時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

登録日:2024/07/15 Mon 01:10:00
更新日:2025/03/14 Fri 23:34:13
所要時間:約 8 分で読めます




出典:『ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』第1話「ロシア語でデレるアーリャさん」より
2024年7月~9月動画工房©Sunsunsun,Momoco/KADOKAWA/Alya-san Partners


Милашка(かわいい)

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』は、燦々SUNによる日本のライトノベル作品である。
略称は「ロシデレ」。
既刊11巻(2024年8月現在。本編1~9巻+短編集4.5巻、裏話)。



【概要】

元は「小説家になろう」で2020年より掲載された短編作品である。
後に設定を練り直したうえで2021年2月より角川スニーカー文庫にて刊行されている。
元々は異世界転生作品として執筆する予定だったが、世界観説明や相手の知らない言語でデレる描写において、現実の外国語でも可能であることを考慮して構想外になった経緯がある。

結果的にツンデレでなかなか自分の気持ちを表に出すことが出来ず、ロシア語で気持ちを伝えるヒロインのアーリャと、実はロシア語は分かっているのだが敢えて知らないふりをしている主人公の政近の構図が出来上がった。
普段はクールでキツイ態度をとることもあるアーリャがロシア語でデレているという場面が視聴者の心をつかむことに成功し、新しいイチャラブストーリーとして人気を得ることに至った。

ロシア要素が見所になることから、2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻による影響で、本作の今後が危ぶまれるという声もあったが、そんなの関係ないとばかりに2021年以降連続で「このライトノベルはすごい!」を受賞。
2025年1月には原作小説が400万部、コミカライズ版が130万部を突破、累計530万部を突破しており、人気を順調に維持している。

メディアミックス

①コミカライズ
手名町紗帆によるコミカライズ版が「マガジンポケット」で連載されている。既刊5巻
②テレビアニメ
2024年7月~9月にかけて動画工房でアニメ化されている。
第12話放送直後の9月19日に、第2期制作が決定された。
③ラジオ
「ロシラジ」の愛称で久世役の天﨑滉平とアーリャ役の上坂すみれによるWEBラジオが展開されている。

【あらすじ】

「И наменятоже обрати внимание」
「え、なに?」「別に? 『こいつホント馬鹿だわ』って言っただけ」「ロシア語で罵倒やめてくれる!?」
俺の隣の席に座る絶世の銀髪美少女、アーリャさんはフッと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
……だが、事実は違う。さっきのロシア語、彼女は「私のことかまってよ」と言っていたのだ!
実は俺、久世政近のロシア語リスニングはネイティブレベルなのである。
そんな事とは露知らず、今日も甘々なロシア語でデレてくるアーリャさんにニヤニヤが止まらない!?
全生徒憧れの的、超ハイスペックなロシアンJKとの青春ラブコメディ!
(原作1巻あらすじより引用)


久世政近の隣の席に座るアーリャさんは、いつも彼に対して冷ややかな目線を向けている。
けれど、時々ボソッとロシア語で彼にデレていて……。
その言葉を政近も聞き逃しはしない。
なんと、政近はロシア語のリスニングがネイティブレベルだったのだ!!
気付いていないと思い込み、時々デレるアーリャさん。
そして、その意味を理解しながらも、気付いていないような振りをする政近。

ニヤニヤが止まらない、二人の恋模様の行方は——!?
(アニメ公式HPより引用)

【キャラクター】

・久世政近
CV:天﨑滉平
「かわいいって何だよ‬‪かわいいって!‬‪それさっきも言ったよな!?‪こっちは全部分かってんだよー!」
本作の主人公。
アーリャと隣の席の男子。両親は離婚しており、父方の方に引き取られた。
オタクライフを邁進しており、アニメを観るべく夜更かしをしているため、いつも授業中に寝ている。成績も赤点ギリギリで追試・補習を何とか回避しているやる気のない劣等生である。
C組の周防有希は幼馴染。

+ 幼馴染?
というのは表向きで通している嘘であり、「嘘じゃないですぅ!語彙の拡大解釈ですぅ!」本当は実の兄妹。苗字が別なのは先述の離婚の際に有希は母方に引き取られた為。かなりのシスコンである。
自分が負うべきだった義務を押し付けてしまったという負い目。体が弱う身動きが出来ない分だけ全てにおいて勝る自分が守ってやらねば、と言っていた意識が、気付けばその妹に学業面で追い抜かれていたことによる衝撃や劣等感、自責の念が重なって、愛情と複雑な感情がない混ぜになってもいる。

そんな夜更かし、赤点ギリギリなどの不真面目な様子をいつもアーリャに咎められており、世話を焼かれることもしばしば。しかし、普段は人を寄せ付けないアーリャの愛称を呼ぶことが認められている数少ない存在である。

幼少期に父方の祖父が好きだったのもあるが、散々ロシア映画を見させられたこと、ロシア語を話す少女に初恋をしたことがきっかけで、ロシア語を習得した(そのことをアーリャは知らない。よって彼女がデレた時に話すロシア語に悶絶している)。

+ 神童と呼ばれた頃
そんな彼だが、名家である周防家(母方の家系)で跡取り候補として英才教育を施されており、蓄えてきた能力は折り紙付き。
かつては周防家きっての麒麟児として期待を寄せられて、当主である祖父から過剰なまでの教育や訓練を課せられても、皆の為に、家族―特に母に褒めて欲しいからとこなしてきた。
だが、遊ぶ時間は当然なくて友人も出来ず、虐待染みた指導を受ける息子の教育方針で親は揉め、親を宥めようと更に訓練に精を出すと余計に夫婦仲は拗れて母の表情は曇り……という悪循環に苛まれる。
そして追い打ちをかけるように、不遇の事態は続いた。
喘息を堪えて必死に登校する妹を脅かすいじめっ子達を殴り倒したら、暴力事件を起こしたからと周防家は庇ってくれず、厄介払いのように久世家へ預けられた。
その預けられた先で出会えた、当時唯一の癒しだった初恋少女とは離別。
駄目押しに両親の離婚も重なって、完全に心が折れてしまい、祖父との大喧嘩の末に、大切だった有希すらも周防家に置いて、自ら跡取り候補の座を降りた。
そして、周防家の大人達が自分を見捨てたからと、意趣返しを兼ねて殆ど勉強せずに祖父が自慢をしていた征嶺学園に入学してみせた。だが、入学式で入試トップとして堂々挨拶していたのは、あろうことか有希。
自分が周防家当主の座から逃げた所為で、病弱の身ながら必死に努力した妹。彼女に比べて自分は如何に愚かで幼稚だったのか。自分自身に失望し切ってしまった政近は、それ以降、まともに努力が出来なくなった。

己の出自故に挫折したことへの負い目も常に抱えて、誰かが褒めてくれないと頑張れない状態に何時の間にか陥ってたことに今では気付いているからこそ、誰かが見ていなくても孤軍奮闘して頑張り続けるアーリャには羨望と尊敬の念を抱いている。
いざとなればその機転の良さでアーリャの危機を救うと同時に、かつての自分を顧みて立ち直り再び前を見て自分の進むべき道を見つめ直していく。

こうした彼の一面にアーリャも彼には心を許しており、距離を近づけようとしているが、いかんせん普段の政近の様子と、アーリャ自身のプライドの高さも相まって、なかなか近づくのが難しい・・・。
しかし、確実に距離は近づきつつあるのも確か。


・アリサ・ミハイロヴナ・九条(アーリャ)
CV:上坂すみれ
「バーカって言ったのよ」
本作のメインヒロイン。愛称はアーリャ
ロシア人の父と日本人の母を持つハーフ女子高生。
スタイル抜群(有希の目算では揉めないEカップらしいが、現在進行形で成長中)、美しく長い銀髪にアホ毛が一本ある。
容姿端麗成績優秀で、周囲からは「孤高のお姫様」と称される優等生。
ロシア人の父と日本人の母、一つ年上の姉の四人家族で、親の仕事にあわせて日本とロシアを数回行き来しており、中学三年時に征嶺学園に転入。
難関として知られており、ほぼ合格者が居なかった編入試験を突破したことで一目置かれていたが、編入以来学園トップの成績を収めている。
生徒会にも所属しており、高等部生徒会で会計を務めている。

完璧超人を思わせる孤高の雰囲気をまとっているが、その主な要因は、転勤も多い生活環境に加えて、彼女の能力の高さとドがつくほどの生真面目さに周囲がついていけなかったため(本人の人付き合いの悪さも起因していると言えるが)。
小学生の頃にまさにそれが原因でクラスメイトと衝突した過去があり、その結果として、
怠惰に見えてしまう他人に合わせるより自分でやった方が早い、という姿勢が染みついてしまい、クラスメイトをはじめとする周囲から面倒事を押し付けられることも多くなった。
そんな経緯故に、学業面では極めて優秀だが、はっきり言って交友関係や対人面の能力は無きに等しい。

また、必死に学業をこなし、何だかんだ15歳になる今までは乗り切れていたため、相当に負けず嫌いながらも自分の苦手分野というものを把握し切れず、苦手なものがあると自覚出来ていない節もあった。

そのために中等部での文化祭では、いよいよ自分の努力でカバーできなくなったのに、一人で無理難題を解決しなければならない羽目になったが、政近の助けにより事なきを得たのみならず、敬遠してきた「他人との協力」によって文化祭を最高のクオリティで迎えることができた。
その際の不真面目なようで周りをちゃんと観察して動き、寄り添ってくれる彼の姿勢に感化されたのか、彼には心を許すことにつながり、他の生徒とは違い自身のことを愛称の「アーリャ」と呼んでいいと伝えている。
そして、度々彼に支えられていくうちに彼の元々の能力や守備範囲の広さ、自分が守られ支えられていることを痛感して、彼に相応しく共に並び立てる人間になることを強く誓う。


彼には分からないと思っているロシア語で時々からかっている。しかし、上述のように政近はロシア語を理解できているので、彼女の話す独り言は全て政近には伝わっている。
長らく友達が居らず、特に男と親しくなったのは政近が初めてなので、政近に対する感情が敬意や友情の一種なのか恋慕なのか、当人にもまだ区別がついていない。
また、政近と有希が特別な間柄であるのは察しているものの、下手に追及すると自分と政近との関係が終焉を迎えかねないと無意識的に危惧して、自分の本心について深く考えるのを避けている節がある。

声優はロシアに造詣が深くロシア語にも堪能な上坂すみれが担当していることもあり、ロシア語の語りもとても流暢なものになっている*1
上坂氏曰く、「ロシア語は一般的に上手とされる発音で話すと、冷たい印象になりがちな点がネック。本作は言語監修の先生と一緒に、可愛らしく話しつつロシア語として通用するギリギリを模索した」とのこと。


周防有希
CV:丸岡和佳奈
「わたくし達、幼馴染なんです」
アーリャと並ぶ征嶺学園2大美姫とされており、告白された回数はアーリャを上回る(「深窓のおひい様」と呼ばれている)
幼少期は小児喘息に悩まされて辛い日々を送っていたが、体調が改善するにつれて努力を重ねて、周防家後継者候補として現当主に認められるまでに頭角を現した。
辛いものが好きで特に激辛ラーメンを好み、よく食べに行っている。
政近とは幼馴染であるが、時々幼馴染の範疇を超えた行動が見られる。

+ 幼馴染?
「バッカヤロウ!‬‪実の兄妹だから‬‪いいんじゃねえか!」
本当は政近の実の妹。
年子で政近が4月生まれ、有希は翌年3月生まれである。両親の離婚で政近は父方(久世家)に、有希は母方(周防家)に分かれた。こうした複雑な事情が暴露されることを。周防家当主の立場として忌避する祖父の命令により、周囲に知られないように表向きは上述の「幼馴染」で通している。
彼女曰く、「幼馴染は幼いころから仲良くしていたという意味なら、実妹も幼馴染の範疇に入れていいはず」との事。
とはいえ、兄妹仲は良すぎると言えるくらい良好で、共にオタクということもあってか話が通じる。よく政近の家にも泊まりにやってくる。(そして母方の実家には置けないためか、彼女が購入したオタクグッズは政近の家に置かれている)
因みに政近がオタク化したのも有希が原因。
体形は細身で揉めるCカップ(自称)。ただ、細身すぎるようにも見えなくもないが…

政近と接しているときは自然体で、下ネタ上等のオッサンを思わせるような言動もあり、フランクに接している。ついでに起床時に明らかに胸が見える角度でまたがって起こしに来る、風呂で鉢合わせた際も自ら進んで見せに来ようとするなど、自発的にラッキースケベを政近にかけに来る。
政近への呼び方は様々。お嬢様モードの時は「政近くん」、妹モードの時はお兄ちゃん、マイブラザー、兄者など多数。
ノリが良いとも言える。オタクトークをしている時は幼馴染や妹やラブコメの事等を嬉々として語る。
そんなガチオタ程度だったのに知人の影響で近親もBLも割とイケるクチになってしまった。

一方で学園では令嬢として振る舞いが演技かと言えばそうではなく、これは付け焼刃の演技ではなく本来の姿と言えるもの。
どちらかと言えば、オタクとしての素行の方が染みつかせた後天的なものである。逆転してしまったきらいが無いでもないが。

ただし、上記の様に辛いものが好きなのは隠す気はないようで、こればかりは人目をはばからず愛食している。

過去の経歴故に、兄が紛れもない神童だったことや、病弱な自分の分もと独り奮闘した挙句に限界を迎えて腑抜けてしまった現在の彼の在り様に対して、その心中は複雑。
普段はからかいながらおどけて接しているが、肉親としての深い愛情だけでなく、かつての輝いていた頃の兄への憧れやかつての在り様を取り戻して欲しい、といった様々な願望と期待を抱えている。
アーリャに対しては兄が彼女寄りの行動しているのに多少嫉妬しており、かなりの回数で幼馴染マウントをとっている。

原作者曰く、有希を単なるライバルヒロインとして作りたくないという事情から、実妹設定などが盛り込まれたという。
原作では実妹設定の公開が第1巻半ば、漫画では3巻半ばだったが、アニメでは第2話で早速公式ネタバレしている。


マリヤ・ミハイロヴナ・九条(マーシャ)
CV:藤井ゆきよ
アーリャの一つ年上の姉で、生徒会では書記を担当。
類稀なるプロポーションと優しげな美貌から学園内での人気が高く、
付いた異名は「学園の聖母(マドンナ)」。
本人は割とマイペースの性格で、とある事情で政近と生徒会関連の買い出しに行った際には明らかに生徒会と関係のないものも買いだしてしまい、政近も振り回されてしまった。

ゆるふわな振る舞いや言動は地ではあり、他に頼れる人間が居ないと判断すると有能なしっかり者として辣腕を振るうのだが、信頼できる相手が傍に居ると気が緩みやすい性格の持ち主。そのため、アーリャは基本的に姉のポンコツな姿しか見た例が無い。
ただし、頑張り屋な妹への愛情と遠慮から、張り合って妹に無理をさせないように気遣って、敢えて本来以上に天然キャラとして振る舞っている側面もある。

「さーくん」という彼氏持ちらしく、マーシャに告白した男子はすべてそのことを理由に玉砕しているとか。



君嶋綾乃
CV:会沢紗弥
生徒会庶務で有希に仕える従者。かつては政近の従者でもあった。
かねてより政近の才気にほれ込んで主と仰いでいたが、彼が実質勘当された後は、有希を主として絶対的な忠誠心を持っている。
周防家当主に仕える祖父母の仕事ぶりに憧れて従者の道を目指した彼女だったが、「己を消して主を支えるべし」という格言を、綾乃は"文字通りに"受け止め過ぎた。
そうして幼少期から気配を消す訓練を積み過ぎた結果、親が心配するほどにその存在が希薄化。
だが、次期当主である有希が「漫画みたいで格好良い」と気に入ってしまったため、外野は修正出来ないままにニンジャ染みた専属メイドとして邪道を邁進している。
有希があんな性格なのも相まって、時々騙されてしまうこともしばしばで、「ドMとは弩級のメイド」などと嘘八百を教えられているが、これも信じ込んでいる。
ただ、以上の話からも分かるように、彼女自身はとても純粋で、且つ心優しい性格であり、政近も有希もそんな綾乃のことを深く信頼している。

それはそれとして、自覚がないものの、政近と有希に命令されることに快感を覚えるドMでもある。


更科茅咲
CV:河瀬茉希
生徒会副会長で剣道部の大将も務めている。
マーシャと並んで学園の二大美女と言われている。
鍛え抜かれた筋力と剣技で相手を圧倒する力を有し、生徒たちから多大な尊敬と畏怖を持たれている。
付いた異名は「学園の征母(ドンナ)」。
「幽霊は殴れるのに何故怖がるのか」などと平然と主張したり、彼女や彼女の実家については一体何を生業としているのか不明。
催眠術を瞬く間に解除してみせたり、一般的な硬貨と思しき物体を握り潰してパンチコ玉状にしてのけたり。わりかしリアルな世界観の本作において、一人だけオカルトに片足を突っ込んだギャグ漫画の住民みたいな存在でもある。

虫も殺せぬ程に華奢で可憐な乙女だった自分を変えたくて、親戚の武道家を頼り鍛えに鍛えた結果、針金マッチョアマゾネスになり果ててしまった。
実は生徒会長の統也とは交際関係にある。


剣崎統也
CV:石川界人
堂々たる体躯とそれに相応しい立ち居振る舞いで、生徒達の支持を集めるカリスマ生徒会長
副会長である茅咲とは恋人同士で、学園一有名な熱愛カップルとして知られている。
性格もまさに「漢」と言える豪快・闊達な人で、生徒会メンバーからも厚い信頼を向けられている。

なお、過去は本人も語るように肥満体質の陰キャのオタクだった。
茅咲に告白した際に「誰だかも分からんのに話にならない。本気だってんなら、生徒会長になるくらいの無茶を実現してみろ。そしたら考えてやる」と突っ撥ねられ、実質一蹴された。
しかし、そこから茅咲にふさわしい男になろうと自分を磨きを行って本気で生徒会長を目指しはじめ、手始めに肉体改造に成功。
副会長候補とペアを組んで臨むのが前提である一学期末の所信表明では
「今はペアが居ないけれど、ペアにしたい人が居る!」と、敢えて自ら晒し者同然の境遇に身を置きながら、実質的に茅咲へのプロポーズしてのけた剛の者である。

そうして今の地位と茅咲を勝ち取った。
こうした実績があるお陰で、茅咲からの愛情と期待は非常に重たく、度々無茶振りされては前のめりに挑み倒れている。


谷山沙也加
CV:長谷川育美

日本有数の重工メーカーである谷山重工の令嬢。
ボブカットに黒縁眼鏡、その奥には鋭い相貌、という容姿から窺えるように、風紀委員も務める極めて真面目な少女である。
熱くなると視野狭窄になりがちな欠点はあるものの、自分にも他人にも厳しい指揮官タイプといった気性で、冷静な時には采配が上手く、理路整然と議論に応じることは造作もない。

政近と有希が中学生徒会長選挙に臨んだ際には最大のライバルでもあり、全力で挑んだ彼女が泣きじゃくる姿は、半端な決意でずるずる有希に協力していた政近にとって心の棘として残る光景だった。

ただ、全力で挑んで敗れた相手だったことで政近と有希を認めていたのだが、
その政近が有希からアーリャに乗り換え、共に立候補するのを決めたことに対して、「政近と有希」というコンビに強い尊敬を抱いていたがために、裏切られた気持ちになった彼女は、憤慨してアーリャに宣戦布告。
「生徒会会員の採用に教師の査定を盛り込むか否か」という議題で学生議会での討論を持ち掛けて、政近とアーリャのペアを解消させようと目論んだ。
しかし、本来戦うべき相手であるアーリャではなく、あくまでパートナーに過ぎない「政近」に執着しすぎたために、一見筋が通っていそうだが明確な穴もある議題だったこともあって、アーリャに苦戦。政近の機転もあって敗北は決定的になり、惨めさの余り、結果を審議する段階で勝負を放棄して敗走する醜態も晒した。

ただ、アーリャと政近は、喧嘩を吹っ掛けてきた沙也加を許し、相方の乃々亜が不正を働いたのも目を瞑って事実上許した。
沙也加にも認められる存在になるというアーリャの決意を聞いた沙也加は、このことをきっかけにアーリャのことを認め、元々似通った気性の二人は徐々に距離を縮めていくようになる。

+ 風紀委員の素顔
実はアニメにどっぷり嵌った隠れオタク。
贔屓の作品のグッズならばそれが何時発売されたものかも熟知しているし、音楽系人気アニメに嵌ってそこそこに楽器を弾けるようになり、自分で作曲までしてしまう程にのめり込むタイプである。

政近がアーリャとペアになって激昂したのは、前述のように深い尊敬があったのもそうだが、生モノ系カプ厨というなかなか業の深い趣味を政近と有希に投影していたから。推しカプの解釈違いに我慢ならなかったためである。



宮前乃々亜
CV:青山吉能
谷山沙也加の幼馴染であり、彼女が中学生徒会長選挙に挑んだ際にはパートナーを務めた。
アメリカ人のクォーターで地毛の金髪が良く似合う。その美貌に相応しく、有名モデルとしても仕事をこなしつつ学校ではカースト最上位として君臨。リア充な友人を常に男女二人ずつ侍らせている。

私生活では、両親の言うことはちゃんと聞いて、妹の面倒をよく見ている。ただし、弟は反抗期だからか乃々亜からは距離をとっている。

常にゆるーく適当な態度ではあるが、人への気配り上手で、征嶺学園でも最も人脈が広い人間の一人。
沙也加が政近とアーリャに学生議会で勝負を挑んだ際には、正攻法では負ける可能性があると分析してか、サクラを動員して仕込むサポートを無断で行った。
基本的に誰に対しても大した興味を抱かない冷めた性根だが、適当に男遊びを繰り返した自分に対して「もっと自分を大事にしろ」と涙まじりにビンタして叱責した沙也加のことは、珍しく感情的に揺さぶられたこともあって、特別な存在と看做している。

+ 学園一の人気者の素顔
そんな彼女の本性はサイコパス
当人も自分が他人と違って異常らしいということは自覚しているが、良心の呵責や他人への共感というものは一切持ち合わせていない。
世間一般的にどう振る舞うのが好まれるかは理解しているし、サイコパスのご多聞に漏れず観察力はあるために相手が何を望んでいるか見抜くのは上手いので、人目があるなら相手に合わせて、表面的には非常に魅力的にも振る舞う。

だが、乃々亜がそのように振る舞うのは、あくまで面倒が無くて自分に都合が良いから。
妹の面倒をよくみるのは、「親の不興を買うと日常生活で面倒が増えるが、その親から『妹の面倒を見ろ』と命令されたから」に過ぎず、妹に情や興味を抱いてはいない。
逆に「親が命じていないから」という理由で、治安の悪い地域の路地裏で泣きじゃくる迷子を見かけても、周囲の目が無ければ特に気にせず見捨てる。
政近も彼女の薄々本性を見抜いており、「法律を守るのも、極端に面倒が増えるから。違法ではない行為で、かつ面倒臭さより必要性が上回ったといざ判断したら、何をしでかすか分からない人間」と極力距離をとっている。

彼女の取り巻き達も自然と集まった訳ではなく、彼女が選別して引き寄せた面子。
彼等の悩みや好みの人間を観察して見抜き、「彼等の前でだけは押し隠している弱みを思わずみせちゃう、思わず守りたくなる可憐で可愛い乃々亜ちゃん」を演じて傍に侍らせて、都合の良い露払いとして利用している。
政近とアーリャの討論戦でサクラとして使ったのも、そうしてストックしていたのを使い潰す為の要員である。
沙也加に叱られるまで繰り返していた男遊びは、そうして使えるコマを増やす為の行動でもあるが、乃々亜の弟が姉から距離を取るのは、そういう素行と性根を察しているのが理由の様子。

例外的に乃々亜が興味を抱いているのは、沙也加やアーリャのように猪突猛進な熱情と高潔さという、自分には理解出来ない性質を持つ人種。
そして、乃々亜が幼い頃に熱心に打ち込んだピアノ演奏において、全く敵わない存在として君臨し続けた癖に、途中で放り出して去り、また立ち直ろうとしている。そんな興味深い存在である"周防政近"。
ただし、彼女にとっては誰も彼もが、退屈凌ぎの為に興味深く温存する観察対象か飽きたから心を壊しても構わない観察対象かの二択でしかない。沙也加に向ける感情もまともな思慕や友情と呼べるかは実に怪しく、政近やアーリャに向けるそれは最早ねじくれている。
特に純真なアーリャに対しては如何にも好ましい隣人のように振る舞いつつ、彼女を使ってどうやれば政近の心を致命的に引っ掻き回して退屈凌ぎが出来るのか。そのタイミングを虎視眈々と狙っている。



【用語】

  • 征嶺学園
本作キャラクター達が通っている、古い歴史を持つ中高一貫の名門私立校。
編入試験は難関校の受験問題を突破してきた在校生から見ても異常なまでに難しく、アーリャを除いて試験を突破して編入してきた人間が居なかった。

元々貴族や華族の子女が通っていた学園も今では一般開放されて庶民も入学可能になった。
……のだが、昔からの流れを汲んで、卒業生には政財界で活躍する人間が多く、通う生徒達もその子女達。入試の際に家柄と資産を基準に受験生を足切りしているという噂すらある。

政財界に関わるOBOGが保護者として注目しているため、在学中に華々しい活躍をすれば将来の就職や出世の大きな助けになるが、逆に問題行動を起こして経歴に傷が付けば、優良企業への就職は不可能になり、将来に大きな枷負いかねない。
生徒の自主性を重んじる校風故か、歴史の割には重苦しさは無いものの、生徒達には少なからずプレッシャーがかかっている。


  • 征嶺学園生徒会
主人公達が所属する生徒会。
下記の来光会への所属を目指して、選挙への出馬に向けてアピ―ルの為に所属する生徒が多く、中等部は前哨戦扱い。
しかし、この豪華特典を除くと、運営や実権の程度は割と普通の生徒会。生徒の自主性を育てる教育方針を標榜していることもあって雑用等の仕事も多い。

そして、問題も山積している。
まず、将来のコネを期待して生徒会に所属する都合上、母校への帰属意識が強いOBに干渉されると逆らい辛く、在校生達の意志で校則を変えることもままならない*2
加えて、最大の問題は、人手不足の慢性化。
生徒会では大量の雑務があるので、不慣れな一年生会員は雑務処理で忙殺されるが、ひとえに選挙戦アピールの為に耐え続ける。
そして一年間を通して仕事に慣れて一端の戦力になったのも束の間、お目当ての選挙戦で負けた途端に、もう面倒なパシリは御免だと一斉辞職。
その穴埋めをするのは、これまた選挙戦アピール目当てで入ってきた未経験者達。

これが毎年の恒例行事なので、会長ペアは雑務に忙殺されたり邪魔されたりで、公約を実現出来ずに去るのも常態化している*3
このように、来光会の存在によって運営体制が歪んでいる点が特色と言える。


  • 来光会
征嶺学園生徒会のうち歴代の会長、副会長経験者のみが所属出来るOBOG会。
元は上流階級同士のマウント合戦が現代以上に殺伐としていた時代に、家格の優劣を競う一環だった風習が変じて団体となった。
上流階級の中で競争に勝ち抜いた人材が卒業後も順当に出世した結果として、来光会に所属するOBOGは総理大臣や各国大使、大企業社長等のとりわけ上層の人間が多い。
こうした経緯故に選民思想と仲間意識が極めて強く、卒業生の力を借りられる学閥組織としてのコネも強力。
生徒会長ペアになって来光会に所属出来るか否かで後々の栄達は大きく左右されるため、家業を継ぐような立場の生徒の中には、生徒会選挙の結果が人生を左右する者も居る。


【テレビアニメ】

2024年7月~9月にかけて放送中。製作は動画工房。
当初は同年4月から放映予定であったが、製作事情により、3ヶ月だけ延期して同年7月からに変更となった。
エンディングテーマは各話アーリャ(上坂すみれ)によるラブソングやアニソンのカバー曲が採用されている。

監督・シリーズ構成は伊藤良太 キャラクターデザインは室田雄平 音楽は堤博昭。

最終話放送直後に第2期の製作が発表された。

主題歌

OP:「1番輝く星」
アーリャ(上坂すみれ)によるオープニングテーマ

ED
1話「学園天国」
2話「可愛くてごめん」
3話「想い出がいっぱい」
4話「ハレ晴レユカイ*4
5話「小さな恋のうた」*5
6話「秘密の言葉」*6
7話「ラブ・ストーリーは突然に」*7
8話「CHE.R.RY」
9話「ワールドイズマイン」
10話「こいのうた」
11話「気まぐれロマンティック」
12話「ハナモヨイ」*8

追記・修正は隣でロシア語を話す美少女のセリフを理解できた際にお願いします。

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  • 上坂すみれの本気
最終更新:2025年03月14日 23:34
添付ファイル

*1 偶然だろうが、政近の「ほぼ国内にいながらロシア語ネイティブレベルになった」は上坂氏の持つ武勇伝でもある

*2 作中では「半袖ははしたない。長袖の方が格好良い」と考えるOBOGの反発を受けて、半袖の夏服を導入するのさえ手を焼いていた。

*3 目立った家柄でもなくほぼ裸一貫で当選した剣崎会長の場合、人材を動員するコネも無いので人員を確保出来ず、次期会長候補の有希と恋人の親友、その妹以外誰も居ない悲惨な人手不足に陥っていた

*4 いわずと知れた涼宮ハルヒの憂鬱のエンディングテーマ。本楽曲のカバーに乗じてYouTube動画では上坂すみれ・天﨑滉平・丸岡和佳奈・藤井ゆきよ・会沢紗弥といった主演声優陣によるダンス動画も披露された。併せてコミカライズ版の作者によるハルヒダンスの様子のファンアートも公開されている。この曲が採用されたことに対して、視聴者は意外だったという受け止めが多かったようでちょっとした話題になった。反面、ハルヒが放映から18年経過したという現実に様々な思いを駆け巡らせた視聴者もいたとか

*5 モンゴル800による楽曲だが、「からかい上手の高木さん」や「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」といったラブコメアニメのEDでカバーされていることの多い楽曲として有名。

*6 本作の為に前々から準備されていた一曲

*7 小田和正による楽曲。「東京ラブストーリー」の主題歌として有名。知名度が高いのもあって、様々なアニメでカバーされたり、起用されたりしている。具体的には「クレヨンしんちゃん」で使用されたり、劇場版「冴えない彼女の育てかた」で劇中歌で本作のイントロが使用されたりしている。また、厳密には違うが、「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」では本楽曲をモチーフにした楽曲が作られ、ドラマの節目に使用された。

*8 12話初公開のオリジナル曲