登録日:2024/07/30 Tue 17:30:09
更新日:2025/04/21 Mon 22:50:10
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「生きるのは最高だったよね…」
「………………うん」
「少女終末旅行」とは、月刊コミックバンチ系列のウェブコミサイト「くらげバンチ」で連載されていたつくみず氏による漫画・およびそれを原作にしたテレビアニメ。全6巻。
なおくらげバンチ連載作品では最初に
アニメ化された作品である。
概要
文明が崩壊した後の「廃墟都市」をケッテンクラートで当てもなく旅するチトとユーリ。
2人は様々な遺跡や僅かな生存者との触れ合いを経て、食料や燃料を探しつつ世界の最上層を目指す。
ジャンルはいわゆる
ポストアポカリプスもの。
日々の食事さえままならず、明日の見えない生存すら絶望的な状況だが、2人はどこか楽しそうな様子。
日常ものとは到底思えない世界を生きる彼女たちの「日常」は、牧歌的なほのぼのとした雰囲気すら感じられる。
本作は元々作者のつくみず氏が友人の漫画サークルに寄せた10ページの同人漫画がプロットとなっており、こちらが新潮社の担当編集の目に留まった事で作者の大学卒業と同時にくらげバンチにて連載に至った経緯がある。
登場人物
本作の主人公。ユーリには「ちーちゃん」と呼ばれている。黒髪で低身長の少女。手先が器用で機械に強く、愛車ケッテンクラートの運転・修理担当。
冷静沈着な性格のしっかり者であり、自由奔放なユーリに対しては時折彼女の行動に振り回されては頭を悩ませたり拳による制裁を与えたりと辛辣な物言いが目立つが、基本的には一緒に雪遊びを楽しんだりするなど仲は良く、彼女のことを大切に思っている。
文字を読むことができる為、本を集めて読んだり日記を書いたりすることが好きな読書家。それらが失われると激しくショックを受ける他、作中にて大量の本を発見した際には喜びのあまりユーリがツッコミに回るほど取り乱したことも。
本作の主人公。チトには「ユー」と呼ばれている。金髪碧眼で高身長の少女。三八式歩兵銃を携帯しており、狙撃が得意。またチトと違って運動神経も良い力仕事担当。
のんびり屋で食欲旺盛、思ったことをそのまま口にする自由奔放かつ明るい性格。そのマイペースぶりから度々チトを振り回し、その都度彼女から制裁を受けている。
チトと違って考えることは苦手で読み書きもまともに出来ないが、一方で哲学めいた独自の感性を持ち、ケッテンクラートの修理に悪戦苦闘するチトに対し「もっと絶望と仲良くなろうよ」と説いた上で、その後飛行に失敗したイシイが笑顔を見せた際に「仲良くなったのかも、絶望と」と呟いたり、生きがいの地図を落として意気消沈したカナザワを励ますなど、思慮深い一面を見せることもある。
何がとは言わないが、ユーリの方がチトより大きい。
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ちなみに… |
「いやー死んでよかったー」
「死んでねえよ」
本作完結後にコミックCUNEで連載が始まった「シメジシミュレーション」では、外見も内面も彼女たちと瓜二つなお隣さんが登場。
主人公である月島しじまと親睦を深める場面が度々描かれたが、彼女たちの素性は名前を含め一切明かされることはなかった。
なお本作の漫画にもとあるシーンにしじまが登場している。
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ある都市に住み、幼少期のチトとユーリを拾い育てた養父。
その為チトたちには本当の親の記憶はなく、血縁の有無や年齢に関しても明かされる事はなかった。
かつては都市を巡りながら本を収集する仕事をしていたが、街で戦争が始まるとチトとユーリをケッテンクラートで送り出し、独り戦火が迫る中家に残る事を選んだ。
それ以降の消息は不明だが、単行本・アニメでは2人を送り出した直後の出来事が暗示されている。
二人に、一番高いところに行くように言うが、その真意は不明。
廃墟都市における数少ない生存者の青年。物腰柔らかな性格。
廃墟都市の地図作成を生きがいにしている。向かう場所が一致しているという理由からチト達のケッテンクラートに同乗し、自作の地図を使って燃料の補給地や昇降機の場所を案内した。
地図が失われてしまった際はショックを受けて自暴自棄になるが、ユーリに励まされて元気を取り戻す。
その後、食料を分けてもらったお礼に写真機を渡して別れた。
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ネタバレ |
写真機の中に隠されていたファイルには、過去に交際相手と思しき女性と写っているものがある。
明確な描写はないが、とある人物の「最上階以外の殆どの場所を観測しているが、君たち2人以外(チトとユーリ以外)で生きてる人間は知らない」という作中の発言から、死亡したと思われる。
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同じく廃墟都市における数少ない生存者の女性。
かつて空軍基地だった場所に住んでいる。
食料などインフラがなくなる不安から対岸の都市への脱出を考えており、チト達のケッテンクラートの修理を引き受ける代わりに脱出用の飛行機制作を手伝わせた。
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ネタバレ |
飛行機の完成後、そのまま飛び立ったものの飛行機が空中分解して墜落したためパラシュートで飛行機を脱出し、満足そうな顔でそのまま下層に降りていった。カナザワと同じく死亡したと思われる。
しかしコミックアンソロジーではチトとユーリが作成した風呂に入り英気を養い、飛行機とパラシュートの部品でまたどこかに飛び立っているため、もしかすると生きて脱出できた可能性もあるかもしれない。
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白くて細長い謎の生物。
言葉を発することはできないが、言語を理解でき、電波を操る能力を持ち
ラジオを通して間接的に話すことは可能。
銃弾などを食べている。
チトたちと同行するが、エリンギ(後述)の同類であり、彼女らと同行のためにチトたちとは別れる。
白くて細長い謎の生物たち。飛行する際にキノコのような形状になる。
エリンギという名前はアニメのクレジットより。
都市の高エネルギーの物体を吸収する役割を持っており、作中では潜水艦の
ミサイルを吸収していた。
地上のすべての都市でその役割を果たした後地球と共に眠りにつくらしい。
舞台解説
荒廃した西暦約3000年が舞台の廃墟都市。
おおむね寒冷で雨や雪が降ることもよくある。元々は地球から独立することを選んだ人類が建造したインフラ設備を完備する巨大都市だったようだが、大規模な戦争によって5億人以上の死者を出し、文明が崩壊した。
ただし文明崩壊によって直ちに人類が滅亡寸前にまで至ったわけではないようで、大規模な爆発によるクレーターに砲台が設置されているなど、その後も長期間に渡って戦乱が続いていたような描写がある。
その過程で文明も衰退していったようで、チトとユーリは「音楽」という概念は知っていても実際に聴いた事は無かった模様。
科学技術もかつては「ビーム一発で街を焼け野原にする巨大
ロボット」、「完全な自我を持つAI」等が実用化され、その一部は現在も稼働を続けているが、
本編開始時点では既にケッテンクラートや
三八式歩兵銃といった第二次世界大戦レベルの兵器を再生産して使わざるを得ない程に退化してしまっている。
文明崩壊前は階層同士をつなぐ連絡塔を利用した都市の行き来が存在したものの、文明崩壊と同時に交流が途絶えている。戦争で電磁波爆弾が使用されたため電子機器は全て動かなくなっており、チト達が階層を行き来する時は連絡塔の外壁に付けられた昇降機を使っている。
僅かな生存者、及び食料用に栽培・養殖されていた一部生物の他にまともな動植物は存在しない。
ユーリが「チョコが何なのか知らない」と発言していることから、おそらく自然の動植物で作られた食品もあまり残っていないと思われる。
なお廃墟都市から脱出を試みた人類はその多くが脱出に失敗したが、1機だけ成功した宇宙船があると記録されている模様。
チト達が生きている時代において漢字やアルファベットはすでに使われておらず、ひらがなとよく似た音節文字を使っている。そのためか、チト達は漢字やアルファベットを読むことができない。
かつて信仰されていたと思われる大規模な宗教の石像や施設が各所に建てられている。
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なお実は…… |
作者の次回作のシメジシミュレーションとこの作品の巻末の描き下ろしを合わせてみるにこの世界舞台自体1つの「仮想現実」だと思われる。
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TVアニメ
2017年10月から12月まで放送。全12話。アニメ化されているのは単行本5巻まで。
制作はWHITE FOXが担当し、監督によれば、背景や音にこだわった作りになっているという。
チトとユーリが歌を担当。
前述したポストアポカリプスものの雰囲気と異なる明るい曲調で、アニメでもチトとユーリがむいむい動くダンスが印象的。
某動画サイトでは「ここすき」「ここもすき」「ここ大好き」「結局全部すき」というよく分からないような弾幕が見られた。
チトとユーリが歌を担当。
オープニング同様明るい曲調。
アニメは鉛筆で描いた様なイラストが動くもので、サビ以降は雪合戦の様子が描かれている。
なお、エンディングアニメーションはつくみず氏が1人で400枚以上の原画を手掛けて制作したものであり、クレジットにも原作者の名前のみ表記されている。
- 挿入歌(第5話ではエンディングにも使用)「雨だれの歌」
同じくチトとユーリが歌を担当。
音楽が存在しない終末世界の中で、雨音だけで伴奏を作り上げているユニークかつ軽やかな曲調である。
余談
この漫画の原型は元々つくみず氏がネットで公開していた短編作品であり、それを見つけた編集者がオファーをかけたことで商業展開された。該当の短編作品は、改訂の上第3話「風呂」として収録されている模様。
Blu-ray版には「少女週末授業」と題したスピンオフ作品が収録されており、KADOKAWAanimeチャンネルでも2週間限定で公開されたことがある。高校生に扮したチトとユーリが、その回の本編で登場したキャラに現代社会の知識や学問を教わるという内容。全12回。
こちらは単行本特典の番外編漫画を基にしており、一部のエピソードは漫画の内容が殆どそのまま使用されたことも。
その他のスピンオフ作品では、音泉で配信された「少女終末旅行~GIRLS RADIO TOUR~」というラジオ番組も存在する。チトとユーリが終末世界からゆるく配信するという触れ込みのもと基本的にはスタジオから放送されるが、一度だけ首都圏外郭放水路に赴いた上で番組が収録されたこともある。
追記・修正は、最後の食料を食べて少し寝た後にお願いします。
- ヌコ -- 名無しさん (2024-07-30 18:43:18)
- アニメは結局原作最終話までやってないんだったか -- 名無しさん (2024-07-30 18:47:39)
- 主人公達の最期は描かないほうがいいと思うんですが -- 名無しさん (2024-07-30 19:19:29)
- せめてopencloseで隠すとか手心をですね… -- 名無しさん (2024-07-30 19:35:16)
- アニメ面白かったな。 -- 名無しさん (2024-07-30 19:49:48)
- 「主人公達の最期」とやらは消して正解。だってホントに最終巻読んでたらそんな単純な解釈出来ないってわかる謎めいた結末だもの… -- 名無しさん (2024-07-30 21:32:17)
- あとネタバレにならん程度に伝えると、作者の次回作の「シメジシミュレーション」も最終巻まで読んだ方が良いよとだけ。 -- 名無しさん (2024-07-30 21:36:36)
- 大抵のポストアポカリプスって文明が崩壊しても割と元気なんだけど、こっちはもっと落ち着いてる。「断末魔のうめきも死後硬直も終わった後の世界」という表現が忘れられない。 -- 名無しさん (2024-07-31 09:30:05)
- ↑終わりすら越えて、いよいよ眠りにつく世界だからな。ホントに二度と目覚めることが無いのかはわからんが -- 名無しさん (2024-07-31 17:07:06)
- OPとED共に名曲だよなあと思う -- 名無しさん (2024-07-31 19:01:28)
- キャストだけ見るとエヴァ感やナウシカ感がすごい -- 名無しさん (2024-07-31 19:23:06)
- アニメOPは11話だけヌコが参加してる特別なパターンだったね -- 名無しさん (2024-07-31 19:47:30)
- 舞台となった都市はまさかラピュタでは…!? -- 名無しさん (2024-07-31 20:16:39)
- あのまま終わったとしても意味深な描写が希望だったとしても良い終わり方だった -- 名無しさん (2024-08-01 03:50:07)
- 金色の水を飲んでチトが「月に行こうよ」と語ったあの場面が何故か個人的には一番強く印象に残ってる。なんだかすごく美しいモノを見てる感じがした -- 名無しさん (2024-08-01 08:47:05)
- 作品の雰囲気の緩さと世界の詰みっぷりの温度差はポストアポカリプスでも随一だと思う -- 名無しさん (2024-08-01 17:28:44)
- 世界がもう完全に機能停止してて、終末物によくある生き残りの争いとかが全くないのが… -- 名無しさん (2024-08-01 18:18:28)
- アニメは最終話迄やってないっての自体はたしかにそうなんだけどアニメやってた頃に原作最終話出たからそもそも連載と放送のタイミング的に無理だったんじゃよ。なんでそういうタイミングでアニメ化されたのかは知らない -- 名無しさん (2024-08-02 09:59:33)
- OPも好きだけど一話のケッテンクラートが高作画で動きながらの最初の始まり方も好き -- 名無しさん (2024-08-02 10:33:44)
- アポカリプスから復興する活力がどうとか以前に「人がいないからムリ」っていう圧倒的説得力 -- 名無しさん (2024-08-02 11:03:10)
- ↑4チトとユーリが幼少期に街から出る羽目になった争いが恐らく最後かな。まあ、他の都市でも似たような事は起きていたかもしれんが… -- 名無しさん (2024-08-02 11:32:40)
- もし生存者の人数が「団体」と呼べる程度いて、なおかつ最低限生きていけるだけの環境を維持できる場所があったら、「俺様がこの都市の支配者だ!」とか言い出すヤツが出てきたかも -- 名無しさん (2024-08-05 00:34:05)
- バッドエンドで終わったから読み返しにくい -- 名無しさん (2025-04-21 22:50:10)
最終更新:2025年04月21日 22:50