで帰ってきたら、ちょっと「ほっ」として、
近所のおばちゃんと立ち話して、で、帰り道、どこかの家からカレーの匂いがしてきて・・・
結局寝る前「また、明日素敵なあの人にあえますように!」
とまあ、それを「なまずのぬいぐるみにおまじない」かけて就寝。

なんのこっちゃわからないかもしれませんが「楽しい曲です」
是非聴いてください。
そういう意味で「のび太くん」の夢を叶えてくれるドラえもんのテーマ曲であるというのは
とても意義のあることだと思っています。
と語っている。

【なぜこの歌がここまで話題になるのか】

ここまで読めば分かる通り、本曲のEDアニメは確かに個性的である。
しかし、単に「大山版ドラえもんの最後のEDは変だった」というだけなら、これほど長く語り継がれることはなかっただろう。

本曲が現在に至るまで妙に話題となる理由の一つは、「大山版ドラえもん末期の迷走を、実際の映像として確認できる貴重な存在になっている」ことにある。

長年にわたって親しまれてきた大山版ドラえもんは、2000年代に入ると大きな転換期を迎えていた。
2002年10月には本編がフルデジタル制作へ移行し、OP・EDも一新されるなど、大幅なリニューアルが実施。
それ以外でも、番組内の演出やアニメオリジナル作品の比重、スタッフの顔ぶれなどに変化が見られるようになっていった。

そして2003年にはレギュラー放送が通算1000回を迎え、2004年にはテレビシリーズで初めて劇場版の分割放映が行われるなど、長寿番組としての「節目」を迎える一方、番組自体も次の時代へ向けた変化を続けていた。

2004年頃になると、長年シリーズを支えてきたスタッフから世代交代の兆しも見られる。
例えば、12月17日放送の「のび太とのび夫」は、芝山努がチーフディレクターとしてコンテを担当した最後の作品となった。
以降のテレビシリーズでは、渡辺歩をはじめとする新しい世代のスタッフが中心となって作品を支えていくことになる。

そして2004年11月には、翌年4月から声優陣を一新することが公表され、2005年4月にはテレビシリーズそのものが大幅にリニューアルされる。
テレビ朝日も当時、このリニューアルを「大胆な改革」と位置づけ、声優だけでなく映像面も刷新することを表明していた。

このように見ると、「末期大山ドラ」とは、単なる作品の衰退期というよりも、長寿番組として積み重ねてきた従来のスタイルが変化し、次の時代へ移行していく過渡期だったと見ることができる。

とはいえ、その「変化」の過程で生まれた映像や演出の中には、あまり『ドラえもん』に詳しくないファンから見ても「これは一体どういうことなんだ?」と思わせるようなものが存在する。
その典型例として現在でも特に強烈な印象を残しているのが、この『あぁ いいな!』なのである。

妙にハイテンションで、ナマズが踊り狂う本曲のEDアニメは、そうした末期の空気を象徴するものとして、放送当時以上に後年になって注目されることとなった。
そのため、本曲は単なる「珍妙なエンディング」としてだけでなく、大山版ドラえもんが終焉へ向かう時期の番組事情をうかがい知ることのできる、一種の資料的存在としても扱われている。

もっとも、大山版ドラえもんの「末期の空気」を現在のファンが実際に確認することは、必ずしも容易ではない。
大山版ドラえもんは、約26年間にわたって放送され、およそ1800話にも及ぶ膨大な作品群を残した長寿シリーズである。
そのため、現在になって過去のエピソードを配信・商品化するには、映像のデジタル化だけでなく、権利処理などさまざまな問題をクリアする必要がある。

さらに、大山版の中でも特に古い作品については、現在の基準から見ると扱いに注意を要する表現が含まれている場合もある。
過去のアニメ作品では、当時は問題視されなかった描写や、スタッフによる遊び心の範疇だった小ネタが、後年になって問題視されたケースも存在する。

こうした事情もあってか、大山版ドラえもんの過去のエピソードは、現在の動画配信サービスだけで完全に網羅されているとは言い難い。
テレビ朝日系の専門チャンネルでは過去作の一挙放送なども行われているものの、時期や作品によって視聴できる範囲には限りがある。

まして、いわゆる「迷走期」と呼ばれる時期のエピソードとなると、現在でも気軽に見られる作品はさらに限られる。
つまり、「末期の大山ドラは迷走していた」というイメージそのものは広く知られている一方で、「では、実際にどれほど変化していたのか?」を現在の視聴者同士で共有する手段は、意外なほど少ないのである。

もちろん、現在でも公式に視聴できる作品や、再放送・ソフト化された作品は存在する。
しかし、末期のテレビシリーズ全体を通して当時の雰囲気を確認することは、そう簡単ではない。

では逆に、「再視聴が比較的容易な末期大山ドラの映像」は完全に存在しないのかというと、そういうわけでもない。劇場版シリーズがそれである。

21世紀に入ってから声優交代までに制作された劇場版をひとまず「末期大山ドラ」の区分に含めるなら、『翼の勇者たち』から『ワンニャン時空伝』までが該当する。
この時期の劇場版は、テレビ版とは対照的に、多少演出過多な部分こそあるものの、いずれも劇場用作品として堅実に作られている。
特に『ワンニャン時空伝』は、大山版キャストによる最後の劇場版であり、大山版の締めくくりとして現在でも高く評価されている。
つまり、同じ「末期大山ドラ」に分類される時期であっても、劇場版とテレビ版とでは、作品の方向性や評価、そして現在における映像の残り方に大きな差があるのである。

もっと端的にまとめれば、
  • テレビ:迷走していたはずだが、現在ではその全体像を追いにくい
  • 映画:視聴は比較的容易だが、内容は真っ当で、特に迷走していない
ということになる。

そして、ここに『あぁ いいな!』という曲の特殊な立ち位置が生まれる。
何しろこれは、アニメ本編そのものではなく、わずか数分程度のEDアニメーションに過ぎない。
それにもかかわらず、その映像には当時のテレビシリーズが持っていた独特の空気が、妙に濃縮されている。
エピソード単位での丸ごとアップロードとは異なり、あくまで一つの主題歌に付随するPV・映像作品という扱いであるためか、動画投稿サイト上でも比較的残存しやすい。
その結果、「本編をほとんど見たことがない世代であっても、このEDだけは知っている」という現象まで起こり得る。

しかも、本曲の異質さは映像だけにとどまらない。

それまでのテレビ版のEDを振り返ってみても、1995年から2002年まで使用された『ぼくドラえもん2112』から、ほんわかとした『またあえる日まで』、力強さとノスタルジーを併せ持つ『タンポポの詩』、そして爽やかさと切なさを感じさせる『YUME日和』と、比較的穏やかな雰囲気の楽曲が続いていた。

21世紀の劇場版主題歌も、『Love You Close』→『いっしょに歩こう ~Walking Into Sunshine~』→そしてテレビ版と連動した『またあえる日まで』『YUME日和』と、全体として落ち着いた方向性が続いていた。

その流れの中に、唐突にハイテンションな電波ソングが入り、しかもそれが大山版ドラえもん最後のテレビシリーズ用EDなのである。
これにより本曲は、「大山ドラ末期の変化と迷走を、今なお実際の映像・音源として確認できる数少ない窓口」として機能することになった。
テレビシリーズ全体を見返すことが難しくなった現在だからこそ、数分間のこの映像が、かえって強烈な存在感を放っているのである。

そして今日もまた、このナマズは、当時を知らない世代に「末期大山ドラとは一体何だったのか」を強烈に印象づけているのだ。





追記・修正はナマズに片思いされながらお願いします。

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最終更新:2026年08月22日 00:48