デスペラード(映画)

登録日:2023/08/18 (金) 22:28:49
更新日:2025/04/13 Sun 00:12:29
所要時間:約 10 分で読めます







タランティーノを殺したスゴい奴。



弾丸8千発を撃ちまくり、10秒に1人を葬るブッ飛びR&Rアクション!




概要


『デスペラード』(Desperado)は、1995年8月25日にアメリカで公開されたガンアクション映画。
日本では1995年12月16日に公開。
監督・脚本・製作・編集は、超低予算アクション映画『エル・マリアッチ』で映画界に衝撃を与えたロバート・ロドリゲス

本作は『エル・マリアッチ』の続編兼セルフリメイクにあたり、予算わずか7000ドル(日本円に換算すると約70万円!)だった前作の1000倍の予算、700万ドルがかけられている。
もっとも、メジャー系作品としてはこれでも低予算なのだが。*1
それでも根幹部分に当たる仕事はほぼすべて自分でやってしまうあたりは、さすがロドリゲスである。

自分の育った環境を題材に、他と違った、もっと自己に直結した映画を作りたいと思いました。
超大作と呼ばれるビッグなアクション・ムービーに負けないためにどうするか?!
お金で解決できない場合は別の手段をとるしかありません。
自分たちを追い詰めもっとクリエイティブにありたいという願いがエネルギーとなって、困難を乗り越えることができたように思えます。
映画作りに困難はつきもので、お金のある超大作であろうとそれは同じです。
お金の力を使ってあたかもホースの水圧で物をけちらし、問題を片付けるというわけにはいかず、
ただひたすら走り回り乗り切るしかなかったことが、かえってよい結果を生んだのかもしれません。

引用元:パンフレット

また、ロドリゲスは、従来のハリウッド映画になかった新たなヒーローを作り出そうとしていた。それは、自身のルーツであるラテン系のヒーローだった。
「ユーモアのあるアクション映画が欲しかった。それに強いメキシコ女性のスマートなヒーローがね。僕らはインディ・ジョーンズやルーク・スカイウォーカーに憧れて育ったけど、メキシコ人はいつも映画では悪人だったから、そんな状況を変えたかったんだ」

こうして出来上がった本作は、情熱の国メキシコが舞台にふさわしい、むせかえるほどのアツさに満ちた痛快娯楽作に仕上がっている。
細かいカット割りで描かれる、8千発もの弾丸を使ったスタイリッシュかつ豪快なガンアクション。やたら濃ゆいキャラクターのオンパレード。これまたむせかえるようなお色気。
そして全編に漂う、そこはかとないB級テイスト……
興行収入も、5800万ドルの大ヒット。ロドリゲスは名実ともにハリウッドを代表する監督の一人となった。
さらに本作がきっかけで、アントニオ・バンデラスやサルマ・ハエックは一躍ハリウッドの大スターへと上り詰めていった。
ロドリゲスの願い通り、本作はまさにラテン系俳優の躍進につながった作品の一つとなったのである。

また、トロント映画祭で出会ったオタク監督仲間のクエンティン・タランティーノが友情出演しているのも見所の一つ。
その場面は、『パルプ・フィクション』の宣伝中の一日を空けてもらって撮影したのだという。


あらすじ


ここはメキシコ国境の町サンタ・セシリアにある、荒くれ者たちが集うタラスコ・バー。
そこにふらりとやって来たブシェミが、サラゴサのバーで出会ったという謎の男の話を語り始める。

「さて……その酒場に……見たこともねぇぐらいでっけぇメキシコ人が入って来たんだ!デカいのなんのって、いきなりその場の空気が変わった!」
「闇って言うのかなぁ~……いや、酒場が暗かったわけじゃない。その男の雰囲気さ」
「闇を引きずっているような感じってぇの?そいつに光が当たっているはずなのに、どんな顔をしているのか見ようと思っても、見えないんだ。まるでそこだけ光が……力を……なくしたような……」
彼は“ブチョ”なる人物を探しており、その名前が出た途端、空気は一変。銃やナイフを持ったゴロツキどもに取り囲まれた。
すると、彼は大切そうに持っていたギターケースから瞬く間に銃を取り出すと、あっという間にゴロツキたちを一掃。後ろから撃とうとしたバーテンも、頭を撃ち抜かれた。

こうして、最初は一笑に付していたタラスコ・バーの空気もすっかり一変。そして「ぐずぐずしてたら……あの男が来る」と警告とも取れる言葉を残し、ブシェミは去って行った。

───その男、“エル・マリアッチ”はかつて、ギターを弾かせたら右に出る者はいないほどの腕前を持っていた。
しかしある日、ギャングに恋人を殺された挙句に左手を撃たれて、ミュージシャンの道を断たれてしまった。
そのため、今は復讐のためボスのブチョを探してさすらうガンマンとなっていた。
やがてサンタ・セシリアの町にたどりついたマリアッチ。そこは文字通り、ブチョ一味に牛耳られた無法地帯だった……!

登場人物


吹替キャストは劇場公開版&VHS・DVD収録版/テレビ朝日版(日曜洋画劇場にて1998年12月13日放送)/BD版の順。BD表記が無い場合は劇場公開版&VHS・DVD収録版で共通。

  • エル・マリアッチ
演:アントニオ・バンデラス
吹替:大塚明夫/山路和弘

かつてのギターの名手にして、現在は最強のガンマン。
持ち歩いているギターケースの中には様々な銃器類が隠されており、普段はギターが入っているように偽装している。
本来は一介のギター弾きだったはずなのだが、負傷こそすれど基本的に無双してしまうチート。
しかし人の心も持ち合わせており、戦いに赴く前後には教会で懺悔している。
恋人とミュージシャンの道を奪った仇であるブチョを探して各地をさすらっており、サンタ・セシリアの町にやって来た。
一味との戦いの最中カロリーナと出会い、愛情が芽生えていく。
そしてカロリーナの本屋が焼かれた後、ついにブチョへの復讐を果たす千載一遇のチャンスを迎えるが、なぜか見逃してしまう……


バンデラスにとって初のアクション映画となった本作。
冒頭の演奏シーンは代役なしのガチ演奏である。
彼は本作について、このように語っている。

最上の西部劇とアクション映画から、多くのクラシックな要素を引き出したのがこの作品なんだ。
さらにロマンチシズムとユーモアがある。登場人物は深い感情や痛みを持ち、自分自身と闘っている。
マリアッチは天使であり悪魔であり、また夢見る男でもある。
運命と闘うこの種の人間はいつも魅力的だね。

引用元:パンフレット

  • カロリーナ
演:サルマ・ハエック
吹替:藤森夕子/小林優子/安藤麻吹

サンタ・セシリアで唯一の本屋を経営する美女。その美しさは車が衝突事故を起こすほど。
両親の遺産をつぎ込んで本屋を始めたが、客はいないらしい。そのためブチョの麻薬の隠し場所として利用されており、年に5万ドル現金でもらっていた。
タラスコ・バーでの銃撃戦後、たまたま通りすがった彼女を生き残った店員からかばい負傷したマリアッチを介抱する。
その後ナバハス戦で再び負傷したマリアッチを店を訪れたブチョから隠し通し、怪我の手当てをしていく内に、二人は熱い愛を交わすのだった……
しかしマリアッチを匿っていることはブチョに見抜かれており、一味の襲撃を受ける。
二人は逃げ切ったものの、本屋は全焼しまった。しかも貯めていたお金は本の中に挟んでいたために一文無しに。
それでも、マリアッチの戦いに最後まで付き添い、ラストでは彼と共に旅立っていった。

  • ブチョ
演:ジョアキム・デ・アルメイダ
吹替:有本欽隆/辻親八/石塚運昇

サンタ・セシリアの町を牛耳るギャングのボスで、マリアッチの復讐ターゲット。
コロンビアの麻薬組織と取引しており、麻薬の密売も行っている。
タラスコ・バーの面々が全滅したのを目の当たりにし、部下たちに知らない顔を見たら殺せと命ずる。
このように極悪非道なボスであるが、新車を貸し出した後、周りが誰も車の電話番号を知らないのでナバハスの件を連絡できないという抜けた一面も。

なお、当初のキャスティングは『アダムス・ファミリー』シリーズのラウル・ジュリアが予定されていたが、製作開始前の1994年10月24日に亡くなっている。

  • ブシェミ
演:スティーヴ・ブシェミ
吹替:安原義人/堀内賢雄

演者と役名が同じ、マリアッチの友人である情報屋。
冒頭のタラスコ・バーでのやり取りから、そこがブチョとかかわりの深い場所であることを突き止めマリアッチに教えた。
しかしマリアッチがそこでも銃撃戦をやらかしたことを知ると一転、協力を拒みだす。
「ブチョはお前の手に負える相手ではない」と告げるのだが……

  • バーテンダー
演:チーチ・マリン
吹替:福田信昭/麦人

タラスコ・バーの店主。
接客態度は最悪で、ビールがぬるくてマズかったり、ジョッキが汚れていたり、さらに女性客からもクレームを入れられている。
おまけに麻薬などの取引場所の隠し部屋の入り口は、そこら中クソだらけのトイレの中という有様である。
冒頭で、ブシェミの話を最初は歯牙にもかけない扱いで聞いていたが、ブチョの名前が出たことや、サラゴサのバーにいた全員が皆殺しにされたことを聞いて戦慄。
さらにそのバーと連絡が取れなくなったことから、この件が事実であったと判明。ブチョに報告するのだが……

  • ナバハス
演:ダニー・トレホ
吹替:星野充昭/田中正彦

コロンビアの麻薬組織から勝手に派遣された殺し屋で、ナイフ投げの達人。
サンタ・セシリアに向かうマリアッチがヒッチハイクしようとしたが逃げられた。
その後、マリアッチと和解したブシェミを殺害。マリアッチを追い詰めようとするが、事情を知らなかったブチョの愛人や部下に殺された。
この間違われるシチュエーションは、前作のセルフオマージュだろう。

  • ニーニョ
演:アブラハム・ヴェルデュスコ
吹替:近藤玲子/矢島晶子

マリアッチがサンタ・セシリアの町で出会った少年。
父は元マリアッチだったが仕事がなく、働かなくなってしまったらしい。
マリアッチからは毎日ギターの練習をするように教わるが、後に麻薬取引に利用されていたことが判明。
そればかりか、彼曰く町中、カロリーナさえ例外でなく麻薬取引にかかわっているという……
最終決戦の最中には戦いに巻き込まれ瀕死の重傷を負ってしまうが、マリアッチとカロリーナに病院に送られ、一命を取りとめた。
ちなみに「ニーニョ」とはスペイン語で「子供」の意味であり、スペイン語圏内では比較的ポピュラーなミドルネームでもある。

  • 集金人
演:クエンティン・タランティーノ
吹替:島田敏/牛山茂/多田野曜平

タラスコ・バーに集金にやって来た男。
小便レベルのマズいビールを飲まされ、10フィートほど離れた場所にあるジョッキに小便を一滴もこぼさずに入れられるかに300ドル賭けた男のジョークを披露する。
しかし集金後、店にやって来たマリアッチ大暴れにより、仲間と誤解されキャッチコピー通りに射殺されてしまった。哀れ。
まあ、タランティーノの関わる作品で長話や蘊蓄話は基本的に死亡フラグである。

  • カンパ
演:カルロス・ガラルドー
吹替:星野充昭/ 松本大/ 多田野曜平
  • キーノ
演:アルバート・ミシェル・Jr
吹替:大川透/檀臣幸/佐藤晴男

マリアッチの助っ人コンビで、最終決戦に呼ばれた。
本作最大の名物キャラであり、ロドリゲス作品でおなじみのアイデア武器の使い手の代表格と言っていい存在。
カンパは2丁のギターケース型マシンガン、キーノはギターケース型ロケットランチャーで戦う。
……マリアッチはあくまでケースに武器を入れていただけなのに、こいつらはケースを武器そのものに魔改造している。
ブシェミからイカレポンチ呼ばわりされたのも納得である。
その活躍ぶりは、一度見たら忘れられないインパクトを植え付けてくるだろう。退場の速さも含めて

カンパを演じたカルロス・ガラルドーは、前作『エル・マリアッチ』の主人公を演じている。
そしてキーノがランチャーを撃つ際の、両手で右肩にランチャーを担いで、左足を地面を擦るように伸ばしたまま右足を大きく曲げてしゃがみ込むという構えは大変絵になるので、多くの作品でパロディ化されている。
このポーズが有名になりすぎて、「デスペラードという映画の主役はランチャーに改造したギターケースをやけにスタイリッシュなポーズでぶっ放してる」と勘違いしている未見の人間も多いかもしれない。

余談


〇ナバハス役のダニー・トレホはこの作品をきっかけに、ロドリゲス作品の常連俳優となっていった。
オーディションでは、ロドリゲスから「君は僕の高校にいたワルみたいだね 」と言われたという。
これに対しトレホは「オレがお前の高校のワルだったんだよ!」と意気投合。*2
そしてこの映画の撮影中に、二人はいとこであることが判明した

〇マリアッチのギターケースの中にある銃器類の中に、明らかに股間につけて使うタイプのものがある
その銃を使うシーンは二回目のバー銃撃戦と、カロリーナとベッドにいる時に暴発しギターに穴を開けてしまうというものだったが、いずれもカットされている。
マリアッチ曰くこれに何度も命を救われたそうだが、実際にそれが使われていたら間違いなくイメージぶち壊しだったと思う
しかしこの銃のアイデアはロドリゲス自身よほど気に入っていたのか、後の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』でも使われている。

〇本作の制作会社はコロンビア映画だが、それ以前には別のメジャー映画会社でも『エル・マリアッチ』のリメイク企画があった。
しかしそこの企画会議で出たのは、「主人公はエレキのギタリストで、舞台はテキサス」「主人公が手を撃たれた後はインディアンの居住地に逃れ、そこで彼らに伝わる空手のような武術の特訓を受ける」など、作品の趣旨をまるで理解していない無茶苦茶な案ばかり。
しまいには『エル・マリアッチ』の原形をとどめなくなるほどの酷いものだったらしい。*3

〇『ニンジャスレイヤー*4等で知られる執筆サークル「ダイハードテイルズ」のメンバー(?)逆噴射聡一郎氏はこの映画を痛く気に入っている。氏のコラムや小説講座に度々挟まる本作の喩え話には妙な説得力とシリアスさがあり、この映画を単なるおバカ映画で終わらせない深い洞察力と愛をうかがわせる。一度読めば本作の見方が変わる…かもしれない。


「俺はwiki籠りだった」
「有名だったの?」
「そこそこね」
「手を撃たれて……やがて、編集することより銃を撃つことに慣れてしまった。書くことよりも、壊すことに……」

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  • 1995年
最終更新:2025年04月13日 00:12

*1 当時のアメリカ映画の製作費は平均で3000万ドル。本作の予算は平均の4分の1以下である

*2 出典:https://youtu.be/8FzdY2WEmYk

*3 出典:『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』パンフレット

*4 原作者は本作をレファレンスの一つに上げている。