アドマイヤベガ(競走馬)

登録日:2023/08/19 Sat 07:16:15
更新日:2025/03/26 Wed 21:45:23
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母、ベガの二冠達成から6年! またもその息子が輝く一等星に!

豊が信じたその末脚!豊が信じたその強さ!

やはりこの大一番アドマイヤベガです!

(by 三宅正治アナ)


──1999年6月6日 第66回 日本ダービー実況より


アドマイヤベガ(Admire Vega)とは日本の元競走馬・種牡馬。

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
アドマイヤベガ(ウマ娘 プリティーダービー)

目次

【データ】

誕生:1996年3月12日
死亡:2004年10月29日
享年:8歳
父:サンデーサイレンス
母:ベガ
母父:トニービン
調教師:橋田満*1 (栗東)
主戦騎手:武豊(全戦で騎乗)
馬主:近藤利一
生産者:ノーザンファーム
産地:早来町
セリ取引価格:-
獲得賞金:2億9,060万円 (中央)
通算成績:8戦4勝 [4-1-0-3]
主な勝鞍:99'日本ダービー

【誕生】

1996年3月12日生まれの鹿毛の牡馬。
父は言わずと知れた大種牡馬サンデーサイレンス
母は「ベガはベガでもホクトベガ」のホクトベガじゃない方で有名な二冠牝馬ベガ
母父は1988年の第67回凱旋門賞を制覇しサンデーサイレンスやブライアンズタイムと共に90年代の輸入種牡馬御三家を形成したトニービンという良血。
半弟にGⅠとJpn1を合計7勝したアドマイヤドンがおり、更に全弟のアドマイヤボスはGⅡのセントライト記念を制している。

当初は二卵性双生児として生を授かったのだが、にとっての双子というのは人間以上に切迫した事態である。
まず仔馬の死産率が極端に高まり、母馬も死亡する可能性が高まる非常に危険な状態であり、母子の健康上放置できない状態である。
そして仮に仔が生き延びてもその体格は小さく、そのまま産後の発育悪化にも繋がり、最終的に売り値が付かない個体である可能性が高くなる。
加えて母馬が生存しても以後の不受胎率が大きく高まり、本来生まれるはずの産駒による利益が失われる可能性も極めて高い。
つまり健康上の理由でも、経済上の理由でも多胎妊娠は避けなければならない状態となる。
その結果、双子の片割れは胎児の段階で諦めざるを得ないという過酷な運命を背負っていたのである*2
そうして産まれたのがアドマイヤベガであったが、産後すぐに母馬のベガと同じように左前脚が内側に曲がっていたとのことで、まるでその後の運命を予感させるかのようであった。

【戦歴】

1998年11月7日の京都競馬場の3歳新馬戦芝1600mでデビュー。
その才能を遺憾なく発揮し1着入線も、最終直線での斜行による進路妨害で4着への降着処分を受けてしまう結果に。
それもそのはず、鞍上の武豊にとってはつい1週間前が11月1日──「沈黙の日曜日」と呼ばれた第118回天皇賞(秋)である。
この日に武騎手は自身も相当な期待を寄せていたサイレンススズカを目の前で失ってしまっており、動揺するなと言う方が無理な状態だったのだ*3
しかし、降着で賞金を加算できなかったが実質勝ちとばかりに次走は500万下特別のエリカ賞、続くGⅢのラジオたんぱ杯において連戦連勝。重賞勝利も達成し頭角を現していく。

本番のクラシック三冠レースでは、皐月賞で後に世紀末覇王と呼ばれる若き日のテイエムオペラオーの豪脚に敗れ6着となるも、
続く日本ダービーではリベンジを果たし見事1着、第66代日本ダービー馬の栄誉を勝ち取る。
武騎手にとってはこれがダービー2勝目*4。前年のスペシャルウィークから続く史上初の日本ダービー連覇を達成した*5
その後、秋の緒戦となる京都新聞杯での勝利を経た上で菊花賞に挑むも距離適性の壁があったのか、ダービー2着のナリタトップロードに敗れ6着。

このクラシック三冠を経て、テイエムオペラオー、ナリタトップロード共に三強と目され、当時の競馬界を盛り上げていたのだが、
翌2000年は宝塚記念に向けて調整するもなかなか調子が戻らず、温泉療法などを駆使して何とか戻そうとしたものの宝塚記念出走は結局断念を余儀なくされる。
秋に復帰することとなり、オールカマーを始動戦として天皇賞(秋)やジャパンカップへの出走を目指す予定だったが、7月31日の調教中に数多の名馬を引退や長期離脱に追い込んだ繋靭帯炎を左前脚に発症していたことが発覚。
復帰は絶望的となり、オペラオーやトップロードとの再戦は叶わぬまま、周囲に惜しまれつつ引退を余儀なくされることとなった。

【引退後】

引退後は種牡馬入りするも、2004年10月に偶発性胃破裂を発症。わずか8歳という若さで双子の片割れの下へと旅立つことになった。
墓は父・サンデーサイレンスと同じ社台スタリオンステーションに建てられており、アドマイヤベガの死の2年後に亡くなった母・ベガも息子と同じ区画に葬られている。

種牡馬として残すことができた産駒はわずか4世代のみだったが、平地・障害双方において活躍馬を多く輩出した。その中には桜花賞を制したキストゥヘヴン、マイルチャンピオンシップを制したブルーメンブラットといったGⅠ馬も複数存在している。
母の父としても、酒井学騎手に初GⅠを贈ったジャパンカップダート馬ニホンピロアワーズを輩出している。
また、アドマイヤベガの死後、いわゆる「父サンデーサイレンス・母父トニービンという血統の種牡馬」としてはハーツクライがそのポジションを引き継ぎ、こちらも多くのGⅠ馬を輩出して成功を収めている。
このように種牡馬としての可能性も十分にあっただけに、競走馬としても種牡馬としても大成できる可能性がありながら、そのどちらでも短い期間しか活躍できなかったという悲劇を背負った馬であるといえるだろう。

【創作作品での登場】

馴れ合いを好まない孤高のウマ娘…なのだが、同期のオペラオーや同室のカレンチャンをはじめ不思議と変人との縁が多い。
一見つれない振る舞いをしながらも根はお人好しで他人を放っておけないツンデレ気質であるため、彼女たちのツッコミ役のようなポジションに収まっている。
そのせいか周囲からは名前を略して「アヤベさん」と妙に親しみやすいあだ名をつけられている*6なんと担当トレーナーすらアヤベと呼ぶ。
これはアドベだとドベに通じるからではという考えも出ているが、詳しいことは不明
また、上記の「生まれることさえできなかった双子の片割れ」の要素がキャラクター造形・自身の育成シナリオに色濃く反映されている。
アプリ配信1周年の1週間前である2022年2月16日に育成キャラとして実装、1年目のトリを飾る事になった。

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最終更新:2025年03月26日 21:45

*1 サイレンススズカ号の調教師を手掛けたことで知られる

*2 一応アイネスフウジン号の半弟リアルカストール・リアルボルクス兄弟等僅かだが双子のまま生まれた馬は実在するが、いずれも目立った戦績を上げることは出来ていない。他の例としてはメジロアルダン号が双子として生を受けたものの、片割れが母馬の腹の中で死産したために、彼は特段の処置を施されることはなかった、というものもある。

*3 この斜行による処分で、エリザベス女王杯に出走するエアグルーヴ(横山典弘に乗り替わり)や、ジャパンカップに出走するスペシャルウィーク(岡部幸雄に乗り替わり)に騎乗できなかったなど、影響はかなり大きかった。実際天皇賞(秋)のレース後、普段酒に酔わないことで知られる武騎手がワインを痛飲してこれ以上ない程酔い潰れていた姿が目撃されている他、武と親交が深い福永祐一も「あれだけ落ち込んだ豊さんを見た事はない」と証言している。

*4 その後、武騎手はタニノギムレット(2002年)・ディープインパクト(2005年)・キズナ(2013年)・ドウデュース(2022年)とダービーを4度に渡って制し、6勝という日本ダービー最多勝利記録を樹立している。

*5 その後、四位洋文(2007年ウオッカ・2008年ディープスカイ)、福永祐一(2020年コントレイル・2021年シャフリヤール)がそれぞれダービー連覇を達成している。

*6 モチーフ馬は「アドベ」と略されることが多かった。