1998年(SCP Foundation)

登録日:2021/02/27 Sat 22:02:31
更新日:2025/01/12 Sun 23:57:11
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─夜明けが、見えてきた。



1998年/1998thはシェアード・ワールドSCP Foundation』のカノンハブのひとつである。
SCP-JPで誕生したカノンであり、2020年2月8日に成立した。



概要

財団世界オカルト連合などの正常性維持機関と世界各国の政府の基本方針「ヴェール政策」が崩壊した世界を描いた作品群。
ジャンルで言えば歴史改変SFにあたり、カノン名の通り1998年を重大な分岐点とする。

政府は財団や連合などが正常性を守るために国内で活動する権限を認め、維持機関側はアノマリーの存在が世間に露呈しないよう、確保・収容・保護なり破壊、粛清を行い、それらを隠蔽することで役目を果たしていた。
しかし1998年に生じたある事件は、彼らの隠蔽能力を超えた被害をもたらし、財団たちは表舞台に姿を現すことを余儀なくされる。

ヴェールが存在しない世界を描くという点では、ENのカノン『壊された虚構』とも共通する。
そのため、『1998年』では差別化のために世界各地で起こる超常事件「"それでも前に進んでいく"人類」「未来への希望」というテーマを重要視している。

作品数はJPのカノンでは最多を誇る*1が、その大半はこのWikiでも紹介される機会の少ないTaleやGoIフォーマットであることが特徴。
また、そのTaleやGoIフォーマットにおいても、新聞記事*2の体裁をとる作品が多数見られる。

特筆すべき点

ヴェールなき社会の変化

ヴェールが取り払われたことで、非日常は徐々に日常に組み込まれ、技術は飛躍的な発展を遂げる。
他カノンでは人型オブジェクトとして収容されていた異常存在も、ある事件を機に「異常性保持者」「パラヒューマン」として社会に溶け込み、身体の一部にヒト以外の動物の器官を持つ「動物特徴保持者(Animal Feature Career;AFC)」、ケンタウロスなど架空の存在として隠匿されてきた種族「伝承部族」も同じく日常に組み込まれる。

結果として「人類」という語はより広い枠組みを指すようになり、多くの種族、要素が共生する社会が築かれる。



超常組織の変化


歴史と社会が変わればアノマリーに関わる超常組織の在り方も変わっていく。
財団やGOCは、その存在が世間に広く知れ渡ってもなお、人類の守護者として強い影響力を持っている。
本来なら1998年に倒産するプロメテウス研究所は、技術の散逸などを恐れた財団とGOCにより延命。後に世界にその名を轟かせる巨大コンツェルンへと成長する。
ニッソこと日本生類創研は一度は法的に解体されるも、再始動後は徹底した自浄努力を行い、一部グループが医療機器メーカー「ニッソ医機」として復活を遂げた。

他にもいろいろと大きく変化したり新たに現れたりした団体があるので、詳細はハブを参照してほしい。

数々の超常事件

しかし、起こる変化は良いものばかりではない。社会には新たな問題や差別が生まれ、超常的な性質を得た災害や病気が人々を苦しめるようになった。
それだけではなく、国家を揺るがす大規模なものから、新聞の片隅に小さく書かれるようなものまで、場所を問わず超常的な事件は次々と起こる。
後述する「シーズン」のように、特定の事件に関係する超常組織や人々にまつわるストーリーも数多く投稿されている。

"それでも前に進んでいく"強き人類

時として、常識外れの大被害や救いのない現状に絶望し、道を踏み外してしまう人々も現れる。
しかしいくら絶望的な事件が起き、一人ひとりが心に深い傷を負おうとも、この世界の人類は決して屈しはしない。理不尽も不条理も乗り越えて朝日を目にするのである。

そうして人類の力や技術は急速に成長し、2050年頃には一国の軍隊(しかも総力戦などではなく、もっと小規模な部隊)だけでも巨大神格存在を瞬殺できるレベルにまで達している。

矛盾するタイムライン

カノンの発展に伴い生じた要素。各作品は極力矛盾が起こらないよう設定のすり合わせが行われているが、一部タイムラインの分岐も認められている。*3

特に影響が大きいのはシーズン「東京事変」を丸々無かったこととして東京都の発展を描く「花籠ルート」。
世に出た数はあまり多くないものの、作中世界からこの矛盾の説明を試みる作品もある。

黒の女王のGoIフォーマットにおいても「タイムライン K-998」としてこのカノンの世界が描写されることがあるが、
なぜか「東京事変」と「花籠ルート」のように並立し得ない複数の事象が、タイムラインの分岐を起こすことなくK-998という1つの大きな流れに内包されている。
そのため、同じ「K-998」を訪れたはずなのに、各女王が語ったり目撃したりした情報に明らかな矛盾が見られることも。

シーズン

先述した通り、このカノンの作品内では超常的かつ大規模な事件や災害がたびたび起こっている。
特定の出来事やテーマにフォーカスを当てた作品群は「シーズン」と呼ばれ、2021年10月時点で9つのシーズンが存在している。

ハブにも年表が記載されているが、より細かく知りたい方は、ハブの下の方にあるリンクから飛べる網羅的な資料集を参照するといい。
タイムライン以外に、用語、事件、人物、よく言及されるロケーション、新聞の形式をとる作品に登場する見出しについても纏められているので、一見の価値あり。

1998年: ワルツの夜

ポーランドは明日、世界に先駆けて新たな一歩を踏み出します。ヴェールの先へ、闇へ立ち向かうために。ポーランドに未来あれ。

このカノンの全ての始まり。1998年初夏のポーランドで発生した「ポーランド神格存在出現事件」とその余波を描いた作品が属する。


2001年: 合衆国の一番長い日

はっきり言おう、奴らの正体がわかった。あれはいわゆる悪魔だ。20分署に所属するエクソシストから裏がとれた。

2001年9月11日にカオス・インサージェンシーが引き起こしたマンハッタン次元崩落テロ事件に関するシーズン。
マンハッタン島は無数の悪魔や怪物が跋扈する地獄と化し、人々は生き残るために行動する。
属する作品は、当時のマンハッタンを舞台としたカノン内シリーズ『マンハッタン・クライシス』と、テロ収束後に事件やマンハッタンに言及したものの2種に大別される。


2006年: 大麻畑でつかまえて

ようこそ、享楽と悪徳の街、幻想国家コロンビアへ。

2006年10月2日、超常麻薬組織「ジョン・ドゥ・カルテル」に乗っ取られたコロンビア政府は、他国や正常性維持機関からの独立を宣言。
カルテルに協力する悪魔たちにより、一時滞在者を含む4395万人のコロンビア市民は精神体となり、ボゴタ上空に出現した文字通りの夢の世界「オルタナティブ・コロンビア」へ移行した。
パラドラッグが蔓延し、人と悪魔が享楽に耽って共存する無法地帯と化したコロンビアの内外を描く。


2009年: 黄昏に沈む爪牙

奇蹄病ウイルス(正式名: 獣変調ウイルスTX-85957)はレトロウイルス科ガンマレトロウイルス属に分類される一本鎖RNAウイルスである。

2009年1月23日、神奈川県に位置する日本生類創研の研究施設で、後に「奇蹄病事件」と呼ばれる偶発的アウトブレイクが発生。
感染したヒト組織の一部を他の生物の同等の器官に置換するこのウイルスの脅威は、ワクチンの発見と複製の生産により同年2月にはピークを過ぎるも、全国で約6万人が感染し、内約1500人が死亡する惨事となった。
収束後も患者への差別やそれが引き金となった事件が多発し、一部伝承部族らへの風評被害も生じるなど、純粋なヒトではない者たちは夜明けから遠い黄昏の日々を過ごすこととなる。
登場人物が差別やいじめを受けたり死亡したりする描写が含まれる、全体的に暗い話が多いのが特徴。


2015年: プルス・ウルトラ

その歩みが遅々たるものであろうと、曲がりくねった道筋であろうと、我々は前へ進み続けねばなりません。

2015年のバルセロナで、要注意人物「トンガラシ翁」*5が神性を獲得。不老長寿を目指していた翁は、スペイン国民の9割をカワウソに変異させて捕食し始めた。
神格存在となった翁は3か月後に討伐されるが、人々の姿が戻ることはなく、スペインは様々な問題と直面する前例のない前進を迫られる。
タイトルの「プルス・ウルトラ」は、「もっと先へ」「もっと向こうへ」「更なる前進」を意味するスペインの標語。


2017年: 東京事変

2017年の12月17日。そこから東京は壊された。26年間も壊され続けた。

東京都を中心とした南関東で、同時多発的な異常現象「東京現実崩壊性広域災害」、通称「東京事変」が発生。東京は以後26年にわたり崩壊を続け、日本は首都機能を移転する。
災害を受けて変化していく日本の情勢だけでなく、地下鉄網に逃れた生存者たちのコミュニティ「地下東京」にもスポットを当てる。

あ、念の為言っておくと、渋谷事変は全く関係ないです。あっちは2018年だし。


2019年: 鏡写しの正常世界

貴様らが言う二大陸正常化ってのは、俺にとってみれば四大陸異常化なんだよ。

2019年9月13日、アフリカ大陸と南アメリカ大陸で、後に二大陸正常化事件と呼ばれるCK-クラス:再構築シナリオが突如として発生。両大陸はヴェール崩壊を経験しなかった状態に置換された。
社会に普及した超常技術の産物や、一般市民の超常に関する知識は全て消え去った。現地の財団やGOCの職員たちはヴェールが2019年現在まで存続していると信じ、他の大陸での「深刻な情報漏洩」を見て大混乱に陥った。
世界の陸地の30%以上が取り戻したかつての「正常」と、超常を社会に受け入れて進歩を遂げてきた現代の「正常」の対比・衝突がメインとなる。


2037年: 黎明に轟く咆哮

僕は、人間と何が違うのでしょうか。

日本でのAFCたちの生活と権利闘争をテーマとしたシーズン。時間の経過に伴い法整備なども進んでいることから、2009年よりも社会的・政治的な要素を含んだ作品が多い。
黎明とは、 夜明けや明け方、新しい事柄が始まろうとすることやその時を意味する言葉である。


2041年: 病院の窓から覗いた朝

やることははっきりしています。絶望を終わらせるのです。

異常の膾炙により変化した近未来の日本社会を、医療の面から掘り下げていくシーズン。
物語の起点となるのは、2041年に群馬で発生した「サイト-81Q5現実崩壊事件」


これ以外にも、特定のシーズンに属さない「幕間」や、同じく特定のシーズンに依存しない連作である「シリーズ」に分類される、多種多様な作品が存在する。


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最終更新:2025年01月12日 23:57

*1 アートワークを含めた作品数はこの項目が作成された時点で120を超える。

*2 元は財団のフロント企業の1つだった全国紙の信濃中央新聞、反財団の傾向が非常に強い恋昏崎新聞社/恋昏崎ニュースエージェンシー、経営者やエリートサラリーマンを主な購読者層とする帝都経済新聞など。

*3 『1998年』の存在が他言語版でも知られ始めたことで、海外で設定のすり合わせがまったくできていない記事が投稿されたことが分岐容認の決定打となった。

*4 PCブラウザ版の再現なので、読む際はスマートフォンを横にするか、PCまたはタブレットの使用を推奨。

*5 SCP-1129-JPを作った本人。基底タイムラインではSCP-1129-JPことアヒージョの意図せぬ脱走により命運が尽き死亡した

*6 同一次元内に散在するアクセスポイントを経由して高速移動を可能とする技術で、Minecraftの「ネザーワープ」の様なものとされる

*7 平行世界などの異世界へ跳躍することを教義とする宗教団体

*8 なお、このことにより財団からは「有意な精神汚染はしていない」と見なされている。また、財団側がDクラス職員をわざと入信させる試みも、逆に本人側から拒絶される結果に終わっている。

*9 東京事変時に発生した現実の崩壊により、地下鉄と乗客、乗組員が融合して生まれた生命体

*10 大手町駅は時間の流れが非常に早く、地上で13年が経過している間に住人の世代交代が5回も発生している。