SCP-6004

登録日:2025/05/06 (火曜日) 09:00:00
更新日:2025/05/07 Wed 01:17:16NEW!
所要時間:約 31 分で読めます








"人間の傲慢さとは、自然が自分たちの支配下にあると考えることであり、その逆ではない"(The arrogance of man is thinking nature is in their control, and not the other way around.)





SCP-6004はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名はThe Rainbow Serpent ()
オブジェクトクラスUncontainable/Tiamat







はじめに


さて、アニヲタwikiでSCPに触れてきた方々には最早お馴染みだろうが、例の如くこのSCiPには通常の S / E / K 分類に当てはまらないクラスが適用されている。
詳細は特殊クラスの項目に行けば大体分かるとはいえ、一応この項目でも軽く説明しておこう。


まず後者のTiamat、これは非標準クラスの中でも知名度が高いのでご存知の方も多いだろうが、要するに
財団を以てしても秘密裏に収容できず、正常性/ヴェールを放棄した戦術的な対処を取らざるを得ない」SCiPに適応されるクラスである。
ちなみに近年ではカノンの変遷により「公の戦闘といったヴェールを無視した方法でなら収容できる」という若干マイルドな解釈が主流になっているが、
そもそも財団で言う『収容』の定義は一般社会からの隔離/隠蔽が前提にあるため、それを捨てざるを得なくなっている時点で理念的に負けを認めているも同然であり、
どちらの定義で解釈してもKeterの範疇を超えた非常にまずい事態と言えるだろう。


そして前者のUncontainableだが、これは直訳すると即ち「収容不可能」である。
前述したTiamatの定義だけでも収容できないと言っているようなものだが、その事実を更に強調するかの如くこんな表記がされていることからも、
このSCiPが到底財団の手に負えない、太刀打ちできない凄まじい代物であることが察せられるだろう。


ここまで絶望的なクラスが並んでいると「もうApollyonとかの方が適切なんじゃないか」と思う方もいるだろうが、
実は後述する異常性から考えると、例えどれだけ手がつけられない存在だとしてもこいつがApollyon (=世界を滅ぼすオブジェクト) になることだけは決して無い。
これが今回重要なポイントになってくる。





特別収容プロトコル


元記事の内容は少し長いため、掻い摘まんで箇条書きにすると以下のようになる。
  • 財団が総力を挙げて頑張ったけどこいつは収容できなかったよ。
  • なんか良い方法を思いつくかこいつが自分から休眠するまでは、とりあえず監視と被害の軽減に取り組むよ。
  • こいつの居場所と行動は衛星で常時監視するよ。こいつの進路上か、攻撃目標になってる場所にいる市民はすぐ避難させるよ。
いやはや、前述のクラス分類に恥じないお手上げ感漂うプロトコルである。
だがこの文章だけでも、このSCiPが「観測可能な物理的実体を持つ、敵対的な生物」らしき存在であることが読み取れるだろう。


そして、少し気になる内容の箇所が後半に記述されている。
  • こいつの注意を引くことがないように、全ての財団施設は汚染物質や炭素の排出量を最小限に抑える必要があるよ。
  • 上の目標を達成するために、施設の電力を太陽光/地熱/原子力発電で賄うようにしてね。
  • GOCと協力して、こいつを倒せるか収容できるような技術や兵器の研究開発を急ぐよ。
  • 収容できた時に備えて事態を隠蔽するための記憶処理剤をたくさん生産しておくよ。
後者のGOCとの協力や記憶処理剤の生産は、TiamatクラスのSCiPへの対応としてはごく標準的なものである。
だが前者の手順、これは即ち6004の性質や活動が「環境汚染」と密接に関わっていることを意味している。



項目名も含めて何となくオブジェクトの輪郭が見えてきたところで、いよいよ説明に入っていこう。





説明


SCP-6004は巨大なヘビ型生物である。
その外見や生物学的特徴は既知のヘビ亜目、特にオーストラリアに生息する種のそれと似ている部分が見られる一方で、
  • を基調とした体色にでできた横縞模様を持つ。
  • ワニやサメのように巨大かつ複数の牙がある。
  • 頭部に2本のを持ち、その表面には数千種以上の野生動物の絵が刻まれている。
など、大きさ以外にも複数の逸脱した性質を有している。


これだけでも十分に異常だが、当然ながら外見だけに留まらず、こいつは複数の特殊能力を持つ。
詳細は後述するが、簡単に羅列すると肉体操作天候操作物質透過といった能力に加え、生物としての範疇を超えた高い運動能力を有しており、
しかもそれらを能動的かつ繊細に使いこなせるだけの本能と知性を併せ持っている。
ただし発話や対話など、人間の言語を解している様子はない。


そしてクラスや収容プロトコルを見ればわかるだろうが、こいつは人類に対してとんでもなく敵対的であり、
人間そのものは勿論、建物やインフラといった人工施設にも積極的に攻撃を仕掛けてくる。
攻撃手段は噛みつき、捕食、体当たり等の物理的な方法に限らず、天候操作能力による落雷、突風、豪雨のような搦め手も頻繁に使用する。





ここまでの性質だけ見るとシンプルに「蛇の化け物」という、某爬虫類某節足動物を彷彿とさせる初期イズムSCiPのように見えるが、ここから少し趣が異なってくる。
というのも6004の攻撃は無差別ではなく、明らかに攻撃対象を選択していることがわかっているのだ。


具体的には、こいつは大都市鉱山ダム石炭火力発電所といった場所を主な標的とし、そこに滞在する人々を根こそぎ呑み込みながら破壊していく一方で、
開発が進んでいない地域太陽光発電所風力発電所浄化施設既にこいつ自身によって破壊された場所には関心を示さない。
また攻撃の際、突進によって高層ビルなどが派手に吹き飛びながらも、進路上にある一部の施設や建造物は透過され無傷で残るといった現象がしばしば確認されている。



そして6004の何より異質な点は活動時の環境的な影響である。
これには時期や地域ごとに多種多様なパターンがあるものの、特に顕著なものが2つ挙げられる。


1つはこいつの天候操作によって降る
この雨が降った地域では植物の急速な生成/成長が促され、ごく短期間のうちにペンペン草も生えない荒れ地が熱帯雨林もかくやの森林に変貌する。
さらに土壌の汚染も一気に解消し、廃棄物なども除去されるかその地域に適合する動植物に変化するという徹底ぶり。
6004が攻撃対象とした地域には前兆としてこの雨が大量に降り注ぐため、急速成長する植物によって建物等に甚大なダメージが発生する。


もう1つは動物の生成
攻撃対象の地域を破壊した後、6004はしばしば (人間を除く) 様々な動物を口から吐き出し、その地域に定着させる。
吐き出す動物は既知の在来種に限らず、元々その地域に生息していない種既に絶滅した種にまで及び、しかもそれら全てがその地域に問題なく適合する。
結果として攻撃された地域では絶滅危惧種の増加や絶滅種の復活などが発生し、最終的に以前と全く異なる新しい生態系が生まれることになる。



他にも具体的なプロセスは不明だが、気温の低下極地での凍土/氷河の拡大枯渇した川や湖の充填珊瑚礁の回復などといった様々な現象が発生しており、
6004が活動を開始して以降、世界各地の環境に劇的な変化が引き起こされていることが窺える。





…もう察しが付いているだろうが、SCP-6004の性質や活動目的とはつまり「人類による環境汚染の除去」ひいては「地球環境の再生」である。
より正確に言えば「人類文明を殺戮/破壊することで活動圏の縮小と環境汚染の低減を促し、代わりに他の生物の生息域を拡大させる」と言ったところか。


実際、6004の攻撃は市街地に壊滅的な被害をもたらし多くの犠牲者が出る一方で、植物や野生動物は増加し、空気や土壌といった環境も大幅に改善される。
更には財団の調査によって、こいつが吐き出す動物の身体には呑まれた犠牲者の痕跡があること、
即ち6004が人間を他の動物の姿に変えていることが判明した。
当然ながら変化後の動物に人としての記憶や知性は存在せず、それどころか生息域に立ち入る人間を積極的に、時には異種間で協力して襲うようになっている。



つまりこいつ、財団世界においてしばしば見られる「自然保護」を主軸としたアノマリーの一つである。
アニヲタwikiに項目がある中では例のマナを抜けたアホが作った原油変換現象などが該当するが、あくまでいち環境保全活動家の産物だったアレと違い、
6004には何らかの人為的な介入が関わっている様子は無く、発生要因は一切不明。
出自が掴めないという意味ではSCP-1100*1SCP-1887*2に近いかもしれない。





ともかく、いくら地球環境の改善を促しているとしても、その過程で一般社会にとんでもない被害を及ぼすなら見過ごすわけにはいかない。
財団の活動は正常な世界、ひいては今生きている人々を保護するためにあるのだから。


そういうわけで、これまで同じ自然保護系のアノマリーにしてきたように、財団は6004の活動を封じ込めようとした。
だがクラスやプロトコルを既に見た方々はお察しの通り、最終的に財団はこいつの収容に完全に失敗。
今となっては攻撃目標の地域から人々を遠ざけ、標的にならないよう施設を改修せざるを得なくなっている有様である。




なぜ財団やGOC、そして超常コミュニティを含む人類はたった一匹のに敵わなかったのか。
それはひとえに、かの大蛇が彼らの想定すらも遙かに超越するであったからに他ならない。





神話に語り継がれる「虹蛇」の力


まず先程まで「巨大」と曖昧に表現していた大きさについてだが、6004の全長は前述した肉体操作能力により200m1900kmの間で可変
しかもその時の全長に応じて体重も変化する上、どこぞの胴長記憶処理ウツボと違い普通の蛇の縦横比を保ったまま変化するため体積も圧倒的なものになる。
最大化した状態では最早のしかかるだけで複数の国が滅ぶスケールである。


もうこの時点で準リヴァイアサン級の脅威だが、6004はこの馬鹿でかい図体に見合う、というか余るレベルの異常な運動能力を有しており、
地上では時速1200km、水中に至っては時速2800kmにも達する。
当然このスピードで超巨大質量が動き回ることによる影響は凄まじく、移動するだけで地割れや津波が発生し、しかも6004自身がそれを攻撃に転用してくる。
さらには一跳びで対流圏上部 (高度約10km) にまで到達し、上昇後はまるで龍の如く空を泳ぎ回れるようになる。
にもにもにも逃げ場は一切存在しない。


これほどのフィジカルに加えて天候操作能力も非常に強く、6004が活動するだけで地球全土の平均気温が2℃低下し、温暖化の影響をほぼ帳消しにしている。
特にこいつが自発的に能力を行使した際は更に凶悪であり、前述した植物の成長と合わさって直接攻撃するまでもなく都市が壊滅することも珍しくない。
加えて火力発電所の基幹部を正確に雷で撃ち抜き破壊するなど、図体や規模に対して能力の精密性もかなり優れている。




そして何より特筆すべきはかの破壊フリークGOCすら匙を投げた防御力
そもそも前述した可変性と機動力、そして地中を移動する性質によりまともに攻撃が当たらず、当たっても透過能力ですり抜けるとあっては手のつけようがない。
よしんば6004が実体化している状態で、かつ意識の外から攻撃できたとしても、そのフィジカルに見合うかの如くこいつは素の耐久力も極めて高く
具体的には通常の火器は勿論、核兵器超質量兵器奇跡論的兵器概念兵器の直撃すら無視し、スクラントン現実碇 (SRA)も一切効果が無かった。




特記事項として、こいつを無力化するためにKEY-Unitという、財団とGOCによる共同開発兵器が使用された。
これは主に大型の侵略生命体を殺害、無力化するための人型決戦兵器であり、複数のアノマリーや空想科学的な技術も動員することで、無限の動力破壊耐性奇跡論的な防御を突破する武装恒星級のエネルギー兵器、さらには飛行機能まで兼ね備えた代物である。
実際に既存の兵器では全く太刀打ちできなかった侵略的実体を2桁以上も撃破し、Apollyonクラス相当の侵略的事象をも鎮圧した実績のある逸品だった。


だがこれほどの兵器も6004にはまるで歯が立たず、逆に顎で軽く粉砕され、酷い時には完全に無視され相手にもされなかった。


クラスとSCiPの脅威度は直接結びつかないとはいえ、世界を滅ぼすと定義されたアノマリーに打ち勝つ叡智を以てしても鎮められなかったことからも、
いかに6004がどうしようもない存在かが窺えるだろう。





…しかし財団やGOCをはじめとする超常コミュニティの者達は諦めず、限界までこの怪物に抗い続けることになる。





軌跡


異常性については粗方説明したが、報告書の大部分は主に6004の活動内容や、財団側がとった対策とその結果に関する記録で占められている。
つまりここからが本番と言ったところだが、元記事をそのまま解説すると非常に長くなってしまうため、本項目では適宜抜粋、要約しながら説明する。
といっても起きていること自体はそこまで複雑/難解ではないため、気になった方はぜひ元記事の方も読んでみていただきたい。





説明の項でも少し触れたが、6004がいつ、どのような経緯で誕生したのかははっきりとしていない。
出現後に行われた歴史研究によって、オーストラリアのアボリジニに伝わる創世神話に登場する「虹蛇」という創造神との関係が指摘されているものの、
発見以前に活動していたことを示す明確な歴史的記録は見つかっておらず、断定はできない状態となっている。


6004が初めて人類の前に姿を現したのは財団世界における2020年2月10日、オーストラリア本島のウォレマイ国立公園である。
この地域では1988年から異常な地震活動の増加が確認されており、財団も2019年に調査隊を派遣するなど警戒していたのだが、
同時期に発生した山火事のせいで調査の中断を余儀なくされており、まさにその矢先にこいつが出現したというわけである。
自然区の地下空間から出てきた6004は現地の消防士や民間人を殺戮した後、雷雨を起こして山火事を速攻で鎮火させ去って行った。


上記の事案から財団やGOCはこいつの存在に気づき、民間人の保護や隠蔽工作、異常性の調査などを開始。
その一方で6004も最初のごく短期間のうちは雷雲に姿を隠しており、特に目立った動きを見せなかった。
もっともこの時点でオーストラリア国内の各地で例のが降り注ぎ、急成長する植物によって居住地に大きな被害が出ていた上、
世界中の気象観測所も地球温暖化の急速な解消を察知しており、一般社会のヴェールが揺らぎつつあった。


当然これを許容できない財団は先んじて6004を無力化しようと攻撃を仕掛けたが尽く失敗し、噛みつきや落雷で返り討ちにされるだけで終わった。
そして最初の出現から1ヶ月ほど経過した2020年3月27日、遂にこいつは本格的な "粛清" に動き出す。





その日の現地時間10時47分、突如オーストラリアの首都であるキャンベラに激しい雷雨風速35mオーバーの突風が襲来。
程なくして6004本体が地上に降下し、その巨体とフィジカルで都市を瞬く間に粉砕住民を呑み込みながら建物とインフラのほぼ全てを破壊し尽くした。
特に何故かオーストラリア連邦議会を執拗に狙っており、街の中心に位置する国会議事堂は中にいた首相や高官もろとも周回軌道上まで投げ飛ばされた。
財団が大慌てで機動部隊を向かわせた頃には既に6004は現地を去っており、街の74%が壊滅、20万人近くの住民が行方不明となった。
にもかかわらず死体は一つも見つからなかった。


財団はどうにか生存者に記憶処理を行い「小惑星の衝突」という苦しいカバーストーリーを流布したものの、この隠蔽工作はすぐに無意味と化すことになる。




上記のキャンベラ襲撃を契機に、6004はシドニーをはじめとする国内の大都市を片っ端から壊滅させ、間もなく他の大陸にも飛び出し、
アジア、アメリカ、アフリカ、南極でも居住地の殲滅自然環境の回復を繰り返すようになった。
この間にも財団とGOCは死に物狂いでこいつを倒そうと様々な試みを3桁回も実行したが、何一つとして通用しないどころか足止めにすらならなかった。


結果、最初の出現から半年も経たないうちに全世界で数十億人の犠牲者が発生し、かつて存在した街の4割が居住不可能になるという未曾有の事態に発展した。






当然こんな状況でヴェールなど維持できるはずもなく、財団とGOCは表立って避難所の建設や生存者の救助を行っており、情報統制は完全に放棄された。
さらには火力発電や水力発電、狩猟活動などが事実上封じられたことから、エネルギーや食料を賄うためにアノマリーを利用せざるを得なくなっている。





だがこのような絶望的局面に立たされながらも、彼等は6004に対抗できる手段の追求をやめなかった。
そうして他の要注意団体すらも抱き込んだ末、遂に起死回生の一手となる兵器の開発に成功する。





プロジェクト・マングース


虎の子の一つであるKEY-Unitがほぼ無力だったことから、財団は活動初期の時点で自分達の力だけでは6004に到底敵わないことを悟っており
破壊に特化した新兵器開発のためGOCにコンタクトを取っていた。
当然あちらも既に状況が逼迫していることはわかっていたので同盟はすんなりと成立し、さらには普段いがみ合っているMC&D壊れた神の教会の間とも
停戦協定という形で事実上の協力関係を結ぶことに成功した。


現在進行形で世界を蹂躙しつつある6004を押し止めるために財団とGOCが奮戦し、並行して各組織が持つ技術やアノマリーを総動員して兵器を開発する。
この呉越同舟の関係は「プロジェクト・マングース」と呼ばれ、後にこの過程で開発された兵器そのものを表す呼称にもなっていった。



ちなみにこれとは別に、6004を鎮める儀式や方法が過去に存在したかを確かめるため各組織の歴史学者、考古学者によって記録や神話の調査も行われたが、
結果は「環境に悪影響を与える文明社会をすぐに改めるか、そうでなきゃトーテムでも作って祈れ (要約)」という忠言を聞かされるだけの徒労に終わり、
最終的には上記のプロジェクト・マングースが唯一の打開策と見なされることになる。




そして6004の出現から半年以上が経った頃、とうとう対抗兵器の初期型試作品が完成。


これはGOCが設計、開発を主導し、そこに財団と壊れた神の教会が技術的サポートを行った上で、MC&Dも含めた各組織の財産を結集させて作り出した
荷エネルギー粒子砲であり、奇跡論的エネルギー反ヒュームエネルギー、そして伏せ字になっている何某のエネルギーを収束させたビームを発射し、
着弾地点に極めて特異な性質の大爆発を引き起こす。
詳細箇所が伏せられているためはっきりとは言えないが、どうやらこのビームは6004の異常性と形而上学的に同調するよう調整されているらしく、
奴の防御を突破して不活性状態、もしくは休眠状態に追い込むだけのダメージを与えられるんだそうな。


ただしデメリットも大きく、まずチャージ時間が非常に長い。
具体的にはロックオンから発射可能になるまで444秒 (約8分弱) もかかる。6004の機動力を鑑みると無策のまま命中させるのはほぼ不可能に等しい。
そして発射時の反動も凄まじく、地上で撃つと発射地点と命中地点の両方において生物が根こそぎ消失し、周辺一帯が瞬時に不毛の大地と化す。
よって実用の際はシステムを完全に無人化するか、人道を無視して現地職員を犠牲にするしかない。



自然環境を回復させるSCiPを殺す兵器がとんでもない環境破壊を齎すというのは皮肉に思えるが、財団にも他の組織にもそれを気にする余裕などないだろう。




兎にも角にも対抗兵器あらためマングースの試作型が完成した2020年10月頃、暴れ回る6004は次の標的として中国の首都である北京に近づきつつあった。
というのも中国は先の直接攻撃によって5億人近くの犠牲者が出たことでかなり緊迫しており、奴を攻撃するため国中の軍や兵器を首都に集めていたのである。


当時財団とGOCは各国が軍事的に防衛/攻撃を試みたところで6004には敵わず、むしろ奴を刺激することで被害が余計に大きくなるだけだと判断しており、
軍備よりも人民救助や避難所の設営を優先するよう各国政府に働きかけていた。
ところが既に進退窮まっていた中国は説得を聞かず、遂には核兵器をも持ち出し徹底抗戦の構えをとったことで6004の目にとまってしまったのだろう。
中国が交渉に応じないことを悟った財団は一刻も早く6004を倒すため、完成したばかりの試作型マングースを船に乗せ現地へと急行させた。




だが結果だけ言ってしまえばこの作戦は失敗
6004をロックオンするところまでは辿り着いたものの、この時点ではまだ発射時の反動が把握できていなかったため発射した瞬間に乗員が全滅してしまい
ビームが逸れて当たらなかったのである。
中国軍も最後まで懸命に抵抗したものの一矢報いることすら叶わず、北京どころか都市圏全域が更地化し、最低でも1億4000万人以上が犠牲となった。



しかしここで変化が訪れる。
それまで殆どの攻撃に見向きもしなかった6004が、掠りもしていないマングースのレーザーに反応し、発射地点を追跡する行動を見せたのである。
そして無人と化した船舶に乗った試作型マングースを何故か攻撃せず、数分ほど調べるような動きを見せた後その場を去って行った。
これにより試作型マングースの回収に成功したことで何らかの手応えを感じたのか、財団はさらなる開発と改良を急ぐことになる。





決戦


上述した北京壊滅事案の後、6004は9日ほど海中に潜伏してから再び本格的な活動を再開。
北極圏にて海氷や氷河を急速に拡大させつつ、大陸北端の地域を巡り住民を動物に変えていった



一方財団をはじめとする連合は完成品のマングースを打ち上げ、軌道上に配置することに成功。
これにより威力、照射範囲共に大幅に強化され、地球上のどこにでも反動を気にせず連発が可能となった。

しかしチャージ時間の長さは最後まで改善できず、照準が追いつかなかったが故に北極圏での6004の活動を止めることができなかった。



そうこうしている間に6004は北極圏を離れ、今度は南北アメリカに対して集中攻撃を開始する。
特に狙われたのが俗に『地球の肺』とも称される南米アマゾンの熱帯雨林であり、この地域では人間が事実上絶滅し、
代わりに絶滅種・絶滅危惧種の動物が蘇っていった。



そして6004がアメリカ合衆国への最初の攻撃として首都のワシントンD.C.に襲来した際、奴は些か不自然な挙動を見せた。
首都防衛のため立ちはだかった米軍に対し、攻撃する前に声を上げ威嚇を行っていたのである。今まではこちらの行動を気にせず問答無用であったというのに。
世界各地で活動しながらも何故かこの時まで訪れなかった事と言い、何らかの "意思" のようなものを感じずにはいられないが、あいにく蛇は言葉を話さない。


結局その後に行われた直接攻撃によってワシントンは大部分を河に呑み込まれ壊滅。大統領を含む政府首脳も水底へと消えた。



そのままの勢いで6004はトロントロサンゼルスメキシコシティニューヨークオタワラパスなどの都市を次々と破壊し、を降らせ森林へと変えていった
軌道上のマングースは一度として奴を捉えられず、1ヶ月半ほどでアメリカ国土の43%緑豊かな大地へと変貌した。
もはや大都市と呼べるような場所は地図から殆ど消え失せ、生き残った人々は都市圏外への移住を余儀なくされた。





そうして最初の出現から10ヶ月ほど経過した2020年12月頃、ここに来て6004は財団やGOCの施設に興味を示し始める。
接近や攻撃こそしないものの、世界各地に点在する施設の周囲を回っては移動することを繰り返した。
まるで何かを探しているかのように。


その過程でGOCの改良型兵器研究施設 (通称AWF) を訪れた際、突如6004は興奮したような反応を示し、施設にとりついて調べ始めたのである。
そこはまさしくプロジェクト・マングースを進めていた主要施設であり、GOCが開発した試作型マングースが配備されている場所だった。



財団とGOCはこれが最初で最後のチャンスと考え、施設のバリアを展開した上で6004を攻撃し、
奴を引きつけている間に軌道上のマングースで施設ごと撃ち抜くという作戦を決行した。










この作戦を以てプロジェクト・マングースは頓挫し、人類の組織的な抵抗は終わりを迎えることになる。







収束


こうして財団は、もとい人類は6004に敗北した。
数百もの試行錯誤は何一つとして身を結ばず、叡智を結集させ編み出した切り札は完膚なきまでに叩き潰され、奴の歩みを阻むことは終ぞ叶わなかった。
プロジェクトが全くの徒労に終わったことで財政面でも一気に困窮し、もはや大規模な作戦行動は不可能となった。
そして奴の活動範囲・影響範囲はとうに地球全土を覆い尽くしている。



収容も破壊も、遂には逃走すらも封じられた彼等に残った最後の道、それはかの大蛇への『適応』だった。



これまで観測された6004の生態、過去の記録や神話の再調査、そして蛇の手MCFビッグフッド達に対する聞き取り結果を踏まえ、
財団はプロトコルを大幅に改定した。
その内容とは、人類の地球上における活動様式の根本的な変更である。



まずは復興支援として残存している村や街、つまり6004の標的にならなかった集落を起点に居住地の再開発を行い、そこに難民を移住させた。
居住地では財団やGOCによって文明活動に関する指導が行われ、未開拓地域 (6004が未開拓化した地域含む) への進出制限やクリーンエネルギーの使用の徹底、
土壌を過度に劣化させるような農業の廃止といったルールが定められた。


中でも特筆すべきは、一般社会に対するアノマリーを用いた支援が正式に認められたこと。
これは環境汚染を抑え、かつ人類の活動領域を地球全体の30%未満に保ちつつ社会が発展し続けるための措置であり、
開拓や乱獲といった活動を介さず食料や家畜、建材などを確保し、生活圏をではなくに広げていくことを目的としている。


これらの社会構造を実現するには各国政府や超常コミュニティとの協力が必要不可欠であったことから財団によるヴェールも大幅に緩和され、
6004の完全収容が成し遂げられるまでの間、彼等の存在や活動は容認されることになった。





人類社会が変貌を遂げる一方で、かの大蛇にも明らかな変化が見られ始めた。


マングースが破壊され人類の抵抗が終わった2021年以降、6004は居住地への攻撃を行わなくなり、降雨による森林拡大や動物の生成も停止した。
奴は最初の出現地点であるウォレマイ国立公園の跡地に戻り、多くの時間をそこで過ごすようになった。

上記のプロトコルが実行され、居住地の運営が安定してくると活動は更に落ち着いていき、湖や海の中で休む、欠伸をするなどの挙動を見せるようになった。




2022年に差し掛かった頃、6004は復興拠点の一つであるサイト-40の海側から姿を現し、施設の方に目を向けた。
攻撃することも威嚇することもなく、かの大蛇はただ静かに建物や職員を見つめ、やがて去って行った。
現地職員の一人はその姿について、後のインタビューにてこう語った。
まるで何かを審査されているような気分だった」と。




それから少しして、6004はアマゾンの熱帯雨林で3日間ほど過ごした後、西南西に向かって移動し始めた。
その動きは活動初期と比べ非常にゆっくりとした速度であり、財団は同年の10月末頃にはかの大蛇が元の出現地点に辿り着くだろうと予測した。



SCP-6004の収容のため、そして今度こそ事態を収束させるため、財団はプロジェクト・マングースの残滓も活用した最後の仕掛けを施すことになる。


































































登録日:2025/05/06 (火曜日) 09:00:00
更新日:2025/05/07 Wed 01:17:16NEW!
所要時間:約 31 分で読めます








"人間の傲慢さとは、自然が自分たちの支配下にあると考えることであり、その逆ではない"(The arrogance of man is thinking nature is in their control, and not the other way around.)





SCP-6004はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名はThe Rainbow Serpent ()
オブジェクトクラスKeter







特別収容プロトコル


ここからが所謂 "再編" 後のプロトコルとなる。

まずは6004自体の収容について。
  • こいつが眠ってるウォレマイ国立公園の湖は民間人の立ち入りを禁止するよ。もし侵入者が出たら誰だろうととっ捕まえて尋問・記憶処理してね。
  • こいつを眠ったままにしておくために27機のLloyd-Tibbals式意識消失デバイスを湖周辺に設置するよ。臨時サイト-6004の職員は定期的に装置のメンテナンスを行ってね。
何やらよくわからん名前の装置が出てきたが、これはプロジェクト・マングースで得られた技術とSRA等の既知の財テクを組み合わせて作った装置であり、
生物を無意識状態に封じ込める効果があるらしい。


もっともマングース以外の財テクはそもそも効いた例しがなく、マングースに関しても6004を倒せると銘打っておきながら実戦ではあの体たらくだったので、
これらの措置はあくまで気休めのようなものだろう。



というわけでやはり重要なのはこの次の副次プロトコルの方である。
  • 各国政府に働きかけることで人類の未開拓地域への進出を制限するよ。
  • 居住地内での文明活動はなるべく環境への被害が少なくなる形にするよ。風習や生活様式とかはこのプロトコルに沿うよう秘密裏に変容させたよ。
  • 社会的に足りなくなるものは財団、GOC、MCFがアノマリーとかを使って確保するよ。
この辺は前項で説明した改定案の通り、6004を起こさない/怒らせないような社会構造に世界を矯正したということである。


ちなみに6004が休眠する前後のタイミングで財団は全世界に記憶処理を行い、かの蛇が起こした出来事やかつての社会構造に関する情報を隠蔽し、
自身も再びヴェールの中に姿を隠している。
もっとも現在の「正常な社会」を保つにはアノマリーや他の超常組織を頼るしかない以上、財団もGOCも以前より柔軟/寛容にならざるを得ないだろう。





説明


クラスがKeterとなり説明もいくつか追記・修正されたものの、結局6004自身の異常性は休眠前後で何も変わっていないため、あくまで今の状態がどうなっているかのみ説明しよう。



プロトコルで触れたように、現在6004は最初の出現地点であるウォレマイ国立公園の、今や湖底となった地下洞窟にて眠っている。
かつては流動的に変化していた全長は約700km、体重は約1.3×10^17kgの状態で安定しており、外見的にはヘビ亜目のタイパンカーペットニシキヘビ
混ざり合ったような身体になっている。
もちろんといった特徴は健在。



次に能力に関してだが、当然ながら休眠しているので天候操作も物質透過も使っていない。
気温は大気組成の変化に伴うごく自然なものであり、周辺環境とも物理的に相互作用している。


だがこいつの能力による影響が完全に消えたかと言えばそうでもなく、未開拓地域に生息する動物達は基本的に見たまんまの動物らしい振る舞いをする一方で、
生息域に立ち入った人間が開拓ゴミ捨て娯楽目的の狩猟などを行った途端に敵対的となり、異なる種同士で高度な連携をとりながら襲いかかってくる。
しかも攻撃前に警告するかの如く見える位置から観察してきたり、本来の知能や知覚では不可能なレベルの戦略的な襲撃を行うなど、上記の判定基準も含めて
明らかに6004本体が一枚噛んでいるとしか思えない程の異常性が残っている。これやっぱあの装置の意味ねーんじゃねーか?





いずれにせよ、かつての社会から総人口が大きく減少し、大規模な開拓や資源消費による開発・生産もできなくなってしまった今の世界において、
6004が再び目を覚ましあの "粛清" を行おうものなら今度こそ人類の破滅は免れない。
財団の使命は、いつか人類社会が奴の存在を完全に克服できるほど発展するその時まで、かの大蛇の逆鱗に触れないよう世界を運営することである。















こうしてSCP-6004、2年8ヶ月にわたる活動は終結した。
かの大蛇の働きは、地形生物社会を問わず、地球環境に劇的な変化を齎した。



平均気温は産業革命以前のレベルまで低下し海洋の廃棄物汚染は無視できるほどに除去され枯渇していた湖は水で満たされた
熱帯雨林はかつての姿を取り戻し世界中の氷河は1890年以前の状態まで回復し砂漠地帯は亜熱帯雨林や草原へと変化した
ガンジス川には魚やイルカが住み白化した珊瑚礁は修復され第四紀大量絶滅以前の動植物が蘇り生態系の一部に加わった
正常性は覆され超常組織同士の協力関係が成立し人類社会はアノマリーの恩恵を享受しながら発展していくようになった



それら全てをたった1体でやってのけた大蛇は、蘇った自然を、変化した人類を、自らが成し遂げた結果を見届けた後、生まれた場所で再び眠りについた。





かの大蛇が実のところ何を望んでいたのか、何故あの時姿を現したのか、人類に対し何を思っていたのか、言葉を話さない以上はっきりとしたことは言えない。
しかし、齎された結果を見て推し量ることはできる。





きっとあの蛇は、この星に生きる全ての生き物たちの明日を願っていたのだろうと。







余談


SCP-6002 - All Creatures Great and Small (大きな、小さな、生きとし生けるもの)


SCP-6004と直接の繋がりはなく、クロスリンク等があるわけでもないが、どちらも SCP-6000コンテスト 参加作品であり
地球上における生物や生態系と密接に関係している」「創世や自然を司る神話上の実体との類似が指摘されている」といった点でどことなく似た要素があるオブジェクト。
ただし6004が (動物) モチーフであるのに対してこちらは (植物) をモチーフとしており、異常性自体も大分方向性が異なる。


何よりオブジェクトそのものに感じる雰囲気や記事の読後感が全くの正反対であり、一緒に読むことで片方だけの時とはまた違った感慨を覚えられるだろう。
元記事はそこそこ長いが、6004と同様に起きていること自体は割とシンプルなため、機会がある方はぜひ読んでみることをお勧めする。





追記、修正は自然を愛する方々にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • Tiamat
  • Keter
  • SCP
  • SCP Foundation
  • SCP財団
  • Dr Balthazaar
  • SCP-6000コンテスト
  • 自然
  • 虹色
  • 要注意団体
  • 世界オカルト連合
  • Uncontainable
  • マナによる慈善財団
  • 天候操作
  • カラフルな項目
最終更新:2025年05月07日 01:17

*1 項目名「ガイアの血液」 曝露した動植物を人間殺戮マシーンに変化させる有機物質複合体

*2 項目名「量子メカニックス」 接触した人工物を分解しながら増殖する分子生物